ノーマルビュー

8/3(土)8/4(日)オープンキャンパスを開催します

著者: staff
2024年5月27日 14:35

WASEDA University OPEN CAMPUS 2024

8月3日(土)、4日(日)の二日間にかけて、オープンキャンパスを開催いたします。

早稲田大学の歴史・学び・国際交流・キャンパスライフ・入試情報など、入学後の学生生活がリアルにイメージできる企画が盛りだくさんです!
西早稲田キャンパスのプログラムの詳細は、7月上旬にWebサイトにタイムテーブルを掲載いたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

来場に際して、事前予約は不要です。入退場も自由となっております。
ただし、キャンパスツアー、実験体験など、一部事前に予約が必要なプログラムがございます
予約が必要なプログラムの予約受付開始は7月5日(月)を予定しています。
予約方法については詳細が決定次第ご案内します。

「Flow Synthesis and the AI/ML Strategies」(2024/6/12)

著者: staff
2024年5月24日 11:19

演題:Flow Synthesis and the AI/ML Strategies

日時:2024年6月12日(水) 15:00~16:40

会場:西早稲田キャンパス 55号館N棟 1F 第二会議室

講師:Rigoberto C. Advincula(テネシー大学教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「Saynatsalo town hall by Alver Aalto」(2024/6/3)

著者: staff
2024年5月17日 14:57

演題:Saynatsalo town hall by Alver Aalto

日時:2024年6月3日(月) 18:30~20:10

会場:西早稲田キャンパス 55号館S棟1階 イノベーションラボ

講師:Jonas Malmberg(アルヴァ・アアルト財団シニアアーキテクト)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:創造理工学部 建築学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「Engaging esters, aldehydes, and alcohols in cross-coupling」(2024/8/21)

著者: staff
2024年5月16日 16:16

演題:Engaging esters, aldehydes, and alcohols in cross-coupling

日時:2024年8月21日(水)16:20~18:00

会場:西早稲田キャンパス 63号館05会議室

講師:Stephen G. Newman(オタワ大学・准教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「Insights into the Microenvironment of Catalysis: Water Oxidation and Selective C–H bond Functionalization」(2024/7/24)

著者: staff
2024年5月16日 15:32

演題:Insights into the Microenvironment of Catalysis: Water Oxidation and Selective C–H bond Functionalization

日時:2024年7月24日(水)16:00-17:40

会場:西早稲田キャンパス 53号館201号室

講師:Djamaladdin G.Musaev(Emory University Director of the Emerson Center, Adjunct Prof. of Chemistry)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学研究科 化学・生命化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

新規ナノ構造体を基盤とするナノ注射器が拓く細胞治療の未来 1,000万個の細胞に複数タンパク質を「高効率」「高生存率」導入

著者: contributor
2024年5月16日 15:22

新規ナノ構造体を基盤とするナノ注射器が拓く細胞治療の未来
1,000万個の細胞に複数タンパク質を「高効率」「高生存率」導入

タンパク質を用いたがん治療およびNMR解析への利用を実証

発表のポイント
  • 導電性高分子と金属から成る複合ナノチューブシートを改良し、複数のタンパク質を細胞内に高効率・高生存率で導入するための新規ナノ構造体(ナノ注射器)を開発。
  • 再生医療分野で取り扱うために必要な細胞数である1,000万個以上の細胞に対して、導入効率89.9%、細胞生存率97.1%でタンパク質導入に成功。
  • 乳酸オキシダーゼ酵素(LOx)およびユビキチン(UQ)などの任意タンパク質を導入可能。
  • タンパク質導入によるがん細胞の死滅およびNMR解析に成功。

早稲田大学大学院情報生産システム研究科の三宅丈雄(みやけたけお)教授らの研究グループと理化学研究所生命機能科学研究センターの美川務(みかわつとむ)専任研究員らの研究グループは、2021年に報告した導電性高分子で被覆された金属製ナノチューブシート※1をこれまで細胞内に届けることが困難であったタンパク質向けに改良し、タンパク質の細胞内への輸送速度や細胞内での機能維持の向上を実現しました。本研究では、この技術を用いて、乳酸オキシダーゼ酵素(LOx)を正常細胞とがん細胞に導入し、がん細胞のみが死滅することを確認しました(図1)。実験では、酵素が細胞内まで届けられた場合は24時間後にがん細胞が3%まで死滅するのに対し、酵素を細胞内に届けない条件では33%残ることが確認されました。一方、安定同位体標識タンパク質(ユビキチン)を細胞内機能解析手法であるin-cell NMR解析※2に必要な1,000万個(107個)以上の細胞に対して、高効率および高生存率で導入することに成功しました。

以上は、科学研究費補助金、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子・イオン制御型バイオイオントロニクス」(JPMJPR20B8)、旭硝子財団の助成による成果であり、2024年5月14日(現地時間)に科学誌『Analytical Chemistry』にオンライン版で公開されました。
論文名:A Hybrid Nanotube Stamp system in Intracellular Protein Delivery for Cancer Treatment and NMR Analytical Techniques

図1.ナノ注射器でのタンパク質導入および細胞応用

(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

体外で細胞に物質を導入し、細胞を加工する技術開発は、再生医療および細胞治療におけるコア技術です。これまでは、化学/生物的手法(ウィルスベクター)と物理的手法(エレクトロポレーション)が利用されていましたが、これら手法は、細胞が外界から物質を取り込む作用であるエンドサイトーシスにより細胞内への取り込みを行うため、時間がかかる、効率が悪い、導入する過程で細胞が死んでしまうなどの課題を有していました。

