ノーマルビュー

6/27 三木谷浩史氏 特別講演・座談会 「日本を 変えるイノベーション」

著者: staff
2024年6月6日 12:08

2024 6 27 日(木)17時30分より、楽天グループ株式会社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏を迎え、大学生、大学院生、高校生を主対象として、特別講演会と座談会を早稲田大学大隈記念講堂大講堂にて開催いたします。奮ってご参加ください。

◆日時:6月27日(木)17時30分~19時30分
◆会場: 早稲田大学大隈記念講堂大講堂
◆対象者: 大学生、大学院生、高校生、早稲田大学教職員・研究員、共催・協賛の関係者
◆参加費: 無料
◆総合司会:朝日 透(早稲田大学理工学術院 教授)

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「Electrocatalytic approaches for resolving several energy and environmental issues」(2024/6/19)

著者: staff
2024年6月4日 12:31

演題:Electrocatalytic approaches for resolving several energy and environmental issues

日時:2024年6月19日 (水) 16:00-17:40

会場:西早稲田キャンパス 121号館4階407ゼミ室

講師:Mohammad Abul Hasnat(Professor,Shahjalal University of Science & Technology)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

物質中の創発磁気モノポールが示す新規な集団振動現象を発見

著者: contributor
2024年6月3日 14:11

物質中の創発磁気モノポールが示す新規な集団振動現象を発見
約100年前に予言された幻の素粒子「磁気モノポール」の理解につながる一歩へ

発表のポイント

  • 近年の実験である種の磁性体において発見された磁気モノポールのように振る舞う特殊な3次元磁気構造「(アンチ)磁気ヘッジホッグ」が、光に応答して示す新規な集団振動現象を理論的に発見し、その性質を解明しました。
  • これまで、磁気ヘッジホッグ格子が光やマイクロ波によってどのように駆動され、物質中に創発電場・創発磁場(創発電磁場)を生み出すのかは未解明な問題でした。
  • 本成果により、約100年前に提唱された幻の素粒子「磁気モノポール」の理解に向けた物性物理学と素粒子物理学を横断する研究の進展に期待が高まるともに、技術応用としても、ナノサイズの発電素子や光やマイクロ波を電気信号や電圧に変換する素子への応用や、新しい光/マイクロ波素子機能の開拓などの研究・開発の促進につながることが望まれます。

図1.(a) L2モードにおけるディラック弦Bの振動の様子。(b) L3モードにおけるディラック弦Aの振動の様子。弦上端と下端のヘッジホッグとアンチヘッジホッグが同位相で振動し、弦は上下に並進振動を起こす。

早稲田大学大学院先進理工学研究科の衛藤倫太郎(えとうりんたろう、博士課程2年/日本学術振興会特別研究員DC1)と、同大理工学術院教授 望月維人(もちづきまさひと)の研究グループは、磁気ヘッジホッグ格子に光を照射したときに期待される集団運動の性質を、微視的な理論モデルを用いた数値シミュレーションにより調べました。その結果、磁気モーメントの特殊な空間配列パターンとして磁性体中に現れる創発的な磁気モノポール格子に光を照射すると、磁気モノポールとアンチ磁気モノポールが一斉に位相を揃えて振動する集団振動現象が起こることを理論的に発見しました。

本研究成果は、米国のアメリカ物理学会が発行する国際科学ジャーナル『Physical Review Letters』誌に、2024年5月31日(金)(現地時間)にオンラインで掲載されました(論文名:Theory of Collective Excitations in the Quadruple-Q Magnetic Hedgehog Lattices)。

これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

磁石では、磁力線の湧き出しであるN極と吸い込みであるS極は必ずペアになって存在し、N極あるいはS極のどちらか一方だけを取り出すことはできません。1931年にイギリスの理論物理学者ポール・ディラックは、量子力学と電磁気学の研究から、ある条件のもとではN極だけ、あるいはS極だけの素粒子が存在し得るという理論を提唱しました。ディラックが予言したこれらの素粒子は「磁気モノポール」と「アンチ磁気モノポール」(※1)と呼ばれ、多くの実験研究者によって探索が行われましたが、現在に至るまでまだ発見されていません。

