【PEP卓越大学院プログラム】2026年1月実施9期生(2026年4月進入・編入)選抜試験(SE)情報を更新しました
卓越大学院プログラム
「パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム」
2026年1月実施の9期生(2026年4月進入・編入)選抜試験(SE)に関する情報を更新致しました。
詳細は、理工学術院HP大学院入試ページの中のPEP SE情報ページ(募集要項・出願書類)をご参照ください。
卓越大学院プログラム
「パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム」
2026年1月実施の9期生(2026年4月進入・編入)選抜試験(SE)に関する情報を更新致しました。
詳細は、理工学術院HP大学院入試ページの中のPEP SE情報ページ(募集要項・出願書類)をご参照ください。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の2025年度戦略的創造研究推進事業(「CREST」、「さきがけ」および「ACT-X」)において、本学の研究提案からCREST1件、さきがけ1件、ACT-X2件が採択されたほか、さきがけの特定課題調査として1件が決定しました。
CRESTは採択60件/応募826件(うち私大の採択は2件)、さきがけは採択168件/応募1,734件(うち私大の採択は11件)、ACT-Xは採択110件/応募745件(うち私大の採択は6件)と、年々応募件数が増加している中での採択となりました。
本採択を受け、他の研究者や産業界等ともネットワークを構築しながら、挑戦的な基礎研究を推進し、新たな科学知識に基づく革新的技術シーズの創出を目指します。
決定した本学からの研究提案は以下のとおりです。
| 戦略目標:量子フロンティア開拓のための共創型研究 研究領域:量子・古典の異分野融合による共創型フロンティアの開拓 |
青木 隆朗(理工学術院 教授)
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| 戦略目標:ゆらぎの制御・活用による革新的マテリアルの創出 研究領域:ゆらぎの理解と制御による材料革新 |
廣井 卓思(理工学術院 准教授)
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※次年度への再応募を条件とした短期間での調査・研究活動
| 戦略目標:実環境に柔軟に対応できる知能システムに関する研究開発 研究領域:実世界知能システムの基盤創出 |
三宅 太文(次世代ロボット研究機構 次席研究員) |
| 戦略目標:人間理解とインタラクションの共進化/文理融合による社会変革に向けた人・社会解析基盤の創出/信頼されるAI/数理科学と情報科学の連携・融合による情報活用基盤の創出と社会への展開/Society 5.0を支える革新的コンピューティング技術の創出 研究領域:次世代AIを築く数理・情報科学の革新 |
伊藤 潤成(大学院先進理工学研究科 修士課程1年)
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戦略的創造研究推進事業は、我が国が直面する重要な課題の克服に向けて、挑戦的な基礎研究を推進し、社会・経済の変革をもたらす科学技術イノベーションを生み出す、新たな科学知識に基づく創造的な革新的技術のシーズ(新技術シーズ)を創出することを目的としています。そのために、大学・企業・公的研究機関等の研究者からなるネットワーク型研究所(組織の枠を超えた時限的な研究体制)を構築し、その所長であるプログラムオフィサー(研究総括等)による運営の下、研究者が他の研究者や研究成果の受け手となる産業界や広く社会の関与者とのネットワークを構築しながら、研究を推進します。(出典:JSTホームページ)
演題:“Toward Volumetric Urbanism: AI-Driven Analysis of Volumetric Urban Space Use”
日時:2025年10月29日(水) 15:00-17:00
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 55号館1階 第一会議室
講師:Hoon Han (Director of UNSW Cities Institute & Professor of City Planning, Faculty of Arts, Design and Architecture, The University of New South Wales.)
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料 直接会場へお越しください
主催:創造理工学部 建築学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
リンク先URL:https://www.goto.arch.waseda.ac.jp/hoon-lecture2025.html
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「戦略的創造研究推進事業 情報通信科学・イノベーション基盤創出(CRONOS)」の公募において、2025年度の新規研究開発課題として、本学からの提案が採択されました。
応募件数138件のうち採択課題は11件で、私立大学からは唯一の採択となりました。
甲藤 二郎(理工学術院・教授)
【研究開発課題名】学習型符号化と生成AIの統合による生成型通信
情報通信分野の重要性が世界的にもますます増していることを踏まえ、Society5.0以降を見据えた未来社会における大きな社会変革を実現可能とする革新的な情報通信技術の創出と、革新的な構想力を有した研究人材育成に取り組み、日本の情報通信技術の強化を目指すプログラムです(プレスリリース文より)
早稲田大学スマート社会技術融合研究機構 研究助手の秋元 瑞穂(あきもと みづほ)、同大学理工学術院教授の田辺 新一(たなべ しんいち)およびデンマーク工科大学教授のPawel Wargockiらの国際研究チームは、寝室内換気と睡眠の質の関係について、同グループの研究成果に加え、国内外で発表された関連研究を含めて整理・分析しました。
その結果、寝室の換気状況を示す代表的な指標である二酸化炭素濃度※1が1,000ppm※2に達すると睡眠効率※3や深睡眠※4割合が低下すること、さらに安全側に余裕を持たせて睡眠の質が低下する可能性を十分に低く抑えるには800ppm以下を目標とすべきであることが明らかとなりました。また、この水準を満たすためには、現行の住宅換気基準の少なくとも2倍の換気量が必要であることを示しました。
本研究成果は、Taylor & Francis社発行の国際学術誌『Science and Technology for the Built Environment』(論文名:New research on bedroom ventilation and sleep quality suggests that building standards should be revisited (ASHRAE 1837-RP))に掲載され、2025年7月21日(月)にオンライン版が公開されました。
キーワード:
睡眠の質、換気量、二酸化炭素(CO₂)濃度、寝室環境、睡眠効率、深睡眠、室内空気質(IAQ)、住宅換気基準