こうした課題を解決するため、中空管のマイクロ/ナノニードルを細胞に挿入することで、目的の物質を細胞内に導入するナノ注射器に関する取り組みが盛んですが、開発が進むナノ注射器は単針であり、かつ、マイクロサイズの細胞に単針を挿入するマニュピレータが必要であるため、主に1細胞ごとに導入する必要がありました。そこで本研究グループは、ナノチューブを配列した2次元薄膜(シート)を開発し、本ナノチューブを細胞に刺入することで短時間、かつ、高効率に物質を細胞に届けるナノ注射器の開発に成功しました。さらに本研究では、このナノ注射器を用いることで、これまで物質導入が困難であった機能性タンパク質を再生医療分野で取り扱うために必要な細胞数(107個以上)に高効率および高生存率で導入できることを確認しました。さらに、本技術をがん治療やNMR解析などの細胞応用に利用できることを実証しています。

(2)今回の研究で実現したこと

本研究グループでは、これまで金属製のナノチューブを開発し、そこへ導電性高分子を被覆することでナノスケールの構造体(ナノ構造体)および物質輸送を制御できるナノ加工技術(新しいナノ材料)の開発に取り組んできました。さらに、新規ナノ構造体を基盤とするナノ注射器を開発し、細胞内に低分子(蛍光物質:約1nmサイズ)・中分子(タンパク質:約数nm)・高分子(細胞小器官:500nm以上)を導入する取り組みを実施してきました。
今回、複数のタンパク質を細胞内に高効率・高生存率で導入するためのナノ構造体を開発し、様々な細胞(がん細胞(HeLa))、マウス由来上皮細胞(NIH3T3)、ヒト由来繊維芽細胞(HPS)、脂肪由来幹細胞(MSC)、角膜上皮細胞(HCE-T)など)で実現できることを確かめました(図2)。

図2.新規ナノ構造体を基盤とするナノ注射器の開発とタンパク質導入結果

(3)性能評価

本技術を用いた2つの事例①乳酸オキシダーゼ酵素(LOx)導入によるがん細胞の死滅、②安定同位体標識タンパク質導入によるNMR解析を紹介します。

まず、①LOx導入によるがん細胞の死滅に関しては、原理はとてもシンプルで、細胞内でLOxが乳酸濃度に応じて過酸化水素(H2O2、強力な酸化剤)を生成し、その結果として細胞をアポトーシス(細胞の自然死)に導きます。図3に示したようにがん細胞(HeLa)と正常細胞(MSC)内の乳酸濃度は10倍程度異なるため、がん細胞の中では酵素反応によって過酸化水素 がより多く生成されることになります。本実験では、HeLaとMSCへのLOxの導入効率は共に95%以上を示しました。LOxを導入したMSCと何も処理しなかったMSCを比較すると、ほぼ同じ生存率(100%以上)を示すのに対し、がん細胞ではLOx導入後、生存率が時間と共に下がることを確認しています。さらに、LOxの導入量に応じて、生存率が変化することを確かめており、このことは酵素反応の結果としてがん細胞が死滅したものであると考えています。

図3.ナノ注射器を用いたLOx酵素の細胞内導入およびがん細胞の死滅結果
(生細胞はカルセインAMで蛍光染色を行い、死細胞はPIにて蛍光染色を行った。)

また、②安定同位体標識タンパク質導入によるNMR解析においては、①同様の手法でユビキチンタンパク質をHeLa細胞に導入しNMR解析を行いました(図4)。NMR解析には、高濃度のタンパク質が導入された細胞が107個程度必要となるため、ナノ注射器システムでも十分な数の細胞を用意し、さらには、十分な量のタンパク質が細胞内に導入されたかどうかを確かめました。結果として、1.8×107個の細胞に5-10mMの安定同位体標識ユビキチンが入ったことをNMR解析から明らかにしました。

図4.ナノ注射器を用いた安定同位体標識ユビキチン(UQ)の細胞内導入およびNMR解析結果

(4)今後の展望

今後は、任意のタンパク質や低分子を同時に細胞内に導入することで、細胞機能改変(ダイレクトリプログラミング)あるいは細胞内機能解析(In-cell NMR)などの開発にも取り組みたいと考えています。また、動物性細胞以外の細胞(植物、酵母、乳酸菌など)への展開も見込んでいます。これらを1研究室で実現することは困難ですので、本プロジェクトにご興味のある企業や研究機関からのお問い合わせをお待ちします。

(5)用語解説等

※1 2021年に報告した導電性高分子で被覆された金属製ナノチューブシート:

https://www.waseda.jp/top/news/74747
細胞用電動ナノ注射器「電気浸透流ナノポンプ」を開発― 細胞治療に向けた新たな細胞内物質導入機器

※2 in-cell NMR解析:

核磁気共鳴分光測定法(NMR法)を用いて生きた細胞の中の生体分子を観測および解析する手法

(6)論文情報

雑誌名: Analytical Chemistry
論文名:A Hybrid Nanotube Stamp system in Intracellular Protein Delivery for Cancer Treatment and NMR Analytical Techniques
執筆者名:Bowen Zhang, Bingfu Liu, Zhouji Wu, Kazuhiro Oyama, Masaomi Ikari, Hiromasa Yagi, Naoya Tochio, Takanori Kigawa, Tsutomu Mikawa, and Takeo Miyake.
掲載日(現地時間):2024年5月14日
掲載URL:https://doi.org/10.1021/acs.analchem.3c05331
DOI:10.1021/acs.analchem.3c05331

(8)研究助成

科学研究費補助金
科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子・イオン制御型バイオイオントロニクス」(JPMJPR20B8)
旭硝子財団