一方、近年の実験である種の磁性体において「磁気ヘッジホッグ」と「アンチ磁気ヘッジホッグ」(※)と呼ばれる特殊な3次元磁気構造が実現していることが発見されました[2(a),(b)]。これらの磁気構造は、物質中を動き回る伝導電子が磁場として感じる仮想的な場「創発磁場」(※)の湧き出し(N極)と吸い込み(S極)として振る舞うため、仮想的な磁気モノポールとアンチ磁気モノポールと見なすことができます。さらに、これらの磁気ヘッジホッグとアンチ磁気ヘッジホッグは、しばしばそれらが周期的に並んだ磁気ヘッジホッグ格子(※)と呼ばれる構造を構成します。このような磁気ヘッジホッグ格子は、最近、マンガン化合物であるMnGeやMnSi1-xGex、鉄酸化物であるSrFeO3といった物質で相次いで発見されています。

磁気ヘッジホッグ格子に関するこれまでの研究では、平衡状態の性質の解明に主眼が置かれていました。一方、発電機の原理にもなっている「磁場が時間変化すれば電場が生じる」という電磁気学の基礎知識から、磁気モノポールやアンチ磁気モノポールの位置が時間的に変化すれば電場が生じることが分かります。つまり、磁性体中の磁気ヘッジホッグやアンチ磁気ヘッジホッグを光やマイクロ波の振動磁場で揺さぶることができれば、伝導電子に作用する有効的な電場「創発電場」(※)が発生するはずです。このような現象はナノサイズの発電素子や光やマイクロ波を電気信号や電圧に変換する素子への応用が期待できます。

さらに、磁気ヘッジホッグ格子の集団運動を明らかにすることで、光やマイクロ波による磁気ヘッジホッグの生成、消去、駆動といった制御・操作技術の開発や、磁気ヘッジホッグ格子を活用した新しい光/マイクロ波素子機能の開拓が期待できます。ある物質中で光やマイクロ波に応答して特定の周波数の振動現象が起こるということは、その周波数を持つ光やマイクロ波をその物質に照射すると、振動を引き起こすことでエネルギーを失い、結果的にその物質に吸収されてしまうことになります。一方で、例えば磁場をかけてこの振動現象を抑える、あるいはなくしてしまうことができれば、照射した光やマイクロ波は振動を引き起こすことなく(エネルギーを失うことなく)その物質を透過できることになります。つまり、磁場のオン・オフによって光やマイクロ波がその物質を透過する・しないを切り替えることが可能になるわけです。

このように様々なエレクトロニクス応用が期待されるため、磁気ヘッジホッグ格子が光やマイクロ波に応答してどのような振動現象や振動パターンを示すのかは基礎科学と技術応用の両方の観点から重要な問題です。しかし、これまでにそのような問題に取り組んだ研究は実験的にも理論的にもほとんどなく、未解明の謎として残っていました。

図2: (a),(b) 磁気ヘッジホッグとアンチ磁気ヘッジホッグの磁化配列(赤矢印と青矢印)と創発磁場の分布(緑矢印)。磁気ヘッジホッグでは磁場が中心から湧き出しており、アンチ磁気ヘッジホッグでは磁場が中心に吸い込まれている。(c) ヘッジホッグとアンチヘッジホッグを繋ぐ磁気渦糸(ディラック弦A)の構造。(d),(e) 磁気ヘッジホッグ格子におけるヘッジホッグとアンチヘッジホッグの空間配置。マゼンタの点とシアンの点がそれぞれヘッジホッグとアンチヘッジホッグを表している。また、それを繋ぐ線はディラック弦を表す。磁化の巻き方に応じて2種類のディラック弦(赤線:ディラック弦A, 青線:ディラック弦B)がある。ゼロ磁場および低磁場の磁気ヘッジホッグ格子ではディラック弦AとB両方が存在するが(d)、磁場を印加するとディラック弦Bが消滅し、ディラック弦Aのみが存在する磁気ヘッジホッグ格子が現れる(e)。

