ノーマルビュー

「Immiscibility-driven Folding in Periodically Grafted Amphiphilic Polymer」(2023/7/18)

著者: staff
2023年6月8日 17:00

演題:Immiscibility-driven Folding in Periodically Grafted Amphiphilic Polymer

 

日時:2023年7月18日(火)9:00-10:40

 

会場:西早稲田キャンパス 55S号館 510号室

 

講師:Ramakrishnan Subramaniam(Indian Institute of Science 教授)

 

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

 

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

 

主催:先進理工学研究科 応用化学専攻

 

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

 

TEL:03-5286-3000

「海洋遺伝資源および塩基配列データの利用に関する国際的規制」(2023/6/20)

著者: staff
2023年6月7日 10:51

演題:海洋遺伝資源および塩基配列データの利用に関する国際的規制

 

日時:2023年6月20日(火) 15:00 – 16:40

 

会場:早稲田大学 120-5号館 121会議室

 

講師:本田 悠介(神戸大学大学院 海事科学研究科 准教授)

 

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

 

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

 

主催:早稲田大学 先進理工学部 生命医科学科

 

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

 

TEL:03-5286-3000

令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 受賞コメント

著者: contributor
2023年6月5日 14:48

令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」において、本学から5名の研究者が受賞しました。
科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は発明を行った研究者を表彰する「科学技術賞(研究部門)」に理工学術院の 尾形哲也教授、柴田重信名誉教授、竹山春子教授、ゲスト・マーティン教授、萌芽的な研究・独創的視点に立った研究等高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた若手研究者を表彰する「若手科学者賞」に、理工学術院の水内良専任講師が選ばれました。
以下に、各受賞者のコメントを掲載いたします。

科学技術賞 研究部門

受賞業績:深層予測学習によるロボットのマルチタスク学習に関する研究
理工学術院 尾形 哲也 教授

受賞コメント
この度は、「深層予測学習によるロボットのマルチタスク学習に関する研究」に対し、文部科学大臣科学技術賞を受賞することができ、大変光栄に思っております。ロボットの知覚と身体運動の実時間予測を深層学習により実現することで、ロボットが複数のタスクを学習し、実世界での活動を自律的かつ効率的に行える方法論を追求しました。今回の研究成果は、ロボット工学の分野における新たな展望を切り拓くものであり、今後、産業応用、医療分野、災害対応など実社会の多様な分野への応用が期待できると考えています。受賞には、これまでに研究に関わってくれた多くの皆様の協力と支援がありました。改めて受賞に対して心からの感謝の意を表し、これからも一層の研究成果を追求していく覚悟をお伝えしたいと思います。ありがとうございました。。

受賞業績:時間栄養と時間運動の確立と健康科学への応用研究
理工学術院 柴田 重信 名誉教授

受賞コメント
この度は、栄誉ある科学技術賞 研究部門を頂戴し、大変光栄に存じております。この研究にかかわっていただいた皆様、特に研究室所属の大学院生スタッフ、さらに共同研究先の方々には大いに感謝しております。
本研究は、体内時計に支配される時間軸の健康科学を推進する一環として、食事や栄養素を摂るタイミングや運動のタイミングの重要性を学問的に明らかにしました。従来、健康維持には食物の内容、調理法、量についての要素が重要視されてきましたが、今回の発見により同じ食物でも朝食や夕食で効果が異なるなど摂取するタイミングも重要な要素であることが分かりました。運動も然りで、運動効果に対するタイミングの違いを明らかにしてきました。時間栄養学や時間運動学という新たな学問分野が開拓され、時間軸の健康科学の発展が期待されます。
引き続き、研究成果の社会実装に向け研究を続けており、今後ともご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

受賞業績:シングルセル技術による環境有用微生物の深層解析研究
理工学術院 竹山 春子 教授

受賞コメント
科学技術賞を頂くことができて大変光栄に思います。研究を支えてくださった先生方、研究室のスタッフ・メンバーには深く感謝いたします。
先進理工学部生命医科学科創立とともに研究室を立ち上げ、今回受賞に至った環境微生物のシングルセル解析技術の開発研究をスタートしました。環境に存在する多くの難培養性微生物の利活用が目的でした。将来どのような場所でも解析ができる技術を目標として、ドロップレットを用いたシングルセルのハンドリング方法、さらにはゲノム解析と進みました。また、ラマン分光法と出会ったことで、既存の機器分析手法では不可能であったシングルセルレベルでの代謝産物同定を可能とする道が開かれました。微生物シングルセルオミックス解析技術が多くの研究に貢献できるよう、プラットホーム化を産官学連携で進めております。
新技術が新たな道を拓く、という信念で今後もさらなる発展に努めたいと思います。今後とも皆様のご支援よろしくお願いいたします。

受賞業績:tt*方程式および量子コホモロジーに関する一連の研究
理工学術院 ゲスト・マーティン 教授

受賞コメント
I am very honoured to receive the Science and Technology Award in the Research Category. It has been a great privilege for me to have worked as a professor in Japan for more than 20 years, and I deeply appreciate the kindness of my friends and colleagues here, which have made this possible. My research area is differential geometry, a subject which combines algebra and analysis with geometrical ideas. The problems we study are often related to theoretical physics – quantum theory, string theory, mirror symmetry, and so on. Building the mathematical foundations of this area in the 21st century is a huge task, and one that is truly international. Until the 19th century, mathematics was regarded as a subject for brilliant young men (mostly European). In the 21st century the subject is too broad for any one man; everyone is needed: young and old, men and women, black and white, from every country. I would like to express my sincere gratitude for the opportunities I have received to take part in this endeavour.