「Higher Fano manifolds and higher order minimal families of rational curves」(2024/7/2)

著者: staff
2024年5月16日 14:35

演題:Higher Fano manifolds and higher order minimal families of rational curves

日時:2024年7月2日(火) 17 :00-18: 40

会場:西早稲田キャンパス 51号館18階12室

講師:鈴木 拓(宇都宮大学共同教育学部 助教)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 数学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

関連リンク:https://sites.google.com/view/waseda-ag-seminar

「グリーン・デジタル社会と産業の川上”結晶”の重要性」(2024/6/24)

著者: staff
2024年5月16日 13:46

演題:グリーン・デジタル社会と産業の川上”結晶”の重要性

日時:2024年6月24日(月) 16:30~18:10

会場:西早稲田キャンパス 55号館 S棟 510室

講師:森 勇介(大阪大学大学院工学研究科 電気電子情報通信工学専攻 教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「The rise of organic electrode materials for more sustainable rechargeable batteries」(2024/6/17)

著者: staff
2024年5月16日 11:48

演題:The rise of organic electrode materials for more sustainable rechargeable batteries

日時:2024年6月17日(月) 10:00~11:40

会場:西早稲田キャンパス 55号館N棟 1F 第二会議室

講師:Philippe Poizot(ナント大学教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「Semistable reduction theorem for complex analytic spaces」(2024/6/14)

著者: staff
2024年5月16日 09:50

演題:Semistable reduction theorem for complex analytic spaces

日時:2024年6月14日(金) 16 :30-18: 10

会場:西早稲田キャンパス 51号館18階12室

講師:榎園 誠(立教大学理学部数学科 助教)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 数学応用数理専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

関連リンク:https://sites.google.com/view/waseda-ag-seminar

不規則なガラス構造に隠された規則性

著者: contributor
2024年5月14日 11:14

不規則なガラス構造に隠された規則性

原子の柱が作り出す密度の”むら”の構造抽出に成功

発表のポイント

最先端の電子顕微鏡法の1つであるオングストロームビーム電子回折法※1を用いて、シリカ(SiO2)ガラス※2の非常に細かい構造を直接観察することに成功した。
ガラスに存在する原子のナノスケール柱状構造※3及びその配列に関係した複数の異なる周期性を発見した。
これらの柱状構造がほぼ周期的に配列することで「擬格子面※4」と呼ばれる面状の領域が形成され、これにより古くから議論されてきたガラスの「FSDP※5(First Sharp Diffraction Peak)」と呼ばれる特徴的な回折ピークの起源を解明した。
この柱状構造の配列は、ガラスにおける密度の”むら”(密度ゆらぎ)と密接に関係しており、例えば、ガラスを電池用材料、窓ガラス、光ファイバーとして利用する際のイオン伝導特性、強度、光学特性の改善に繋がる基礎として重要となる。

図1.オングストロームビーム電子回折実験を用いた観察による、シリカガラス中に存在するナノスケール柱状構造の局所的な擬周期配列の発見。

早稲田大学理工学術院教授 平田秋彦(ひらたあきひこ)、東北大学未踏スケールデータアナリティクスセンター教授 志賀元紀(しがもとき)、物質・材料研究機構マテリアル基盤研究センターグループリーダー 小原真司(こはらしんじ)らの研究グループ(以下、本研究グループ)は、オングストロームビーム電子回折法を用いることで、ナノスケール柱状構造がほぼ等間隔に並んで形成される局所秩序構造を、一見不規則な構造を持つとされる、もっとも一般的なガラス材料であるシリカ(SiO2)ガラスの中に見い出しました。この秩序構造は、複数の異なる周期からなる密度ゆらぎを含む複雑な構造であることがわかりました。このような柱状構造配列の発見は、ガラス構造の科学に新たな視点を与え、さらに、柱状構造配列が作る密度ゆらぎの理解は、ガラス材料の特性や性能を制御するために欠かせない知見となると考えられます。

本研究成果は、Springer Nature社発行の科学ジャーナル『NPG Asia Materials』誌に、2024年5月10日(金)(現地時間)にオンラインで掲載されました(論文名:Direct observation of the atomic density fluctuation originating from the first sharp diffraction peak in SiO2 glass)。

(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

我々の生活に欠かせないガラスは、その原子レベルでの構造に関して古くから議論がなされてきました。中でも代表的なガラスであるシリカ(SiO2)ガラスは、Siの周りに4つのOが共有結合しSiO4正四面体が頂点に位置するOが四面体の頂点を共有して連結することにより、リング構造を作り、そのリングサイズの分布に特徴を持つこともわかっています。このようなガラスにX線や中性子線などの波長の短い波を当てると、波が原子配列によって干渉されて特徴的なパターンが出ますが、特に原子間のスケールよりも大きい周期に対応する「FSDP(First Sharp Diffraction Peak)」と呼ばれる回折ピークの出現について、古くから多くの議論がなされてきました。これを理解するために、例えば、擬格子面の概念が提唱されておりましたが、その具体的な起源については不明な点が残されていました。

(2)今回の新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、新しく開発した手法

図2.a オングストロームビーム電子回折実験の模式図、b 電子回折で見られる異なる構造周期に対応する回折スポット、c 中性子およびX線回折で得られたFSDP(矢印はbの電子回折における回折スポットの位置)、d 得られた電子回折パターンの例(一番左は平均化した、いわゆるハローリングと呼ばれるもの)。