これまでの研究でも、寝室の不十分な換気が睡眠の質に及ぼす影響には関心が寄せられてきました。特に、室内のCO₂濃度が高まると、覚醒時に眠気や集中力の低下が生じることは広く知られているものの、寝室内の換気不足や、その結果として生じるCO₂濃度の上昇が睡眠に与える影響については、これまで統一的な結論を導くことが困難でした。これは、実際に報告されてきた研究が、対象とする人数や年齢、測定した睡眠指標(睡眠効率、深睡眠割合、入眠潜時※5など)、さらに換気の方法(窓開け、機械換気など)においてそれぞれ異なっていたためであり、結果を直接比較することが難しい状況にあったからです。
本研究グループは、同グループの研究成果を含め、2020年1月から2024年8月までに発表された、寝室の換気状況と睡眠の質を同時に測定した合計17本の研究を整理・分析しました。対象には、実際の住環境で寝室の状況を調べた研究に加え、換気条件を意図的に操作して睡眠への影響を検討した研究も含まれており、寝室内のCO₂濃度や換気条件と、睡眠効率、深睡眠割合、入眠潜時といった睡眠指標との関係を比較しました。これらの研究はまだ数は多くないものの、近年着実に増加しており、国際的にも注目が高まっています(図1)。
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図1:睡眠中の換気と睡眠の質を同時に測定した論文数と被引用数の推移
2024年8月時点での状況を示しており、論文数が年々増加していることがわかる。
分析の結果、寝室内のCO₂濃度が高くなると睡眠の質に影響が及ぶことが確認されました。図2は、レビュー対象とした研究を縦軸に並べ、それぞれの研究の種類(実際の住環境での調査か、換気条件を操作した実験的研究か)や対象者の年齢属性とともに整理し、横軸に報告されたCO₂濃度を示したものです。整理・分析した17本の研究のうち、一部は複数の条件で実験を行っており、図2には合計22件の実験データが反映されています。そのため研究番号が同じでも、条件の異なる結果が複数プロットされている場合があります。
例えば研究番号3では、実験室内のCO₂濃度がおよそ800 ppm、1,900 ppm、3,000 ppmの条件で比較されています。その結果、800 ppmに比べて1,900 ppmや3,000 ppmでは睡眠の質に統計的に有意な低下(p<0.05)が確認されました。このように、黒く塗りつぶされたプロットは有意な低下が認められた条件を、白抜きのプロットは比較対象や有意差が認められなかった条件を示しています。
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図2:寝室内CO₂濃度と睡眠の質に関する各研究の結果
縦軸にはレビュー対象とした研究番号が並び、それぞれの研究の種類(横断研究=実際の住宅で実態調査を行った研究、介入研究=実験室・実際の住宅で換気条件を変えた研究)と対象者の年齢属性が整理されている。なお、同じ研究番号が複数示されているのは、1つの研究で条件の異なる実験結果を含むためである。
横軸には寝室内CO₂濃度を示し、黒いプロットは平均値、赤いプロットは95パーセンタイル値。塗りつぶされたプロットや灰色の帯は統計的に有意な差(p<0.05)が確認された水準を示し、白抜きは有意差が確認されなかったことを示す。CO₂濃度は絶対値で表す。なお、研究番号12は人工気候室にて実験的にCO₂を追加して濃度を上昇させた研究であり、他の研究と必ずしも直接比較できない。
図2から、脳波計や腕時計型睡眠計によって測定された睡眠の質に有意な低下(p<0.05)が報告された最も低い絶対CO₂濃度は約1,000 ppmであることが読み取れます。一方で、統計的に有意差が確認された条件(塗りつぶし)と比較された参照条件(白抜き)の中で最も高い濃度は850 ppmでした。(それぞれ図中に青丸で示す。)ただし、850ppmという値はあくまで参照条件にすぎず、NOAEL(無影響量)と位置づけることはできません。本研究グループは、センサーの測定精度(±50 ppm程度)を考慮し、安全側に余裕を持たせて800 ppm以下を暫定的な目標水準とすることが合理的だと提案しました。
さらに、図3は外気のCO₂濃度を420 ppmと仮定し、睡眠中の人からのCO₂産生量に応じて、寝室内のCO₂濃度を800 ppmや1,000 ppmといった目標値以下に保つために必要な外気供給量を推計したものです。この図から、成人が睡眠中の寝室でCO₂濃度を800 ppm以下に維持するには一人当たり約8 L/s(リットル/秒)の外気供給が必要であることが読み取れます。この換気量は、現在推奨されている住宅の換気量より明らかに多く、また住宅で広く採用されている0.5回/h換気※6よりも高い値に相当します。例えば、床面積10m2・天井高2.5mの寝室(容積25m3)で考えると、一人で滞在する場合はおよそ1時間に1回、二人で滞在する場合はおよそ30分に1回、部屋全体の空気が入れ替わる換気量に相当します。現状、この水準に対応する規格は限られており、欧州規格EN 16798-1の最も厳しいカテゴリーI(屋外濃度+380 ppm以内)が該当します。また、一部の病院規格(例:米国暖房冷凍空調学会ASHRAE Standard 170、日本の病院設備設計ガイドラインHEAS-02)でも同様のレベルが規定されています。
なお、必要換気量は「屋外濃度との差」と「室内のCO₂産生量」によって決まります。就寝時はCO₂産生量が覚醒時より小さいため、寝室で800 ppmを目標とする場合でも、一般オフィスで1,000 ppmを目標とする場合と同程度(約8–10 L/s・人)の換気量が必要になる目安です。
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図3:寝室内CO₂濃度を抑えるために必要な外気供給量の推計
外気CO₂濃度を420 ppmと仮定し、睡眠中の人のCO₂産生量(9、10、11、15 L/(h・人))と、目標とする寝室内CO₂濃度(800 ppmや1,000 ppmなど)に応じて必要な外気供給量を推計したもの。睡眠中のCO₂産生量は、9 L/(h・人)が高齢者、10 L/(h・人)が子ども、11 L/(h・人)が成人、15 L/(h・人)が夜間に目覚めやすい人や代謝量の高い人を想定している。成人の睡眠中の寝室を想定した場合、CO₂濃度を800 ppm以下に維持するには、一人当たり約8 L/sの換気量が必要である。
これまで住宅の換気は、主にシックハウス対策や結露防止、感染症対策を目的として議論されてきましたが、本研究は睡眠という生活行動と換気環境を結び付け、寝室で目安となるCO₂濃度を提示した点に特徴があります。睡眠の質が日々の生活に影響することを踏まえると、こうした知見は住宅設計や換気のあり方を検討するうえで有用な基礎情報となります。
本研究は既存研究を整理・分析したレビューであり、対象となった研究数がまだ多くないこと、また研究ごとに条件や評価方法に違いがあることが課題として挙げられます。また、CO₂濃度は寝室の換気状況を示す指標として広く用いられていますが、CO₂のみを操作した研究は限られており、特に1,000ppm未満の低濃度での比較データが不足しています。そのため、今後さらなる研究の積み重ねが必要です。
本研究で得られた知見をもとに、比較可能なデータが増えていくことが重要であり、私たち自身も実際の寝室での実験や調査を継続することで、より確かな知見を蓄積していきたいと考えています。
※1 CO₂(=二酸化炭素)濃度
室内の空気に含まれる二酸化炭素の割合を示す指標。単位は ppm(parts per million、百万分の一)。人が呼吸でCO₂を排出するため、室内の換気状況を示す目安として広く使われている。
※2 ppm
気体の濃度を表す単位で、「100万分の1」を意味する。例えば、800 ppm は空気100万分のうち二酸化炭素が800含まれる状態を表す。
※3 睡眠効率
布団やベッドに入っていた時間のうち、実際に眠っていた時間の割合。一般的に85%以上で良好とされる。
※4 深睡眠