若手科学者賞

受賞業績:自己複製分子システムを用いた原始生命進化に関する研究
理工学術院 水内 良 専任講師

受賞コメント
この度は文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞し、誠に光栄に存じます。
これまでご指導やご助言賜った先生方、選考委員の皆様に心より感謝申し上げます。本研究では、生命の起源という自然科学の根源的な問いに挑戦しました。原始生命の痕跡は現存生命や化石には残っておらず、これまではその進化過程を推測するほかありませんでしたが、原始生命を模擬した分子のシステムを試験管内で構築し、それを実験室の中で進化させることで、原始生命にありえた進化の道筋を直接観察できるようになりました。このような基礎研究を高く評価していただいたことを心より嬉しく思っています。
私は本賞の受賞とともに、2023年4月に早稲田大学に着任し、新たに研究室を主宰しております。これからは研究室メンバーと共に生命の起源の謎に迫り、また研究成果を合成生物学における技術開発へと繋げていきたいと考えています。今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

「臓器老化モデルマウスを用いたファンクショナルフードの機能性解析」(2023/6/14)

著者: staff
2023年6月5日 10:03

演題:臓器老化モデルマウスを用いたファンクショナルフードの機能性解析

 

日時:2023年6月14日(水)10:00-11:40

 

会場:西早稲田キャンパス 55号館S棟 601号室

 

講師:清水 孝彦(国立長寿医療研究センター 老化ストレス応答研究PT プロジェクトリーダー)

 

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

 

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

 

主催:先進理工学研究科 化学・生命化学専攻

 

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

 

TEL:03-5286-3000

全固体空気二次電池を開発

著者: contributor
2023年5月25日 09:28

繰り返し充放電可能な全固体空気二次電池を開発

高分子電解質膜と酸化還元活性な有機化合物を組み合わせる

【発表のポイント】

水素イオン(プロトン)を可逆的に取り込みできる有機化合物とプロトン伝導性の高分子薄膜を組み合わせて、繰り返して充放電できる全固体空気二次電池を開発した。
一定速度(放電レート15C)における発電で、30サイクル繰り返し充放電可能なことを確認した。
小型軽量で液漏れや発火の危険性がなく折り曲げても使える可能性があるため、モバイル機器などへの応用が期待できる。

山梨大学クリーンエネルギー研究センター・早稲田大学理工学術院の宮武 健治(みやたけ けんじ)教授、早稲田大学理工学術院の小柳津 研一(おやいづ けんいち)教授らの研究グループは、水素イオン(プロトン)を可逆的に取り込みながら酸化還元反応する有機化合物とプロトン伝導性の高分子薄膜を組み合わせることにより、繰り返し充放電することができる「全固体空気二次電池」を開発しました。

空気電池※1は空気中の酸素(正極活物質)と金属(負極活物質)、イオン伝導性の電解質から構成される電池ですが、多くの場合液体電解質を用いているため、液体の漏れや蒸発、発火など安全性に課題があります。また、負極活物質が酸素や水分により劣化することも課題となっています。本研究により、プロトン伝導性高分子薄膜※2を電解質に、酸化還元活性な有機化合物を負極活物質に用いることで、可搬性と安全性に優れ、繰り返して充放電して使用することができる全固体空気二次電池の開発に成功しました。一定速度(放電速度15C)における発電実験で、30サイクル繰り返して充放電が可能であることも確認されました。今後、構成材料の高性能化・最適化や耐久性などを改善することで、携帯電話や小型電子デバイスなどモバイル機器用の電源として応用できる可能性があります。

本研究成果は、2023年5月16日(火)にドイツ化学会が発行するハイインパクトの学術雑誌『Angewandte Chemie International Edition』のオンライン版で公開されました。

【論文情報】
雑誌名:Angewandte Chemie International Edition
論文名:All-Solid-State Rechargeable Air Batteries Using Dihydroxybenzoquinone and Its Polymer as the Negative Electrode
DOI10.1002/anie.202304366

(1) これまでの研究で分かっていたこと

繰り返し充放電が可能な二次電池は携帯機器や電気自動車など様々な分野に応用されており、小型軽量化、高容量化、低コスト化を目指した研究が世界的に活発に進められています。なかでも正極の活物質に空気中の酸素を使う空気二次電池は、他の二次電池と比べて著しく高い理論エネルギー密度を持つことから注目を集めています。

これまでの空気二次電池は負極活物質としてリチウムなどの金属、電解質として非水系の有機電解質溶液が主に用いられていますが、負極活物質の劣化や電解液の漏れ出しなど多くの課題があります。固体電解質を用いた全固体空気電池も提案されていますが、負極の課題は解決されていません。

最近、負極活物質に酸化還元活性な有機化合物を用いた空気二次電池がいくつか開発されました(Li et al., Chem, 5, 2159-2170, 2019: Oyaizu et al., Chem. Commun., 56, 4055-4058, 2020)が、高分子電解質膜との組み合わせによる全固体空気二次電池はこれまで存在していませんでした。

(2) 今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

有機化合物を用いた電極と固体電解質から成る空気二次電池に挑戦しました。負極活物質としてプロトンを取り込みながら酸化還元活性を示す有機レドックス化合物(ジヒドロキシベンゾキノン※3およびその重合体)、電解質としてプロトン伝導性高分子薄膜(ナフィオン)、正極として白金触媒を含むガス拡散電極(活物質は酸素)を組み合わせた全固体空気二次電池の可能性を検討し、その結果、原理の実証に成功しました。

(3) 今回、新しく開発した手法

負極活物質であるジヒドロキシベンゾキノンの酸化還元反応を促進し、電解質膜との界面でのプロトン移動を円滑に進めるために、電子伝導性材料(カーボン粉末)とプロトン伝導性高分子(ナフィオン)を混合した負極構造を設計・構築しました。電流電位測定により負極での反応とその可逆性を確認し、充放電、レート特性、サイクル特性を評価しました。さらにジヒドロキシベンゾキノンを高分子化したところ負極活物質の利用率が40%以上向上し、全固体空気二次電池の容量も6倍以上向上することを見出しました。