今回の新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、新しく開発した手法

そこで本研究では、磁気ヘッジホッグ格子に光を照射したときに期待される集団運動の性質を、微視的な理論モデルを用いた数値シミュレーションにより調べました。

ところで、磁気ヘッジホッグ格子では、磁気ヘッジホッグとアンチ磁気ヘッジホッグはディラック弦と呼ばれる渦糸状の磁化配列で繋がっています[2(c)]。この図にあるように、磁気ヘッジホッグの真下にある正方格子上の4つの磁気モーメントはらせんを描くように下に降りていきアンチ磁気ヘッジホッグへとつながっていきます。このような磁化配列の渦糸構造と表現しますが、らせんには右巻と左巻があるため、ディラック弦にも右巻と左巻の2種類があることになります。一つの物質中に必ずしも2種類のディラック弦が現れるとは限りませんが、本研究で取り扱ったMnSi1-xGexやSrFeO3などの物質で実現している磁気ヘッジホッグ格子[2(d), (e)]では、磁気渦糸の巻き方が異なる2種類のディラック弦(AとB)が存在するため、多彩な電磁応答が期待できます。

研究の結果、テラヘルツから数百ギガヘルツ(※)の周波数帯に3つの固有の周波数を持った特徴的な振動パターン(固有振動モード)が存在することを発見し、L1、L2、L3と名付けました[3]。さらに詳しく調べた結果、これらの振動パターンでは、ディラック弦の上端と下端についている磁気ヘッジホッグとアンチ磁気ヘッジホッグが同位相で振動しているため、ディラック弦が上下に振動する並進振動が実現していることが分かりました[1]。我々は、コイルに棒磁石を近づけたり遠ざけたりすると電圧が生じ電流が流れることを知っていますが、今回発見したディラック弦の並進振動は、この場合の棒磁石の運動と同じ動きになっています。つまり、光を照射された磁気ヘッジホッグ格子では、無数のナノサイズの棒磁石が数百ギガヘルツの高速でそのような振動運動を起こしていることになります。

さらに興味深いことに、3つの振動パターンのうち、L2モードはディラック弦Bの振動に、L3モードはディラック弦Aの振動に対応していることを発見しました。その結果、磁場をかけることで磁気ヘッジホッグとアンチ磁気ヘッジホッグの対消滅が起こり、ディラック弦が消える場合、ディラック弦Bが消える場合にはL2モードが消失し、ディラック弦Aが消える場合にはL3モードが消失します。このことは、これらの振動モードや、誘起される創発電場のオン・オフ、モードと同じ周波数を持つ光やマイクロ波が透過するか・しないかを外部磁場によって切り替えられることを意味しています。これは物性現象として興味深いだけでなく、エレクトロニクス応用の観点からも重要な発見です。

図3: (a) 外部磁場の大きさに関する相図。ゼロ磁場および低磁場ではディラック弦AとB両方が存在する磁気ヘッジホッグ格子が現れる。磁場を大きくしていくと、ディラック弦Bに属するヘッジホッグとアンチヘッジホッグの対消滅が起き、ディラック弦Aのみで構成される磁気ヘッジホッグ格子に相転移する[図2(d),(e)も参照]。(b) 理論計算で得られた光吸収スペクトル。ピークが固有の周波数を持つ特徴的な振動パターン(固有振動モード)に対応しており、3つのモード(L1, L2, L3)が見て取れる。振動数の数値は規格化された単位系で書かれているが、これらのモードはおよそ数百ギガヘルツの周波数帯に現れている。ディラック弦の振動に対応するL2, L3モードを見てみると、ディラック弦A,B両方が存在する低磁場側の磁気ヘッジホッグ相ではL2, L3両方のモードが現れる。一方、弦Bが消滅し、弦Aだけで構成される高磁場側の磁気ヘッジホッグ相では弦B由来のL2モードが消失し、弦A由来のL3モードだけが残っている。

そのために新しく開発した手法

本研究ではまず、磁気ヘッジホッグ格子が実現している金属磁性体を記述するために、磁性体を構成する原子上の磁気モーメントと、それらの間に働く相互作用を媒介する伝導電子を考慮した近藤格子モデル(※)と呼ばれる数理モデルを構築しました。そして、磁化の運動を記述する方程式を用いてこのモデルを解析することで、磁気ヘッジホッグ格子に光やマイクロ波を照射した時に期待される特異な集団運動や振動現象の様子や性質を調べました。数値シミュレーションでは、数多くの磁気モーメントと伝導電子を取り扱うために計算コストが膨大になりますが、チェビシェフ多項式展開法(※)という高度な数値解析の手法を適用することで、研究を遂行しました。