睡眠段階のひとつで、脳波では徐波(ゆっくりした波)が多く出現する状態。身体の回復や記憶の整理に重要とされる。
※5 入眠潜時
布団やベッドに入ってから実際に眠りに入るまでの時間を指す。短いほど寝つきが良いとされ、長い場合は寝つきにくさや睡眠の質の低下を示すことがある。
※6 換気回数(回/h)
室内の空気が1時間あたりに何回入れ替わるかを示す指標。例えば0.5回/hは「2時間で部屋全体の空気が1回入れ替わる」ことを意味する。
雑誌名:Science and Technology for the Built Environment
論文名:New research on bedroom ventilation and sleep quality suggests that building standards should be revisited (ASHRAE 1837-RP)
執筆者名(所属機関名):秋元 瑞穂*(早稲田大学)、Xiaojun Fan(カリフォルニア大学バークレー校シンガポール研究拠点)、Li Lan(上海交通大学)、Chandra Sekhar(シンガポール国立大学)、田辺 新一(早稲田大学)、David P. Wyon(デンマーク工科大学)、Pawel Wargocki(デンマーク工科大学)
論文掲載日:2025年7月21日
掲載URL:https://doi.org/10.1080/23744731.2025.2531317
DOI:10.1080/23744731.2025.2531317
研究費名:科研費 特別研究員奨励費22KJ2956
研究課題名:室内環境が良質な睡眠に与える影響に関する研究
研究代表者名(所属機関名):秋元瑞穂(早稲田大学)
研究費名:ASHRAE 1837-RP
研究課題名:The Effects of Ventilation in Sleeping Environments
研究代表者名(所属機関名):Pawel Wargocki(デンマーク工科大学)
なお、本研究は Danish the 20th December Foundation および鹿島学術振興財団(The Kajima Foundation)からの支援も受けています。
演題:Electrochemical Cascade Synthesis of Polycyclic Heteroaromatics: A Sustainable Gateway to Functional Optoelectronic and Photocatalytic Materials
日時:2025年11月5日(水) 16:30-18:10
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55N号館 1階 第2会議室
講師:Mohamed S. H. Salem (大阪大学・産業科学研究所助教)
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料 直接会場へお越しください
主催:先進理工学部 化学・生命化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
演題:「専門の壁を越えて“主人公”になる」社会人として生きるためのヒント
日時:2025年10月10日(金) 17:00-18:40
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス63号館 2階 04, 05会議室
講師:佐藤 雅彦 (株式会社日立製作所研究開発グループチーフストラテジスト)
対象:学部生、大学院生、教職員、一般
参加方法:入場無料 直接会場へお越しください
主催:先進理工学部 化学・生命化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
リンク先URL: https://www.foresight.ext.hitachi.co.jp/_ct/17743416
量子計算機を現実世界の組合せ最適化問題に活用するためには、組合せ最適化問題※1がもつ制約を効率的に取り扱うことが重要となります。これを受け、早稲田大学高等研究所准教授の白井達彦(しらい たつひこ)、同大学理工学術院教授の戸川望(とがわ のぞむ)らの研究グループは、組合せ最適化問題がもつ制約を量子計算機で圧縮して表現する技術(図1)を構築し、組合せ最適化の探索効率を向上するための新しい手法を開発しました。さらに本研究グループは、この手法をゲート型量子計算機※2に適用し、実量子計算機を模したシミュレータで精度の改善を確認しました。
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図1 組合せ最適化問題のもつ制約を量子計算機で圧縮して表現するための手法の概要。
図1の補足:図中央上は量子回路を表し、量子ゲート※3(左から制御NOTゲートとXゲート)を作用させることで、表(図中央下)で示した変換を実行する。
現実世界のあらゆるところに存在する組合せ最適化問題は大規模になるほど、従来型のコンピュータで最適解を得ることが困難になるため、様々な解法が研究されています。中でも近年、ゲート型量子計算機といった量子力学の原理にしたがって動作する新しいタイプの計算機が注目されています。量子計算機は国内外で研究開発され、一般のユーザーもクラウド上で使用できる段階になっています。
しかし、量子計算機を活用するにはまだ課題が多くあります。とくに制約をもつ組合せ最適化問題を解くことは社会的に重要である一方で、現在の量子計算機では十分な精度を達成することは難しいという課題があります。これまで、この困難を克服するためさまざまな手法が開発されてきました。しかし、これらの手法は、特定のタイプの制約に適用範囲が制限されており、社会課題に現れる複雑な制約をもつ組合せ最適化問題を解くことは依然として困難です。
今回の研究では、現実世界の組合せ最適化問題に現れる制約に対して汎用的に適用可能な手法を実現しようと試みました。そこで、探索の効率化を実現するため、制約を満たす解の集合を圧縮して表現することを考えました。たとえば、図1では、1個の果物をAlice(以下A)とBob(以下B)のどちらかに与えるという問題を考えます。それぞれAとBに1個ずつの量子ビットを対応させ、量子ビットが1のとき果物を与える、量子ビットが0のとき果物を与えないとします。すると2個の量子ビットが必要となります。このとき、果物の個数は1個ですので、2個の量子ビットのうち、一方は0、もう一方は1とする必要があります。これが制約です。ところが量子計算機は一般に制約を満たさない解を出力します。たとえば、2個の量子ビットの両方が0あるいは両方が1となるような解です。このような制約を満たさない解があるとエネルギー地形が複雑化(凸凹)するため、量子アルゴリズムの精度を悪化させる要因となります。そこで、制約を満たす解の個数が2個であることに着目し、1個の量子ビットでこれらを表現することを考えます。具体的には、図1の表で与えられる変換を考えます。このとき、x_A^’を0に固定した解空間を考えると、x_B^’=0とx_B^’=1がそれぞれ制約を満たす解に対応しています。このように、もともと2個の量子ビットで表現されていた制約を満たす解空間を1個の量子ビットで圧縮して表現できることがわかります。こうしたもともとの問題で必要とする量子ビットの個数より、少ない個数の量子ビットで表現された空間を圧縮空間と呼びます。圧縮空間では探索する必要のある解の個数が減るため、精度高く最適解を探索できることが期待されます。