本研究により開発した「全固体空気二次電池」は繰り返して充放電することができ、一定速度(放電レート15C)における発電で、30サイクル充放電が可能です。

(4) 研究の波及効果や社会的影響

リチウムイオン二次電池の性能や耐久性は日々向上していますが、リチウム資源は限られており、また、液体電解質を用いた課題(漏れ出し、蒸発、発火の危険性、など)は本質的に解決が困難です。本研究で開発した全固体空気二次電池は安全な有機レドックス化合物とプロトン伝導性高分子薄膜を用いており、これら物質はそもそも水分が含まれた状態で用いており水や酸素で電極が劣化することが無く、極めて安全性に優れています。また、高分子化合物の特徴を活かしてフレキシブルなデバイスにできる可能性もあります。今後、構成材料の高性能化・最適化や耐久性などを改善することで、携帯電話や小型電子デバイスなどモバイル機器用電源としての応用が期待されます。

(5) 今後の課題

酸化還元電位がより卑(マイナス)な有機レドックス化合物を用いることにより電池電圧を高くしたり、負極中の活物質を安定化させてレート特性やサイクル特性を改善することで、二次電池としての特性を一層向上させたいと考えています。

(6) 研究者のコメント

空気二次電池は二次電池と燃料電池の利点を兼ね備えた次世代のエネルギーデバイスとして期待されていますが、性能や安全性に関する技術的な課題が多く実用化されている例は限られています。本研究により、有機負極活物質と高分子電解質から成る全固体空気二次電池の開発に成功し、小型軽量化、高容量化、高安全性を兼ね備えた新しいタイプの空気二次電池の可能性を示すことができました。他方、今回の成果はまだ原理実証の段階であり電池電圧やレート特性、サイクル特性は改善の余地がありますので、今後、全固体空気二次電池の実用化に向けた追求を継続していきたいと考えています。

(7)用語解説

※1 空気電池

正極活物質として空気中の酸素を用いる電池。多くの場合、負極には金属が用いられている。電池内部に正極活物質を内蔵する必要が無いため、原理的に大きなエネルギー密度を持つという特徴がある。

※2 プロトン伝導性高分子薄膜

スルホン酸基などの酸性基を含む高分子から成る膜。燃料電池などの電気化学デバイスの固体電解質として用いられている。

※3 ジヒドロキシベンゾキノン

水酸基が2つ置換されたベンゾキノン。酸性条件下で酸化還元活性を示す。

(8) 論文情報

雑誌名:Angewandte Chemie International Edition
論文名:All-Solid-State Rechargeable Air Batteries Using Dihydroxybenzoquinone and Its Polymer as the Negative Electrode
執筆者名(所属機関名):Makoto Yonenaga (米長 諒)、Yusuke Kaiwa (海和 雄亮)**、Kouki Oka (岡 弘樹)**Kenichi Oyaizu (小柳津 研一)**Kenji Miyatake (宮武 健治)**
*山梨大学 クリーンエネルギー研究センター
**早稲田大学 先進理工学部 応用化学科
掲載日時:2023年5月16日(火)
掲載URL:https://doi.org/10.1002/anie.202304366
DOI:10.1002/anie.202304366

(9) 研究助成

研究費名:科学研究費補助金 新学術領域研究「ハイドロジェノミクス」(研究領域提案型)
研究課題名:高速移動水素による次世代創蓄電デバイスの設計
研究代表者名(所属機関名):宮武 健治(山梨大学)
研究分担者名(所属機関名):小柳津 研一(早稲田大学)

研究費名:科学研究費補助金 基盤研究(B)
研究課題名:全固体空気二次電池の創製:原理実証と有機負極活物質の検討
研究代表者名(所属機関名):宮武 健治(山梨大学)

研究費名:データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト
研究課題名:再生可能エネルギー最大導入に向けた電気化学材料研究拠点(DX-GEM)
研究代表者名(所属機関名):宮武 健治(山梨大学)

「Controllable Generative AI for the Metaverse and VFX」(2023/6/1)

著者: staff
2023年5月22日 11:23

演題:Controllable Generative AI for the Metaverse and VFX

 

日時:2023年6月1日(木)15:00-16:40

 

会場: 早稲田大学 121 号館 コマツ 100 周年記念ホール

 

講師:Hao Li

(CEO/Co-Founder Pinscreen Associate Professor, Mohamed bin Zayed University of Artificial Intelligence (MBZUAI))

 

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

 

参加方法:入場無料、直接会場へ

 

主催:先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻

 

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

 

TEL:03-5286-3000

世界初 テラヘルツ波信号を分配・送信

著者: contributor
2023年5月16日 11:05

世界初、大容量テラヘルツ波信号を光ファイバ無線技術で異なるアクセスポイントに分配・送信する技術を実現

Beyond 5G時代の無線システム社会実装に向けて 途切れることのない通信や省エネルギー化に期待~

【ポイント】

大容量テラヘルツ波信号を異なるアクセスポイントへ透過的に分配・送信することに世界で初めて成功
新規開発のテラヘルツ波-光変換デバイスと光ファイバ無線技術で、毎秒32ギガビットの大容量光アクセス通信を実証
 光・電波融合技術が可能にするテラヘルツ波Beyond 5Gネットワークへの重要な一歩

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)、住友大阪セメント株式会社(住友大阪セメント、代表取締役 取締役社長: 諸橋 央典)、国立大学法人名古屋工業大学(名古屋工業大、学長: 木下 隆利)及び学校法人早稲田大学(早稲田大、理事長: 田中 愛治)は共同で、テラヘルツ波となる285ギガヘルツの周波数帯で毎秒32ギガビットの大容量テラヘルツ波無線信号を異なるアクセスポイントへ透過的に分配・送信*1するシステムの実証に世界で初めて成功しました。

これを可能にしたのは、新規開発のテラヘルツ波-光変換デバイスと光ファイバ無線技術*2です。今回開発したシステムは、テラヘルツ波帯の電波のデメリットとされる「遠くに届きにくい、広い範囲をカバーしにくい」といった課題を克服することができ、無線信号のカバー範囲を拡大し、Beyond 5Gネットワークにおけるテラヘルツ波通信の展開に道を開くことができます。