研究の波及効果や社会的影響

本研究では、偉大な物理学者であるポール・ディラックが100年近く前に予言した幻の素粒子「(アンチ)磁気モノポール」と同じように振る舞う磁気構造「(アンチ)磁気ヘッジホッグ」が光に応答して示す集団振動現象を理論的に発見し、その性質を解明しました。

この研究成果には基礎科学の観点から次のような波及効果が期待されます。まず、本物の磁気モノポールは未だに発見されていませんが、磁気ヘッジホッグのような磁性体中の類似対象の振る舞いを調べることで、磁気モノポールが実際に存在した場合に期待される様々な性質や現象、機能を研究する新しい分野を切り拓くことが可能になります。このような研究は物性物理学と素粒子物理学の融合による新しい分野横断型の研究になることが期待されます。

また、電磁気学では長い間「電気と磁気」の双対性(※)が議論されてきました。つまり、「電場と磁場」、「電気双極子と磁気双極子」、「電流とスピン流」のように電気と磁気には互いの対応物があるという仮説です。ところが、「電荷」に対する磁気の対応物であるはずの「磁荷(磁気モノポール)」だけが実験で見つかっていません。今回、磁気ヘッジホッグの新しい性質や現象が発見されたことで、電気と磁気の双対性が完全に成り立つ「物質中の新しい電磁気学」が開拓されることを期待しています。

一方、今回の成果には高い技術応用上の意義もあります。磁場の時間変化や磁気モノポールの運動から電場が生じるように、磁気ヘッジホッグの運動もまた、伝導電子に作用する創発電場を生み出します。光やマイクロ波で磁気ヘッジホッグを駆動することで物質中に生み出される創発電場・創発磁場を活用した新しいデバイス機能の研究・開発が促進されることを期待しています。

今後の課題

本研究は、磁気ヘッジホッグ格子が光やマイクロ波に応答して示す新しい集団振動現象を実験に先駆けて理論的に発見し、その性質を明らかにしました。今後、MnSi1-xGexやSrFeO3などの実際の物質において、これらの結果を実験的に検証することが取り組むべき課題です。また、磁気ヘッジホッグの振動現象により発生する創発電場の性質を明らかにし、それに由来する興味深い物性現象や、それを活用した新しい物質機能を開拓することも重要な課題です。

研究者のコメント

本研究成果は、物質中の創発磁気モノポールに由来する固有の現象とその背後にある微視的メカニズムを明らかにしたという点で意義深いものです。本研究を皮切りに、物質中の創発磁気モノポールの性質や、それに由来する物性現象および物質機能の研究が今後活発に行われることを期待しています。

用語解説

※1 磁気モノポール
磁石のN極とS極のどちらか一方の性質のみを持つ粒子のこと。

※2 磁気ヘッジホッグ、アンチ磁気ヘッジホッグ
ある種の磁性体中に現れる図のような磁気モーメントの3次元配列。これらの磁気構造は交換相互作用を通じて伝導電子に働く仮想的な磁場(創発磁場)を生み出す。局所的な創発磁場の空間分布は、磁気ヘッジホッグでは湧き出し、アンチ磁気ヘッジホッグでは吸い込みになっており、それぞれ磁気モノポールとアンチ磁気モノポールに対応する。

※3 創発電磁場(創発磁場、創発電場)
金属磁性体中を動き回る伝導電子のスピンは、原子上に局在する磁気モーメントと相互作用し、各原子上で磁気モーメントと平行になろうとする。これにより伝導電子の波動関数はある種の位相を獲得するが、量子力学の枠組みから、その位相の積分値に対応する実効的な電磁場が伝導電子に作用することが分かる。この実効的な電場・磁場のことを創発電場・創発磁場と呼ぶ。特に創発磁場は近接する磁気モーメントが張る立体角の和に比例する。立体角の和が+4p(-4p)である磁気ヘッジホッグ(アンチ磁気ヘッジホッグ)は一つの磁束量子とみなすことができる。

