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Received — 2021年11月1日
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理工学術院
2021年11月1日 12:33
Received — 2021年10月5日
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理工学術院
ERATO採択 元素固有の色を可視化
2021年10月5日 09:31
令和3年度 戦略的創造研究推進事業ERATOに採択
元素固有の色を可視化し、宇宙と医療をつなぐ新しい架け橋 「ラインX線ガンマ線イメージング」を提案
発表のポイント
- 元素固有の色を可視化する革新手法「放射化イメージング法」を提案
- 宇宙から人体まで、あらゆる物質の動態を同じ技術で可視化
(1) 宇宙観測では、小型衛星で未踏の先端科学を開拓
(2)医学では薬物動態を迅速に可視化する新しいツールを開拓
2021年10月1日、早稲田大学理工学術院の 片岡 淳(かたおかじゅん)教授を研究総括とし、大阪大学大学院医学系研究科の 加藤 弘樹(かとうひろき)准教授ならびに東京工業大学理学院の 谷津 陽一(やつよういち)准教授をグループリーダーとする提案が、科学技術振興機構(JST)による令和3年度戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(Exploratory Research for Advanced Technology、以下ERATO)(*1)研究領域「ラインX線ガンマ線イメージング」として採択されました。
研究総括は数キログラムから数トンクラスの様々な衛星開発に参加し、高エネルギー宇宙物理学を牽引してきました。人工衛星は重量、大きさ、電力が著しく制約された環境で、最高性能が求められます。同様に、医療では体に負担が少なく高精度な技術が求められ、両者の技術やアイデアを用いることで大きな相乗効果が期待されます。特に、がんの粒子線治療中に人体で起きる反応の多くは宇宙でも同様に起きており、基礎となる現象や物理にも多くの共通点があります。本提案では宇宙観測で培った高度な可視化技術を共通基盤とし、宇宙・医学・薬学分野への新たな展開を目指します。図1に研究領域の概観を示します。
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図1: 本ERATOプロジェクトで進める研究の全体像
1.研究の背景
宇宙空間には、宇宙線とよばれる謎多き粒子が満ちています。特に、100MeV(メガ電子ボルト)以下の宇宙線は生命の源であるイオン分子の生成や加熱、星の進化に重要な鍵となると考えられますが、直接観測することができません。一方で、これら宇宙線が星間物質と起こす様々な反応により、元素特有のエネルギーをもつX線やガンマ線のスペクトル輝線(ラインX線ガンマ線 *2)が生じます。これらを可視化することで、宇宙における物質の分布や流れ、さらには星内部の元素合成や超新星爆発など、一見静かな宇宙の「激動の歴史」を探ることができます。しかしながら、とくにガンマ線は数MeVという高いエネルギーをもつため観測が難しく、1990年代に打ち上げられた米国のコンプトン宇宙ガンマ線衛星(CGRO衛星)を最後に、30年来にわたり観測が行われていません。
一方で、これらの宇宙で起きる反応を、身近な医療に応用することは可能です。たとえば宇宙線が星間物質と衝突するように、薬剤や被写体に陽子や中性子線をぶつけると薬剤特有のラインX線ガンマ線が生じます。これを用いて、体内の薬物動態や粒子線治療中に細胞周辺で起こる様々な反応を、同じように可視化できるはずです(図2)。つまり、宇宙で起きる反応と、医療の可視化に必要な反応は共通の物理に根ざしています。ここで鍵となるのが、ラインX線ガンマ線を用いた放射化イメージングですが、微量分析技術の前例はあるものの、直接的に「動態を見る」可視化技術は未だ確立されていませんでした。
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図2: 宇宙における放射化(左)と放射化分析(右)
2.今回のプロジェクトで実現しようとすること
本領域では元素固有のラインX線ガンマ線を可視化する独自の技術 ― ハイブリッド・コンプトンカメラ(*3)―を用いて「放射化イメージング法」を確立し、それを共通基盤として宇宙分野、医学・薬学分野に展開します。具体的には「放射化」で元素固有のX線ガンマ線を誘発し、宇宙から人体まで、あらゆる物質(たとえば宇宙空間を漂う物質、人体の薬剤等)の動態を統一的にイメージングし、それを通して宇宙分野、医学・薬学分野に、共通な物理で新しい枠組みを構築します。宇宙分野では、数十kgの小型衛星を基盤としたボトムアップ戦略で未踏の先端科学、たとえば宇宙や大気中での元素の流れや元素合成といった、核ガンマ線宇宙物理学の開拓に挑みます。医学・薬学分野では、放射性特性を有さない通常の薬剤を投与前もしくは投与後にごく微量放射化し、その動態をX線ガンマ線で可視化できる革新手法を実証します。さらに、宇宙分野で培われた「光子計数イメージング法」を高速化し、X線やガンマ線の診断技術に応用し、薬剤ごとの同定が可能なスペクトラル多色CTによる超低被ばくX線動態イメージング技術を開拓します。
3.このプロジェクトで期待される波及効果
近年、世界各国では小型衛星の開発が活発に行われ、数十兆円レベルの巨大ビジネスへと発展しています。一方で、その限られた重量やサイズは科学観測には不向きとされ、多くは通信用途や工学的な技術実証のみに用いられています。しかしながら、小型衛星は安価で打ち上げ機会も多く、コストパフォーマンスが圧倒的に良いのも事実です。搭載センサーの性能を究極まで高めれば、一点突破型の優れた科学観測ができるはずです。実際、海外ではわずか10 kgの衛星が、X線による宇宙観測で素晴らしい成果を上げつつあります。本研究では大学主導で数十kgの小型衛星を実際に開発し、前人未踏のMeVガンマ線宇宙観測へ向けた突破口を拓きます。上記の通り、MeVガンマ線は宇宙における物質動態、爆発現象を探る最適な波長帯ツールです。本プロジェクトを通じて小型衛星の全く新しい利用法、つまり「一点突破型」先端宇宙科学観測を提案します。
最後に、本プロジェクトは準安定状態の元素が出す「色」情報を独自装置で可視化し、元素の全く新しい可能性を切り拓く新しい試みです。本年度の文部科学省・戦略目標「元素戦略を基軸とした未踏の多元素・複合・準安定物質探査空間の開拓」達成に大きく資するものと期待されます。さらに、放射化という新しい概念は上記の戦略目標ですら触れられておらず、この枠組みをも大きく凌駕し、元素戦略の新しい可能性を追求する革新的テーマとなっています。本プロジェクトの推進には、理学・工学・薬学・医学・情報全ての研究者が一堂に集い、統合的に研究を進めることが必須で、分野横断型の新しいフレームワークを構築するものです。本プロジェクトにより、新しい薬物動態可視化システムの構築、さらにはナノ粒子を用いた新しい粒子線治療の開拓など、既存の治療や診断を塗り替える新たな医療価値を見出します。さらに、画像診断システムについては、研究機関の他に材料・計測メーカーの協力を得て、材料やセンサーの開発、システム評価を産学連携で進め、国内産業の活性化に貢献していきます。
4.各機関の役割
(1)早稲田大学(Head Quarter)
本研究提案全体を推進。多色スペクトラルCTグループを統括
(2)大阪大学
放射化イメージングや核医学治療、多核種粒子線治療の提案と実証
核医学治療・粒子線治療グループを統括
(3)東京工業大学
科学観測を目的とした小型衛星開発を推進。宇宙・大気科学グループを統括
(4) 金沢大学
スペクトラル多色CTシステムの開発と実証
(5)帝京大学
機械学習を用いた医療画像の鮮鋭化
(6)岡山大学
核医学・粒子線治療用薬剤および多色CT造影剤の開発
(7)量研機構
重粒子線を基盤とした新規放射線治療の提案と評価、細胞実験
(8)理化学研究所
中性子イメージング、大気(雷)ガンマ線イメージングの推進
5.研究総括(代表者)のコメント
現代物理学の宿命は「高エネルギー・フロンティア」の開拓であり、実践的で患者さんと向き合う医療とは全く関係がない ― 実は、私自身も10年前までは同じ考えを持っていました。しかしながら、日本人の半数が一生のうちに罹患するといわれる、がんの高度な粒子線治療を行うには体内で起こる電離や核反応など、高度な物理の理解が必要です。逆に、医療に必要な装置を作るのには臨床現場のニーズを正しく理解することが必要で、理学や工学の研究者が想像だけで装置を作っても意味がありません。さらに、新しい治療や診断には新規薬剤の開発がつきもので、薬学や生物の専門知識も必要となります。多くの学問では、本来一つの目標に向かっているにもかかわらず分野間の風通しが悪く、学問の進展を遅らせてしまう場面が多々あると危惧しています。そのような中、本ERATOプロジェクトはラインX線ガンマ線イメージングをキーワードに、同じ目標に向かって理・工・医・薬をつなぐ「糊」の役割を果たすことが期待されます。そして、本ERATOプロジェクトの圧倒的な強みは、それぞれの分野で世界トップを走る若手研究者を一堂に集め、情報や技術をよどみなく共有できる点です。そして、実際に研究を進めるうえでは博士課程の学生に限らず、修士・学部の学生も積極的に採用し、フレッシュなアイデアとパワーで新しい学問を拓くことが狙いです。ある分野では「できない」ことが、他の分野では「当たり前にできる」経験は、研究者なら誰でも経験することです。登山に様々なルートがあるように、研究の道筋も一つではありません。本ERATOプロジェクトを契機に、日本の学問全体が活発化し、分野連携の架け橋になることを強く願っています。
6.用語解説
*1 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO: Exploratory Research for Advanced Technology)
科学技術振興機構による公募プロジェクトの一つで、1981年に発足した創造科学技術推進事業を前身とするプログラムです。規模の大きな研究費をもとに既存の研究分野を超えた分野融合や新しいアプローチによって挑戦的な基礎研究を推進することで、今後の科学技術イノベーションの創出を先導する新しい科学技術の潮流の形成を促進し、戦略目標の達成に資することを目的としています。
*2 ラインX線ガンマ線
元素に固有なエネルギーをもち、鋭いピークを有するX線またはガンマ線の総称です。励起した原子から発生するラインX線は特性X線、原子核から生ずるガンマ線は核ガンマ線と呼ばれます。本領域では、この鋭いピークに着目したイメージング法を開発し、宇宙分野、医学・薬学分野に展開します。一例として、金属ナノ粒子である金(AuNP)を放射化し、そこで生ずるガンマ線(412keV)をイメージングした結果を示します。
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図3: AuNP薬剤の放射化イメージングの例
*3 ハイブリッド・コンプトンカメラ
コンプトンカメラは、X線・ガンマ線が粒子として振舞う性質(コンプトン散乱)を利用し、その運動学を解くことで到来方向をイメージングする装置です。詳しくは応用物理学会誌「応用物理」2019年11月号 「ガンマ線イメージングがつなぐ医療と宇宙~超小型コンプトンカメラの挑戦~」(片岡 淳) をご覧ください。ハイブリッド・コンプトンカメラはこれを発展したもので、数十keV(キロ電子ボルト)から数MeVまでのX線、ガンマ線を一台のカメラで同時に可視化することが可能です。詳細は以下のリリースをご覧ください。
7. 研究助成
研究費名:戦略的創造研究推進事業(ERATO: Exploratory Research for Advanced Technology)
研究課題名:「ラインX線ガンマ線イメージング」 (R3年度~R8年度)
研究総括名(所属機関名):片岡淳(早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 教授)
機構報 第1526号:戦略的創造研究推進事業における令和3年度新規研究総括および研究領域の決定について (jst.go.jp)
8.参画メンバー
・早稲田大学理工学術院 先進理工学研究科
片岡 淳 教授
・大阪大学大学院医学系研究科
加藤 弘樹 准教授、西尾 禎治 教授
・大阪大学放射線科学基盤機構
豊嶋 厚史 特任教授
・東京工業大学 理学院
谷津 陽一 准教授
・東京工業大学 工学院
松永 三郎 教授
・金沢大学理工学域 数物科学類
有元 誠 助教
・金沢大学 医薬保健研究域 保健学系
川嶋 広貴 助教、小林 聡 教授
・岡山大学大学院 医歯薬学総合科研究科 薬学系
上田 真史 教授
・量研機構 量子生命・医学部門 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部
平山 亮一 主任研究員
・量研機構 量子生命・医学部門 量子医科学研究所 物理工学部
稲庭 拓 グループリーダー
・帝京大学大学院 医療技術学研究科
古徳 純一 教授
・理化学研究所 開拓研究本部
榎戸 輝揚 白眉研究リーダー
・理化学研究所 光量子工学研究センター
小林 知洋 専任研究員
Received — 2021年9月24日
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理工学術院
Unveiling Galaxies at Cosmic Dawn That Were Hiding Behind the Dust
2021年9月24日 14:44
Unveiling Galaxies at Cosmic Dawn That Were Hiding Behind the Dust
Scientists serendipitously discover two heavily dust-enshrouded galaxies that formed when the Universe was only 5% of its present age
While investigating the data of young, distant galaxies observed with the Atacama Large Millimeter/submillimeter Array, Dr. Yoshinobu Fudamoto from Waseda University and the National Astronomical Observatory of Japan noticed unexpected emissions coming from seemingly empty regions in space that, a global research team confirmed, came actually from two hitherto undiscovered galaxies heavily obscured by cosmic dust. This discovery suggests that numerous such galaxies might still be hidden in the early Universe, many more than researchers were expecting.
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A schematic of the results of this research. ALMA revealed a hitherto undiscovered galaxy as it is buried deep in dust (artist’s impression in upper right) in a region where the Hubble Space Telescope could not see anything (left). Researchers serendipitously discovered the new hidden galaxy while observing an already well-known typical young galaxy (artist’s impression in lower right)
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope
When astronomers peer deep into the night sky, they observe what the Universe looked like a long time ago. Because the speed of light is finite, studying the most distant observable galaxies allows us to glimpse billions of years into the past when the Universe was very young and galaxies had just started to form stars. Studying this “early Universe” is one of the last frontiers in astronomy and is essential for constructing accurate and consistent astrophysics models. A key goal of scientists is to identify all the galaxies in the first billion years of cosmic history and to measure the rate at which galaxies were growing by forming new stars.
Various efforts have been made over the past decades to observe distant galaxies, which are characterized by electromagnetic emissions that become strongly redshifted (shifted towards longer wavelengths) before reaching the Earth. So far, our knowledge of early galaxies has mostly relied on observations with the Hubble Space Telescope (HST) and large ground-based telescopes, which probe their ultra-violet (UV) emission. However, recently, astronomers have started to use the unique capability of the Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) telescope to study distant galaxies at submillimeter wavelengths. This could be particularly useful for studying dusty galaxies missed in the HST surveys due to the dust absorbing UV emission. Since ALMA observes in submillimeter wavelengths, it can detect these galaxies by observing the dust emissions instead.
In an ongoing large program called REBELS (Reionization-Era Bright Emission Line Survey), astronomers are using ALMA to observe the emissions of 40 target galaxies at cosmic dawn. Using this dataset, they have recently discovered that the regions around some of these galaxies contain more than meets the eye.