本研究では、ガラスにおける擬格子面の正体を明らかにするため、シリカガラスで見られるFSDPに着目し、この回折ピークをシリカガラスの局所領域(1nm以下の領域)から得る目的で、本研究グループが開発してきたオングストロームビーム電子回折法を用いました(図2)。特に今回、エネルギーフィルターを導入することで、局所領域からのFSDPを明瞭に撮影することに成功しました。また、シミュレーションによって構築された構造モデルからも、近年本研究グループが開発したオングストロームビーム電子回折の理論計算結果を用いて、この実験結果を再現する局所構造を抽出することが可能となりました。この構造モデルは、X線および中性子回折の結果を再現するように分子動力学法※6と逆モンテカルロ法※7を組み合わせて作成されたものです。

抽出した局所構造に高速フーリエ変換を適用することにより、構造中に存在する擬周期が原子の柱状構造の配列から生じることが明らかとなりました。この柱状構造はブリッジの役割を果たす原子によってお互い接続されることで、おおよそ等間隔に並んで擬格子面を構成していることが特徴であり、これによりFSDPが生じるものと推察されます。また、このような柱状構造が取り囲むように柱状の空隙も形成されており、明瞭な密度ゆらぎの存在が示唆されます。さらに、この密度ゆらぎを特徴づける複数の周期が混在し、複雑な階層的構造が形成されていることもわかりました(図3)。

図3.a 特徴的な電子回折パターンに対応する局所構造モデル、b 図aの領域Iと領域IIを側面から見たもの、c, d 同一構造内での異なる周期の存在(cはFSDPのピークトップ位置、dはその裾に対応する周期)、e bの領域Iの構造に柱状の空隙が存在することを示すために仮想的に棒を挿入したもの。

このような柱状構造は、局所構造についてある特別な方向から見た時に、その方向に沿って存在するものであり、構造モデルの中からこのような場所を見つけるためには、今回使用したオングストロームビーム電子回折計算は非常に強力な手法です。また、この局所構造中の柱状構造は、結晶において見られるものと類似していることもわかりました。しかし、ガラス中の柱状構造は、結晶には存在しないリング構造である5員環や7員環を多く含んでおります。これにより構造の乱れが導入され、結晶のように広範囲にわたって周期構造が続かない原因となっているものと考えられます。

(3)研究の波及効果や社会的影響

結晶材料では、その原子配列である結晶構造が決定され、転位などに代表される格子欠陥が明確に定義されていることから、これらを制御することで様々な用途に対応した材料開発が行われてきています。一方で、ガラス材料に関しては、原子配列の決定は周期性が無いことから難しく、欠陥構造の定義も未だ明確なものはありません。

本研究では、ガラス構造中の局所秩序をナノスケール柱状構造の局所的な配列として捉えられることを示しております。ナノスケール柱状構造の配列が様々な長さの密度揺らぎを作ることから、平均的な周期から大きく逸脱した領域はガラス構造のある種の欠陥として理解することができます。このような欠陥は、ガラス材料のイオン伝導性、機械的物性、光学特性、などに大きく影響することが予想されます。これらの特性は、ガラス材料を電池の負極材や固体電解質、窓ガラス、光ファイバーなどとして利用する上で重要なものであり、欠陥の理解は材料特性を向上させる上で役立つことが将来的に期待されます。

(4)課題、今後の展望

今後は、ガラスの種類や作製法によって、どのような密度ゆらぎ、特に欠陥と呼べるような構造が導入されるかを系統的に調べ、それにより、上述した電池用材料、窓ガラス、光ファイバーなどの応用において、それら欠陥構造がイオン伝導特性、強度、光学特性などの物性にどのような影響を及ぼすかを調べる予定です。また、それらを制御することにより、さらに性能の高いガラス材料の開発が進むことが期待されます。

(5)研究者のコメント

  • 今回見出したナノスケール柱状構造の配列は、我々独自の実験および解析手法を用いることで目に見える形として初めて抽出されたものであり、これまで広く議論されてきたリング構造としての見方と実験で観測される回折データを結び付けるという点で、ガラス構造の見方に新たな視点を加えるものだと考えています。(平田)
  • ビーム径の大きさのため平均化され埋もれていた構造秩序を、極限まで絞り込んだ電子ビームを用いて、初めて観測した成果です。新しい観測は理論を刺激し、その逆もあり、多様な研究者の連携がこの分野の推進に不可欠と考えています。(志賀)

(6)用語解説

※1 オングストロームビーム電子回折法

ガラス構造の局所領域から回折パターン(物質に波を当てたときに得られる干渉パターン)を取得するための透過電子顕微鏡を用いた実験方法。通常、マイクロビームあるいはナノビーム電子回折と呼ばれるが、ガラス構造の観察には特にオングストロームスケール(1nm以下)での観測が本質的に重要となるため、このように呼んでいる。ガラス構造の10nm以上の十分に広い領域から回折パターンを取得した場合は、ハローリングと呼ばれる複数の回折リングが見られるが、領域が1nm以下になると回折スポットを呈するようになり、これが局所構造を反映していると考えられる。

※2 シリカガラス

シリコンと酸素から成りSiO2の化学組成を持つガラス物質のこと。ガラスとは通常液体状態が冷却されて過冷却状態になり、さらなる冷却により粘性が極度に高まることで得られる固体状の物質を指す。過冷却液体からガラスへの転移をガラス転移といい、体積の温度に対する変化率(熱膨張係数)等が「ガラス転移が起こる温度(ガラス転移点)」を境に変化する。このガラス状態の原子配列に本研究では特に着目しており、それは結晶のような規則性を持たない不規則なものである。