※4 磁気ヘッジホッグ格子
磁気ヘッジホッグとアンチ磁気ヘッジホッグが空間周期的に配列した磁化構造のこと。その磁化配列は数学的には複数の螺旋状の磁化配列の重ね合わせで表現することができる。MnSi1-xGexやSrFeO3で観測されている磁気ヘッジホッグ格子は4つの磁気螺旋の重ね合わせで表現されるので4重波数磁気ヘッジホッグ格子、MnGeで観測されている磁気ヘッジホッグ格子は3つの磁気螺旋の重ね合わせで表現されるので3重波数磁気ヘッジホッグ格子と呼ばれる。

※5 テラヘルツ・ギガヘルツ
周波数の単位。1テラヘルツは1秒間に1兆回の振動、1ギガヘルツは10億回の振動を表す。

※6 近藤格子モデル
各原子に局在した磁化と、原子間を動き回る伝導電子を持つ金属磁性体を記述する数理モデル。伝導電子は局在磁化と交換相互作用を通じて結合すると同時に、局在磁化間に働く長距離交換相互作用を媒介する。近藤格子モデルではモデルパラメータを適切に選ぶと、磁気ヘッジホッグ格子を含む多彩な長周期の磁気構造を再現することができる。

※7 チェビシェフ多項式展開法
近藤格子モデルのような量子力学モデルの数値シミュレーションを効率的に行うための手法の一つ。量子力学の数値シミュレーションでは、通常、ハミルトニアンと呼ばれる非常に大きな行列を対角化する必要がある。特に、物理量の時間発展をシミュレーションする場合には、そのような対角化を何度も行う必要があるが、行列の対角化には膨大な計算時間を要する。そこで、物理量の表式を無数の多項式の和で表現することでハミルトニアン行列を対角せずにその物理量を計算する「多項式展開法」という手法が開発された。中でも、多項式として特に代数学において「チェビシェフ多項式」と呼ばれる多項式を使うと、物理量の表式が少ない多項式の和で表現できるため、効率的にシミュレーションを行うことができる。このような手法のことをチェビシェフ多項式展開法と呼ぶ。

※8 双対性
電磁気学の基礎方程式である4つのマクスウェル方程式では、磁気モノポール(磁荷)の存在を仮定すると電場と磁場、電荷と磁荷を入れ替えても等価な式が得られる。このような「電気」と「磁気」の対応関係を双対性と呼ぶ。

論文情報

雑誌名:Physical Review Letters
論文名:Theory of Collective Excitations in the Quadruple-Q Magnetic Hedgehog Lattices
(和訳:4重波数磁気ヘッジホッグ格子における集団励起の理論)
執筆者名(所属機関名):衛藤倫太郎 (早稲田大学大学院先進理工学研究科物理学及応用物理学専攻・博士課程2年/日本学術振興会特別研究員DC1)、望月維人 (早稲田大学理工学術院先進理工学部応用物理学科・教授)
掲載予定日時(現地時間):2024年5月31日(金)
掲載URL:https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.132.226705
DOI:https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.132.226705

研究助成

研究費名:国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進授業CREST
研究課題名:Beyond Skyrmionを目指す新しいトポロジカル磁性科学の創出
研究代表者名(所属機関名):于秀珍(理化学研究所)

研究費名:日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(A)
研究課題名:スキルミオニクス創成に向けた基盤技術と材料の開拓(課題番号:20H00337)
研究代表者名(所属機関名):望月維人(早稲田大学)

研究費名:日本学術振興会 学術変革領域研究(A)「「学習物理学」の創成-機械学習と物理学の融合新領域による基礎物理学の変革」(公募研究)
研究課題名:スピン模型のトポロジカル相転移を検出する汎用的な機械学習手法の開発(課題番号:23H04522)
研究代表者名(所属機関名):望月維人(早稲田大学)

研究費名:日本学術振興会 学術変革領域研究(A)「キメラ準粒子が切り拓く新物性科学」(計画研究)
研究課題名:キメラ準粒子の理論(課題番号:24H02231)
研究代表者名(所属機関名):村上修一(東京工業大学)

研究費名:早稲田大学特定課題研究助成
研究課題名:電気磁気結合を利用した効率的な光誘起磁性スイッチング機能の理論設計(課題番号:2024C-153)
研究代表者名(所属機関名):望月維人(早稲田大学)