While analyzing the observed data for two REBELS galaxies, Dr. Yoshinobu Fudamoto of the Research Institute for Science and Engineering at Waseda University, Japan, and the National Astronomical Observatory of Japan (NAOJ), noticed strong emission by dust and singly ionized carbon in positions substantially offset from the initial targets. To his surprise, even highly sensitive equipment like the HST couldn’t detect any UV emission from these locations. To understand these mysterious signals, Fudamoto and his colleagues investigated matters further.
In their latest paper published in Nature, they presented a thorough analysis, revealing that these unexpected emissions came from two previously unknown galaxies located near the two original REBELS targets. These galaxies are not visible in the UV or visible wavelengths as they are almost completely obscured by cosmic dust. One of them represents the most distant dust-obscured galaxy discovered so far.
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Distant galaxies imaged with ALMA, the Hubble Space Telescope, and the European Southern Observatory’s VISTA telescope. Green and orange colors represent radiations from ionized carbon atoms and dust particles, respectively, observed with ALMA, and blue represents near-infrared radiation observed with VISTA and Hubble Space Telescopes.
REBELS-12 and REBELS-29 detected both near-infrared radiation and radiation from ionized carbon atoms and dust. On the other hand, REBELS-12-2 and REBELS-29-2 have not been detected in the near-infrared, which suggests that these galaxies are deeply buried in dust.
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.
What is most surprising about this serendipitous finding is that the newly discovered galaxies, which formed more than 13 billion years ago, are not strange at all when compared with typical galaxies at the same epoch. “These new galaxies were missed not because they are extremely rare, but only because they are completely dust-obscured,” explains Fudamoto. However, it is uncommon to find such “dusty” galaxies in the early period of the Universe (less than 1 billion years after the Big Bang), suggesting that the current census of early galaxy formation is most likely incomplete, and would call for deeper, blind surveys. “It is possible that we have been missing up to one out of every five galaxies in the early Universe so far,” Fudamoto adds.
The researchers expect that the unprecedented capability of the James Webb Space Telescope (JWST) and its strong synergy with ALMA would lead to significant advances in this field in the coming years. “Completing our census of early galaxies with the currently missing dust-obscured galaxies, like the ones we found this time, will be one of the main objectives of JWST and ALMA surveys in the near future,” states Pascal Oesch from University of Geneva.
Overall, this study constitutes an important step in uncovering when the very first galaxies started to form in the early Universe, which in turn shall help us understand where we are standing today.
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Reference
Authors: Y. Fudamoto1,2,3, P. A. Oesch1,4, S. Schouws5, M. Stefanon5, R. Smit6, R. J. Bouwens5, R. A. A. Bowler7, R. Endsley8, V. Gonzalez9,10, H. Inami11, I. Labbe12, D. Stark8, M. Aravena13, L. Barrufet1, E. da Cunha14,15, P. Dayal16, A. Ferrara17, L. Graziani18,20, 27, J. Hodge5, A. Hutter16, Y. Li21,22, I. De Looze23,24, T. Nanayakkara12, A. Pallottini17, D. Riechers25, R. Schneider18,19,26,27, G. Ucci16, P. van der Werf5, C. White8
Title of original paper: Normal, Dust-Obscured Galaxies in the Epoch of Reionization
Journal: Nature
DOI: 10.1038/s41586-021-03846-z
Affiliations:
1Department of Astronomy, University of Geneva
2Research Institute for Science and Engineering, Waseda University; 3National Astronomical Observatory of Japan
4Cosmic Dawn Center (DAWN), Niels Bohr Institute, University of Copenhagen
5Leiden Observatory, Leiden University
6Astrophysics Research Institute, Liverpool John Moores University
7Sub-department of Astrophysics, The Denys Wilkinson Building, University of Oxford
8Steward Observatory, University of Arizona
9Departmento de Astronomia, Universidad de Chile
10Centro de Astrofisica y Tecnologias Afines (CATA)
11Hiroshima Astrophysical Science Center, Hiroshima University
12Centre for Astrophysics & Supercomputing, Swinburne University of Technology
13Nucleo de Astronomia, Facultad de Ingenieria y Ciencias, Universidad Diego Portales
14International Centre for Radio Astronomy Research, University of Western Australia
15ARC Centre of Excellence for All Sky Astrophysics in 3 Dimensions (ASTRO 3D)
16Kapteyn Astronomical Institute, University of Groningen
17Scuola Normale Superiore
18Dipartimento di Fisica, Sapienza, Universita di Roma
19INAF/Osservatorio Astronomico di Roma
20INAF/Osservatorio Astrofisico di Arcetri
21Department of Astronomy & Astrophysics, The Pennsylvania State University
22Institute for Gravitation and the Cosmos, The Pennsylvania State University
23Sterrenkundig Observatorium, Ghent University
24Dept. of Physics & Astronomy, University College London
25Cornell University
26Sapienza School for Advanced Studies
27INFN, Roma, Italy
観測史上最古の「隠れ銀河」を発見
2021年9月24日 14:42
観測史上最古の「隠れ銀河」を131億年前の宇宙で発見
概要
札本 佳伸(ふだもと よしのぶ)国立天文台アルマプロジェクト特任研究員・早稲田大学理工学術院総合研究所次席研究員と稲見 華恵(いなみ はなえ)広島大学宇宙科学センター助教らの国際研究チームが、アルマ望遠鏡の大規模探査による観測データの中から、約130億年前の宇宙で塵に深く埋もれた銀河を複数発見しました。そのうちの一つは、塵に埋もれた銀河として見つかったものの中で最古の銀河です。今回発見されたような銀河は、すばる望遠鏡などを用いた観測で発見することは難しく、初期の宇宙にどれほど存在するのかこれまで全くわかっていませんでした。今回の発見は、宇宙の歴史の初期においても数多くの銀河が塵に深く隠され、いまだ発見されないままになっていることを示します。同時に、このような銀河は宇宙の初期における銀河の形成と進化をより統一的に理解する上で重要な発見です。
この観測成果は、Fudamoto et al. “Normal, Dust-Obscured Galaxies in the Epoch of Reionization”として、英国の科学誌「ネイチャー」オンライン先行公開版に2021年9月22日16:00(イギリス時間)に掲載され、9月23日に本誌に掲載されます。
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上図:今回の観測結果の模式図。ハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線の観測画像(左)では、中心やや下に銀河が見えています。これは右下の想像図のような、これまで存在がよく知られていた若い銀河です。一方今回のアルマ望遠鏡による観測では、ハッブル宇宙望遠鏡では何も見えていない領域に、塵に深く埋もれた銀河(右上の想像図)を新たに発見しました。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope
(1)これまでの研究で分かっていたこと
過去20年以上にわたり、世界中の研究者がすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡など用いて遠方銀河の探査を行ってきました。光が有限の速さでやってくることから、遠方銀河を探査することで初期の宇宙にあった銀河の姿を直接捉えられます。そして、それらの大規模な探査の結果、ビッグバンから10億年以内の宇宙の初期に存在した銀河が数多く発見され、それらの時代において銀河がどのように形成・進化してきたのかについての研究が大きく進んできました。
このような宇宙の初期にある銀河の大規模な探査では、銀河に含まれる、太陽の数十倍程度の質量をもった大型の星から放射される明るい紫外光が観測されてきました。宇宙の膨張によって遠方天体からやってくる光の波長が伸びるため(赤方偏移)宇宙の初期にある銀河から放たれた紫外光は、地球で観測する際には可視光や近赤外線となります。
しかしながら、この紫外光には銀河に含まれる塵(ちり)によって大きく吸収・散乱されるという性質があります。この塵は銀河内部で星が世代交代することによって作り出されるため、銀河で過去にどのような星形成活動があったのかによってその量が変わってきます。内部で放たれた紫外光のほとんどが大量の塵に吸収・散乱されてしまうような、塵に埋もれた銀河の場合は、可視光や近赤外線を用いた観測では見つけることができません。初期の宇宙でこれまでに見つかっている塵に埋もれた銀河は、天の川銀河の1000倍以上といった激しいペースで星形成を行っている極めて稀な銀河に限られていました。そのため、130億年ほど前の宇宙に存在する若くて星形成活動が比較的低調な銀河の大多数は塵にはあまり隠されておらず、感度の良い可視光や近赤外線の観測を行うことで検出が可能だと考えられてきました。
(2)今回の研究で明らかになったこと
国立天文台アルマプロジェクト特任研究員として早稲田大学で研究活動を行う札本佳伸氏は、アルマ望遠鏡による大規模探査プロジェクト「REBELS」で観測された銀河を研究するうちに、偶然このような塵に埋もれた銀河を初期の宇宙で発見しました。REBELSの本来の目的は、130億年程度前の宇宙に存在したと考えられる近赤外線で非常に明るい40個の銀河を観測し、塵からの放射と炭素イオンの輝線の探査を行うことでした。広島大学宇宙科学センター助教の稲見華恵氏は、REBELSプロジェクトの共同代表研究者として本プロジェクトに参加しています。
札本氏がREBELS-12とREBELS-29という二つの銀河の観測データを調べていたところ、それぞれ本来の観測対象としていた銀河に加えて、そこから少し離れた場所からも塵からの放射と炭素イオンの輝線が非常に強く放たれていることを発見しました。そして驚くべきことに、これらの偶然見つかった新たな放射源の場所には、感度の良いハッブル宇宙望遠鏡を用いても何も見えませんでした。つまり、これらの放射は、ハッブル宇宙望遠鏡などが観測することのできる紫外光をほとんど放っていない、塵に埋もれた銀河からやってきたものであることを示しています。そのうちの一つ、REBELS-12の近傍に見つかった銀河は、塵に埋もれていた銀河の中では観測史上最古となる131億年前のものになります(注)。さらに驚いたことに、今回見つかった銀河は、これまで塵に埋もれた銀河に見られたような爆発的な星形成は行っておらず、130億年程度前の宇宙でこれまで多数見つかっていた銀河と同程度の星形成活動しかありませんでした。つまり、今回見つかった銀河は、塵に埋もれているということ以外はこれまで知られている典型的な銀河と変わりありません。これは、典型的な星形成活動をおこなう「普通」の銀河であっても宇宙のこれほど初期において塵に埋もれて見えなくなってしまう、ということを示し、多数の銀河が塵に埋もれて未だ発見されていないのではないか、と言うことを示唆しています。
注:アルマ望遠鏡の観測によると、REBELS-12の近傍に見つかった銀河の赤方偏移は7.35でした。これをもとに宇宙論パラメータ(H0=67.3km/s/Mpc, Ωm=0.315, Λ=0.685: Planck 2013 Results)で光が飛んできた時間を計算すると、131億年となります。詳しくは「遠い天体の距離について」もご覧ください。
(3)今後の展開・影響
これまでの観測からは全く見つけられなかったような種類の銀河が宇宙の初期に存在した、という発見は、いままで考えられてきた宇宙の初期における銀河の形成の理論に大きな影響を及ぼす発見です。このような銀河がどの程度存在し、どのように銀河全体の進化と形成に影響してきたのかをより統一的に理解するにはさらなる観測を待たなければなりません。アルマ望遠鏡による探査や、2021年内に打ち上げ予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による大規模な銀河の探査と、それらによる銀河の形成に関する統一的な理解の進歩が待たれます。
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上図:アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡、欧州南天天文台VISTA望遠鏡で撮影した遠方銀河。アルマ望遠鏡で観測した電離炭素原子からの放射を緑、塵からの放射をオレンジ、VISTA望遠鏡・ハッブル宇宙望遠鏡で観測した近赤外線を青で表現しています。REBELS-12、REBELS-29は近赤外線と電離炭素原子・塵からの放射がいずれも検出されていますが、REBELS-12-2とREBELS-29-2では近赤外線が検出されていません。これらは今回のアルマ望遠鏡による観測で初めて見つかった銀河で、塵に深く埋もれていると考えられます。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.
研究者からのコメント
札本氏は「宇宙の初期において、塵に埋もれて発見されていないような隠れた普通の銀河が存在するという予想外の、そして偶然の発見に驚きました。今回見つかった銀河は、宇宙の非常に狭い領域から見つかったものであるため、氷山のほんの一角に過ぎないと考えています。このような隠れた銀河がどれだけ宇宙の初期に存在するのかの研究はこれからの大きな課題となるでしょう。」とコメントしています。
また、稲見氏は「今回の発見では、ひとつ謎を解決しようとしたところで新たな謎が見つかった、という研究の醍醐味を改めて感じました。塵を大量に生産するにはある程度歳をとった星が必要なのに、ビッグバン直後という宇宙の極初期で、何がきっかけでどのようにして短時間で塵が生み出されたのか、これから解き明かしていきます。私たちが知り得ていないことが、この広大な宇宙にはまだまだあることを教えてくれる成果です。」とコメントしています。
論文情報
雑誌名:Nature
論文名:Normal, Dust-Obscured Galaxies in the Epoch of Reionization
執筆者:Y. Fudamoto1,2,3, P. A. Oesch1,4, S. Schouws5, M. Stefanon5, R. Smit6, R. J. Bouwens5, R. A. A. Bowler7, R. Endsley8, V. Gonzalez9,10, H. Inami11, I. Labbe12, D. Stark8, M. Aravena13, L. Barrufet1, E. da Cunha14,15, P. Dayal16, A. Ferrara17, L. Graziani18,20, 27, J. Hodge5, A. Hutter16, Y. Li21,22, I. De Looze23,24, T. Nanayakkara12, A. Pallottini17, D. Riechers25, R. Schneider18,19,26,27, G. Ucci16, P. van der Werf5, C. White8
所属機関名:1Department of Astronomy, University of Geneva,2Research Institute for Science and Engineering, Waseda University, 3National Astronomical Observatory of Japan, 4Cosmic Dawn Center (DAWN), Niels Bohr Institute, University of Copenhagen, 5Leiden Observatory, Leiden University, 6Astrophysics Research Institute, Liverpool John Moores University, 7Sub-department of Astrophysics, The Denys Wilkinson Building, University of Oxford, 8Steward Observatory, University of Arizona, 9Departmento de Astronomia, Universidad de Chile, 10Centro de Astrofisica y Tecnologias Afines (CATA), 11Hiroshima Astrophysical Science Center, Hiroshima University , 12Centre for Astrophysics & Supercomputing, Swinburne University of Technology, 13Nucleo de Astronomia, Facultad de Ingenieria y Ciencias, Universidad Diego Portales, 14International Centre for Radio Astronomy Research, University of Western Australia, 15ARC Centre of Excellence for All Sky Astrophysics in 3 Dimensions (ASTRO 3D) , 16Kapteyn Astronomical Institute, University of Groningen, 17Scuola Normale Superiore, 18Dipartimento di Fisica, Sapienza, Universita di Roma, 19INAF/Osservatorio Astronomico di Roma, 20INAF/Osservatorio Astrofisico di Arcetri, 21Department of Astronomy & Astrophysics, The Pennsylvania State University, 22Institute for Gravitation and the Cosmos, The Pennsylvania State University, 23Sterrenkundig Observatorium, Ghent University, 24Dept. of Physics & Astronomy, University College London, 25Cornell University, 26Sapienza School for Advanced Studies, 27INFN, Roma, Italy
掲載日:オンライン先行版 2021年9月22日(水)16:00(イギリス時間)
本誌 2021年9月23日(木)(イギリス時間)
DOI:10.1038/s41586-021-03846-z
研究助成
国立天文台 ALMA Scientific Research Grant 2020-16B
日本学術振興会科学研究費補助金 ( JP19K23462 、 JP21H01129)
the Swiss National Science Foundation through the SNSF Professorship grant 190079
TOP grant TOP1.16.057
the Nederlandse Onderzoekschool voor Astronomie
STFC Ernest Rutherford Fellowship (ST/S004831/1 , ST/T003596/1)
European Research Council’s starting grant ERC StG-717001
the NWO’s VIDI grant 016.vidi.189.162
the European Commission’s and University of Groningen’s CO-FUND Rosalind Franklin program
the Amaldi Research Center funded by the MIUR program “Dipartimento di Eccellenza” CUP:B81I18001170001
the National Science Foundation MRI-1626251
FONDECYT grant 1211951
“CONICYT+PCI+INSTITUTO MAX PLANCK DE ASTRONOMIA MPG190030″
“CONICYT+PCI+REDES 190194” 、ARC Centre of Excellence for All Sky Astrophysics in 3 Dimensions (ASTRO 3D) CE170100013 (EdC); Australian Research Council Laureate Fellowship FL180100060
the ERC Advanced Grant INTERSTELLAR H2020/740120
the Carl Friedrich von Siemens-Forschungspreis der Alexander von Humboldt-Stiftung Research Award
the VIDI research program 639.042.611
JWST/NIRCam contract to the University of Arizona, NAS5-02015
ERC starting grant 851622
the National Science Foundation under grant numbers AST-1614213, AST-1910107
the Alexander von Humboldt Foundation through a Humboldt Research Fellowship for Experienced Researchers
Received — 2021年9月3日
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理工学術院
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理工学術院
- Nissan and Waseda University in Japan testing jointly developed recycling process for electrified vehicle motors
Nissan and Waseda University in Japan testing jointly developed recycling process for electrified vehicle motors
2021年9月3日 16:47
Nissan and Waseda University in Japan testing jointly developed recycling process for electrified vehicle motors
New process efficiently recovers high-purity rare-earth compounds from motor magnets, practical application targeted for mid-2020s toward carbon neutral goal
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YOKOHAMA, Japan – Nissan Motor Co., Ltd. and Waseda University today announced the start of testing in Japan of a jointly developed recycling process that efficiently recovers high-purity rare-earth compounds from electrified vehicle motor magnets. The testing is aimed at enabling practical application of the new process by the mid-2020s.