本実験結果の論文は、光ファイバ通信国際会議(OFC 2023)にて非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択され、現地時間2023年3月9日(木)に発表しました。

※本研究成果における早稲田大学代表研究者は、理工学術院、川西哲也教授です。

【背景】

テラヘルツ波通信は、Beyond 5Gネットワークのアクセスポイントで超高速データレートを得るための有力な候補です。しかし、テラヘルツ波の信号は、第5世代移動通信システム(5G)で使用されているマイクロ波帯やミリ波帯の信号に比べ、伝搬損失*3が非常に大きいため、長距離の送信や屋外から屋内など、障害物のある環境での通信が困難となります。また、テラヘルツ波帯の電波はカバー範囲が狭いため、ユーザーの移動がある場合、途切れなく通信を実現することが困難です。このような課題を克服するためには、テラヘルツ波信号を透過的に分配・送信することが重要ですが、これまでこれらを効率よく実現する技術はありませんでした。

【今回の成果】

今回、NICT、住友大阪セメント、名古屋工業大及び早稲田大は共同で、テラヘルツ波信号を光信号に変換し、様々なアクセスポイントに透過的に分配・送信する技術を確立することに世界で初めて成功しました。

要素技術の一つ目は、共同開発した、テラヘルツ波を光信号に変換するテラヘルツ波-光変換デバイスで、強誘電体電気光学結晶(ニオブ酸リチウム)を利用した高速光変調器*4です(図1参照)。結晶の厚さを従来比5分の1以下である100マイクロメートル以下とすることで、285ギガヘルツのテラヘルツ波にも対応可能な高速性を実現しました。

二つ目は光ファイバ無線技術で、テラヘルツ波信号の行き先を変更できる機能を付加した点です。テラヘルツ波信号を搬送するために、波長可変レーザにより生成した異なる波長のレーザ光を用い、波長を切り替えることで、テラヘルツ波信号をスムーズに切替え可能にしました。これにより、特定の波長が割り当てられた異なるアクセスポイントすなわちユーザーの位置に応じて配信することが可能になります。

これらの開発技術を組み合わせることで、4QAM変調*5で毎秒32ギガビットの大容量テラヘルツ波信号を直接光信号に変換し、異なるアクセスポイントに分配・送信する伝送システムの構築・実証に成功しました。また、テラヘルツ波の信号を10マイクロ秒以下という極めて短い時間で切り替えることができる可能性を示しました。

本成果を応用することにより、テラヘルツ波信号をあるアクセスポイントから他のアクセスポイントへ透過的に伝送することが可能となります。また、アクセスポイント間のテラヘルツ波信号の経路制御や切替えを行うことで、途切れることのない通信や省エネルギー化が期待されます。

【今後の展望】

今後は、今回確立したテラヘルツ波-光変換デバイスと光ファイバ無線技術を活用し、Beyond 5G時代の無線システムに向けた更なる高周波化、高速化及び低消費電力化を目指した技術検討を進めていきます。また、技術検討と並行し、国際標準化活動並びに社会展開活動を推進していきます。

なお、本実験結果の論文は、光ファイバ通信分野における世界最大の国際会議の一つである光ファイバ通信国際会議(OFC 2023、3月5日(日)~3月9日(木))で非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択され、現地時間3月9日(木)に発表しました。

<役割分担>

NICT: 光・無線直接伝送技術の設計・技術開発・実証実験・標準化活動
住友大阪セメント: 無線信号を光信号へ変換するデバイス、高速光変調器の設計・技術開発・標準化活動
名古屋工業大学: 光局発信号発生器、光ファイバ無線技術の研究開発
早稲田大学: 光ファイバ無線技術の研究開発

<採択論文>

国際会議: 第46回光ファイバ通信国際会議(OFC 2023) 最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)
論文名: Transparent Relay and Switching of THz-wave Signals in 285-GHz Band Using Photonic Technology
著者名: Pham Tien Dat, Yuya Yamaguchi, Keizo Inagaki, Shingo Takano, Shotaro Hirata, Junichiro Ichikawa, Ryo Shimizu, Isao Morohashi, Yuki Yoshida, Atsushi Kanno, Naokatsu Yamamoto, Tetsuya Kawanishi, Kouichi Akahane

<用語解説>

*1 透過的に分配・送信

テラヘルツ波が遮られる壁などの遮蔽物があった場合、その場所でテラヘルツ波を光信号に変換し、光ファイバで伝送した後に再度テラヘルツ波に変換することで、テラヘルツ波が遮蔽物を透過したと考えてシステムを構築することができる。このためには、光信号とテラヘルツ信号を何度も行き来できる多段のRoF*2システムを簡便な構成で構築することが必要である。

*2 光ファイバ無線(RoF: Radio over Fiber

無線信号で光信号を変調することで、無線信号を直接光ファイバで伝送する技術。携帯電話や地上デジタル放送の電波不感地帯対策で既に利用されている。
NICTでは、本技術と高速受光デバイスを利用し、空港滑走路上の異物を検知するレーダーシステムや高速鉄道へミリ波信号を送り届けるシステムの実現を報告してきた。

過去のNICTの報道発表

・2021年7月15日 ミリ波無線受信機を簡素化する光・無線直接伝送技術の実証成功
https://www.nict.go.jp/press/2021/07/15-1.html

・2018年4月26日 時速500kmでも接続が切れないネットワークの実現に目途
https://www.nict.go.jp/press/2018/04/26-2.html

*3 伝搬損失

電波が大気中を進む際、空気や空気中の水分などにより、吸収されたり、散乱されたりする。これにより、電波の強度は徐々に弱くなる。これを伝搬損失と呼ぶ。

*4 光変調器

入力した電気信号を光信号に重畳するデバイス。基幹光ファイバ通信等で利用されている。デジタルデータ信号だけでなく、無線信号等を光信号へ変換する際にも用いられている。
今回は、強誘電体電気光学材料(ニオブ酸リチウム)を薄くし、電極構造を最適化することで、285ギガヘルツの光・無線変換が可能な高速性を実現した。