今回の研究では、ゲート型量子計算機を用いて圧縮空間を構築する方法を明らかにしました。圧縮空間を与える変換は、ゲート型量子計算機で操作する量子ゲートを組み合わせて表すことができます。そこで、組合せ最適化問題の制約に応じて、圧縮空間を構成する量子ゲートの組合せを探索するための量子アルゴリズムを開発しました。この方法は、原理的にはあらゆるタイプの制約に適用でき、現実世界に現れる多くの組合せ最適化問題に対して有効です。さらに典型的な制約をもつ組合せ最適化問題に対して、具体的に本手法が適用可能であることを示しました。実際に、量子計算機で解くことが困難とされる3つのタイプの組合せ最適化問題に対して、本手法を組み込んだ場合(提案手法)と組み込まなかった場合(従来手法)とを比較した結果、提案手法で得られた答えの精度が高いことがわかりました(図2)。
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図2.手法の比較
図2の補足:縦軸横軸の値は各組合せ最適化問題の最適解が得られる確率を表しています(1が最も精度が高い)。縦軸に提案手法、横軸に従来手法を示しました。四角(赤色)のデータは最大kカット問題※4(k=3,4)、丸(緑色)のデータは二次ナップサック問題※5、三角(青色)のデータは二次割当問題※6を表し、それぞれシミュレータを用いて実験を行った結果をプロットしています。データが対角線の上側にあることは、提案手法において従来手法より性能が改善していることを示しています。
本手法を使うことによって、より精度高くさまざまな制約をもつ組合せ最適化問題を解くことができます。本手法は量子計算機に簡単に導入することができることから、現在のまた近未来的に実現する量子計算機の性能を最大限引き出すための量子ソフトウェア開発の要素技術として利用されることが期待されます。たとえば、今回の手法により交通流の最適化が実現すると、渋滞の解消や二酸化炭素排出量の削減など社会的問題へ大きく貢献する可能性があります。
本手法では、組合せ最適化問題のもつ制約を量子計算機で圧縮して表現する手法を開発しました。今後、量子計算機の性能が向上するとともに、一層広範囲の組合せ最適化問題に適用可能となることが期待されます。また、圧縮空間を構築する方法は、組合せ最適化問題にとどまらず、化学計算や機械学習などへの応用が考えられます。実世界に見られるさまざまな具体的な問題に対して、本手法の有効性を検証していきます。
本研究ではゲート型量子計算機を精度高く利用するための手法を開発しました。本研究で開発した手法を使うことで、量子計算機の性能が最大限発揮され、今後新たに量子計算機を活用できる事例が増えることを期待します。
組合せ最適化、制約、量子アルゴリズム、圧縮、量子ソフトウェア
※1 組合せ最適化問題
膨大な選択肢の中から、与えられた制約を満たしつつ、関数の最小値(または最大値)をとる選択肢を求める問題の総称。
※2 ゲート型量子計算機
現在の計算機を構成するビットを量子ビットで置き換えた計算機であり、量子ゲートと呼ばれる演算を量子ビットに作用させることで動作する。
※3 量子ゲート
ゲート型量子計算機における演算素子。図1で示した、制御NOTゲートとXゲートは、古典計算における排他的論理和やNOTに対応する。
※4 最大kカット問題
与えられたグラフの頂点集合を、異なる部分集合間を繋ぐ辺の数を最大にするようにk個の部分集合に分割する組合せ最適化問題。
※5 二次ナップサック問題
ナップサックの容量と品物の価値が与えられたとき、容量を超えない範囲でナップサックに入れる品物の総価値を最大化する組合せ最適化問題。
※6 二次割当問題
工場と地点が同じ個数与えられたとき、各工場を各地点に割り当てたときの地点間の輸送コストの合計を最小化する組合せ最適化問題。
雑誌名:IEEE Transactions on Quantum Engineering
論文名:Compressed space quantum approximate optimization algorithm for constrained combinatorial optimization
執筆者名(所属機関名):Tatsuhiko Shirai*(早稲田大学)、 Nozomu Togawa(早稲田大学)
掲載日時:2025年8月25日
掲載URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/11139119
DOI:https://doi.org/10.1109/TQE.2025.3602404
研究委託元:NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
研究課題名:JPNP16007「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発/量子計算及びイジング計算システムの総合型研究開発」
代表機関:国立研究開発法人産業技術総合研究所
本学の研究代表者名:戸川望(早稲田大学)
研究費名:科研費・若手研究
研究課題名:23K13034「非平衡量子開放系における物性制御法の開発」
研究代表者名:白井達彦(早稲田大学)
身体活動や労働中の電解質バランスの乱れは、脱水、けいれん、疲労を引き起こす可能性があります。従来の発汗センサーは水分を保持できないため、皮膚に直接接触させる必要がありますが、これが長時間または動的な使用時には皮膚刺激を引き起こし、測定精度を低下させる要因となります。早稲田大学理工学術院の梅津 信二郎(うめず しんじろう)教授の研究グループは、バラの花びらが少量の水分を保持しつつ、余分な水をはじくという自然の特性に着目しました(バラの花びら効果※4)。研究チームはこの微細構造をイオン選択膜※5に再現することで、水分を保持しつつ皮膚に優しい非接触型発汗センサーを開発しました。この生体模倣センサーは、医療、スポーツ、産業分野におけるリアルタイムの水分状態モニタリングにおいて期待されています。
この研究成果は、「Cyborg and Bionic Systems」に2025年8月5日にオンライン公開されました。
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図1:イオン選択膜(ISM)電気化学センサーと参照電極は、カーボンナノチューブフォレスト(CNTF)スポンジ上に構築されています。水滴接触角の測定により、水との相互作用の違いが観察できます。CNTFは超疎水性を示し、Ag/AgCl対電極は中程度の接着性を示し、ISMは低い接着性を示しています。本研究では、ISMに微細構造を導入することで接着性の向上を目指しています。
キーワード:
生物模倣、マイクロテクスチャ、汗センサー、イオン選択膜、非接触センシング、ウェアラブル
汗中のナトリウム濃度は脱水や筋機能低下の指標として注目されてきました。しかし、汗センサーに使用される従来のイオン選択膜は疎水性ゆえ汗を十分保持できず、皮膚に強く貼り付ける必要がありました。そのため、粘着剤にて皮膚に貼る必要がありましたが、粘着剤による長時間の装着は、皮膚炎や衛生面の問題を引き起こすことが報告されていました。
本研究では、バラ(Rosa rubiginosa)の花びら表面にあるシワ・突起構造をPDMS(ポリジメチルシロキサン)モールド経由で塩化ポリビニル(PVC)系イオン選択膜(ISM)に忠実に転写しました。得られたバイオ模倣ISMの主な特徴は以下の通りです。
〇接触角の大幅低減と汗付着性の強化
未処理ISMの接触角は90°でしたが、花びら型シワを導入した生体模倣膜(バイオミメティック・メンブレン)では76.8°まで低減し、上向き・下向きいずれの配置でも汗滴を確実に保持できることを確認できました。境界付近の付着力が増した結果、重力方向に依存しない安定した液膜形成が可能です。
〇水保持量の向上と自己洗浄機構
静置試験では、バイオ模倣ISM(Sensor A/B)の最大水保持量は未処理膜の約3倍に増加しました。さらに動的試験で15 mgの荷重を与えても4サイクル以上水滴を保持し続け、閾値を超えると一括排出してチャネルをリセットする「自己洗浄」挙動を示しました。