The automotive industry is promoting vehicle electrification to tackle climate change and to realize a carbon-neutral society. Most motors in electrified vehicles use neodymium magnets, which contain scarce rare-earth metals such as neodymium and dysprosium. Reducing the use of scarce rare earths is important not only because of the environmental impact of mining and refining, but also because the shifting balance of supply and demand leads to price fluctuations for both manufacturers and consumers.
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To use limited and valuable resources more effectively, since 2010 Nissan has been working from the design stage to reduce the amount1 of heavy rare-earth elements (REEs) in motor magnets. In addition, Nissan is recycling REEs by removing magnets from motors that do not meet production standards and returning them to suppliers. Currently, multiple steps are involved, including manual disassembly and removal. Therefore, developing a simpler and more economical process is important to achieve increased recycling in the future.
Since 2017, Nissan has been collaborating with Waseda University, which has a strong track record of researching non-ferrous metal recycling and smelting. In March 2020 the collaboration successfully developed a pyrometallurgy process that does not require motor disassembly.
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Process overview:
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provided by Nissan Motor Corporation
- A carburizing material and pig iron are added to the motor, which is then heated to at least 1,400 C and begins to melt.
- Iron oxide is added to oxidize the REEs in the molten mixture.
- A small amount of borate-based flux, which is capable of dissolving rare-earth oxides even at low temperatures and highly efficiently recovering REEs, is added to the molten mixture.
- The molten mixture separates into two liquid layers, with the molten oxide layer (slag) that contains the REEs floating to the top, and the higher density iron-carbon (Fe-C) alloy layer sinking to the bottom.
- The REEs are then recovered from the slag.
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Testing has shown that this process can recover 98% of the motors’ REEs. This method also reduces the recovery process and work time by approximately 50% compared to the current method because there is no need to demagnetize the magnets, nor remove and disassemble them.
Going forward, Waseda and Nissan will continue their large-scale facility testing with the aim of developing practical application, and Nissan will collect motors from electrified vehicles that are being recycled and continue to develop its recycling system.
Nissan will continue to contribute to the building of a cleaner, safer and more inclusive society as part of its efforts to develop a sustainable society. Through its Nissan Green Program 2022, Nissan is addressing four priority issues: climate change, resource dependency, air quality and water scarcity. Nissan will continue to aim for carbon neutrality and zero new material resource use, and will simultaneously promote the use of electrified vehicles and the recycling and reduced use of REEs.
1 The Nissan Note e-POWER produced in FY2020 uses magnets with 85% fewer heavy REEs than the Nissan LEAF produced in FY2010.
レアアース リサイクル技術を共同開発
2021年9月3日 16:41
日産と早稲田大学、電動車用のモーター磁石からレアアース化合物を高純度で効率良く回収するリサイクル技術を共同開発
カーボンニュートラル社会の実現に向けて2020年代中頃の実用化を目指した実証実験を開始
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早稲田大学(所在:東京都新宿区、総長:田中愛治)と日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:内田 誠)は、電動車用のモーター磁石からレアアース化合物を高純度で効率良く回収するリサイクル技術を共同開発し、2020年代中頃の実用化を目指した実証実験を開始したと発表しました。
現在、自動車業界では、グローバルな気候変動に対応し、カーボンニュートラル社会を実現するため、車両の電動化が積極的に推進されています。これら電動車のモーターの多くに使用されるネオジム磁石には、ネオジム、ジスプロシウムなどのレアアースと呼ばれる希少元素が使用されています。 レアアースは資源の偏在や需給バランスによる価格変動が懸念される上、採掘・製錬時に生態系への負荷も伴うことから、その使用量削減が課題となっています。
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日産は限りある貴重な資源を有効に使用するため、2010年以降、設計段階でモーター用磁石のヘビーレアアース(重希土類)の使用量削減に取り組んでいます。また、レアアースの再生利用にも取り組み、出荷基準を満たさず、クルマに搭載しなかったモーターから磁石を取り出して分解し、磁石サプライヤーに還元してきました。
しかし、現在、モーターの磁石からレアアースを取り出す工程では、手作業による磁石の分解、取り出しが必要であるため、今後さらなるリサイクルを推進するには、プロセスの簡便化とリサイクルコストの低減が課題となっていました。
そこで2017年より、日産は非鉄金属のリサイクルと製錬に関する研究で高い実績のある早稲田大学創造理工学部の山口勉功研究室*2と共同で、同校の大型炉設備*3を使用し、電動車用のモーターの磁石からレアアース化合物を回収する研究を開始しました。そして、2019年度には、高温で融体を取り扱う「乾式製錬法」により、モーターを解体することなく、高純度なレアアース化合物を効率よく回収する技術を確立しました。
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両者が開発したリサイクル技術のプロセスは、以下の通りです。
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作成:日産自動車株式会社
- 加熱溶融を促進する銑鉄(せんてつ)、鉄の融点を下げる加炭材を加え、1,400℃以上に加熱した炉でモーターを溶融
- 酸化鉄の添加により溶融液中のレアアースを酸化
- レアアース酸化物を溶かすため、ホウ酸塩系のフラックス*4を少量添加
- 「レアアースを含んだ酸化物層」と、より密度が大きい「レアアースを含まない鉄-炭素合金層」を分離
- 上層に分離された酸化物層から、レアアース化合物を回収
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本リサイクル技術では、レアアース酸化物を少量、低温で溶融することができ、高い割合で回収できる安価なホウ酸塩系のフラックスを採用しています。実験では、この方法によりモーターに使用されたレアアースの98%を回収できることが確認されています。また、磁力を取り除く作業や、磁石を分解して取り出す作業が不要となるため、プロセスを簡略化することができ、従来の方法と比べ作業時間を約50%削減することができます。
今後は、実用化を目指した実験を続けると同時に、使用済み電動車に搭載されたモーターを回収し、リサイクルするスキームの構築を進めていきます。
日産は、ニッサン・グリーンプログラム2022において、「気候変動」「資源依存」「大気品質」「水資源」の4つの重点課題に取り組んでいます。今後もカーボンニュートラルや新規採掘資源依存ゼロを目指し、電動車両の普及と同時に、レアアースの使用量削減とリサイクルを推進していきます。そして、持続可能な社会の発展を目指す一員として、「よりクリーンな社会」、「より安全な社会」、「よりインクルーシブな社会」の実現を目指していきます。
*1 2020年度に生産されたノートは、2010年度生産されたリーフと比較して85%のヘビーレアアースの削減を実現。
*2 山口勉功教授 (やまぐちかつのり) (創造理工学部 環境資源工学科)は、高温プロセスを用いた新しい金属製錬、金属スクラップの精製、廃棄物処理など社会と産業に直結した研究を行っている。レアメタルとベースメタルがその対象となる。山口研究室では、今回の実証結果を踏まえ、今後は日産自動車と継続して連携・研究を行い、EVやHEVなどの電動車モーターからのレアアースをリサイクルするプロセスを広く普及できるよう研究・開発を進めていく予定。
*3 早稲田大学各務記念材料技術研究所:https://www.waseda.jp/fsci/zaiken/
*4 フラックス=融解温度を下げる働きをもつ物質。
Received — 2021年8月19日
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理工学術院
燃料電池ごみ収集車の普及を目指して
2021年8月19日 16:08
【大学研究者による事業提案制度採択事業】
燃料電池ごみ収集車の試験運用を港区で開始
東京都、港区及び学校法人早稲田大学(研究代表者:理工学術院教授・紙屋雄史、共同提案者:客員主任研究員(研究院客員准教授)・井原雄人)は、水素社会の実現を目指すとともに、温室効果ガス削減に寄与するため、都市の特性に適した燃料電池ごみ収集車(水素燃料)の開発・試験運用に向けて取り組んできました。
このたび、令和3年8月16日から港区内において燃料電池ごみ収集車の試験運用を開始しますのでお知らせします。
(1)目的
本事業は、CO2削減、静音性の向上、ごみ収集時の作業環境改善等に貢献する燃料電池ごみ収集車の開発・試験運用に向けた取組を行い、将来的な普及を目指すものです。
本試験運用では、燃料電池ごみ収集車が港区内のごみ収集ルートにおいて、実際に走行・ごみ収集を行い、エネルギー消費量の評価や収集職員へのヒアリング等を実施することで、導入効果の検証等を行います。
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試験運用車両:車両には、水素のイメージを想起させる曲線をベースに東京都、港区、学校法人早稲田大学のロゴマーク、水素キャラクターのスイソン等のラッピングを施しました。
(2)今回試験運用する車両について【1台】
1.車両サイズ 全長:7,085㎜、全幅:2,190㎜、全高:2,560㎜
2.航続距離 70~80 km
3.ごみ積載量 1,750 kg
4.ごみ積載容積 7.8 ㎥
5.水素搭載重量 4.2 kg
6.水素充填時間 3~5分
※2~6は開発時の想定値
(3)試験運用実施期間等
令和3年8月16日から令和4年2月末まで
港区内の実際のごみ収集ルートで使用します。
月曜日・木曜日: ① 六本木2・5丁目 ② 高輪1・3丁目 ③ 高輪2丁目
火曜日・金曜日: ① 芝浦2丁目、海岸2丁目 ② 芝大門1・2丁目、芝2丁目 ③ 浜松町1丁目、芝1・4丁目 ④ 三田2丁目
水曜日・土曜日: ① 南麻布3・4丁目 ②三田2・3丁目 ③ 三田1丁目 ④ 芝3丁目、三田3・4丁目
(4)今後の予定
- 本事業のPR動画を作成し、HP・SNS等で発信
- 本事業を活用した環境学習の実施
燃料電池ごみ収集車運用事業について(令和元年度から令和3年度まで)
本事業は、東京都の「大学研究者による事業提案制度※」に基づき、学校法人早稲田大学から燃料電池ごみ収集車の開発・運用に関する事業提案を受け、令和元年度から、東京都及び早稲田大学で事業を開始しました。令和2年度には、東京都・早稲田大学及び港区との間で協定を締結し、三者が連携して事業を行っています。
走行距離が長く、動力としても多くのエネルギーを必要とする業務用車両における水素利用は、運輸部門の脱炭素化や水素利用の拡大のために非常に重要となります。また、燃料電池自動車は、走行時にCO2を一切排出せず、走行及び作業時も静かなことから、ごみ収集時の作業環境や生活環境の向上にも貢献します。低速かつ頻繁な発停車を繰り返すごみ収集ルートにおいては、特に導入効果が期待できます。
本事業では、燃料電池ごみ収集車が将来的に普及することを目指し、都内における運用形態に適した燃料電池ごみ収集車の開発及び試験運用を実施します。
※大学研究者による事業提案制度:都内大学研究者から、研究成果・研究課題等を踏まえた事業提案を募集し、研究者・大学と連携・協働して事業を創出する制度。
Received — 2021年8月17日
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理工学術院
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理工学術院
- World’s First Transparent Fiber–Millimeter-wave–Fiber System in 100-GHz Band, Using Low-Loss Optical Modulator and Direct Photonic Down-Conversion
World’s First Transparent Fiber–Millimeter-wave–Fiber System in 100-GHz Band, Using Low-Loss Optical Modulator and Direct Photonic Down-Conversion
2021年8月17日 14:03
World’s First Transparent Fiber–Millimeter-wave–Fiber System in 100-GHz Band
Using Low-Loss Optical Modulator and Direct Photonic Down-Conversion
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【Highlights】
- A 100-GHz band fiber–millimeter-wave–fiber transparent system was constructed based on direct millimeter-wave-to-optical conversion using a low-loss optical modulator with direct photonic down-conversion.
- 70-Gbit/s high-capacity transmission over the transparent fiber–millimeter-wave–fiber system at 101 GHz was demonstrated using 64-QAM OFDM.
- This demonstration opens the door for transparent fiber–millimeter-wave systems in the field of high-capacity, low-latency, and low-power consumption communications in the 5G and beyond era.
【Abstract】
The National Institute of Information and Communications Technology (NICT, President: TOKUDA Hideyuki, Ph.D.), Sumitomo Osaka Cement Co., Ltd. (President: MOROHASHI Hirotsune), and Waseda University (President: TANAKA Aiji) jointly developed the first transparent fiber–millimeter-wave–fiber system in the 100-GHz band using a low-loss broadband optical modulator with direct photonic down-conversion. The developed broadband modulator and photonic down-conversion technology were utilized to successfully demonstrate a high-speed transmission of more than 70 Gbit/s over a wired and wireless converged system consisting of two optical fiber links and a 20 m radio link at 101 GHz.
The utilization of a low-loss broadband optical modulator for the direct conversion of a millimeter-wave signal to an optical signal*1 significantly simplified the millimeter-wave radio receiver because it included only a radio front end and an optical modulator. In addition, by adopting direct photonic down-conversion technology*2 for simultaneous detection and down-conversion of the signal to the microwave band, the fiber-radio receiver and the subsequent digital signal processing could be considerably simplified, thus rendering the proposed system a promising solution for high-capacity, low-latency, and low-power consumption fiber–wireless transmission in 5G and beyond networks.