研究費名:日本学術振興会 特別研究員奨励費
研究課題名:トポロジカル磁性における磁気励起と光誘起現象に関する理論研究(課題番号:23KJ2047)
研究代表者名(所属機関名):衛藤倫太郎(早稲田大学)

【キーワード】
磁気ヘッジホッグ、磁気モノポール、創発電磁場、励起振動

8/3(土)8/4(日)オープンキャンパスを開催します

著者: staff
2024年5月27日 14:35

WASEDA University OPEN CAMPUS 2024

8月3日(土)、4日(日)の二日間にかけて、オープンキャンパスを開催いたします。

早稲田大学の歴史・学び・国際交流・キャンパスライフ・入試情報など、入学後の学生生活がリアルにイメージできる企画が盛りだくさんです!
西早稲田キャンパスのプログラムの詳細は、7月上旬にWebサイトにタイムテーブルを掲載いたしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

来場に際して、事前予約は不要です。入退場も自由となっております。
ただし、キャンパスツアー、実験体験など、一部事前に予約が必要なプログラムがございます
予約が必要なプログラムの予約受付開始は7月5日(月)を予定しています。
予約方法については詳細が決定次第ご案内します。

「Flow Synthesis and the AI/ML Strategies」(2024/6/12)

著者: staff
2024年5月24日 11:19

演題:Flow Synthesis and the AI/ML Strategies

日時:2024年6月12日(水) 15:00~16:40

会場:西早稲田キャンパス 55号館N棟 1F 第二会議室

講師:Rigoberto C. Advincula(テネシー大学教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「Saynatsalo town hall by Alver Aalto」(2024/6/3)

著者: staff
2024年5月17日 14:57

演題:Saynatsalo town hall by Alver Aalto

日時:2024年6月3日(月) 18:30~20:10

会場:西早稲田キャンパス 55号館S棟1階 イノベーションラボ

講師:Jonas Malmberg(アルヴァ・アアルト財団シニアアーキテクト)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:創造理工学部 建築学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「Engaging esters, aldehydes, and alcohols in cross-coupling」(2024/8/21)

著者: staff
2024年5月16日 16:16

演題:Engaging esters, aldehydes, and alcohols in cross-coupling

日時:2024年8月21日(水)16:20~18:00

会場:西早稲田キャンパス 63号館05会議室

講師:Stephen G. Newman(オタワ大学・准教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「Insights into the Microenvironment of Catalysis: Water Oxidation and Selective C–H bond Functionalization」(2024/7/24)

著者: staff
2024年5月16日 15:32

演題:Insights into the Microenvironment of Catalysis: Water Oxidation and Selective C–H bond Functionalization

日時:2024年7月24日(水)16:00-17:40

会場:西早稲田キャンパス 53号館201号室

講師:Djamaladdin G.Musaev(Emory University Director of the Emerson Center, Adjunct Prof. of Chemistry)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学研究科 化学・生命化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

新規ナノ構造体を基盤とするナノ注射器が拓く細胞治療の未来 1,000万個の細胞に複数タンパク質を「高効率」「高生存率」導入

著者: contributor
2024年5月16日 15:22

新規ナノ構造体を基盤とするナノ注射器が拓く細胞治療の未来
1,000万個の細胞に複数タンパク質を「高効率」「高生存率」導入

タンパク質を用いたがん治療およびNMR解析への利用を実証

発表のポイント
  • 導電性高分子と金属から成る複合ナノチューブシートを改良し、複数のタンパク質を細胞内に高効率・高生存率で導入するための新規ナノ構造体(ナノ注射器)を開発。
  • 再生医療分野で取り扱うために必要な細胞数である1,000万個以上の細胞に対して、導入効率89.9%、細胞生存率97.1%でタンパク質導入に成功。
  • 乳酸オキシダーゼ酵素(LOx)およびユビキチン(UQ)などの任意タンパク質を導入可能。
  • タンパク質導入によるがん細胞の死滅およびNMR解析に成功。

