還暦老人の幻企画(@かるた)
2024年5月17日 06:05
全国の毒舌ファンの皆さま おはようございます。Tommyセンセです。
ということで、本日は本職(?)の競技かるたに関する振り返り。
実は、コロナのパンデミックによって、競技かるた界史上初の試みが幻となった。
言わずと知れた2020年は、東京で2回目のオリンピックが開催されるはずだった。古代ギリシアで始まったオリンポスの祭典は、この期間だけは戦争を止めようよ作り出されたもので、肉体美を運動美を争うだけでなく、文化的な競技(展示)も多く行われていた。近代五輪(1896年、アテネ)が始まってもこの伝統は引き継がれ、運動種目だけでなく、文化的な祭典もその都市を中心に盛大に行われていた。
東京都も、それを意識してか、「文京区のシビックセンターを中心に、競技かるたの祭典をオリンピックに合わせてやりませんか?」という企画が、全日本かるた協会に持ち掛けられていた。全日本かるた協会としては断る理由もなく、この「競技かるたの祭典」について、こそっとプロジェクトチームが結成されていた。内容は、①このタイミングでバリアフリー化に突き進む。②国際的な(インターナショナルな)競技に押し上げる。③東京都民の参加企画。④ステージの部でもなんかやる。の4点にまとまった。
なぜかしらないが、ワタシは④のステージ部門を任された(ワタシは東京都民ではないよ)。でも、東京に何度も出かけられるし、オリンピック開催に少しでも協力できればいいと簡単に引き受けてしまった。
富士高校から転勤し、同時に本格的な指導の道からは離れた。そして「なんちゃって野球部顧問」なんかをやりながら、第三者的な視点で競技かるたを観察することにした。競技かるたは、「畳の上の甲子園」とか「骨折も時にはあるようで格闘技みたい」とか、「一瞬のスピードを争う競技」とか、「集中力と体力も必要」とか、「文化部なのに運動部」とか、文化的活動のカテゴリとはいえ、スポーツ競技と同じように形容されることが多い。
もう、百人一首競技に全く興味のない方々も、我々競技者が、百人一首中の和歌の意味を理解しているわけではないことを知っている。ワタシは競技かるたを始めて45年になるが、「上の句」と聞いて「下の句」は答えられるが、「下の句」を聞いて「上の句」を答えることは出来ない(と、思う)。百人一首競技かるたは、平安朝ののどかな雰囲気とは正反対の、体全体を一瞬にして動かす、極めて運動力学的で頭脳的なスポーツなのである。
スポーツであるはずなのに、我々競技かるた業界の関係者は、「平安朝」的なものを追い求めてきた。京都で行われる大会にあこがれていたり、百人一首の聖地を近江神宮であるとしたり(これは仕方がないか)、和装で行うことが基本であったり、名人戦の前夜祭では、必ず「古典研究の教授」が講演会をしたり・・・・この気持ち、わからないではないものの、競技かるたルールが確立され競技大会として正式に開催されたのが明治期であることを考えると、いささか偽善的でもある。この歴史から考えれば、日本が近代化するにつれて、今までは神事とか芸事とかの範疇として受け継がれてきた催し物(相撲、柔道、剣道、弓道、など)が近代化の波によって、全国の統一組織の元で統一ルールが決められ、一律のルールのもとにフェアな競技に格上げされていった。という歴史しかなく、別に、今更平安朝の「五七五、七七」に戻る必要のなかろう。
このような疑念からスタートしていたワタシは、競技かるたを指導していく中で、“古武術”と“メンタルトレーニング”に魅せられていった。競技かるたでは一瞬の手の動きで札を取り合う。手を思い切り早く振り切る動作が速く札を取る鍵になるのだけれど、このスピードは、大谷選手のが時速160キロで腕をふる動作とは似て非なるものである。大谷選手を、大坂なおみに置き換えてもいいし、錦織圭に置き換えてもいい。いずれとも違う。強いてあげれば、競技かるたの一瞬のスピードは、忍者が手裏剣を投げる動作に近い(見たことはないが似ていると思う)。瞬時に抜刀する居合切りとか、空手や合気道のような身体動作に近いだろう。なので、“古武術”なのである。また、
その身体動作の上にに、競技かるた特有の頭脳構造の使い方が、もう一つの鍵を握る。特有の頭脳構造とは、記憶力と集中力の2つだ。なので、“メンタルトレーニング”なのだ。
この東京オリンピックの祭典の一部門として、競技かるたが加わるのならば、“平安朝”を蹴飛ばして、身体動作と頭脳構造に特化したステージを構成することは出来ないかと考えた。
そこで、身体動作と精神構造の専門家とで、「競技かるたという不思議な競技を語ろう!!!!!!」という鼎談(3人で語り合う)を構想した。突飛な考えと思われようが、ワタシの中では、一番実践的なことであると思っていた。あれよあれよという間にこの企画は、プロジェクトチーム内を通過し、具体的な企画をねることになったのだが、ワタシには2人の候補者がすでに出来上がっていた。
一人目は、古武術の達人である、甲野義紀先生だ。(この動画以外も検索してください)
この動きが、日本で一番、“一瞬の動き”に近いと思う。
この企画について、ワタシは勇気をだして、甲野先生にアポイントをとり、会いにも行き、興味を持ってもらい、2020年5月のその日の鼎談を引き受けていただいた。
二人目は、東海大学教授の高妻容一先生である。
3人目はかなり苦労したが、清水東高校の学校寄席で大神楽の芸を見せてくれた、鏡味味千代(かがみ みちよ)さんという大神楽師である。
国際基督教大学 Global ICU | 卒業生の声 | 鏡味 味千代
この3人で、普通では全く考えたことのない「競技かるたという競技」をじっくり観察してもらい、このかるたの身体動作と頭脳構造がどのようにして成り立っているかを考えてもらおう。そして、ステージのMCはTommyセンセが絶対にやる!!!!!!!
これが、鼎談の趣旨であり、2020東京オリンピック文化部門の競技かるた講演会の内容であった。(もちろん、競技かるたの試合は、名人とクィーンにやってもらうことになっていた)
このステージ企画、なんと入場料が一人500円に設定された(設定した)。競技かるたを極めようという方々には、超格安チケットである(と思った)。
そして、これから著作権、肖像権のことを考えてチケットの図柄やポスターをお願いしようと思っていた矢先、東京オリンピックの延期が発表された。
ワタシは、少しほっとした。(これから仕事がバカ忙しくなるだろうと覚悟していたので)
しかし今考えると、「やってみたかったなあ」。
でもね、もうやらないよ。この時のモチベーションは、オリンピックによってつき起こされたものであるので、今は出ない。ただし、年に一度の名人戦の前夜祭では、この方々をお呼びして、講演会や実技などのお話があってもいいと思う。
ワタシには、年に一度競技かるた最強王者を決めるイベントの前夜祭が、どうして「平安朝」研究の文学者なのか?どうしても理解できない。
次回は、清水東のコロナ時代。に戻ります。コロナのロックダウンは進路部長として迎えました。