The results of this demonstration were published as a post-deadline paper presentation at the 2021 International Conference on Optical Fiber Communications (OFC 2021).
【Background】
Fiber–wireless systems in high-frequency bands are a promising technology for inter-building connections, disaster recovery, and mobile transport networks, especially in 5G and beyond era. To date, most systems rely on the use of electronics-based receivers for radio-to-optical conversion, which generally feature less bandwidth and complicated antenna sites. Achieving fully transparent radio–optical conversion using photonic solutions is promising for increasing the transmission capacity and simplifying the antenna sites. However, the frequency of radio links in the previous systems that utilized the photonic conversion method was limited to below 90 GHz owing to the limited bandwidth of optical modulators. Recently, a plasmonic modulator was employed to realize a transparent bridge system in high-frequency bands. Generally, plasmonic modulators exhibit high insertion loss, which requires the use of optical amplifiers. However, this increases the optical noise, system cost, and the antenna site complexity.
On the other hand, most of the previous systems utilized coherent detection by using free-running lasers for signal detection at the fiber-radio receiver, which significantly increased the system complexity, frequency offset, and phase noise of the detected signal, thus requiring complicated digital signal processing algorithms for signal recovery. Therefore, employing a direct photonic down-conversion technology to simultaneously detect and down-convert the signal to the microwave band using a coherent two-tone optical signal generation*3 is promising for simplifying the system and reducing the cost and power consumption.
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【Achievements】
In this work, we demonstrated the first transparent fiber–millimeter-wave–fiber system in the 100-GHz band (see Fig. 1) using two key element technologies: (i) a low-loss broadband optical modulator, and (ii) direct photonic down-conversion. For direct conversion of a millimeter-wave signal to an optical signal, we fabricated and employed a broadband modulator*4 for operation up to 110 GHz. This was achieved by performing Ti diffusion on the x-cut thin-film lithium niobate in the low dielectric constant layer. In addition, we employed a photonic down-conversion method based on a coherent two-tone optical signal generation technology to simultaneously detect and down-convert the signal to the microwave band. This significantly simplified the system and reduced the frequency offset and phase noise, as compared to systems utilizing coherent detection. Using the technologies developed in this study, we successfully transmitted 64-quadrature amplitude modulation (QAM) orthogonal frequency division multiplexing (OFDM) signal*5 with a line rate of 71.4 Gbit/s over a system consisting of two fiber links and a 20 m radio link at 101 GHz.![]()
The system consists of the following key element technologies:
- A broadband optical modulator with a low half-wave voltage and low loss in the high-frequency band for direct conversion of millimeter-wave signals to optical signals.
- Direct photonic detection and down-conversion of signals to the microwave band utilizing coherent two-tone optical signal generation based on optical modulation technology.
- High-spectral efficiency 64-QAM OFDM signal transmission.
The optical carrier for data modulation at the antenna site was remotely generated and distributed from the fiber-radio receiver, which significantly simplified the antenna site and eased its operation and management. In addition, owing to the use of direct photonic down-conversion and detection technology at the fiber-radio receiver, the frequency offset and phase noise of the detected signal could be largely suppressed. This considerably reduced the receiver complexity and the subsequent digital signal processing. The proposed system is promising for high-speed, low-latency, and low-power-consumption communication links in 5G and beyond networks.
【Future Prospects】
In the future, we will further study the millimeter-wave-to-optical conversion device and fiber wireless technology that were developed in this study to further increase the radio frequency and transmission capacity. In addition, we will promote international standardization activities and social implementation activities related to fiber wireless communication systems.
The paper containing the results of this demonstration was published at the 2021 International Conference on Optical Fiber Communication (OFC 2021, June 6 (Sun.) to June 11 (Fri.)), one of the largest international conferences in the field of optical fiber communications. It was highly evaluated and was presented in the Post Deadline session, which is known to release the latest important research achievements, on June 11 (Fri) 2021 local time.
【References】
International Conference: Optical Fiber Communications (OFC 2021) June 2021,
paper F3C.4 (Post Deadline Paper)
Title: Transparent Fiber–Radio–Fiber Bridge at 101 GHz using Optical Modulator and Direct Photonic Down-Conversion
Authors: Pham Tien Dat, Yuya Yamaguchi, Keizo Inagaki, Masayuki Motoya, Satoshi Oikawa, Junichiro Ichikawa, Atsushi Kanno, Naokatsu Yamamoto, Tetsuya Kawanishi
【Glossary】
*1 Direct millimeter-wave to optical conversion
It is a technology that converts a wireless signal in the millimeter-wave band to an optical signal without down-conversion of frequency. On the contrary, in the electronics-based conversion method, the millimeter-wave signal needs to be down-converted to a lower frequency signal in the microwave band before its conversion into an optical signal. The direct conversion of a millimeter-wave signal to an optical signal can be realized using a broadband optical modulator or plasmonic modulator. This significantly simplifies the antenna site.
*2 Direct photonic down-conversion
It is a technology used for detecting and down-converting a millimeter-wave signal to a microwave band signal using optical signals from the same light source. In this technology, a two-tone optical signal consisting of the two optical sidebands with a frequency separation that is approximately equal to the frequency of the millimeter-wave signal is generated from a single light source. One of the sidebands is modulated by the millimeter-wave signal, and an optical double-sideband carrier-suppressed signal is generated. One of the modulated sidebands is selected using optical filtering. Finally, the modulated and unmodulated sidebands are combined and input to a low-speed photodetector to be converted to an electrical signal in the microwave band.
*3 Coherent two-tone optical signal generation
This technology generates two coherent optical signals from the same light source using optical modulation technology. In particular, an optical signal consisting of odd or even order harmonic sidebands is generated by applying a clock signal to an optical modulator and controlling the bias voltage.
*4 Broadband optical modulator using thin-film lithium niobate
A broadband Mach–Zehnder modulator (MZM) can be fabricated using a thin substrate. In this work, we fabricated a broadband MZM, in which Mach–Zehnder interferometer waveguides were fabricated by Ti diffusion on the x-cut thin-film lithium niobate in the low dielectric constant layer. This was done to achieve ripple-free operation and maximized electro-optic responsivity up to 110 GHz. By thinning the substrate, as shown in Figs. 3(a) and (b), the frequency ripple due to mode coupling between the coplanar guided mode and substrate mode can be suppressed. The electrodes were also optimized to reduce electrical propagation loss to attain high sensitivity. The optical insertion loss, including fiber pigtails, is approximately 4.6 dB at 1550 nm. The half-wave voltage at 100 GHz is approximately 6.7 V, demonstrating a sufficiently low value for high-sensitivity conversion of a millimeter-wave signal to an optical signal at the antenna site.
*5 OFDM 64-QAM signal
OFDM is a digital multi-carrier modulation scheme that uses multiple subcarriers within the same single channel. Instead of transmitting a high-rate data stream using a single subcarrier, OFDM uses a large number of closely spaced orthogonal subcarriers that are transmitted in parallel. In this work, subcarriers are modulated with 64 QAM symbols, each of which consists of six input data bits.
Appendix
1. Configuration of the proposed system
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Fig. 4 shows a schematic diagram of the proposed system, which includes six main parts: a fiber-radio transmitter, a millimeter-wave radio transmitter, a millimeter-wave radio receiver, a fiber-radio receiver, millimeter-wave-to-optical conversion, and signal down-conversion and detection.
(1) Fiber-radio transmitter