※3 ナノスケール柱状構造

本研究において、シリカガラスの中に見いだされた原子が結合してできた2nm程度の長さを持つ直線状の構造。これは独立して存在するわけではなく、ブリッジ原子と呼ぶ原子によってお互いに接続されている。また、同じ領域に対して他の方向から見た場合に、その入射方向に沿って別の柱状構造が存在する可能性もあり、この特徴は結晶構造の場合と同様である。

※4 擬格子面

結晶学や固体物理学では、原子が規則正しく並んだ結晶構造において、周期性を反映する格子という概念を考え、それを基に原子を置いていくことで結晶が作られるとする。この格子中に作られる周期的に配列される面が格子面であり、結晶構造にX線、電子線、中性子線のような波長の短い波をあてた場合、格子面の間隔がある条件を満たすと波が強めあう性質があるため、この概念が重要となる。一方、ガラスなどの不規則な構造では、このような明瞭な格子面は存在しないが、局所的にある程度の規則性を示す部分があり、これを擬格子面とここでは呼んでいる。擬格子面の存在は、結晶のおける格子面と同様に波が強め合う原因となると考えられている。

※5 FSDP

First Sharp Diffraction Peakの略。シリカガラスのような化学結合によるネットワークから構成されるガラス構造に対し、X線、電子線、中性子線のような波長の短い波をあてることにより現れる回折ピーク(Diffraction Peak)のうち、もっとも小さい回折角で観測されるもの。低角側から数えて最初に出現するピークであり、ガラスのような非晶質物質にしてはシャープであるため、この名前がついている。このピークに対応する距離スケールは4Å前後であり、原子間距離のスケールより2倍程度大きいことが特徴である。つまり、原子の結合よりも大きいスケールの構造を反映したものであると考えられる。

※6 分子動力学法

物質中の原子や分子の時々刻々の動きをシミュレートする方法。原子あるいは分子の間に働く力を仮定し、運動方程式を差分法と呼ばれる数値計算により解く。

※7 逆モンテカルロ法

回折実験から得られた構造因子や2体分布関数にフィットするような原子配列モデルを求める方法。基本的には実験値と計算値の差が少なくなるよう、乱数を用いて原子を変位させる。 

(7)論文情報

雑誌名:NPG Asia Materials
論文名:Direct observation of the atomic density fluctuation originating from the first sharp diffraction peak in SiO2 glass
執筆者名(所属機関名):平田 秋彦(早稲田大学)、佐藤 柊哉(東京理科大学)、志賀 元紀(東北大学)、小野寺 陽平(物質・材料研究機構)、木本 浩司(物質・材料研究機構)、小原 真司(物質・材料研究機構)
掲載日(現地時間):2024年5月10日(金)
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41427-024-00544-w
DOI:https://doi.org/10.1038/s41427-024-00544-w

(8)研究助成

研究費名:科学研究費 挑戦的研究(萌芽) 課題番号:23K17837
研究課題名:ガラス構造における擬格子面と位相幾何的秩序
研究代表者名(所属機関名):平田 秋彦(早稲田大学)

研究費名:科学研究費 学術変革領域研究(A) 課題番号:20H05884
研究課題名:数理情報科学に基づく超秩序構造の網羅的解析
研究代表者名(所属機関名):志賀 元紀(東北大学)

研究費名:科学研究費 学術変革領域研究(A) 課題番号:20H05881
研究課題名:先端量子ビーム手法群によるナノ・メゾスケール元素選択構造計測
研究代表者名(所属機関名):小原 真司(物質・材料研究機構)

【キーワード】

ガラス、オングストロームビーム電子回折、ナノスケール柱状構造、FSDP(First Sharp Diffraction Peak)、擬格子面、密度ゆらぎ

(5/18[土]11:00~12:30)経営デザイン専攻個別相談会の追加開催について

著者: staff
2024年5月14日 09:16

以下の通り、創造理工研究科経営デザイン専攻の個別相談会を開催いたします。

 

[開催日]  2024年5月18日(土)

[開催時間] 11:00~12:30

[参加方法] Zoomにて実施いたします。以下のURLより上記開催時間中にご参加ください。

https://list-waseda-jp.zoom.us/j/98358548762?pwd=UXFSQWtzcVRUVXVucE05NDlISWdBZz09

ミーティング ID: 983 5854 8762

パスコード: 630989

 

[問合せ先] 理工センター入試・広報オフィス大学院入試担当 fsegraduate*list.waseda.jp

(送信の際は*を@にご変更ください)にお問い合わせください。

 

【5/11の経営デザイン専攻個別相談会へ参加予定だった方へ】

通信トラブルにより、5/11(土)の経営デザイン専攻の個別相談会が時間通りに開始できませんでした。

参加予定の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びいたします。

(5/11)大学院説明会:経営デザイン専攻について

著者: staff
2024年5月11日 11:34

5/11開催の経営デザイン専攻の説明会のZoomURLが以下に変更されました。

11:30~12:30での開催予定です。よろしくお願いいたします。

https://list-waseda-jp.zoom.us/j/99601717202?pwd=eWVlT3BiVDdqK0Q5VzV5eHBoWmVDdz09

ミーティング ID: 996 0171 7202
パスコード: 986071

 

電力系統の混雑緩和を実現するシステムのフィールド実証を開始

著者: contributor
2024年5月10日 14:05

電力系統の混雑緩和を実現するシステムのフィールド実証を開始

2050年カーボンニュートラルに向け、分散型エネルギーリソースの活用による配電用変電所の混雑緩和の実現性を検証

学校法人早稲田大学は、東京電力パワーグリッド株式会社、株式会社三菱総合研究所、関西電力送配電株式会社、京セラ株式会社、国立大学法人東京大学生産技術研究所(東京大学)、中部電力パワーグリッド株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社、東京電力ホールディングス株式会社および三菱重工業株式会社の10者からなるコンソーシアム(以下、「本コンソーシアム」)において、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とともに「電力系統の混雑緩和※1のための分散型エネルギーリソース制御技術開発 (FLEX DERプロジェクト)」(以下、「本事業」)に取り組んでいます。