*5 直交振幅変調(QAM: Quadrature Amplitude Modulation

光の位相と振幅を併用し複数のビットを表現する方式(多値変調)の一種。On-Off Keying(OOK)と呼ばれるOnとOffの2つの状態(1ビット)で情報(21=2通り)を示す方式に対して、4QAMは、1シンボルが取り得る位相空間上の点が4個で、1シンボルで2ビットの情報(22=4通り)が伝送でき、同じ時間でOOK方式の2倍の情報が伝送できる。

 


補足資料

1. 今回開発したシステムの基本構成

図4は、今回開発した伝送システムの概略図を表しています。

下記の手順により、285ギガヘルツ・毎秒32ギガビットのテラヘルツ波無線信号伝送を実現しました。

(1)光ファイバ無線信号送信機

275.2ギガヘルツの周波数間隔を持つ2波長を用い、一方の波長は9.8ギガヘルツの信号で変調し、もう一方は無変調とした。変調された信号と変調されていない信号を再結合し、周波数間隔285ギガヘルツ(=275.2+9.8ギガヘルツ)のRoF信号を生成した(図4 (1)の右上の図参照)。

(2)テラヘルツ波無線送信機

光ファイバを伝送後、テラヘルツ波変換部にて、高速光検出器をベースとした光電変換器により、RoF信号から285ギガヘルツのテラヘルツ波信号へ変換し、パワーアンプで増幅した。

(3)中継ノード

受信した信号は、RFプローブを用いて、新たに開発した高速光変調器に接続し、光信号に変換した。テラヘルツ波信号の変調と切替えには、制御回路を備えた波長可変レーザを使用した。変調された信号は増幅され、波長ルータに接続され、異なるアクセスポイントに転送された。

(4)アクセスポイント

受信した光信号は、別の高速フォトダイオードに入力され、再び285ギガヘルツのテラヘルツ波信号に変換された。この信号を増幅し、48 dBiのレンズアンテナで自由空間へ送信した。

(5)テラヘルツ波信号受信機

約5 m伝送した後、別のレンズアンテナで受信し、増幅した後、サブハーモニックミキサで10.2ギガヘルツに下方周波数変換した。最後に、信号を増幅してリアルタイムオシロスコープに送り、オフラインで復調した。

2. 実験結果

図5の実験結果のグラフは、異なる波長で送られてきた信号の誤り率を示しています。ビットレートが上がると誤り率が上がりますが、毎秒32ギガビットまではデータ伝送可能であることが示されました。誤り訂正前のエラーベクトル振幅値(EVM: Error Vector Magnitude、伝送誤りに相当)で、4QAMにおいては、オーバーヘッド20%で帯域幅32ギガビットに相当します。

(b)は、受信時の4QAM信号で、4つのシンボルがはっきり見えるほど信号品質が良い(エラー訂正が少なくて済む)ことになります。

(c)は、テラヘルツ信号の切替えを行っているところを可視化した図で、横軸が時間、縦軸が信号強度になります。途中くぼんでいる部分が切替えを行っているところ(データが止まっているところ)ですが、テラヘルツ波信号の切替えを10マイクロ秒以下で行える可能性を示しました。

「エネルギーと物質と情報を通して,生命を知る(仮題)」(2023/6/29)

著者: staff
2023年5月15日 16:33

演題:「エネルギーと物質と情報を通して,生命を知る」(仮題)

 

日時:2023年6月29日(木)15:05-16:45

 

会場:西早稲田キャンパス 52号館 3階302教室

 

講師:伏見 譲(埼玉大学(名誉教授))

 

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

 

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

 

主催:先進理工学研究科 応用化学専攻

 

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

 

TEL:03-5286-3000

「Translational Chemical Biology」(2023/6/6)

著者: staff
2023年5月15日 16:30

「Translational Chemical Biology」(2023/6/6)

 

演題:Translational Chemical Biology

 

日時:2023年6月6日(火)16:30-18:10

 

会場:西早稲田キャンパス 62号館森村記念ラウンジ (62号館1階)

 

講師:Xiaoguang Lei(北京大学 教授)

 

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

 

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

 

主催:先進理工学研究科 応用化学専攻

 

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

 

TEL:03-5286-3000

「Development of Highly Efficient Palladium Nanocatalysts for the Heterogeneous Suzuki−Miyaura Reaction」(2023/6/2)⇒中止

著者: staff
2023年5月15日 16:27

演題:Development of Highly Efficient Palladium Nanocatalysts for the Heterogeneous Suzuki−Miyaura Reaction ⇒ 講師都合により中止となりました

 

日時:2023年6月2日(金)17:00-18:40    ⇒ 中止となりました

 

会場:西早稲田キャンパス 62W号館 1階大会議室A

 

講師:Shiguang PAN(Lecturer (講師) School of Chemistry, Tiangong University)

 

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

 

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

 

主催:先進理工学研究科 化学・生命化学専攻

 

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

 

TEL:03-5286-3000

「Nonlocal modeling, analysis and computation: some recent development」(2023/5/25)

著者: staff
2023年5月10日 15:14

演題:Nonlocal modeling, analysis and computation: some recent development

 

日時:2023年5月25日(木)16:00-17:40

 

会場:西早稲田キャンパス 63号館2階 05会議室

 

講師:Qian Du  (コロンビア大学 教授)

 

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

 

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

 

主催:基幹理工学部 応用数理学科

 

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

 

TEL:03-5286-3000

銀河宇宙線ヘリウム 高精度観測に成功

著者: contributor
2023年5月9日 15:05

銀河宇宙線のヘリウム成分を250テラ電子ボルトまで直接観測に成功
30テラ電子ボルト以上でスペクトル軟化の兆候を検出

国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟搭載高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET)による測定