This block generates and modulates signals. A two-tone optical signal with a frequency separation of 91 GHz was generated using optical modulation technology. The two optical sidebands were separated, and one of them was modulated by a 10 GHz radio signal. The bias voltage to the modulator was controlled to generate only the upper modulation sideband. The modulated and unmodulated sidebands were combined to form a 101-GHz radio-over-fiber (RoF) signal.
(2) Millimeter-wave radio transmitter
After transmitting over a 20-km single-mode fiber, the RoF signal was up-converted to a 101-GHz millimeter-wave radio signal using a high-speed photodetector. The generated radio signal was emitted into free space using a millimeter-wave antenna.
(3) Millimeter-wave radio receiver
The millimeter-wave signal was received by another millimeter-wave antenna, amplified, and converted to an optical signal using the developed high-speed optical modulator.
(4) Fiber-radio receiver
Another two-tone optical signal with a frequency separation of 84 GHz between the two sidebands was generated. One of the sidebands was transmitted to a millimeter-wave radio receiver for data modulation.
(5) Millimeter-wave-to-optical conversion
The optical carrier signal generated at (4) was modulated by the 101 GHz millimeter-wave signal obtained from (3), and the bias voltage to the modulator was controlled to generate a double-sideband suppressed carrier signal. The modulated signal was transmitted to the fiber-radio receiver using a 10-km single-mode fiber link.
(6) Signal down-conversion and detection
One of the modulated sidebands from (5) was selected using optical filtering and combined with the unmodulated sideband of the generated two-tone optical signal from (4) to form an RoF signal with a center frequency of 17 GHz (= 101–84GHz). The signal was converted to a microwave band signal using a low-speed photodetector.
2. Experimental results
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In the demonstration, an OFDM signal at 10 GHz was generated and transmitted over the system. The performance measured in terms of the error vector magnitude (EVM) for the 64-QAM OFDM signal is plotted in Fig. 5(a) for different signal bandwidths. Considering a forward error correction overhead of 20 %, which requires an EVM value of 11.2 %, a satisfactory transmission performance was experimentally confirmed for the OFDM signal with a bandwidth of 14 GHz or smaller. This confirmed that a line rate of 71.4 Gbit/s could be attained when transmitting a 14-GHz bandwidth signal that consisted of 4096 subcarriers, of which, 15 % were inactive at the band edges. The superior performance of the system using a 20 m radio link could be attributed to the better power adjustment of the fiber-radio transmitter. An example of the received signal constellation is shown in Fig. 5 (b).
物理の難問 量子スピン液体 を解明
2021年8月17日 13:16
機械学習手法により物理の難問「量子スピン液体」を解明
スーパーコンピュータ「富岳」も用いた最先端の計算により実現
理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター計算物質科学研究チームの野村悠祐研究員と豊田理化学研究所/早稲田大学理工学術院総合研究所の今田正俊フェロー/上級研究員・研究院教授の共同研究チームは、機械学習を用いた世界で類を見ない高精度手法により、幾何学的フラストレーションのある量子スピン系の解析を行いました。そして、スピンの向きが絶対零度でも整列せずに、量子力学的に揺らぐ「量子スピン液体」相を発見・確証し、存在領域を特定しました。
本研究成果は、量子スピン液体中でスピンが分裂して生じる「スピノン」の性質を解き明かし、これを量子計算への応用につなげるとともに、現実物質で量子スピン液体を実現するための有用な指針を与えるものと期待できます。
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人工ニューラルネットワークの一つである制限ボルツマンマシンの構造の概念図
今回、共同研究チームは、機械学習分野で用いられる人工ニューラルネットワークの一種である制限ボルツマンマシンと物理分野で用いられる強力な関数を組み合わせて、スピン間の高度な量子もつれを学習させる手法を構築しました。スーパーコンピュータ「富岳」などでこの手法を用いた大規模計算を行い、2次元正方格子上のフラストレーションのある量子スピン模型を世界最高レベルの精度で解析した結果、フラストレーションが強くなる領域において、量子スピン液体相の存在の確証を得ました。さらに、実現した量子スピン液体相の励起構造も調べ、通常のスピンの励起が分裂し、分裂した粒子が独立した粒子のように振る舞う分数化という現象を捉えました。
本研究は、オンライン科学雑誌『PhysicalReviewX』(8月12日付)に掲載されました。
論文情報
<著者名>Yusuke Nomura and Masatoshi Imada
<DOI>10.1103/PhysRevX.11.031034
研究支援
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業基盤研究(S)「強相関物質設計と機能開拓―非平衡系・非周期系への挑戦―(研究代表者:今田正俊)」、同若手研究(B)「強相関物質における格子自由度の役割解明とフォノンがもたらす機能物性の探索(研究代表者:野村悠祐)」、同基盤研究(B)「高次元データの次元圧縮によって実現する磁性と超伝導の第一原理計算(研究代表者:大槻純也)」、文部科学省「富岳」成果創出加速プログラム「量子物質の創発と機能のための基礎科学―「富岳」と最先端実験の密連携による革新的強相関電子科学(研究代表者:今田正俊)(課題番号:hp200132, hp210163)」、ポスト「京」重点課題(7)「次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成」サブ課題C「超伝導・新機能デバイス材料(研究代表者:今田正俊)(課題番号:hp170263, hp180170, hp190145)」による支援を受けて行われました。
また、本研究には東京大学物性研究所のスーパーコンピュータおよび理研のスーパーコンピュータ「京」、「富岳」が使用されました。
Received — 2021年8月6日
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理工学術院
新しいレイアウト自動生成技術を提案
2021年8月6日 12:45
最適化による制約を満たしたレイアウトの生成手法を提案
マルチメディア分野のトップカンファレンス「ACM Multimedia」にて共著論文採択
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株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証一部上場:証券コード4751)は、早稲田大学(東京都新宿区、総長:田中愛治)の菊池康太郎(博士後期課程在籍)氏、コンテンツ作成のためのコンピュータグラフィックス研究で多数の実績を持つエドガー・シモセラ准教授、ならびに人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」に所属する研究員の大谷まゆ・山口光太による共著論文が、マルチメディア分野の国際会議「ACM Multimedia 2021」※1 に採択されたことをお知らせいたします。
「ACM Multimedia」は世界中の研究者により開催されている学術会議で、マルチメディア分野で権威あるトップカンファレンスの一つです。このたび採択された研究は、2021年10月に開催される「ACM Multimedia 2021」で発表されます。
研究背景
「AI Lab」ではマーケティング全般に関わる幅広いAI技術を研究・開発しており、大学・学術機関との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取組んでいます。
近年、深層学習を活用してグラフィックデザインを自動生成する技術が注目を集めており、様々な領域での応用が期待されています。なかでも「レイアウト自動生成技術」は、クリエティブ制作における工数削減の点で重要です。
一般的にレイアウト作成では、要素同士の重なりの禁止や要素配置の左揃えなど、様々なデザイン上の制約が課せられることがあります。これまでの研究では、このような制約に基づいたレイアウト生成を学習するために、制約を事前に決めて生成モデルを学習する手法が用いられていました。しかし、従来の手法では新しい種類の制約が生じた場合に生成モデルを学習し直す必要があるため、制約に柔軟に対応することが難しいという課題がありました。
このような背景のもと、本研究では、ユーザーから生じる様々なデザイン要求に対応するため、モデルが学習した尤もらしいレイアウトの中から、さらに新しい制約を満たすものを効率的に探索する方法を提案しました。
研究論文の概要
このたび採択された論文「Constrained Graphic Layout Generation via Latent Optimization」※2 では、グラフィックデザインを支援するための新たなレイアウト自動生成手法を提案しています。本提案手法では、最初に自動生成したレイアウトを、制約を満たすように更新することで、望んだレイアウトを生成することを実現しました。これにより、デザインに関する新たな制約が発生した際にも、生成モデルを一から学習し直す必要なく、効率的に自動生成を行うことが可能となります。
本研究では、最初に制約を仮定せずにレイアウトを自動生成するモデルを学習します。ここでレイアウトがサンプリングされる空間は「レイアウトの潜在空間」と呼ばれ、この空間中の1点はそれぞれ特定のレイアウトに対応づけられます。そしてある点を起点に、指定された制約を満たす領域に近い潜在空間上を探索していくことで、ユーザの指定した制約に沿うようなレイアウトに自動的に到達します。
レイアウトに対する制約の例としては、「重なりのないレイアウト」「画像やテキストの並び順」「大小関係を指定したレイアウト」などがあり、提案したモデルではそれらの制約に沿ったレイアウトを提示します。このアプローチにより、単一の生成モデルでさまざまな制約付きレイアウト生成に対応することが可能となります。
▼レイアウトの制約を満たす領域に近い潜在空間上を探索していく手法のイメージ
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今後について
本研究成果を活用することで、「並びのきれいなデザイン」などを意図したレイアウトの自動生成が可能になるだけでなく、デザインの制約に広告効果の指標を取り入れることで、より「効果の高いデザイン」の自動生成への応用が期待できます。「AI Lab」ではこの技術を活用し、より効率的で高品質な広告作成を目指し、研究・開発に努めてまいります。
※2 Constrained Graphic Layout Generation via Latent Optimization
論文詳細
- 採択カンファレンス名:ACM Multimedia 2021
- 論文名:Constrained Graphic Layout Generation via Latent Optimization
- 執筆者名:Kotaro Kikuchi, Edgar Simo-Serra, Mayu Otani, Kota Yamaguchi
- 掲載URL:https://arxiv.org/abs/2108.00871
- webサイト:https://ktrk115.github.io/const_layout/
Received — 2021年8月2日
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理工学術院
早稲田大学 PoC Fund Program 2021年度 研究課題 5件の採択を決定
2021年8月2日 12:24
早稲田大学アントレプレナーシップセンターでは本学の研究成果・技術シーズをもとにしたベンチャー企業の設立・事業化による社会実装をめざして、2020年よりPoC(概念実証)プログラム「早稲田大学 PoC Fund Program」を開始し、研究者の技術シーズをもとにした大学発ベンチャーの創出を支援しています。
本プログラムは早稲田大学提携ベンチャーキャピタルであるウエルインベストメント株式会社、Beyond Next Ventures株式会社などの支援を得ながら、大学発ベンチャーの創出を目的とする支援プログラムと(タイプA 最大200万円の助成、タイプB 最大1000万円の助成)、2020年9月に本学が採択された科学技術振興機構(以下、JST)研究成果展開事業 社会還元加速プログラム(以下、SCORE)大学推進型を財源としたプログラム(タイプS 500万円(増額可)の二本立てのプログラムとなっています。
2021年度 研究課題5件の採択がついに決定
2年めとなる2021年度の学内公募は5月に締切られ、厳正な審査(1次:書面審査、2次:面接審査)を経て、研究課題5件(いずれもタイプS)の採択を決定いたしました。
- 感温塗料計測による半導体熱設計の革新
創造理工学部 総合機械工学科 松田 佑 准教授,
創造理工学研究科 総合機械工学専攻 修士2年 安倍 悠朔 <PoC活動実施代表> - 鉄鋼部材の塗装前工程を革新する自動研磨ロボットの事業化
創造理工学部 総合機械工学科 石井 裕之 准教授 - 耐海水性電気2重層容量を利用した海中通信
基幹理工学部 電子物理システム学科 川原田 洋 教授 - コオロギにおける有用共生微生物スクリーニング法および効率的な微生物給餌法の開発
先進理工学部 生命医科学科 朝日 透 教授,
先進理工学研究科 先進理工学専攻 一貫制博士3年 早川 翔大 <PoC活動実施代表> - 気相で保存できそのまま使える高分子とタンパク質の複合化分子認識・センシング材料の開発
先進理工学部 生命医科学科 武田 直也 教授
採択された5件の研究課題は、ビジネスモデルの仮説立案検証や市場調査等のための研究開発費が支給されるほか、本プログラムが指定するアクセラレーターによる定期的な助言・支援(ハンズオン的支援)、各種トレーニングプログラム等の受講やピッチコンテストなどを通じて、ビジネスモデルのさらなる実現化・高度化を目指してまいります。
2020年度採択の研究課題からは既に起業が実現
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2020年度タイプS研究課題の研究代表者(Demo Day終了後)
2020年度採択の研究課題5件は2021年3月の成果発表会Demo Dayをもって本プログラムによる研究活動を終えました。その成果として、三宅丈雄教授(情報生産システム研究科)による起業※が実現しています。 (※「ハインツテック株式会社」2021年7月起業)
アントレプレナーシップセンターは、早稲田大学 PoC Fund Program を通じて、研究成果をもとにしたベンチャー起業創出を加速させ、早稲田オープンイノベーション・エコシステムの実現をさらに推進していきます。
関連リンク
Received — 2021年7月19日
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理工学術院
2021年度 オープンキャンパスについて(来校型を中止します)
2021年7月19日 09:03
Received — 2021年7月15日
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理工学術院
時間に伴う細菌相互作用の変化を推定
2021年7月15日 17:50
時間経過に伴う細菌相互作用の変化を推定する手法を開発
発表のポイント
- これまでの手法は時間の経過に伴う細菌相互作用の変化を推定できなかった。
- 時間の経過に伴う細菌相互作用の変化を推定する手法Umibatoを開発した。
- 自然環境の生態系の解明や、近年急速に解明が進んでいるヒト常在菌叢の長期的な変化の追跡において活用が期待される。
早稲田大学大学院先進理工学研究科後期博士課程3年の細田 至温(ほそだ しおん)氏と、同大理工学術院の浜田 道昭(はまだ みちあき)教授らの研究グループは、時間の経過に伴う細菌相互作用の変化を推定することができる手法Umibato (unsupervised learning-based microbial interaction inference method using Bayesian estimation)を開発しました。
これまで細菌相互作用を推定するために用いられていた手法は、細菌相互作用が時間に伴い変化しないことを前提としていたため、時間の経過に伴い細菌相互作用が変化していることを推定することができませんでした。今回開発した手法により、細菌叢の時系列データ解析においてこれまで見過ごされてきた細菌の関係性の変化を捉えることが可能になります。将来的には、自然環境の生態系の解明や、近年急速に解明が進んでいるヒト常在菌叢の長期的な変化の追跡において活用されることが期待されます。