本年5月1日より、本事業において、蓄電池などの分散型エネルギーリソース(以下、「DER」)※2を活用した系統混雑緩和の実現性を確認するフィールド実証を開始したことをお知らせします。

フィールド実証では、実際の電力系統に実証用システムを構築し、配電用変電所の混雑緩和の実現性を確認するための技術的検証を行います。具体的には、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の導入拡大によって大量に連系された太陽光発電の発電電力により、将来、配電用変電所の変圧器において混雑の発生が懸念される栃木県那須塩原市内の特定エリアにて実証用のDERフレキシビリティシステム※3の検証を行います。

この検証結果を既存設備に最大限活用し、再エネ導入量を拡大させるためのシステム開発に活かすことで、2050年カーボンニュートラル実現に貢献してまいります。

【注釈】

※1:再エネの大量導入時に、再エネにより発電された電力が電力系統へ大量に送り込まれることにより、電力系統の送配電線の電力潮流が増加し送配電可能電力量が減少することを電力系統の混雑という。一方、この混雑を解消する取り組み(負荷の消費電力を大きくし再エネの発電電力を吸収するなど)により送配電可能量が回復することを混雑緩和という。

※2:発電設備や蓄電設備、電気自動車、ヒートポンプなどの需要設備の総称。「Distributed Energy Resources」を略して「DER」とも呼ばれる。

※3:DERフレキシビリティとは発電電力や負荷の消費電力の大きさを柔軟に変化させることが可能な能力。本事業で、DERフレキシビリティシステムは、下図に示す三つのシステム/プラットフォームにより構成されるものと定義して開発を進めている。図中の「DSO」は「Distribution System Operator」の略で、一般送配電事業者である配電系統運用者を指す。

「電力系統の混雑緩和のための分散型エネルギーリソース制御技術開発 (FLEX DERプロジェクト)」の概要

1.背景

「第6次エネルギー基本計画」で示された「再生可能エネルギーの主力電源化」に向け、系統の増強と並行しながら既存系統を最大限に活用するために必要な技術開発が求められており、その一つとして分散型エネルギーリソース(以下、「DER」)の出力を制御し、電力系統の混雑緩和を行う技術があります。

本事業※1では、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の発電電力に起因して混雑が生じる配電用変電所の変圧器を対象に、その供給エリアにおいて、アグリゲーター※2などと一般送配電事業者をつなぎ、DERの電力需要パターン制御(需要シフトなど)をすることで混雑緩和を実現するDERフレキシビリティシステムの構築に向けた技術開発を行っています。

2.フィールド実証の概要

(1) 概要

本事業では、DERフレキシビリティを活用した系統混雑緩和の実現性をフィールド実証により確認するため、検討事項を「一般送配電事業者における課題検討」(WG1)、「DERフレキシビリティ活用プラットフォームにおける課題検討」(WG2)、「アグリゲーターにおける課題検討」(WG3)、「フィールド実証」(WG4)の四つの項目に分類しております。

今回の栃木県那須塩原市におけるフィールド実証に向けては、一般送配電事業者がDERフレキシビリティを調達する際の募集要件やデータ連係手順案などを反映した業務フロー案を基に、各項目(WG)間で連携しながら検証項目の抽出やユースケースの設定、シナリオ案の作成について取り組むとともに、DERの導入(系統用蓄電池システムの設置など)や各種測定器の設置などフィールド実証の環境構築を並行して進めてきました。

このたび、フィールド実証の準備が整ったため、本年5月1日より、フィールド実証を開始しました。大量に連系された太陽光発電の発電電力により、配電用変電所の変圧器で混雑が発生することを想定し、複数のユースケースに沿って、実証用のDERフレキシビリティシステムの検証を行います。

フィールド実証のイメージ

(2) 実証期間

2024年度中に複数時期にて実証を行う予定であり、第1回目は2024年5月14日までの予定で5月1日に開始しています。

(3) 実証場所

太陽光発電を主とする再エネの導入拡大により、将来、混雑の発生が懸念される栃木県那須塩原市にある配電用変電所を抽出し、選定されたエリアにてフィールド実証を行います。

3.今後の予定

NEDOと本コンソーシアム※3は、本フィールド実証での検証結果を基に、DERフレキシビリティシステムの要求仕様をまとめ、標準的な業務フローや通信仕様を確立します。

これによりDERを最大限活用できる仕組みを実現し、国内における再エネのさらなる普及拡大に貢献します。

【注釈】

※1 事業名: 電力系統の混雑緩和のための分散型エネルギーリソース制御技術開発(FLEX DERプロジェクト)

事業期間: 2022年度~2024年度
事業概要: [https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100237.html]

※2 DERなどを統合制御し、エネルギーサービスを提供する事業者。

※3 東京電力パワーグリッド株式会社、学校法人早稲田大学、株式会社三菱総合研究所、関西電力送配電株式会社、京セラ  株式会社、国立大学法人東京大学、中部電力パワーグリッド株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、三菱重工業株式会社の10者を指します。図2の四つの項目(WG)に分類し、各WG間で連携して検討を実施しています。