〇表面積16〜22 %増によるNa⁺感度1.1〜1.2倍向上
SEM画像解析から、シワ/突起導入によって膜の実効表面積が理論値でSensor Aは16 %、Sensor Bは22 %拡大しました。Sensor Aは花びらの外側の表面を模倣しており、水との接着性が高く、Sensor Bは花びらの内側の表面を模倣しており、優れた自浄作用を持っています。この粗密な3D構造により、NaCl 溶液を用いたOCP測定の感度が約1.1〜1.2倍向上し、Nikolskii–Eisenman式理論値の76〜82 %に迫る性能を達成しています。
〇2 mm非接触ギャップでも1 s以下の応答で安定計測
3Dプリント流路に0.5〜2 mmの空隙を設定してNaCl 溶液を循環させたところ、最も広い2 mmでも応答時間はテント秒オーダー(<1 s)で、電位波形のドリフトは自己洗浄機構により最小限に抑えられました。
〇CNTスポンジ電極を用いたウェアラブル実証
ISMとAg/AgCl参照電極をCNTスポンジ上に集積し、手首装着型デバイスとして20分間(8 km/h)のトレッドミル試験を実施しました。気泡混入や汗流量低下時でも信号は閾値内にとどまり、FFT解析でも運動周波数に一致するノイズは検出されず、動作中のドリフトは静的条件と同程度でした。
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図2:非接触型センシングチャネルの図。 接着性が強化されたことにより、センシング電極および参照電極は、表面張力の力で汗を引き寄せることが可能になりました。これにより、使用時の快適性や汗の再循環を高めるために、調整可能なギャップを設けることができます。
これらの結果は、長時間装着時の皮膚負担軽減と高精度計測を両立する新たなウェアラブルセンサー技術として大きな意義を持ちます。
熱中症対策やアスリートの水分管理をリアルタイムで行えるため、医療・スポーツ分野での事故防止に寄与します。また、粘着剤不要のため高齢者や皮膚疾患患者でも長期使用が可能であり、在宅モニタリング市場の拡大が見込まれるとともに、義手・外骨格などのヒューマンマシンインタフェースに電解質フィードバックを組み込むことで、安全性と快適性が向上します。
現行のPVC膜は微細転写限界が5 µm程度であり、サブマイクロ構造の完全再現が課題です。また、CNTスポンジ電極の機械的耐久性向上と量産プロセスの確立が必要です。今後はAIによる発汗データ解析と組み合わせ、個人最適化された脱水予測アルゴリズムを開発します。
本研究は自然に存在するデザインが、技術を進化させ、私たちの生活の質を向上させるために賢く応用できることを示しています。自然の微細構造を模倣することで、現実環境下におけるセンサーの性能を向上させました。私たちの目標はよりスマートで効果的な医療のために、誰もが使える生体統合型ツールを開発することです。
※1 マイクロテクスチャ:
数µmオーダーの微細凹凸構造の総称。
※2 自己洗浄性能:
水滴が界面を一括で滑落し、表面を清浄に保つ性質。
※3 ヒューマンマシンインタフェース:
人と機械をつなぐ情報入出力系の総称。
※4 バラの花びら効果:
水滴が付着したまま落ちにくい一方、量が増えると滑り落ちる二面性を持つ現象。
※5 イオン選択膜(ISM):
特定イオンのみを選択的に透過させ、電位変化を生じる薄膜材料。
雑誌名:Cyborg and Bionic Systems
論文名:Bio-Inspired Microtexturing for Enhanced Sweat Adhesion in Ion-Selective Membranes
執筆者名(所属機関名):Marc Josep Montagut Marques1*,Takayuki Masuji2, Mohamed Adel3, Ahmed M. R. Fath El-Bab4, Kayo Hirose5*, Kanji Uchida4, Sugime Hisashi6, Shinjiro Umezu12*
1Department of Integrative Bioescience and Biomedical Engineering, Waseda University, Tokyo, Japan
2Department of Modern Mechanical Engineering, Waseda University, Tokyo, Japan
3Mechanical Engineering Department, Helwan University, Cairo, Egypt
4Department of Mechatronics and Robotics Engineering, Egypt-Japan University of Science and Technology (E-JUST), Alexandria, Egypt
5Department of Anesthesiology and Pain Relief Center, The University of Tokyo Hospital, Tokyo, Japan
6Department of Applied Chemistry, Kindai University, Osaka, Japan
掲載日時(現地時間):2025年8月5日(火)
掲載URL:https://spj.science.org/doi/10.34133/cbsystems.0337
DOI:10.34133/cbsystems.0337
研究費名:挑戦的研究(萌芽)
課題名:リアルタイム汗測定を行うための生物模倣したマイクロ流路の開発(24K21600)
代表者名(所属機関名):梅津 信二郎(早稲田大学理工学術院)
研究費名:基盤研究(B)
課題名:汗生理学構築のためのリアルタイムモニタリングシステム(23K26069)
代表者名(所属機関名):廣瀬 佳代(東京大学医学部附属病院)
研究費名:基盤研究(B)
課題名:成熟化した人工心筋細胞組織を対象としたスマート薬効評価システム(23K26077)
代表者名(所属機関名):梅津 信二郎(早稲田大学理工学術院)
演題:研究室での学び×会社での挑戦─モノづくりの魅力と意義
日時:2025年11月15日(土) 14:00-15:30
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス63号館2階01会議室
講師:岩本 充広 (第一三共株式会社バイオプロセス技術第一研究所 研究第六グループ長)
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料 直接会場へお越しください
主催:先進理工学部 化学・生命化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
演題:分子を操るユーティリティプレイヤー有機合成化学者
日時:2025年11月15日(土) 12:30-14:00
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス63号館2階01会議室
講師:藤井 友博 (味の素株式会社バイオ・ファイン研究所 主任研究員)
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料 直接会場へお越しください
主催:先進理工学部 化学・生命化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
演題:International Symposium on Brain Function and Cognition(ISBFC)
日時:2025年9月8日(月) 9:00-17:50、9月9日(火) 9:00-18:00