本研究成果は、2021年7月末に開催される計算生物学のトップの国際会議であるISMB/ECCB2021の口頭発表に受理されました。論文はISMB/ECCB2021の予稿として2021年7月12日(月)(現地時間)に『Bioinformatics』に掲載されました。
(1)これまでの研究で分かっていたこと
細菌相互作用は、栄養のやりとりなどにより細菌同士が影響し合う現象です。細菌相互作用は代謝ネットワーク※1を構成する要因として宿主の健康に影響することが示されており、重要な研究対象となっています。これまでの研究では、細菌相互作用を推定するために、一般化ロトカ・ヴォルテラ方程式※2という微分方程式をベースとしたモデルが広く使われてきました。しかしこの方程式は細菌相互作用が時間に伴い変化しないことを前提としていました。そのため、何らかの環境条件が変化しそれに伴い細菌相互作用が変化するような場合に適用ができませんでした(図1)。現に、異なる栄養条件下では細菌相互作用が異なるということがすでに報告されており、この欠点は致命的でした。
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図1:時間変化する相互作用と従来手法による推定結果の概念図。赤い矢印は細菌が増加するような寄与、青い矢印は細菌が減少するような寄与を示す。真の細菌相互作用が時間に伴い変化しているにもかかわらず、従来手法では時間変化を考慮していないためにそれらを推定できない。
(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
一般化ロトカ・ヴォルテラ方程式に細菌相互作用の時間変化を導入し、それらを統計モデルにより推定することを考えました。この手法により時間変化する細菌相互作用を推定できるようになりました。この手法の妥当性を人工データによる実験により検証しました。結果として、細菌相互作用が時間変化しない場合では既存手法の性能と提案手法の性能は近いものであったのに対し、時間変化する場合では提案手法の性能が既存手法より高いことが確認できました(図2)。
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図2:人工データにおける性能評価。横軸はデータセットを示し、縦軸は真のパラメタと推定されたパラメタの相関係数を示す。バーが高いほど性能が良いことを示す。左の結果は時間変化を考慮していないデータセットのもので、中央と右の結果は時間変化を考慮したデータセットのものである。それぞれの6つの棒グラフのうち左端2つは提案手法であるUmibatoの結果で、時間変化を考慮したデータセットで既存手法より性能が良いことが分かる。
また、マウスの腸内細菌叢データに適用したところ、マウスが低繊維食を摂っている間に主に現れる相互作用が観測され、食事と細菌相互作用の関連性が示唆されました(図3)。
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図3:推定された相互作用の変遷。7つのグラフはそれぞれ異なるマウスの腸内細菌叢データに対応する結果で、Subject4とSubject7はコントロール、すなわち低繊維食を摂っていないマウスのデータである。横軸は時間を示し、縦軸は相互作用の種類と低繊維食を示す。低繊維食と5種目の相互作用(State5)の関連が見られる。
(3)そのために新しく開発した手法
隠れマルコフモデル※3を拡張した連続時間回帰隠れマルコフモデルを提案しました。また、このモデルのパラメタ推定アルゴリズムを導出しました。また、このモデルとガウス過程回帰※4による細菌成長率推定を用いて、時間変化する相互作用を考慮した一般化ロトカ・ヴォルテラ方程式に基づく細菌相互作用推定手法Umibatoを開発しました。
(4)研究の波及効果や社会的影響
複雑な挙動を見せることの多い時系列細菌叢データの解析においてこれまで見過ごされてきた細菌の関係性の変化を捉えることが可能になります。自然環境の生態系の解明や、近年急速に解明が進んでいるヒト常在菌叢の長期的な変化の追跡において大いに活用されることが期待されます。
(5)今後の課題
主な課題として、二つ挙げられます。一つは、更なる実データへの適用です。公開されているデータの制限から、今回はマウス腸内細菌叢データに対する適用に留まりましたが、Umibatoはあらゆる環境の時系列定量細菌叢データで適用可能な手法です。もう一つは、実験による推定された相互作用の検証です。本研究で推定された関係性を実験的に検証することで、推定された相互作用の解明に繋がると考えられます。
(6)研究者のコメント
本研究では、長い歴史を持ちこれまで広く使われてきた方程式を、現代的なデータに対しより合理的に扱えるよう昇華させることができたと感じています。バイオインフォマティクスにおいて、興味深いアルゴリズムは生物学的意義での実用性に欠けることも多いですが、本手法ではそれらを両立できたと思います。本手法が細菌叢研究の一助となり、自然環境やヒト常在菌叢の解明を促進できれば幸いです。
(7)用語解説
※1 代謝ネットワーク
ここでは微生物同士の代謝物のやりとりで構成されるネットワーク。たとえば、ヒト腸内細菌叢ではネットワークにより最終的に産生された代謝物がヒトに影響を与える。
※2 一般化ロトカ・ヴォルテラ方程式
捕食者と被捕食者の個体数を表現する微分方程式であるロトカ・ヴォルテラ方程式を一般化した微分方程式。捕食と被捕食のような関係性だけでなく、相利共生関係(AとBが互いに増加に寄与する関係)や寄生関係(AがBの増加に寄与、BはAの減少に寄与する関係)も表現できるため細菌叢解析でよく用いられる。
※3 隠れマルコフモデル
音声信号処理や配列解析でよく用いられる統計モデル。離散的な時系列のデータから隠れた情報の変遷を推定することができる。本研究で提案した連続時間回帰隠れマルコフモデルは隠れマルコフモデルの一種で、実時間のような連続的な時系列を扱えるよう拡張されたモデルである。
※4 ガウス過程回帰
ガウス過程という確率過程をベースとした回帰手法。柔軟な回帰を行うことができる。
(8)論文情報
雑誌名:Bioinformatics
論文名:Umibato: estimation of time-varying microbial interaction using continuous-time regression hidden Markov model
執筆者名(所属機関名):Shion Hosoda(早稲田大学、産総研・早大 生体システムビッグデータ解析 オープンイノベーションラボラトリ)、 Tsukasa Fukunaga(早稲田大学、研究当時:東京大学)、Michiaki Hamada(早稲田大学、産総研・早大 生体システムビッグデータ解析 オープンイノベーションラボラトリ)
掲載日(現地時間):2021年7月12日(月)
掲載URL:https://doi.org/10.1093/bioinformatics/btab287
DOI:10.1093/bioinformatics/btab287
(9)研究助成
研究費名:科研費 特別研究員奨励費
研究課題名:確率モデルを用いたヒト腸内細菌叢構造の解明と応用
研究代表者名(所属機関名):細田 至温(早稲田大学)
研究費名:科研費 新学術領域研究(研究領域提案型)
研究課題名:逆イジングモデル法に基づく機能未知な微生物遺伝子の機能推定
研究代表者名(所属機関名):福永 津嵩(東京大学 当時)
研究費名:科研費 基盤研究(A)
研究課題名:リピート要素のde novo発見に基づく長鎖ノンコーディングRNAの機能の解明
研究代表者名(所属機関名):浜田 道昭(早稲田大学)
Received — 2021年7月12日
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理工学術院
新たな高精度ノイズ除去法の開発
2021年7月12日 12:41
スパースモデリングを用いた高精度ノイズ除去法の開発に成功
発表のポイント
- 数理最適化手法を用い、感圧塗料法の後処理法として高精度のノイズ除去法を開発した。
- 微小な圧力変化の計測において、従来の感圧塗料計測法に比べ、半導体圧力センサーでの計測値とのずれを2%以内に抑える精度の高い手法を構築することができた。
- 新たな手法は、圧力変化が小さく計測が困難であった鉄道車両や家電製品などに対し適用可能な手法となり得る。
科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業および東北大学流体科学研究所一般公募共同研究において、早稲田大学理工学術院の松田佑(まつだゆう)准教授、井上智輝(いのうえともき)(同大学院創造理工学研究科修士課程1年)、東北大学大学院工学研究科の野々村拓(ののむらたく)准教授、東北大学流体科学研究所永井大樹(ながいひろき)教授、愛知工業大学の江上泰広(えがみやすひろ)教授らの研究グループは、周囲の圧力に応じて発光強度が変化する感圧塗料(Pressure-Sensitive Paint; PSP)*1による機器表面の圧力分布計測(PSP計測法*2)の後処理法として、圧力分布の再構成にスパースモデリング*3を用いたノイズ除去法を開発しました。航空機や鉄道車両の安全性や燃料消費率の改善を行う上で、機器表面での気体の流れ構造(圧力分布)を詳細に把握することは非常に重要です。高速で圧力変化が大きなものにしか適用できなかった測定法が、少ない変数で効率的にデータをモデリングする新たな手法により、低速で圧力変化の小さなものにも適用可能となり得ます。これにより、機器の低騒音化やエネルギー効率の向上等、人間をとりまく環境における重要な課題への取り組みに、今後大きく貢献することが期待されます。
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新たな手法の概要
本研究成果は、2021年7月9日(金)AM 9:00(東部時間)に米国物理学会(AIP)によって設立されたAIP Publishing社『Physics of Fluids』で公開されました。
(1) これまでの研究で分かっていたこと
近年、機器表面での圧力分布を計測可能な手法としてPSP計測法が注目されています。PSP計測法は、その発光強度の変化から圧力分布を計測でき、従来の半導体圧力センサーなどの点計測法*4に対して高い優位性があります。一方で、PSP計測法における大気圧近傍での微小な圧力の変化の計測には大きな課題がありました。これは、微小な圧力変化の検出には、微小な発光強度変化を検出する必要があり、カメラのショットノイズなどに信号が埋もれてしまうためです。そのために、これまでにノイズを低減して微小な圧力変化を検出するための様々な方法が提案されてきましたが、これらの方法は経験に基づいたパラメータ設定や、PSP以外の他センサーでの計測が必要であったため、汎用性の高い手法とは言えませんでした。
(2) 今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
本研究では、PSP計測の後処理法としてスパースモデリングを用いたノイズ除去法を開発しました。手順として、まずはノイズを多く含む原画像を、固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition; POD)*5によるモード分解*6を行いました。得られたモード分解データから、流体現象を効率的に表現できる空間位置、すなわち最適センサー位置を特定します。この空間位置において、得られている時系列データをフィルタリングし、フィルタリングされた時系列データを説明できるように各モードの係数を決定します。このときなるべく簡単なモデルで表現できるように、スパースモデリングを用います(図1)。
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図1 提案手法のフローチャート
本研究では、東北大学流体科学研究所の小型低乱風洞*7において提案手法の妥当性を評価する実証実験を実施しました。角柱後方に生じるカルマン渦列*8によって生じる圧力分布を、PSPによって計測を行いました(図2)。
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その結果、今回新たに提案した手法(以下、本手法)によって、PSP計測データのみから、ノイズの影響を大幅に低減した計測データの再構成を行うことに成功しました。また、本手法により再構成された圧力データは、半導体圧力センサーを設置した箇所で、従来データとの計測値のずれが2%以内と、極めて高い一致を示すことから、精度も十分に高いことが実証されました。従来は、PODモードのうち、エネルギーの大きい上位の6、7のモードから、流れ場の構造を議論されることが多くありました。このたびの成果により、本研究のスパースモデリングの観点に基づくと、細かい流れ構造を表現するためには、より下位のモードも必要であることを明らかにしました。
(3) 研究の波及効果や社会的影響
現在PSP計測法の大きな欠点のひとつとされている微小な圧力の変化の計測が可能となることで、家電製品をはじめとする、広範な機器の流動の実験解析にPSP計測法の適用が可能になると期待されます。また、半導体圧力センサーを使用する従来法では、配線をする必要があったため、回転体表面の圧力分布などには適用できませんでしたが、本手法は半導体圧力センサーなどのデータが不要であるため、それらへの適用が期待されます。
(4) 今後の課題
今後はより一層、微小な圧力変化の検出が可能なPSP計測システムの構築を目指し、「PSPセンサー」、「データ取得法」、「データ後処理法」の各段階において、継続的に研究を推進していきます。
(5) 研究者のコメント
各種機器表面での圧力分布の計測は、機器の低騒音化やエネルギー効率の向上など、人間をとりまく環境において依然として極めて重要な課題への取り組みに大きく貢献することができます。また気体の流れは肉眼では見ることができませんが、これを可視化計測することは、現象の直観的理解を容易にするだけでなく、科学的な興味を喚起する上でも重要な技術と考えています。
(6) 用語解説
※1 感圧塗料(Pressure-sensitive paint; PSP)
感圧塗料(PSP)は、一般に酸素消光作用を有するりん光分子と、これを模型表面に保持固定するためのバインダーから構成される塗料。
※2 PSP計測法
PSPに含まれるりん光分子の放つ発光の強度が圧力に応じて変化することから、PSPの発光強度分布を計測することで圧力分布を計測する手法。
※3 スパースモデリング
データを説明(モデリング)する際に、なるべく少数の変数により効率的にデータを説明する手法。
※4 点計測法
半導体圧力センサーなどのようにセンサーを設置した箇所でのみデータ取得が可能な方法。
※5 固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition; POD)
主成分分析(Principal Component Analysis; PCA)や特異値分解(singular value decomposition; SVD)とも呼ばれる。流体工学の分野ではPODとして知られる。多次元データからデータを効率的に展開できるような基底を求める手法。
※6 モード分解
現象を互いに独立な成分(モード)に分離すること。ある現象は、いくつかのモードの重ね合わせで表現できるという考え方。
※7 小型低乱風洞
東北大学流体科学研究所に設置されている風洞設備。
※8 カルマン渦列
円柱や角柱の後方に生じる互い違いに並んだ渦の列。
(7) 研究助成
研究費名:JST さきがけ:JPMJPR187A
研究課題名:圧縮センシングを活用した高精度空力診断システムの構築
研究者名(所属機関名):松田佑(早稲田大学)
研究費名:東北大学流体科学研究所一般公募共同研究:J20L106
研究課題名:構造化照明を用いた高精度PSP計測手法の開発
研究代表者名(所属機関名):松田佑(早稲田大学)、永井大樹(東北大学)
研究費名:スズキ財団一般科学技術研究助成金
研究課題名:感圧センサーシートの開発による空力画像計測の実用化
研究代表者名(所属機関名):松田佑(早稲田大学)
研究費名:JST CREST:JPMJCR1763
研究課題名:次世代地震計測と最先端ベイズ統計学との融合によるインテリジェント地震波動解析
研究代表者名(所属機関名):平田直(東京大学地震研究所)
研究者名(所属機関名):野々村拓(東北大学)
(8) 論文情報
雑誌名:Physics of Fluids
論文名:Data-Driven Approach for Noise Reduction in Pressure-Sensitive Paint Data Based on Modal Expansion and Time-Series Data at Optimally Placed Points
執筆者名(所属機関名):井上智輝(早稲田大学)、松田佑(早稲田大学)、伊神翼(東北大学)、野々村拓(東北大学)、江上泰広(愛知工業大学)、永井大樹(東北大学)
掲載日時(現地時間):2021年7月9日(金)AM 9時(東部時間)
掲載日時(日本時間):2021年7月9日(金)PM 11時
DOI:10.1063/5.0049071
Received — 2021年7月9日
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理工学術院
タンパク質摂取時間と筋量増加の関係
2021年7月9日 15:08
体内時計に合わせた朝のタンパク質摂取タイミングが筋量増加に効果的
発表のポイント
- タンパク質摂取による筋量増加効果は、量だけでなくタイミングも影響することを明らかにした。
- 筋量増加は体内時計を介して引き起こされ、それが正常に機能していることが重要である。
- 朝食時のタンパク質摂取による筋量増加には、筋肉の合成を高める作用が強い分岐鎖アミノ酸が関わっている。
長崎大学医歯薬学総合研究科神経機能学の青山晋也(あおやましんや)助教(早稲田大学重点領域研究機構 次席研究員、2015年-2019年)および早稲田大学理工学術院の柴田重信(しばたしげのぶ)教授、金鉉基(キムヒョンギ)講師を中心とする研究グループは、タンパク質の摂取タイミングが、筋量増加効果に影響があることをこのたび明らかにいたしました。
食事から摂取するタンパク質は、骨格筋の合成や筋量の維持・増加に重要であることが知られていますが、朝・昼・夕食といった3食の中での摂取量の偏りが及ぼす影響については、これまで不明な点が多くありました。本研究グループは、筋量増加効果を得るためには、筋肉の体内時計(1周期約24時間の概日時計※1)が重要であることを突き止め、タンパク質の1日の摂取量だけでなく、摂取するタイミングも重要であることを解明しました(図1)。筋量増加には、体内時計に合わせたタンパク質の摂取が効果的であることから、この摂取タイミングをうまく活用することで、筋力や筋量が低下しやすい高齢者の健康を効率よく維持・増進できる可能性があります。
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本研究成果は、米国Cell Press社によって刊行されるオープンアクセスジャーナル『Cell Reports』のオンライン版に2021年7月6日(火)AM11:00(東部時間)に掲載されました。
(1) これまでの研究で分かっていたこと
食事から摂取するタンパク質は、骨格筋の合成や筋量の維持・増加に重要であると言われています。各国の食事調査から多くの国では、タンパク質の摂取量は朝食に少ないこと、また、朝・昼・夕食といった3食の中で摂取量に偏りがあることが知られています。この1日の中での食事の偏りが、骨格筋の機能と関係するという報告が疫学調査などから示されていましたが、朝の不足だけでなく、反対に夜の不足ではどうなるのか、といった詳細については不明な点が多くありました。
(2) 今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
本研究では、マウスを用いた動物実験を行い、1日の中でタンパク質を摂取する時間帯が異なることが過負荷※2による筋肉量の増加に影響することを明らかにしました。また、タンパク質の摂取時間による効果の差を生み出すキー因子として、体内時計を司る時計遺伝子に着目し、摂取タイミングによる筋量増加効果に対する体内時計の関与を分析しました。加えて、ヒトを対象とした研究では、3食におけるタンパク質摂取と筋力や筋量との関係性について調査しました。
① タンパク質の摂取タイミングは筋量増加に影響する