発表のポイント

国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟搭載の宇宙線電子望遠鏡(CALET)が、銀河宇宙線の一つであるヘリウムのエネルギースペクトルを250テラ電子ボルトまで高精度に観測することに成功し、30テラ電子ボルト以上でエネルギー軟化の兆候を検出しました。
陽子とヘリウムは核子当たりのエネルギーで60テラ電子ボルトまで、スペクトルの冪の変化においては同様な構造を持つことがわかりました。
一方で、冪の傾きが陽子とヘリウムでは異なっていることから高エネルギー領域では何か異なる加速・伝播機構がある可能性が生じたため、その理論的な検証が求められています。

早稲田大学理工学術院総合研究所主任研究員 小林兼好(こばやしかずよし)早稲田大学名誉教授・CALET代表研究者 鳥居祥二(とりいしょうじ)、シエナ大学研究員 Paolo Brogi、と宇宙航空研究開発機構(JAXA)及び国内他機関、イタリア、米国の国際共同研究グループ(以下、本研究グループ)は、国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」の船外実験プラットフォームに搭載された宇宙線電子望遠鏡(以下、CALET*1:高エネルギー電子・ガンマ線観測装置)を用いて、銀河宇宙線*2のヘリウムのエネルギースペクトル*3を250テラ電子ボルトまで高精度に観測し、30テラ電子ボルト*4以上の領域でエネルギースペクトル軟化*5の兆候を観測しました。

本研究成果は、アメリカ物理学会発行の『Physical Review Letters』に、“Direct Measurement of the Cosmic-Ray Helium Spectrum from 40 GeV to 250 TeV with the Calorimetric Electron Telescope on the International Space Station”として、2023年4月27日(木)<現地時間>にオンラインで掲載されました。

(1)これまでの研究で分かっていたこと

宇宙線は星の進化の過程で生成された元素が、特にその最終段階で超新星爆発などにより宇宙空間にばら撒かれ、超新星残骸で生成された衝撃波によって加速されると考えられています*6。しかし、この衝撃波加速やその後の宇宙空間への拡散などについては、まだまだ不明な部分が多く、その解明には宇宙線諸成分のエネルギースペクトルの高精度観測が不可欠です。

宇宙線の生成、加速、伝搬過程は「超新星残骸における衝撃波によって加速され、銀河磁場によって拡散的に伝播して銀河外へ漏れ出す」という”標準モデル”による理解が進められてきました。このモデルでは、地球で観測される宇宙線スペクトルの形状は単調な冪(べき)型のスペクトル*7が予測されます。しかし、この予測に反する数100ギガ電子ボルトにおけるスペクトルの単一冪からのズレとして、宇宙線の主成分である陽子やいくつかの原子核についてはテラ電子ボルト領域に至る漸次的な「スペクトル硬化*8」が報告されています。これは”標準モデル”では理解できない結果であり、宇宙線の加速・伝播機構モデルについてパラダイムシフトの必要性を示唆しており、その解釈をめぐって現在活発な研究が繰り広げられています。

「きぼう」で定常観測を継続するCALETはこれまでの実験に比べ、高精度なエネルギースペクトルの直接観測に成功してきました*9。既に陽子を始め、ホウ素、炭素、酸素でスペクトル硬化を報告しており、スペクトル硬化の高精度観測に注目が集まっています。さらに陽子ではエネルギーのより高い領域で「スペクトル軟化」も観測され、昨年発表しました。

近年の目覚ましい発展により明らかになってきた、エックス線やガンマ線を含む宇宙における高エネルギー放射の最終的な理解には、その源となっている荷電宇宙線の理解が必須となります。これは、電波や赤外・可視光等の電磁波スペクトルが主に、黒体輻射に代表される熱的放射を観測しているのに対し、冪型スペクトルによって特徴づけられる非熱的放射の背景には必ず宇宙線の加速と伝播が隠されているためです。

(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

陽子ではエネルギーの高い領域で新たにスペクトル軟化が観測されましたが、陽子固有の現象なのか、スペクトル硬化のように複数の原子核で共通の現象なのか、陽子の次に重い原子核、ヘリウムにも同様にスペクトル軟化の傾向があるのかが注目されています。2021年にはDAMPE(DArk Matter Particle Explore)*10実験によりヘリウムのテラ電子ボルト領域に至る漸次的なスペクトル硬化および30テラ電子ボルト付近からスペクトル軟化の兆候が報告されました。そこで今回我々はヘリウムの高精度解析を行い、40ギガ電子ボルトから250テラ電子ボルト*2と、DAMPE実験が観測した80テラ電子ボルトよりも高いエネルギー領域まで、宇宙線ヘリウムスペクトル*3、4の高精度直接観測に成功しました。

CALETによって科学観測を開始した2015年10月13日から2022年4月30日までのデータを用いて、測定されたヘリウムのエネルギースペクトルを図1に示しました(赤点)。灰色のバンドはCALETの観測に伴う現時点での系統誤差を含む全誤差です。青色で示したDAMPE実験とは絶対値も誤差の範囲内で一致しています。さらにDAMPE実験が観測した80テラ電子ボルトよりも高い、250テラ電子ボルトまでスペクトル軟化の傾向が続いていることを明らかにしました。

図2では昨年発表した陽子のデータを用い、陽子とヘリウムの比の核子当たりのエネルギースペクトルを示しました(赤点)。先行実験から大幅に誤差を縮小し、傾きが大きく変わることなく核子当たり60テラ電子ボルトを超える領域まで続くことがわかりました。また、図からわかるように、エネルギーの増大とともに陽子に対するヘリウム割合が増えていることがわかります。”標準モデル”からは変化しないことが予測されることから、陽子とヘリウムには高エネルギー領域では何か異なる加速・伝播機構があるということを示唆しており、今後に理論的な検証が必要な課題となっています。

