長野県の戸隠の近くに鬼がいない里と書いて鬼無里(きなさ)という村がある。
この奇妙な地名の由来には諸説あるが、有力なのは鬼女「紅葉」の伝説だ。
平安時代に都から紅葉という女性が長野に帰郷したが、彼女は実は妖術を使う巫女=シャ-マンであった。彼女は地元の山賊どもをその妖術で手なずけ、兵を組織して都へ攻め登ろうとしたが、討伐に向かった源氏の武将に打ち取られて、その首は空に飛び去った。
そののち、地域一帯は鬼がいない平和な村に戻ったと言い伝えられている。
この春、静高から2人の鬼が去って行った。
化学と国語の鬼だ。
鬼は同時に静高の化学と国語の守護神でもあった。
とにかく校内テストの問題は難しくて、化学は平均点が20点台、国語も数学よりも低い30点台と文字通リ「鬼のような出題者」であった。
だが、この2人のおかげで、静高が何とか地域一番校としての入試実績を維持できていた。
特に化学は靜高の宿痾であり、学力は進学校スレスレを維持している状態だった。
新課程に入り「高校化学」の内容がさらに難化したので、静高生の化学得点力の低下が心配されていた矢先のことだ。
静高では既に文系生の化学指導は放棄している。
共通テストでは文系生が化学基礎を選択しないので、足手まといは切り捨てた格好だ。
鬼が去った後の静高はどうなるのか。
平和な高校、つまり「平凡な自称進学校」に落ち着くのか。
鬼無里の鬼女紅葉は、実は地元に都の先端医療をもたらし、子供達には文字を教えた貢献者であった。