会場:早稲田大学リサーチイノベーションセンター B1 コマツ100周年記念ホール
*どなたでも無料で聴講いただけます
URL:https://conf.hit.ac.il/isbfc/
お問い合わせ:[email protected]
演題:「半導体プロセスの研究動向と新規なレジスト除去技術の開発」
日時:2025年9月8日(月) 16:00-17:40
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55S-510室
講師:堀邊 英夫 (大阪公立大学・物質化学生命系専攻・教授)
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料 直接会場へお越しください
主催:先進理工学部 応用化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
ソニーグループ株式会社と早稲田大学は、エンタテインメント産業の中核を担い、けん引する人材の育成、および表現工学に関する新たな学問領域の創生を目的とする「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」を早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科内に設置します。2025年10月の講座開講に先立ち、「表現工学とエンタテインメントの未来」と題した記念シンポジウムを9月2日に開催します。
講座には、ソニーグループから、多様な技術領域で高度な専門性と技術的見識を有し、グループ内の技術戦略策定や人材育成を行う「Corporate Distinguished Engineer」をはじめとする、第一線で活躍する社員が講師として参画します。授業では、映像やオーディオ、コンテンツ制作を中心に、新たなテクノロジーがどのように世の中に展開されたかを、メディア論などの関連研究やソニーグループの事例を通じて解説します。また、今後コンテンツ制作において必要な知識となるAIや倫理、インクルージョンなどの講義も行います。受講生は、授業で学んだ知識を踏まえ、未来のコンテンツの姿やあり方を論理的に提案し、プロトタイピングを通じてそのアイデアのさらなる具体化に取り組みます。
国内エンタテインメント産業は近年、市場規模が拡大傾向にあります。海外でも中長期的な成長が見込まれ、日本の基幹産業としてさらなる発展が期待されています。こうした成長を支えるには、進化するテクノロジーや社会の変化をより深く捉え、クリエイターのアイデアを形にして新たなエンタテインメントを持続的に生み出せる、高度な専門性を備えた人材が不可欠です。
本講座では、科学技術と芸術表現の融合に関する体系的なアプローチを特色とする早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科が有する、映像・音響・AI・認知科学などの多様な研究領域の知見を、クリエイティブエンタテインメントカンパニーであるソニーグループの事業の最前線の取り組みと融合させることで、エンタテインメント産業に求められる人材の育成を図ります。受講生は、トップ人材との協創を通じ、理論と実践を往還しながら、未来のエンタテインメントを構想し実現するための専門性を養います。
両者は、このほかにもエンタテインメント産業の更なる発展につながる新たな学問領域の創成を目指し、さまざまな取り組みを展開していく予定です。
| 講座開設機関 | 早稲田大学 基幹理工学部 表現工学科 |
| 講座名称 | (和)ソニーグループ寄付講座 クリエイティブエンタテインメント学Ⅰ ―概念化― (英)Endowed Lecture by Sony Group, Study of Sciences and Technologies for Creative Entertainment I -Conceptualization |
| 今年度開設期間 | 2025年10月~2025年11月 (※ 2028年まで開講予定) |
| ソニーグループ講師 | 芦ヶ原 隆之(コンピュータビジョン全般)、小俣 貴宣(認知科学、人間中心設計)、山本 一幸(インタラクション技術)、南野 活樹(音声処理、言語処理、AI 技術)、佐藤 真(プラットフォームシステム)ほか |
| 日時 | 2025年9月2日(火) 14時00分~17時30分 |
| 場所 | 早稲田大学 国際会議場 井深大記念ホール |
| 主なプログラム | ・基調講演(ソニーグループ株式会社 執行役員コーポレートエグゼクティブ 松本義典 他)
・パネルディスカッション「テクノロジーと表現の融合による感動体験」 |
| 詳細 | https://www.ces.ias.sci.waseda.ac.jp/ |
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三菱電機ZEB関連技術実証棟「SUSTIE」
三菱電機株式会社(東京都千代⽥区、執行役社⻑:漆間 啓)と株式会社三菱地所設計(東京都千代⽥区、代表取締役社⻑:谷澤 淳一)と学校法人早稲田大学(東京都新宿区、理事長:田中 愛治)は、「三菱電機ZEB関連技術実証棟『SUSTIE(サスティエ)』」(神奈川県鎌倉市/以下「SUSTIE」)が、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)※0が主催する世界最大規模の環境建築の技術賞「ASHRAE Technology Awards Program」の新築オフィス部門(Commercial Buildings(new))において、アジア地域優秀賞「Regional Winner」(2025-2026 ASHRAE Regional Technology Award Regional Winner)を受賞したことをお知らせします。
※ 早稲田大学は理工学術院の田辺 新一 (たなべ しんいち)教授がコンセプト立案協力・検証・評価を担当しました。
「ASHRAE Technology Awards」(1999年より毎年開催)は、などの観点と運用データに基づく評価で革新的な環境建築を表彰する、世界最大規模の権威ある技術賞です。「SUSTIE」は、このたびASHRAEの地域別カンファレンス(ASHRAE Region XIII Chapters Regional Conference)において、新築オフィス部門におけるアジア地域の「Regional Winner」を獲得しました。これにより、日本を含むアジア地域の代表プロジェクトとして、2026年に開催予定世界最優秀選考へ進むことが決定しました。引き続き、「世界一の環境建築」を目指してまいります。
徹底した省エネルギー化およびカーボンニュートラル化に取り組んだ「SUSTIE」は、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の最高評価『ZEB』※1に加え、快適で健康性の高い空間の創出によりCASBEE-スマートウェルネスオフィス※2の最高評価「Sランク」とWELL認証※3の最高評価「プラチナ」を取得した、日本初の建築物です。竣工後の実運用においても、AIやIoT、シミュレーション技術などを用いて、より高効率なエネルギー運用を目指して継続的な改善に取り組んでいます。
カーボンニュートラル社会の実現を目指す上で、ZEBの普及はとなっています。同時に、労働⼈⼝の減少を⾒据え、オフィスワーカーの健康増進や⽣産性の向上を実現する快適な執務空間の創出は、これからのオフィス設計の重要なテーマです。「SUSTIE」はこれら社会課題の同時解決を目指し、省エネ性と健康・快適性を最⾼水準で両⽴した建築です。