マウスを1日2食の条件下で飼育し(図2、起床後の餌を朝食、就寝前の餌を夕食と定義)、1日の総タンパク質摂取量を揃えた上で各食餌のタンパク質含量を変化させた場合、朝食に多くのタンパク質を摂取したマウスでは、夕食に多く摂取したマウスや朝・夕食で均等に摂取したマウスに比べて筋量の増加が促進しました(図2右)。1日のタンパク質摂取量が同じ場合、朝(活動期のはじめ)に重点的に摂取した方が筋量の増加には効果的であることを示しています。
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② 朝食のタンパク質摂取による筋量増加には分岐鎖アミノ酸が関わる
分岐鎖アミノ酸※3は筋肉の合成を高める作用が強いアミノ酸であることが知られています。そこで朝食でのタンパク質摂取による筋量増加効果はタンパク質中に含まれる分岐鎖アミノ酸が関与しているのかを明らかにするため、先ほどと同様にマウスを1日2食の条件下で飼育し、朝食または夕食に分岐鎖アミノ酸添加食を摂取させた際の筋量を測定しました。その結果、朝食の分岐鎖アミノ酸添加食の摂取は夕食での摂取に比べて筋量が増加しやすいことがわかりました。このような朝食での摂取効果は他のアミノ酸(餌のタンパク質源であるカゼイン※4中に含まれる分岐鎖アミノ酸以外のアミノ酸)を添加した餌ではみられませんでした。つまり、朝食でのタンパク質摂取による筋量増加には分岐鎖アミノ酸が大きな役割を果たしていることを示唆しています。
③ タンパク質摂取タイミングによる筋量増加は体内時計を介して引き起こされる
なぜ朝(活動期初期)における摂取が筋量を増加させやすいのか、そのメカニズムを解明するため、本研究グループは1周期約24時間の概日時計(体内時計)に着目しました。全身の様々な細胞に存在する体内時計は数十種類の時計遺伝子と呼ばれる遺伝子群によって構成され、様々な生理機能に昼夜のリズムを持たせています。本研究グループはこの時計遺伝子が栄養素の吸収や代謝などの生理機能の日内変動を引き起こし、タンパク質やアミノ酸の摂取タイミングによる筋量増加効果が生み出されているのではないかと考えました。そこで、時計遺伝子Clockに変異の入ったClock mutantマウスや、時計遺伝子Bmal1を筋肉で欠損させた筋特異的Bmal1欠損マウスを用いて、朝食と夕食のタンパク質の摂取パターンと筋量について計測しました。分析の結果、これらのマウスでは朝食のタンパク質摂取における筋量増加効果がみられず、摂取タイミングによる筋量の増加効果には筋肉の体内時計が関わることを明らかにしました(図3)。
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④ 高齢女性において、朝食でのタンパク質摂取比率は筋機能と正の相関を示す
高齢女性を対象に、3食のタンパク質の摂取量と骨格筋機能との関係性を調査しました。その結果、夕食で多くのタンパク質を摂取しているヒトに比べて、朝食で多くのタンパク質を摂取しているヒトでは、骨格筋指数※5や握力が高く、1日のタンパク質摂取量に対する朝食でのタンパク質摂取量の比率と骨格筋指数は正の相関を示すことがわかりました(図4)。観察研究であるため因果関係はまだ不明な点がありますが、ヒトでも朝のタンパク質が筋肉量の維持・増加に有効である可能性が示されました。
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(3) 研究の波及効果や社会的影響
朝(活動期のはじめ)のタンパク質摂取による筋量増加作用には体内時計が重要という本研究結果から、体内時計に合わせたタンパク質の摂取が筋量増加には効果的である可能性があります。これは反対に夜間勤務やシフトワーク、朝食欠食など体内時計を乱すような生活リズムの場合、朝食のタンパク質摂取による筋量増加の恩恵は受けにくい可能性も考えられます。また、追加検証は必要ですが、タンパク質の量だけでなく、摂取タイミングもうまく活用することで、筋力や筋量が低下しやすい高齢者の健康を効率よく維持・増進できるかもしれません。
(4) 今後の課題
実際に時計遺伝子がどのような分子メカニズムでタンパク質の摂取タイミングによる効果を生み出しているのか、また、ヒトを対象とした介入研究によって朝食のタンパク質摂取による有効性を評価する必要があり、解明すべき課題はまだまだ多くあります。
(5) 研究者のコメント
本研究ではタンパク質の摂取タイミングが筋量の増加に重要であり、特に朝(活動期のはじめ)の摂取効果が高いことが示されました。しかし多くの国の食事調査では朝食のタンパク質摂取量は少なく、不足しがちとなっています。今後、朝食のタンパク質の摂取をすすめる上で、朝食でも摂取しやすいタンパク質豊富なメニューなどの開発も望まれます。
(6) 用語解説
※1 概日時計
睡眠・覚醒や体温など、生体の様々な機能の日内変動を制御するシステム。ClockやBmal1などの時計遺伝子が働くことで、約24時間のリズムを刻むことができる。概日時計は、栄養素の消化吸収、代謝などの日内変動にも関わる。
※2 過負荷
協働筋(ヒラメ筋と腓腹筋)の部分切除により足底筋に過負荷をかけて筋肥大を誘導するモデル。
※3 分岐鎖アミノ酸
側鎖に分岐した構造を持つアミノ酸の総称で、バリン、ロイシン、イソロイシンがある。
※4 カゼイン
牛乳のタンパク質の大半を占めるタンパク質。栄養学分野の研究用飼料でよく用いられるタンパク質源。
※5 骨格筋指数
四肢の筋肉量(kg)を身長(m)の2乗で除した値(kg/m2)。骨格筋量の指標として用いられている。
(7) 研究助成
研究費名:SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」
研究課題名:高齢者に配慮した時間栄養・運動に基づく次世代型食・運動レシピの開発
研究代表者名(所属機関名):柴田 重信(早稲田大学)
研究費名:未来社会創造事業(食・運動・睡眠等日常行動の作用機序解明に基づくセルフマネジメント)
研究課題名:時間栄養学視点による個人健康管理システムの創出
研究代表者名(所属機関名):柴田 重信(早稲田大学)
研究費名:科学研究費 若手研究
研究課題名:朝食のタンパク質不足が筋肥大を抑制する分子メカニズムの解明
研究代表者名(所属機関名):青山 晋也(長崎大学)
研究費名:日本栄養・食糧学会 栄養・食糧学基金 若手研究助成
研究課題名:タンパク質摂取の時間パターンが筋量を調節する分子機序の解析
研究代表者名(所属機関名):青山 晋也(長崎大学)
(8) 論文情報
雑誌名:Cell Reports
論文名:Distribution of dietary protein intake in daily meals influences skeletal muscle hypertrophy via the muscle clock
執筆者名(所属機関名):Shinya Aoyama1,2#, Hyeon-Ki Kim1#, , Masaki Takahashi3, Yu Tahara1, Shigeki Shimiba4, Rina Hirooka5, Mizuho Tanaka5, Takeru Shimoda5, Hanako Chijiki5, Shuichi Kojima5, Keisuke Sasaki5, Kengo Takahashi5, Saneyuki Makino5, Miku Takizawa5 ,Kazuyuki Shinohara2, Shigenobu Shibata1*
(青山晋也1,2#、金鉉基1#、高橋将記3、田原優1、榛葉繁紀4、廣岡里菜5、田中瑞穂5、下田武尊5、千々木華子5、小島修一5、佐々木啓佑5、高橋健吾5、牧野真之5、滝澤美紅5、篠原一之2、柴田重信1*)
所属機関名:
1:早稲田大学 理工学術院
2:長崎大学 医学部 神経機能学
3:東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院
4:日本大学 薬学部
5:早稲田大学 大学院先進理工学研究科
# 筆頭著者、*責任著者
掲載日(東部時間):2021年7月6日(火)AM 11時
掲載日(日本時間):2021年7月7日(水)AM 1時
DOI:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2021.109336
Received — 2021年7月8日
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理工学術院
電池材料粒子内部の高分解可視化
2021年7月8日 11:24
電池材料粒子内部の高精細な可視化に成功
多次元イメージング計測とデータ科学の連携
【発表のポイント】
- 電池材料など複雑・不均一な内部構造を分析するナノ顕微鏡や化学分析ツールが求められている
- リチウム電池正極活物質粒子内部の化学状態を高分解可視化
- 放射光計測データのデータクラスタリングにより構造の抽出・分類に成功
- 先端材料のナノ機能分析の効率化に期待
【概要】
電池材料などとして使われる、内部構造が複雑な先端材料の働きについては未だ不明な点が多く、内部の形状だけでなく化学状態を高解像で可視化するツールの確立が急務です。東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 石黒志助教(理化学研究所放射光科学研究センター 客員研究員)、高橋幸生教授(理化学研究所放射光科学研究センター チームリーダー)、東北大学大学院工学研究科 上松英司大学院生(理化学研究所放射光科学研究センター 研修生)、早稲田大学 大久保將史教授、産業技術総合研究所 細野英司博士、北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 ダム ヒョウ チ教授らの共同研究グループは、リチウム電池正極材料の一つであるニッケル−マンガン酸リチウム粒子の1粒に対して、2次元空間での試料の高空間分解能化学状態可視化技術である「タイコグラフィ-XAFS法」[1][2] 測定を大型放射光施設「SPring-8」[3] で行い、計測データを粒子内部のマンガンとニッケルの元素分布や価数分布のデータマイニングと連携させることで、粒子内部の複数の不均一な構造の可視化に成功しました。
本研究成果は今後、さまざまな先端機能性材料のナノ構造・化学状態分析に応用されるものと期待できます。
本研究成果は、米国現地時間令和3年6月17日に、学術専門誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」のオンライン版に掲載されました。
【詳細な説明】
背景
近年、電池材料などに使われている先端機能性材料は、ますます複雑化しています。一方、実動中に「材料の働きが隅々まで行き渡っているのか?」、「一部しか働いていないのではないか?」、「どこから劣化しているのか?」などという問いについては、特にナノスケールの領域で未だに多くの事象がブラックボックスとなっています。リチウム電池正極材料も粒子レベルで形状・組成・構造を均一に合成できるわけでなく、電池としての働きは本質的に不均一であり未知な部分も多くあります。より高性能・高効率な材料開発のためには、材料の構造・機能の関係性を試料内部深くまで高解像で明らかにする手法が望まれています。
放射光X線計測は電子顕微鏡よりも厚い試料の内部まで観察できることに強みがあります。その中でもX線の可干渉性(コヒーレンス)[4] を利用したイメージング技術であるX線タイコグラフィは、非常に高い空間分解能と感度を実現できる次世代のX線顕微法であり、放射光施設を中心に利用法の研究が進められています。これまで共同研究グループはX線タイコグラフィ法に、X線吸収分光分析法であるX線吸収微細構造(XAFS)を組み合わせた「タイコグラフィ−XAFS法」の開発を行い、数十 nmオーダーの空間分解能により、不均一な試料中の微小領域の化学状態を調べられるようになりました。更に近年、計測は飛躍的に高分解能・高次元化され、得られる情報量が爆発的に増えてきており、高度情報処理との連携が必要不可欠になってきています。
本研究の成果
本研究では、共同研究グループがこれまでに開発を推し進めてきた「タイコグラフィ−XAFS法」をリチウム電池正極活物質であるスピネル型ニッケル−マンガン酸リチウム(LNMO)粒子に適用し、データマイニングの手法を駆使して、不均一な内部構造の可視化を検討しました。スピネル型LNMOは高いエネルギー密度と作動電圧を有する正極活物質として注目されています。しかし、充放電サイクルに伴う性能劣化が実用化への大きな課題となっており、その主要因としてLNMO粒子内部のナノスケールでの組成・価数等の不均一性が関連すると予想されています。「タイコグラフィ−XAFS法」によるスピネル型LNMO粒子の観察は、大型放射光施設SPring-8の理研ビームラインBL29XUで行いました。Ni及びMnの2元素の各K殻吸収端近傍のX線エネルギー点で、LNMO粒子を2次元走査しながら回折パターンを測定し、位相回復計算を実行することで、Ni及びMnの各K殻吸収端でそれぞれ80 nm、60 nmの空間分解能の再構成振幅・位相画像と対応するXAFS及び位相スペクトルを得ることに成功しました。再構成画像から得られるXAFS及び位相スペクトルを分析することで、Ni及びMnの元素組成比分布や価数分布粒子全体の電子密度分布を得ることができます。
これらの各化学状態パラメータの空間分布は、LNMO粒子内に組成・化学状態に複数の要素が不均一に分布していることを示唆するものです。この結果を踏まえて、これらのパラメータ間の相関性を分類抽出する目的で、データクラスタリング[5]を用いて調べたところ、統計的に3つの相関性分布G1,G2,G3にグループ分けすることができました。G1,G2,G3各グループのもつ相関関係を注視すると、それぞれ規則型、不規則型、不純物相と予想される構造分布をもち、主成分であるG1粒子中心部、その他は粒子が外郭部に分布する傾向があるということが示唆されました。
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今後の期待
本研究成果は現状では、測定粒子は電池として働く前の止まった状態ですが、次の段階として正極活物質粒子が実際に電池として働いている“その場(オペランド)”でのタイコグラフィ-XAFS計測・データクラスタリングへと展開することで、データ解析の力を駆動力にして、充放電過程での動的な化学反応においても、主反応・副反応などを分類することが可能になると予想されます。タイコグラフィXAFS計測は、次世代放射光施設での光源性能の向上の恩恵を最大級に受ける測定技術であるので、今後、更なる計測時間の短縮化・空間分解能の向上・オペランド計測の普及・高度化が見込めます。それに伴い、計測から得られる情報量が爆発的に増加します。その結果、データマイニングなど高度情報処理の積極的な活用により、電池・触媒など先端材料の機能の根源がより効率的に理解され、設計・開発が促進されるものと期待できます。
【謝辞】
本研究は日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(課題番号 18H05253, 19H05814, 19H05815, 19H05816, 20K15375)及び文部科学省「人・環境と物質を繋ぐイノベーション創出ダイナミックアライアンス」プロジェクトの支援を受けたものです。
【論文情報】
タイトル:Visualization of Structural Heterogeneities in Particles of Lithium Nickel Manganese Oxide Cathode Materials by Ptychographic X-ray Absorption Fine Structure
著者:Hideshi Uematsu, Nozomu Ishiguro*, Masaki Abe, Shuntaro Takazawa, Jungmin Kang, Eiji Hosono, Nguyen Duong Nguyen, Hieu Chi Dam, Masashi Okubo, Yukio Takahashi
掲載誌:The Journal of Physical Chemistry Letters
DOI:10.1021/acs.jpclett.1c01445
筆頭著者:上松英司(東北大学 大学院工学研究科 金属フロンティア工学専攻 修士2年・東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター・東北大学多元物質科学研究所)
責任著者:石黒 志(東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター・東北大学多元物質科学研究所)
【用語説明】
[1] X線タイコグラフィ
コヒーレントX線回折イメージング手法の一つ。X線照射領域が重なるように試料を二次元的に走査し、各走査点からのコヒーレント回折パターンを測定する。そして、回折パターンに位相回復計算を実行し、試料像を再構成する手法。
[2] X線吸収微細構造(XAFS)
X線吸収スペクトルの吸収端付近にみられる固有の構造。XAFSの解析によって、X線吸収原子の電子状態やその周辺構造などの情報を得ることができる。XAFSは、X-ray Absorption Fine Structureの略。
[3] 大型放射光施設「SPring-8」
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その利用者支援は高輝度光科学研究センターが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げたときに発生する強力な電磁波のこと。SPring-8では、遠赤外から可視光線、軟X線を経て硬X線に至る幅広い波長域で放射光を得ることができるため、原子核の研究からナノテクノロジー、バイオテクノロジー、産業利用や科学捜査まで幅広い研究が行われている。
[4] 可干渉性(コヒーレンス)
波と波が重なり合うとき、打ち消し合ったり、強め合ったりする性質。
[5] データクラスタリング
機械学習・データマイニング手法の一つ。「教師なし学習」に分類され、多数のデータ群{xi}から、出力結果yを未知のまま、その背後に存在する本質的な相関性を分類する解析手法であり、未知の事象の存在を予測するのに力を発揮する。
Received — 2021年7月2日
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理工学術院
7月度予約受付中【全学年対象】卒業生とのトークセッション
2021年7月2日 19:38
7月度予約受付中
2021年 6月~12 月、早稲田大学の卒業生が活躍する企業から、
毎月数社厳選し完全オンラインのトークセッションを実施します。
先輩社員が各月のトークテーマに沿って企業概要や仕事の内容などをお伝えし、
座談会では直接の会話や質問もできます。
ぜひ積極的に参加して、自身の仕事研究に生かすだけでなく、
今後のキャリアのことを考えるきっかけにしましょう。
《参加にあたってのお願い》
イベント参加にあたって、事前にZoomを最新版に更新していただくようお願い致します。
更新されていない場合、ブレイクアウトルーム間の自由移動ができない場合があります。
【7月度】
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■日程:2021年7月1日(木)2日(金)8日(木)9日(金)16日(金) ■時間:各日12:15-13:15 ■テーマ:【ベンチャー】【地方創生】【大手と中小】【グローバル】 ■登壇予定企業(五十音順): ※登壇日は上記フライヤーを参照 茨城いすゞ自動車、東京ガス アイシン、スズキ、データビズラボ タムラ製作所グループ、ブラザー工業、北海道ガス ココナラ、ベスト学院、万田発酵 キャリア・マム、スタイレム瀧定大阪、日本旅行東北 ■参加方法:下記イベント特設ページより、事前予約が出来ます。 |
【過去実施分】
【イベント内容に関するお問い合わせ】
早稲田大学キャリアセンター:career#list.waseda.jp(#を@に置き換えてください。)
Received — 2021年6月29日
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理工学術院
悪臭問題を解決できるスルフィド合成
2021年6月29日 14:40
悪臭問題に解決策 芳香環交換反応を利用したスルフィド合成法の開発
~独自の金属触媒でスルフィド類の芳香環を付け替える~
発表のポイント
- 芳香環交換反応により芳香族スルフィド部位を他の芳香族化合物に移動させることに成功。
- 独自に開発した金属触媒を用いて幅広い芳香族スルフィド化合物の合成を実現。
- 悪臭の原因となるチオール類を用いない、新たなスルフィド合成法を提供。