(3)そのために新しく開発した手法

CALET は世界で初めて宇宙機に搭載された宇宙線シャワーを可視化できるカロリメータ型の観測装置です。これまでは磁石を採用したマグネットスペクトロメータ型のPAMELA とAMS-02 が、電荷の正負の判定による反粒子を含む観測に現在成果を挙げていますが、カロリメータ型装置は、電荷の正負の判定ができないものの、よりエネルギーの高いテラ電子ボルト以上まで可能です。CALETはこれまで高精度観測が困難で未開拓な領域であったテラ電子ボルト領域での観測を行い、ヘリウムのスペクトル軟化兆候を得ることができました。

(4)研究の波及効果や社会的影響

本研究グループによる今回の成果は、CALETが昨年発表した宇宙線の主成分である陽子の10テラ電子ボルト以上でのスペクトルの軟化に続き、ヘリウムでもスペクトルの軟化が起こっている兆候を観測しました。陽子とヘリウムは核子当たりのエネルギーで250テラ電子ボルトまで、スペクトルの冪の変化においては同様な構造を持つことがわかりました。スペクトルの軟化が何らかの共通の原因で陽子とヘリウムで起こっており、今後、宇宙線の加速・伝搬機構の議論が活発化することが予想されます。

(5)今後の課題

スペクトル硬化の現象はこれで陽子、ヘリウム、ホウ素、炭素、酸素で観測されました。これまでの宇宙線加速・伝播機構の理論的解釈では、”標準モデル”により説明することが難しく、新たな加速もしくは伝播機構による解明が急がれています。今のところCALETでは酸素より重い原子核である、鉄、ニッケルでは観測されておらず、より高いエネルギー領域でスペクトル硬化が起こるのか、検証を進めてきます。

一方で、陽子、ヘリウムのスペクトル軟化の1つの解釈として、”標準モデル”による超新星残骸における衝撃波加速は、電荷に比例した加速限界を予見します。超新星残骸で達成可能な最高エネルギーは典型的に、陽子で60テラ電子ボルト、ヘリウムで120テラ電子ボルトと見積られています。一方で地上観測実験により3ペタ電子ボルト付近でスペクトル軟化(スペクトルの形状が足の膝に似ているので、ニー:Kneeと呼ばれている。) が測定されています。これは超新星残骸での衝撃波加速が限界を迎え、宇宙線組成が電荷に比例して軽原子核からより重原子核へシフトすることによる構造と考えられています。地上観測実験では粒子の判別が困難なため、上記の超新星残骸モデルの検証には、陽子、ヘリウムを始めとする原子核の系統的なスペクトル軟化を宇宙空間で計測するCALETによる観測は決定的な役割を果たすことができます。

CALETは今後、さらにデータを蓄積し、また高エネルギー側での系統誤差を減らすことにより、酸素よりも重い重原子核成分の核子あたり10テラ電子ボルト付近でのエネルギー硬化、また核子あたり10テラ電子ボルトを超えるエネルギー領域の陽子・ヘリウムスペクトル軟化を高精度に決定することで、さらなる宇宙線加速、伝搬機構の検証を目指します。

(6)研究者のコメント

本研究で観測しているエネルギー領域の宇宙線は超新星爆発が起因で、地球に届く過程で加速、伝搬が起こり地球にたどり着くため、宇宙線を観測すると宇宙の多くのことがわかります。CALETでの観測で電子、陽子、今回のヘリウムを始めさまざまな原子核でのスペクトルを解明してきました。これからも安定的な観測を続け宇宙の謎を解明していきたいと考えています。

(7)用語解説

1:CALET(高エネルギー電子・ガンマ線観測装置)

2015年8月にISS・「きぼう」に搭載され、同年10月より宇宙線観測を開始した宇宙線電子望遠鏡「CALET」は、日本の宇宙線観測としては初めての本格的な宇宙実験で、すでに7年以上安定的な観測を行っています。高エネルギー電子の高精度観測に最適化されたユニークな装置ですが、確実な電荷決定と広いエネルギー測定範囲により、陽子や原子核成分の観測にも強力な性能を有しています。CALETの主となる検出装置は「カロリメータ」と言い、ここに飛び込んでくる宇宙線を捉えて観測することになります。カロリメータは、図3のように3つの層からできています。

図3の第1の層(CHD)では粒子の電荷を測定し、入射粒子の電荷を測定します。第2の層(IMC)では、主に粒子が飛んできた方向を測定します。そしてもっとも厚みのある第3の層(TASC)で、宇宙線が吸収されて生じる「シャワー」の発達の様子からその宇宙線のエネルギーや種類を特定します。この3つの層から得られる情報を統合することで、その宇宙線についてかなり広範囲に理解することが可能と考えています。特に第三の層の厚さや使われている物質と信号の読み出し方法によって、どれだけ高いエネルギーの粒子まで観測することができるかが決まります。CALETはとりわけこの点においてCALET以前の観測装置に比べて高い性能を保有しています。

2:宇宙線

宇宙空間は、何もないように見えますが、じつはとてもたくさんの粒子が飛んでいます。それらは原子よりもさらに小さい陽子や電子などの粒子で、宇宙空間で手をかざしたら一秒間に100個以上が手にあたるほどたくさん飛んでいます。そのような粒子を宇宙線と言います。宇宙線は約100年前に発見されて以来、常に物理学の最先端テーマでした。宇宙線の研究から、陽電子や中間子の発見など、人類の知識を大きく広げる成果があがっています。宇宙線は、太陽や天の川銀河(地球がある銀河系)など宇宙の様々な場所から飛んできます。特に高いエネルギーをもったものは、私たちが暮らす太陽系の外からはるばるやってきています。

3:スペクトル

本稿ではすべてエネルギースペクトルの意味で用いています。横軸をエネルギー、縦軸を流束とした図をエネルギースペクトルと言います。宇宙線スペクトルは冪形状となっていて、その冪の値は大体 -2.7程度ですので、高いエネルギーになるにつれ急激に流束が減少します。