「SUSTIE」では、まず、①開口や庇などを用いた《建築的な工夫》(パッシブデザイン)、②《高効率設備機器の導入》(アクティブデザイン)を重ね合わせる段階的な設計により徹底的な省エネ化を実現。その上で、③《オンサイトにおける創エネの最大化》に向け、太陽光パネル(約360kW)の全てを建物上に設置し、敷地制約の高い都市部での中規模ビル『ZEB』実現性を示しました。
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パッシブデザインとアクティブデザインを組み合わせた設計
また、吹抜上部の熱だまりを利用した重力換気や自然換気窓の活用などにより、建物全体で空調負荷の削減を図っています。
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「SUSTIE」の特長である大吹抜空間。北面の大開口にLow-e複層ガラスを採用し、明るさを確保しつつ冷暖房負荷を低減。
一部の執務室では、パッケージエアコンで天井内を冷却・加熱し、アルミ製天井パネルの放射効果を用いて気流感のない仕組みで室内を調温する「天井チャンバー型空気式放射空調システム」を導入。徹底した省エネとオフィスワーカーの快適性の向上を両立する設備計画を、建物内の随所で展開しています。
設計時のBIMデータをもとに構築したデジタルツイン環境で、各設備の動作や温湿度・照度などを事前にシミュレーションし、エネルギー収⽀や快適性への影響などを予測しています。さらに、AIを活用した多目的最適化技術を組み合わせて、最適な運用計画を立案・実行することで、実運用で得たデータを次の検討に活かす「日々進化する建築」を実現しています。また、三菱電機と三菱地所設計が共同実証中の「人位置情報検知サービス※4」の導入により、オフィスワーカーのABW(Activity-Based Working)を支援し、省エネ・快適性の両立に貢献しています。
こうした取り組みににより、年間エネルギー消費量(実績値)でも『ZEB』を達成しています。また、ビルに関わるCO2排出量全体の削減を目標として、運用時の『ZEB』だけではなく、機器容量の縮減、冷媒量の低減、機器更新の容易化等、エンボディドカーボン※5削減にも取り組んでいます。
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1・2年目の一次エネルギー消費量[MJ/㎡・年]
設計値での『ZEB』取得に加え、運用1・2年目の実績値(a, b)でも、年間の創エネルギー量が消費エネルギー量を上回り『ZEB』を達成。
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| 建物名称 | 三菱電機株式会社ZEB関連技術実証棟「SUSTIE」 |
| 所在地 | 神奈川県鎌倉市⼤船五丁⽬1番1号 |
| 用途 | 事務所 |
| 構造形式 | S造 |
| 階数 | 地上4階、最高高さ:19.77m |
| 建築面積 | 1.954.52㎡ |
| 延床面積 | 6,456.32㎡ |
| 取得認証 | BELS:ファイブスター(5つ星)、設計一次エネルギー消費量106%削減、『ZEB』 WELL認証:プラチナランク、CASBEE スマートウェルネスオフィス:Sランク |
| 建築主 | 三菱電機株式会社 |
| 設計監理 | 株式会社三菱地所設計 |
| 施工 | 株式会社竹中工務店(建築工事)、株式会社弘電社(電気設備工事)、三菱電機システムサービス株式会社(太陽光発電設備工事)、三菱電機冷熱プラント株式会社(空調衛生設備工事) |
| コンセプト立案 協力・検証・評価 |
田辺 新一(早稲田大学理工学術院教授) |
「SUSTIE」はこれまでに下記の賞を受賞しています(2025年7月現在、主要賞のみ)。
| 2021年8月 | 日経ニューオフィス賞 ニューオフィス推進賞 | (主催:一般社団法人ニューオフィス推進協会) |
| 2021年12月 | JIA優秀建築選2021 100選 | (主催:公益社団法人 日本建築家協会) |
| 2023年5月 | 第49回 東京建築賞 奨励賞 | (主催:一般社団法人東京都建築士事務所協会) |
| 2023年12月 | 2023年度 省エネ大賞 省エネ事例部門 省エネルギーセンター会長賞 | (主催:一般財団法人省エネルギーセンター) |
| 2024年5月 | 第12 回 カーボンニュートラル賞 関東支部賞 | (主催:一般社団法人建築設備技術者協会) |
| 2024年5月 | 第62回 空気調和・衛生工学会賞 技術賞 | (主催:公益社団法人空気調和・衛生工学会) |
SUSTIE:三菱電機株式会社の登録商標です。
※0 米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE/American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers、本部:米国・アトランタ)は、1894年に設立された、132カ国以上にわたり、5万人を超える会員を擁する、空気調和に関する世界最大の国際的学会です。
※1 評価対象設備のエネルギー消費量の削減率が、基準ビルに対して100%以上となるビル。
※2 一般財団法人建築環境・省エネルギー機構による、建物利用者の快適・健康の維持増進を支援する建物の仕様・性能・取り組みへの評価。
※3 米国Delos社の開発した建築物の環境性能を評価する国際認証。人間工学的側面(生産性向上等)の評価に加え、利用者のウェルネス(快適・健康)を重視する点が特徴。国際的な指標として認められている。
※4 空調機が屋内在室者の持つ端末と通信することで位置情報を取得し、屋内マップ上に在室者の位置と室内の温熱環境情報などを一覧で表示するシステム。
※5 建築の資材調達~建設~運用~解体に至るライフサイクル全体で排出されるCO2のうち、運用時のエネルギー消費と水消費を除くその他全ての活動で排出されるCO2。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が募集した2024年度の創発的研究支援事業に、理工学術院の市川幸平准教授の研究課題が採択されました。今回、応募総数2,262件に対し、246件が採択されており、採択率は約11%という結果となりました。
2020年度に設立され、特定の課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって破壊的イノベーションにつながるシーズの創出を目指す「創発的研究」を推進するため、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な研究を、研究者がその研究に専念できる環境を確保することを含め、原則7年間(途中ステージゲート審査を挟む、最大10年間)にわたり長期的に支援する事業です。また、創発を促進するため、支援期間中は異分野を含む多様な研究者同士が相互に触発し、切磋琢磨する「創発の場」を設けることで、破壊的イノベーションにつながるシーズの創出を目指します。
演題:細胞システムにおける代謝の位置づけについて
日時:2025年9月4日(木) 10:40-12:20
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス54号館 202教室
講師:田中 寛 (東京科学大学総合研究院 教授)
対象:学部生、大学院生、教職員、一般
参加方法:入場無料 直接会場へお越しください
主催:先進理工学部 応用化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