早稲田大学理工学術院の山口潤一郎(やまぐちじゅんいちろう)教授らの研究グループは、独自に開発した金属触媒により、芳香環※1のスルフィド部位を異なる芳香環へと移動させるスルフィド合成法の開発に成功しました。
芳香族スルフィド※2は医農薬、有機材料に頻出する重要化合物です。これまで芳香族スルフィドをつくる場合、「強烈な悪臭を発するチオール※3」をスルフィド化剤として使用する手法が一般的でした。その悪臭、毒性からチオールの使用、保管に際しては特別な排気設備や周囲環境への配慮など細心の注意を払う必要があります。そのためチオールを用いない芳香族スルフィド合成法が求められていました。
今回の研究では、独自に開発したニッケル触媒(Ni/dcypt)と芳香環交換反応※4という概念を用いて、新たな芳香族スルフィド合成法の開発に成功しました。取扱いが容易な無臭の芳香族スルフィドをスルフィド化剤として使おうというユニークな発想のもとに生まれた新反応です。
今回の研究により、医薬品などを含む40種類以上の化合物を様々な芳香族スルフィドに変換可能であることが分かっており、悪臭問題を解決できる斬新な芳香族スルフィド合成法を提供することとなります。
本研究成果は、アメリカ化学会『Journal of the American Chemical Society』のオンライン版に2021年6月28日(月)(現地時間)に掲載されました。
論文名:Ni-Catalyzed Aryl Sulfide Synthesis through an Aryl Exchange Reaction (ニッケル触媒による芳香環交換反応を利用した芳香族スルフィド合成)
(1)これまでの研究で分かっていたこと
芳香族スルフィドは医薬品や農薬、有機材料といった有用化合物に頻出する重要化合物です。これらの芳香族スルフィド化合物はチオール類を用いたSN2反応※5やクロスカップリング反応※6など様々な手法で合成できます。これらは信頼性の高い手法であるもののチオール類は高い毒性や悪臭を有する化合物であり、取扱いに際し、特別な排気設備や周囲環境への配慮が必要といった課題が残されていました。さらに、これらの反応の多くは塩基を必要とするため適用可能な化合物にも制限がありました。
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(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
早稲田大学の研究グループ(先進理工学研究科博士後期課程3年一色遼大さん、同1年黒澤美樹さん、高等研究所武藤慶講師、理工学術院山口潤一郎教授)は芳香環交換反応を利用した芳香族スルフィドの新たな合成法の開発に挑戦しました。
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研究グループ 前左:一色遼大さん 前右:黒澤美樹さん 後左:山口潤一郎教授 後右:武藤慶講師
今回見出したスルフィド合成法により40種類以上の化合物を様々な芳香族スルフィドに変換可能であることが分かりました。複雑な構造を有する医薬品候補化合物を変換することも可能であり、新たな医薬品候補化合物を簡便に提供することにも成功しています。悪臭問題を解決するのみならず、これまでのスルフィド合成法で必須であった塩基を用いる必要がないため、比較的温和な条件で進行します。また詳細な機構解明研究により、この新形式反応の反応機構が明らかとなりました。
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(3)そのために新しく開発した手法
本研究グループは2020年2月に、芳香環交換反応を利用した世界初のエステル合成法の開発に成功しました (参照: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscatal.0c00291)。
今回、この芳香環交換反応で得られた知見を応用すれば、チオールを用いないスルフィド合成が実現できると考えました。膨大な反応条件検討の結果、研究室で開発したニッケル触媒(Ni/dcypt)を用い、ピリジルスルフィドをスルフィド化剤とすることで種々の芳香族化合物(芳香族エステル、フェノール誘導体、芳香族ハロゲン化物)との芳香環交換反応が進行し新たな芳香族スルフィドが生成することを見出しました。
(4)研究の波及効果や社会的影響
今回開発したスルフィド合成法はチオールを使用しないため、その悪臭や毒性問題を解決できます。また、安価で容易に入手可能な様々な芳香族化合物を変換することができ、医薬品化合物の直接変換にも利用することができます。環境調和に優れた芳香族エステルやフェノール誘導体を原料にできる点や、調製や取扱いが容易なピリジルスルフィドをスルフィド化剤にできる点から研究室スケールはもちろん、工業規模での応用も期待できます。
(5)今後の課題
適用可能な化合物も多く非常にユニークな方法であるものの、反応に高温を必要とすることが今後の課題です。反応はまだ発見されたばかりであるため、今後、より綿密な触媒改変、反応条件の検討により、これらの課題を克服したいと考えています。
(6)研究者のコメント
安価に得られる芳香族化合物を有用化合物に変換する新奇反応の開発を継続して行ってきました。3つの新しい反応形式を開発し、その1つがこの芳香環交換反応です。すでに反応のコンセプトは昨年報告することができましたが、有用化合物に変換するという課題を乗り越えたのが本研究の成果となります。一色さん、黒澤さんの活躍がなければこの考えを実現するには至りませんでした。今後も、あっと驚くような高難度有機反応を開発していきたいと考えています。
(7)用語解説
※1 芳香環
ベンゼン環をもつ環状構造。これらをもつ有機化合物を芳香族化合物という。芳香族化合物は特有の香りを発する。
※2 芳香族スルフィド
芳香環にメルカプト基(SR)がついたもの。医農薬や機能性材料に用いられる。
※3 チオール
末端に水素化された硫黄をもつ有機化合物(HSR)。悪臭をもつ。
※4 芳香環交換反応
2種類以上の芳香環(アリール)を交換すること。概念は単純ではあるが、実際は互いの芳香環を同時に反応させることができる触媒が必要である。
※5 SN2反応
有機化学における一般的な反応形式の一つ。二つの化合物が結合の切断を伴いながら新たな結合を作り出す反応。
※6 クロスカップリング反応
金属触媒を用いて二種類の化合物を連結させる反応。2010年のノーベル化学賞にも選ばれている。
(8)論文情報
雑誌名:Journal of the American Chemical Society
論文名:Ni-Catalyzed Aryl Sulfide Synthesis through an Aryl Exchange Reaction (ニッケル触媒による芳香環交換反応を利用した芳香族スルフィド合成)
著者:Ryota Isshiki, Miki B. Kurosawa, Kei Muto, and Junichiro Yamaguchi(一色遼大、黒澤美樹、武藤慶、山口潤一郎)
掲載日(現地時間):2021年6月28日(月)
DOI:10.1021/jacs.1c04215
掲載URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.1c04215
Received — 2021年6月24日
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理工学術院
過冷却を抑制するメカニズムを解明
2021年6月24日 09:54
過冷却を抑制するメカニズムを解明
~セミクラスレートハイドレート潜熱蓄熱材の実用化へ期待~
発表のポイント
- 水溶液が凝固点以下に冷却されても固体化せずに液体状態を維持する現象を過冷却といいます。過冷却を解除し、積極的に相変化を起こす為のトリガーとなる物質に関する研究は数多いものの、メカニズムの詳細は不明でした。
- 過冷却水溶液の電子顕微鏡観察を通して、結晶の最小構造単位として考えられるクラスター※1が、銀ナノ粒子から生成するその瞬間を捉えることに成功しました。
- セミクラスレートハイドレート※2生成前の過冷却水溶液における溶液構造を観察した結果、銀ナノ粒子はクラスターの生成を加速し、過冷却を抑制、結晶化を促進する一方、パラジウム、金、イリジウムなどの貴金属ナノ粒子にはその効果は見られませんでした。
- 過冷却抑制効果により蓄熱時の省エネ効果が期待でき、色々な温度で相変化するセミクラスレートハイドレート潜熱蓄熱材の実用化が加速されることが期待されます。
発表の概要
早稲田大学理工学術院の平沢 泉教授、大阪大学大学院基礎工学研究科の菅原 武助教、パナソニック㈱の町田博宣博士らの研究グループは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)ならびに日本学術振興会科学研究費助成事業のプロジェクトにおいて、潜熱蓄熱※3の研究開発に取り組んできました。今般、セミクラスレートハイドレート(SCH)の過冷却水溶液中において結晶の最小構造単位として考えられるクラスターが、銀ナノ粒子から生成するその瞬間を捉えることに成功しました。また、銀ナノ粒子がクラスター生成を促進し、SCH生成過程における過冷却を大幅に抑制するメカニズムを明らかにすることに成功しました。
これまで、SCH生成過程における大きな過冷却が実用化への課題であることが知られていましが、過冷却を抑制するための設計指針は明らかになっていませんでした。本研究により明らかになった過冷却抑制効果は、蓄熱材としての利用のみならず、SCHの産業利用において省エネルギー効果が期待でき、特に、SCHを利用した潜熱蓄熱の実用化が加速されることが期待されます。
本研究成果は、国際科学誌「Communications Materials」(オンライン)に、6月18日(金)午後6時(日本時間)に公開されました。
【論文情報】
・掲載誌:Communications Materials
・論文名:The moment of initial crystallization captured on functionalized nanoparticles
・DOI: 10.1038/s43246-021-00171-w
Ⅰ.研究の背景
環境中に排出されている未利用熱エネルギーを有効活用する一環として、蓄熱技術が注目されています。蓄熱技術には様々な方式がありますが、所望の温度域での相変化を利用する潜熱蓄熱は、利用方法が簡便で低コストであるため、期待されています。一方で、潜熱蓄熱材の多くには、過冷却現象がもたらす蓄熱動作の不安定化・冷却コスト上昇といった課題があり、実用化の障害となっていました。
本研究グループは常温常圧でセミクラスレートハイドレート (SCH)を生成することが知られている第四級オニウム塩に注目し、潜熱蓄熱材としての研究を行ってきました(H. Machida et al., CrystEngComm, vol. 20, pp. 3328–3334 (2018), H. Machida et al., J. Cryst. Growth, vol. 533, Article No. 125476 (2020))。SCHはオニウムカチオンのアルキル鎖長やカウンターアニオンの種類によって、ハイドレートの分解温度を変化させることができるため、デザイン可能な潜熱蓄熱材です。SCHは生成時における大きな過冷却が課題であることが知られていましたが、それを抑制するための設計指針は明らかになっていませんでした。
このような課題を解決するため、本研究グループはSCH過冷却水溶液中の溶液構造に着目し、凍結割断レプリカ法※4を組み合せた電子顕微鏡観察により、過冷却抑制剤とクラスター生成の関係を系統的に調査しました。その結果、ペンタン酸銀とTetra-n-butylammonium fluoride(TBAF)を添加した系において、約5 nmの銀ナノ粒子が生成し、それを起点に直径10-30 nmのクラスターが生成する瞬間を捉えることに成功しました(図)。また、銀ナノ粒子とTBAFの協奏的な効果により、クラスターの生成が促進され、SCHを生成させる過程において過冷却を抑制することにも成功しています。更に、パラジウム、金、イリジウムなどの貴金属ナノ粒子は過冷却抑制効果が小さいことと、そのメカニズムも明らかにしました。
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図 a) SCH生成前の水溶液サンプル#1, #2, #11, #13から凍結割断レプリカ法により調製されたレプリカ膜の電子顕微鏡(HAADF-STEM)画像 ペンタン酸銀を添加したサンプル#11, #13では、5 nm程度の銀ナノ粒子が多数観察される。ペンタン酸銀とTBAFを両方とも添加したサンプル#13では、281 Kですでに10-30 nmのクラスターが存在し、冷却に従って、クラスターの数密度が増加する。その結果、小さい過冷却度でSCHが生成する。
b) a)#13-a と同じレプリカ膜の電子顕微鏡(SE-STEM)画像(異なる視野) 直径約5 nmの銀ナノ粒子(赤矢印で指す黒い点)を囲む様に10-30 nmのクラスターが形成されている。
Ⅱ.本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、銀ナノ粒子とTBAFによるクラスターの生成促進機構が明らかになったことで、様々な第四級オニウム塩のSCHを用いた潜熱蓄熱材の過冷却を抑制する設計指針が明確になりました。SCHにおける結晶生成のメカニズムと過冷却抑制方法が明らかになったことで、蓄熱時の省エネ効果が期待できるため、潜熱蓄熱材の実用化が加速され、また、医薬・食品、機能品、宝石、環境、エネルギー分野の結晶創りにおける生産効率、品質向上に寄与することが期待されます。
Ⅲ.研究者のコメント
今回の成果は、セミクラスレートハイドレートにつきまとう「過冷却」という問題点を解決し、セミクラスレートハイドレートをもっと有効に利用したいという研究者全員の熱い思いから得られたものです。色々な実験を行ううちに、偶然と必然が絡み合い、今回の成果を得ることができました。さらに研究を続け、セミクラスレートハイドレートの利用が促進されるよう尽力したいと思います。
Ⅳ.用語解説
※1 クラスター
溶液中で原子や分子が集合した集合体であり、結晶化する前の過冷却溶液中にも存在する。結晶の最小構造単位として考えられる
※2 クラスレートハイドレート
メタンハイドレートに代表されるクラスレートハイドレートは、水分子が水素結合によって作る籠状構造の内部にゲスト分子と呼ばれる分子が包接されてできる結晶。その中で、ゲスト分子が水素結合ネットワークに参加するハイドレートはセミクラスレートハイドレート(SCH)と呼ばれる
※3 潜熱蓄熱
物質が相変化する際の熱(相変化エンタルピー、いわゆる潜熱)を利用した蓄熱方法。深夜の余剰電力を利用した氷蓄熱がその一例。氷は0℃でしか融解しませんが、SCHは、ゲスト分子を選択することで、約30℃までの範囲で相変化温度をデザインすることができる
※4 凍結割断レプリカ法
高真空である電子顕微鏡鏡筒内部で観察できないような水溶液などを瞬間凍結によりガラス化し、その割断面に現れる溶液構造由来の凹凸を正確にかたどるレプリカ膜を作る方法。このレプリカ膜を電子顕微鏡で観察することができる
Ⅴ.論文情報
掲載誌:Communications Materials DOI: https://doi.org/10.1038/s43246-021-00171-w
論文名:“The moment of initial crystallization captured on functionalized nanoparticles”
著者名:Hironobu Machida*, Takeshi Sugahara*, and Izumi Hirasawa (*責任著者)
なお、本研究は、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)が受託する国立研究開発法人新エネルギ-・産業技術総合開発機構(NEDO)未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発(PL:小原 春彦(産業技術総合研究所 理事 エネルギー・環境領域 領域長))の蓄熱技術プロジェクト、ならびに日本学術振興会科学研究費助成事業 No. JP18K05032の一環として行われました。
Received — 2021年6月16日
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理工学術院
カーボンニュートラル加速 C2X始動
2021年6月16日 15:21
C2X始動 「異業種連携、複数社のコラボレーションでのカーボンニュートラル加速、Carbon to X (CO2を新たな価値に)共創プロジェクトへ9社が参画」
~再エネ主力時代における循環型で持続可能な脱炭素社会の実現に向けて~
株式会社サニックス、スマートシティ企画株式会社、株式会社ゼネシス、株式会社タクマ、株式会社リテックフロー、株式会社巴商会、大栄THA株式会社、NECキャピタルソリューション株式会社、学校法人早稲田大学は再エネ主力時代における循環型で持続可能な脱炭素社会の実現に向けたオープンイノベーションプラットフォームのC2X(Carbon to X)プロジェクトに参画することになりましたので、お知らせいたします。
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【概要】
■C2Xの目的
異業種連携、複数社のコラボレーションによる事業化に重点をおいた組織として「C2X」を機能させることで、再エネ導入による循環をベースとした持続的で安心・安全かつ快適な脱炭素社会を実現することを目的とします。
■C2Xの機能・役割
脱炭素社会実現に向けたCarbon to Xの具体化支援を行います。
①事業開発
- 事業の構想/企画/事業化の検討、事業性/LCA評価、フィールド実装、事業推進の組織等の管理等を行います。
②ソリューションの提供
- 脱炭素社会実現に向けたソリューションの探索、提供、ライセンス/パテントの管理等を行います。
③マーケティング・提言の推進
- 関係省庁への政策の提言、ソリューションの標準化の提案を行います。
④ファンドとの連携
- アーリーステージでの探索・成長加速を目的に投資ファンドとファイナンス組成、事業評価で連携していきます。
■C2Xで進める個別プロジェクト例
以下のテーマでプロジェクトの検討、具体化、実証等を進めています。
「CO2溶解装置を活用した水産養殖」、「次世代清掃工場」、「次世代廃棄物リサイクル」等
*参画企業の拡大に合わせて、随時その他のプロジェクトも組成、具体化する予定です。
■C2Xアドバイザー
C2Xでは脱炭素社会の実現に向けて早稲田大学小野田教授と共同で個別プロジェクトの具体化を図ります。
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主な研究分野:スマートコミュニティ、次世代モビリティシステム、未利用バイオマス利活用技術・システム、再生可能エネルギー熱利用技術・システムエネルギーマネジメントシステム、環境配慮設計、LCA、資源循環技術・システム、廃棄物処理・リサイクルシステム
■参加企業の役割
以下の参加企業と共に、C2Xプロジェクトを進めます。
株式会社サニックス
- 廃棄物リサイクル、脱炭素エネルギー事業等環境サービスプロバイダーとしてカーボンリサイクル事業の可能性について検討
スマートシティ企画株式会社
- 事業開発、ソリューションの提供、マーケティング・提言の推進、C2Xの事務管理
株式会社ゼネシス
- CCSのアミン溶液回収や、低温熱回収をフィージブルにする独自の全溶接型高効率プレート熱交換器ソリューションを提供
株式会社タクマ
- ごみ焼却炉のトップランナーとして、2050カーボンニュートラルに向けた次世代清掃工場を自治体、地域とともに構想、検討
株式会社リテックフロー
- CO2の再利用と、海藻養殖に最適な流れを与えることで、従来海藻養殖に比べて数倍成長が促進する養殖技術を提供
株式会社巴商会
- 産業用ガスの専門商社としてガス利用ソリューション・ネットワークを提供、技術部門によるガス評価機能などを提供
大栄THA株式会社
- 高濃度気体溶解装置を活用したCO2溶解による微細藻類・藻類養殖の育成を促進する、高効率且つ安全なCO2溶解ソリューションを提案
NECキャピタルソリューション株式会社
- 事業開発、ソリューションの提供、マーケティング・提言の推進、ファンドとの連携
早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科 小野田弘士教授
- 事業開発、ソリューションの提供、マーケティング・提言の推進、C2Xへのアドバイザリー業務の実施