本コンソーシアムにおける各者の役割

参考

系統用蓄電池システムの概要

フィールド実証用に設置した系統用蓄電池システムを東京電力パワーグリッド:箒根蓄電所として運用開始しております。

<設備情報>

設置場所:栃木県那須塩原市関谷地区
設備面積:528㎡
設備容量:リチウムイオン電池
・出力:1,999kW
・公称電力容量:6,310kWh

<設備外観>

<PCS盤>

<蓄電池コンテナ>

「透明度」「電気伝導度」「柔軟性」に優れる多点マイクロ電極搭載 コンタクトレンズを開発

著者: contributor
2024年5月8日 15:22

「透明度」「電気伝導度」「柔軟性」に優れる多点マイクロ電極搭載コンタクトレンズを開発

網膜の局所的応答測定に成功し緑内障や網膜色素変性症に伴う盲点評価へ期待 今後事業化に向けた臨床試験へ

発表のポイント

  • 市販のコンタクトレンズに搭載可能な、小さく透明で柔らかい複合マイクロメッシュ電極を実現
  • 本研究グループがこれまでに開発した導電性高分子を用いた電極技術により実際に市販のコンタクトレンズへの貼付、および局所的に絶縁することに成功
  • これにより、網膜の局所的な応答を計測する複数点同時網膜電位計測が可能
  • 本成果は、緑内障や網膜色素変性症に伴う盲点評価につながります

早稲田大学大学院情報生産システム研究科の三宅丈雄(みやけたけお)教授、・アザハリ・サマン助教の研究グループと山口大学大学院医学系研究科眼科学講座の木村和博(きむらかずひろ)教授・芦森温茂(あしもりあつしげ)助教らの研究グループは、市販のコンタクトレンズに搭載可能な、小さく透明で柔らかい多点マイクロ電極を開発し、これまで技術的な課題のあった網膜の局所的な応答を測定することが可能となることを確かめました。これは、半導体微細加工技術によって、実用にも耐えうる82%以上の光透過性を持ち、かつ、微小な電位を計測可能な複合マイクロメッシュ電極(導電性高分子と金の複合化)です。さらに、市販のコンタクトレンズに本マイクロ電極を貼り付け、網膜電図(ERG)計測に用いる以外のリード線を絶縁化することにも成功しました。開発した電極は、角膜上皮細胞を用いて95%以上の生存率を実現できること、また、家兎試験によって市販のERG電極と同等の性能を有することを確認しました。さらに、アレイ化された7マイクロ電極でERGを多点計測できることを確かめました。これら成果は、緑内障や網膜色素変性症に伴う盲点評価などにつながります。

以上は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、キヤノン財団の助成による成果であり、2024年5月7日にWileyの科学誌「Advanced Materials Technologies」にオンライン版で公開されました。

図1. 透明で柔らかいマイクロ電極による多電極網膜電位計測システム

(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

網膜電図(ERG,Electroretinogram)※1は、光刺激に応答する網膜(視神経細胞が刺激される)から発生する電位を角膜上のセンサ電極で測定します。一般的には、網膜変性疾患の検査で利用されることが多く、基礎研究から臨床的な応用まで幅広く利用されています。

ERG測定には、電気化学計測(ポテンショスタットなど)と同様、検出電極(間電極)、参照電極(不間電極)、接地電極からなる3電極システムが必要です。検出電極は角膜または結膜に、参照電極は測定器のグランドに相当し、接地電極は耳たぶなどに接触させます(図2参照)。歴史的には、角膜上で計測するタイプと結膜周辺(リングやフックタイプのワイヤー電極)で検出する2種類のタイプが存在しますが、現在では角膜上で測るタイプが主流となっており、実用性や安全性の観点でレンズ形状に加工された硬質なプラスチック上に金属が配線された製品が市販されています。これら一般的な1電極によるERG計測は、学術的には全視野網膜電図(FF-ERG, full field electroretinogram)と言い、網膜の局所的な応答を取得することができないなどの課題を有していました。局所的な応答(=空間的な差異を調べる)を測定する方法として、多局所網膜電図(MF-ERG, multifocal electroretinogram)や多電極網膜電図(ME-ERG, multi-electrode electroretinogram)があります。MF-ERGは、光を網膜の特定の位置に照射し、その際のERGを単一電極で計測する手法となるため、高解像度でスキャン可能な光刺激装置が必要となります。一方、ME-ERGは、FF-ERGと同等の光照射システムが利用できますが、電極を多点配置して測定することが必要となるため、電極およびレンズ全体の透明性および加工技術などの高度化に課題を有していました。


図2.本研究で実現された主な成果

(2)今回の研究で実現したこと

このような背景の中、本研究グループは、半導体微細加工技術と電気メッキ技術を組み合わせることで透明度、電気伝導度、柔軟性に優れるメッシュ電極を作製し、ERG計測可能な多電極化、市販のコンタクトレンズ上への接合および局所的絶縁化に成功しました(図2)。また、安全性に関しては、角膜上皮細胞による細胞生死判定および家兎を用いた多電極ERG計測および評価にも成功しました。

(3)そのために新しく開発した手法とその性能

透明で柔らかい金属電極を作製するために、形状(Serpentine, square, zigzag, hexagon:図2左参照)、幅(5, 7, 9μm)およびユニット幅(200, 500, 1000 μm)を変えたマイクロメッシュ電極を作製し、透過性および10%歪を加えた際の抵抗値変化を評価しました(図3)。ここで用いた金属は、電気メッキで作製された金となります。透明性に関しては、すべてのマイクロメッシュ電極において、80%以上の透過性を示しましたが、10%歪においては、Serpentineとhexagonのみ歪に耐えうることを確認しました。ソフトコンタクトレンズを用いた場合、眼圧などの変化によってレンズに~3%程度の歪が生じるため、検出電極の伸縮性が求められます。また、開発したメッシュ電極は市販のコンタクトレンズ上に貼り付け、レンズ表面に作製し、角膜とコンタクトする必要があるため、本研究グループがこれまでに用いてきた導電性高分子を用いた電極技術を用いました(Advanced Materials Technologies, 4, 1800671, 2019.)。従って、金マイクロメッシュ上にPEDOT導電性高分子が被覆された構造となります。複合化されたマイクロメッシュ電極においても、80%以上の透過性を有することは確認済みです。