学校法人早稲田大学(所在地:東京都新宿区、理事長:田中愛治)は、2025年7月31日にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に採択された「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(g5-3)量子コンピューターの産業化のためのミドルウェア開発」(注1)の取り組みにおいて、KDDI株式会社、株式会社KDDI総合研究所、株式会社セック、株式会社Jij、株式会社QunaSys、国立研究開発法人産業技術総合研究所、学校法人慶應義塾、国立大学法人大阪大学、学校法人芝浦工業大学とともに、AI・量子共通基盤の研究開発を実施します。
量子技術を巡る国際競争が激しさを増すなか、内閣府が掲げる「量子未来社会ビジョン」(注2)においても、量子技術の社会実装や産業化の強化が重要方針として示されています。本研究開発を通じて2027年度末までに、量子コンピューター利用の敷居を下げ、さまざまな産業分野で量子技術を手軽に活用できる技術を確立します。これにより、AIと量子コンピューターの計算資源を融合し、量子技術に関する専門的な知識がなくても利用できる「AI・量子共通基盤」の構築を目指します。
なお、早稲田大学の代表研究者は、理工学術院の戸川望(とがわ のぞむ)教授です。
・2019年のGoogleによる量子超越の発表以降(注3)、世界的に量子コンピューターの技術が進化し、主要IT企業が実機配備やクラウドサービスの提供を始めるなど量子コンピューターの産業化が加速しています。
・日本においても内閣府が「2030年までに量子技術の利用者を1,000万人、国内生産額を50兆円にする」を目標に掲げており、エネルギーや製造・物流、材料開発などの分野でのユースケース開拓に向けた取り組みが進められています。
・その中でも特に、量子コンピューターの利用者には高度な専門性が必要であることや、プロバイダーが量子コンピューターを安定的に運用する技術が未成熟であることなど、量子コンピューター市場の活性化に向けては多くの障壁があります。
■利用者が抱える課題
・現状、量子コンピューターの利用者は、量子情報や量子力学のような高度で専門的な量子技術の知識が必要です。量子コンピューター市場の活性化に向けて利用者を拡大するためには、専門的な知識を持たなくても直感的に利用できるプラットフォームが不可欠です。
・量子コンピューターには超伝導方式・中性原子方式・光方式など多様な方式が存在します。さまざまなクラウドサービスの中から、ユースケースに応じて適切な計算資源を選択することができる仕組みが必要です。
■プロバイダーが抱える課題
・量子ビットの状態が非常に不安定で、量子コンピューターを長時間にわたって安定稼働させることが困難であるため、安定的に運用する技術を成熟させる必要があります。
■概要
量子コンピューターの産業利用加速に向け国内10機関で以下の2つの共同研究テーマに取り組みます。共同研究では、産業技術総合研究所の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(注4)に設置された量子・古典ハイブリッドコンピューティングのテストベッド(以下 ABCI-Q)を活用し、研究開発を推進していきます。
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図1 本研究開発の概要図
(1)計算資源を最適に割り当てるミドルウエア技術の開発
量子コンピューターの機能が抽象化されたAPIや、量子技術の知識を学習した生成AIを導入した統合開発環境(以下 IDE)を構築し、利用者が専門的な知識を持たなくても利用できるプラットフォームを開発します。また、AI・量子共通基盤の利用者がアプリケーションを実行する際に最適な計算資源を自動的に割り当てるロードバランシング技術(注5)の開発にも取り組みます。
さらに、プラットフォーム上で開発したアプリケーションを多数の利用者へ提供するためのアプリケーションサービスプロバイダー(以下 ASP)を開発し、量子コンピューターの利用者拡大を促進させます。
(2)量子コンピューターの運用技術の開発
各量子コンピューターの運用に必要となるテレメトリデータの抽出と蓄積方法を開発し、量子コンピューターの運用技術を確立します。また、極低温冷凍機や制御装置といった周辺機器のテレメトリデータを基に障害検知・管理技術を確立します。
本研究開発は、KDDI株式会社と株式会社KDDI総合研究所がプロジェクト全体のマネジメント及び技術要件定義の統括を行い、産学官による研究チームで推進します。
この中で、早稲田大学は、研究開発テーマ「計算資源を最適に割り当てるミドルウエア技術の開発」のうちIDEプロトタイプのAPI開発を担当します。特に、最適化アプリケーションの高性能化に関するAPIの研究開発を行います。本研究開発を通して、通信分野をはじめ、量子コンピューターのユースケースの探索や創出に貢献します。
表1 参画する研究機関と役割
| 参画機関 | 役割 |
| KDDI株式会社 | ・プロジェクト全体の統括、および事業開発 ・ASPの開発 |
| 株式会社KDDI総合研究所 | ・プロジェクト全体の技術要件定義 ・AI・量子資源を最適に割り当てる技術の実装 ・量子プログラムを生成するAIモデルの開発 |
| 株式会社セック | ・量子システムの障害検知技術および運用システムの開発 |
| 株式会社Jij | ・最適化計算の精度推定技術等の開発 ・IDEプロトタイプの開発 ・最適化パッケージの実装 |
| 株式会社QunaSys | ・化学計算の精度推定技術等の開発 ・消費資源推定技術の開発 ・化学計算パッケージ開発 |
| 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | ・ABCI-Q環境の提供、および環境に関する情報提供 ・ジョブスケジューラの開発 |
| 学校法人早稲田大学 | ・IDEプロトタイプのAPI開発 |
| 学校法人慶應義塾 | ・IDEプロトタイプのAPI開発 |
| 国立大学法人大阪大学 | ・量子システムの障害検知技術の開発 |
| 学校法人芝浦工業大学 | ・量子プログラムを生成するAIモデルの開発 |
早稲田大学は、これまでもKDDI株式会社とKDDI総合研究所等と共同して、通信分野をはじめ、量子コンピューターのユースケースの探索や創出に取り組んできました。さらに具体的なユースケースのもと、最適化アプリケーションの高性能化に関して多くの要素技術を創出してきました。本研究開発では、これまでの研究開発成果を高度化するとともに、これらの成果を統合開発環境に組み込み、量子コンピューターのユースケース探索や拡大を通して、量子未来社会ビジョンの実現に貢献したいと思います。
(注1)2025年3月26日「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」に係る公募について
(注2)出典:2022年4月22日「量子未来社会ビジョン ~量子技術により目指すべき未来社会ビジョンとその実現に向けた戦略~」(内閣府 統合イノベーション戦略推進会議)
(注3)2019年のGoogleによる量子超越の発表
Quantum supremacy using a programmable superconducting processor | Nature
(注4)産総研:量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター
(注5)ここでのロードバランシングとは、多くのリクエストを複数の計算機に均等に分散させるだけではなく、利用者の要件や計算機の状態を加味し、アプリケーションの実行に最も適した計算機を選択する技術のこと。
量子コンピューターに関する過去の報道発表
・2025年2月27日ニュースリリース KDDI、KDDI総合研究所、Jij、QunaSys、早稲田大学、AI・量子共通基盤の構築に向けパートナーシップ締結