4:電子ボルト

エネルギーの単位です。1ボルトの電位差を抵抗なしに通過した際に電子が得るエネルギーが1電子ボルトです。ここではその109倍のギガ電子ボルト、1012倍のテラ電子ボルト、1015倍のペタ電子ボルトのエネルギー領域を扱っています。

5:スペクトル軟化

スペクトル硬化とは逆に、冪の絶対値が大きくなる方向のスペクトル変化を表し、エネルギーに対する流束の減少割合が増えていくことを示します。

6:宇宙線加速

高エネルギーの宇宙線がどこからきてどのように加速されたのか(=高いエネルギーを得たのか)についてのもっとも有力な説明は、「超新星爆発」です。超新星爆発とは、質量の大きな星がその一生の最後に起こす爆発で、そのとき甚大なエネルギーが放出されます。そのエネルギーによって加速されて地球まで飛んできた粒子が高エネルギーの宇宙線だと考えられていますが、加速されるメカニズムの詳細については、まだわからない点が多く残されています。

7: 冪型スペクトル

変数xに対しする分布関数がxα になる分布を、冪の値がαの冪関数型分布と呼びます。変数をエネルギー(E)にとった場合の流束の分布をエネルギースペクトルと言い、宇宙線スペクトルは冪形状となっていて、Eγで表されます。冪の値はマイナスでγの値は2.7程度であるので、高いエネルギ―になるにつれ急激に流束が減少します。電波や赤外・可視光等の電磁波スペクトルが主に、黒体輻射に代表される熱的放射を観測しているのに対し、冪型スペクトルによって特徴づけられる非熱的放射の背景には必ず宇宙線の加速と伝播が隠されているためです。

8:スペクトル硬化

冪の絶対値が小さくなる方向のスペクトル変化を表し、エネルギーに対する流束の減少割合が減っていくことを示します。

9:これまでのCALETによる宇宙線諸成分(電子、水素(陽子)、炭素、水素、鉄、ニッケルなど)の観測
10: DAMPE

中国科学院が2015年12月に打ち上げた宇宙線観測を目的とした初めての科学観測衛星。

(8)論文情報

雑誌名:Physical Review Letters 130, 171002, (2023)
論文名:Direct Measurement of the Cosmic-Ray Helium Spectrum from 40 GeV to 250 TeV with the Calorimetric Electron Telescope on the International Space Station
執筆者名(所属機関名):O. Adriani et al. (CALET Collaboration), Corresponding Authors: K. Kobayashi, P. Brogi
掲載日時(現地時間):2023年4月27日(木)
掲載URL:https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.130.171002#fulltext
DOI10.1103/PhysRevLett.130.171002

(9)研究助成

研究費名:科学研究費補助金 基盤研究(S)
研究課題名:CALET長期観測による銀河宇宙線の期限解明と暗黒物質探索
研究代表者名(所属機関名):鳥居祥二(早稲田大学)

 

【5月24日(水)12:30~13:10開催】PEP卓越大学院プログラム2023年9月(6期生)・2024年4月(7期生)進入/編入 募集説明会のお知らせ

著者: staff
2023年5月8日 16:34

文部科学省卓越大学院プログラム『パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム』は、
電力・エネルギー新産業創出に寄与する人材を輩出することを目的とした修士・博士後期5年一貫の博士人材育成プログラムです。
この度、本プログラムの2023年9月(6期生)・2024年4月(7期生)進入/編入 募集説明会を以下のように開催致します。
お気軽にお申込みください。

<概要>
対象:現在、電力系・エネルギーマテリアル系を専攻分野としている(あるいは現在それらの分野に関心がある)以下の学生、社会人
・学部3年生、4年生
・修士課程/一貫制博士1年生、2年生
・2023年9月・2024年4月に以下の参画専攻博士後期課程入学予定者
[本プログラム参画専攻]
・基幹理工学研究科(機械科学・航空宇宙専攻、電子物理システム専攻)
・創造理工学研究科(地球・環境資源理工学専攻)
・先進理工学研究科(応用化学専攻、電気・情報生命専攻、ナノ理工学専攻、先進理工学専攻)
・環境・エネルギー研究科(環境・エネルギー専攻)

日時:2023年5月24日(水)12:30~13:10(途中入退室可)
形式:Zoomオンラインミーティング(申請フォームから参加登録いただいた方にURL詳細等、メールでお送り致します。)
内容:
・PEP卓越大学院プログラム概要説明(研究指導・支援体制、カリキュラム、進路、経済的支援etc)
・2023年9月(6期生)・2024年4月(7期生)進入/編入募集日程
・質疑応答(プログラムコーディネーター林 泰弘教授、PEP事務局が質問にお答え致します。)
・現役PEP生の体験談(当日登壇あり)

<申請フォーム>
PEPプログラムに少しでも関心のある方はお気軽に、以下URLよりお申込みください。
https://bit.ly/3LA0fQs

申込締切:5月24日(水)10:00まで

<お問合せ>
PEP卓越大学院プログラム事務局(51号館1F理工統合事務所内)
TEL:03-5286-3238 Email:[email protected]

PEP卓越大学院プログラムHP https://www.waseda.jp/pep/
パンフレット https://www.waseda.jp/pep/pamphlet/
募集要項出願書類 https://www.waseda.jp/fsci/admissions_gs/guidelines/pep/

【5/20】国立感染症研究所との合同シンポジウム開催のお知らせ

著者: staff
2023年5月1日 15:14

国立感染症研究所との協定締結から10年が過ぎたことを記念し、下記の通り、シンポジウムを開催することになりました。

日時:2023年5月20日(土)13:00~17:00
場所:早稲田大学121号館 コマツ100周年記念ホールおよびzoomによる配信
プログラム:ポスターを参照してください。

当日はオンライン配信を行いますので、どなたにでもご参加いただけます。無料ですが、事前登録が必要ですので、下記URLから申し込みをお願いします。(5月19日12:00締切)

https://forms.gle/x5Q7hY8YghME3uw1A

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