図3. 複合マイクロメッシュ電極性能評価
(ここでは、電極は1本のみ。上図:電圧印加後のメッシュ電極および配線電極のインピーダンス結果、中図:電圧印加による絶縁化概要図、下図:各電極部位における出力電圧測定)

次に、このマイクロメッシュ電極から計測に繋げるリード電極の絶縁をどうするかという課題が、最終的なターゲットである多点電極によるERG計測で必須となることがわかりました。そこで、本研究グループは、メッシュ電極の導電性高分子のみの導電性を維持する方法として(すなわち、リード線に被覆された導電性高分子を絶縁化する方法)、電極全体の両端に直流電流を印加することで、リード線に流れる電流(図3におけるI1)と金マイクロメッシュ上に新たに流れる電流値(図3におけるI2)を電極構造で制御できることに気づき、COMSOL※2を用いた計算機シミュレーションと実験的に確かめました。シミュレーションの結果より電流密度として約70倍以上の電流値の差があることを確かめ、実験的にリード線上の導電性高分子のみが過酸化されること、また、フーリエ変換赤外線分光法による分子振動解析で導電性高分子の構造変化を確かめました。さらに、通電試験を実施したところ、マイクロメッシュ電極を介してのみ電圧が計測されることを確かめました。

開発した複合化マイクロメッシュ電極の生物学的安全性と動物試験によるERG計測電極としての性能を評価しました(図4)。ヒト由来の角膜上皮細胞(HCEC)を用いて、各マイクロメッシュ電極(Au, Au/PEDOT, Zn)上での細胞生存率を求め、その結果AuとAu/PEDOT電極上では90%以上の高い生存率を保つのに対し、Zn電極上では金属イオンのリークにより生存率が50%以下まで低下することが明らかになりました。従って、電気メッキで作製したAu/PEDOT複合電極は、十分な安全性を有していると言えます。さらに、本複合マイクロメッシュ電極をアレイ化(7電極)した多電極レンズを試作し、家兎の眼に装着させて各電極からERGが計測できることを確認しました。本研究で開発したメッシュ電極から取得した網膜電位信号は、市販のERG電極と同等の性能を有していることを確認しています。

図4. 安全性および多点電極ERG計測評価
(上図:各電極における細胞生存率評価と蛍光顕微鏡評価、下図:家兎を用いたME-ERG計測結果)

(4)今後の展望

今後は、事業化に向け、本計測レンズを用いて臨床試験に取り組みます。また、本プロジェクトにご興味のある企業からのお問い合わせをお待ちします。

(5)用語解説

※1 網膜電図
可視光を照射した際に,網膜から発生する電位の変化を記録します。これによって、網膜が正常に働いているかどうかを診断することができます。

※2 COMSOL
有限要素法を基盤とするシミュレーションソフトウェア。基本的工学分野から様々な応用分野における計算機シミュレーションを実現することができます。

(6)論文情報

雑誌名:Advanced Materials Technologies
論文名:Multi-electrode Electroretinography with Transparent Microelectrodes Printed on a Soft and Wet Contact Lens
執筆者名:Lunjie Hu, Saman Azhari, Qianyu Li, Hanzhe Zhang, Atsushige Ashimori, Kazuhiro Kimura, and Takeo Miyake
掲載日(現地時間):2024年5月7日
URL:https://doi.org/10.1002/admt.202400075
DOI:10.1002/admt.202400075

(7)研究助成

日本医療研究開発機構医療機器等研究成果展開事業(開発実践タイプ),JP23hma322020
キヤノン財団研究助成

「Rank two weak Fano bundles over the del Pezzo threefold of degree five」(2024/5/24)

著者: staff
2024年5月8日 10:11

演題:Rank two weak Fano bundles over the del Pezzo threefold of degree five

日時:2024年5月24日(金)16 :30-18: 10

会場:西早稲田キャンパス 51号館18階12室

講師:原 和平(東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構 特任研究員)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 数学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

関連リンク:https://sites.google.com/view/waseda-ag-seminar

【受験生の皆さまへ】2024年度基幹・創造・先進理工学部一般入試における記述解答問題の出題意図について

著者: staff
2024年4月25日 09:52

2024年度 基幹・創造・先進理工学部一般入試(2月16、17日実施)の「数学」「物理」「化学」「生物」「空間表現」の記述解答問題について、出題の意図を公表いたします。

2024年度理工一般 出題意図(数学)
2024年度理工一般 出題意図(物理)
2024年度理工一般 出題意図(化学)
2024年度理工一般 出題意図(生物)
2024年度理工一般 出題意図(空間表現)

※一般入試問題およびマーク解答問題の解答については、こちらを参照ください。

「石川県立図書館の現場~整備の調整役が考えたこと」(2024/6/14)

著者: staff
2024年5月1日 16:23

演題:石川県立図書館の現場~整備の調整役が考えたこと

日時:2024年6月14日(金) 13:10-14:50

会場:西早稲田キャンパス 56号館 104教室

講師:嘉門 佳顕(石川県能登半島地震復旧・復興推進部生活再建支援課 専門員)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:創造理工学部 建築学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

❌