早稲田大学大学院情報生産システム研究科の三宅丈雄(みやけたけお)教授らの研究グループと理化学研究所生命機能科学研究センターの美川務(みかわつとむ)専任研究員らの研究グループは、2021年に報告した導電性高分子で被覆された金属製ナノチューブシート※1をこれまで細胞内に届けることが困難であったタンパク質向けに改良し、タンパク質の細胞内への輸送速度や細胞内での機能維持の向上を実現しました。本研究では、この技術を用いて、乳酸オキシダーゼ酵素(LOx)を正常細胞とがん細胞に導入し、がん細胞のみが死滅することを確認しました(図1)。実験では、酵素が細胞内まで届けられた場合は24時間後にがん細胞が3%まで死滅するのに対し、酵素を細胞内に届けない条件では33%残ることが確認されました。一方、安定同位体標識タンパク質(ユビキチン)を細胞内機能解析手法であるin-cell NMR解析※2に必要な1,000万個(107個)以上の細胞に対して、高効率および高生存率で導入することに成功しました。

以上は、科学研究費補助金、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子・イオン制御型バイオイオントロニクス」(JPMJPR20B8)、旭硝子財団の助成による成果であり、2024年5月14日(現地時間)に科学誌『Analytical Chemistry』にオンライン版で公開されました。
論文名:A Hybrid Nanotube Stamp system in Intracellular Protein Delivery for Cancer Treatment and NMR Analytical Techniques

図1.ナノ注射器でのタンパク質導入および細胞応用

(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

体外で細胞に物質を導入し、細胞を加工する技術開発は、再生医療および細胞治療におけるコア技術です。これまでは、化学/生物的手法(ウィルスベクター)と物理的手法(エレクトロポレーション)が利用されていましたが、これら手法は、細胞が外界から物質を取り込む作用であるエンドサイトーシスにより細胞内への取り込みを行うため、時間がかかる、効率が悪い、導入する過程で細胞が死んでしまうなどの課題を有していました。

こうした課題を解決するため、中空管のマイクロ/ナノニードルを細胞に挿入することで、目的の物質を細胞内に導入するナノ注射器に関する取り組みが盛んですが、開発が進むナノ注射器は単針であり、かつ、マイクロサイズの細胞に単針を挿入するマニュピレータが必要であるため、主に1細胞ごとに導入する必要がありました。そこで本研究グループは、ナノチューブを配列した2次元薄膜(シート)を開発し、本ナノチューブを細胞に刺入することで短時間、かつ、高効率に物質を細胞に届けるナノ注射器の開発に成功しました。さらに本研究では、このナノ注射器を用いることで、これまで物質導入が困難であった機能性タンパク質を再生医療分野で取り扱うために必要な細胞数(107個以上)に高効率および高生存率で導入できることを確認しました。さらに、本技術をがん治療やNMR解析などの細胞応用に利用できることを実証しています。

(2)今回の研究で実現したこと

本研究グループでは、これまで金属製のナノチューブを開発し、そこへ導電性高分子を被覆することでナノスケールの構造体(ナノ構造体)および物質輸送を制御できるナノ加工技術(新しいナノ材料)の開発に取り組んできました。さらに、新規ナノ構造体を基盤とするナノ注射器を開発し、細胞内に低分子(蛍光物質:約1nmサイズ)・中分子(タンパク質:約数nm)・高分子(細胞小器官:500nm以上)を導入する取り組みを実施してきました。
今回、複数のタンパク質を細胞内に高効率・高生存率で導入するためのナノ構造体を開発し、様々な細胞(がん細胞(HeLa))、マウス由来上皮細胞(NIH3T3)、ヒト由来繊維芽細胞(HPS)、脂肪由来幹細胞(MSC)、角膜上皮細胞(HCE-T)など)で実現できることを確かめました(図2)。

図2.新規ナノ構造体を基盤とするナノ注射器の開発とタンパク質導入結果

(3)性能評価

本技術を用いた2つの事例①乳酸オキシダーゼ酵素(LOx)導入によるがん細胞の死滅、②安定同位体標識タンパク質導入によるNMR解析を紹介します。

まず、①LOx導入によるがん細胞の死滅に関しては、原理はとてもシンプルで、細胞内でLOxが乳酸濃度に応じて過酸化水素(H2O2、強力な酸化剤)を生成し、その結果として細胞をアポトーシス(細胞の自然死)に導きます。図3に示したようにがん細胞(HeLa)と正常細胞(MSC)内の乳酸濃度は10倍程度異なるため、がん細胞の中では酵素反応によって過酸化水素 がより多く生成されることになります。本実験では、HeLaとMSCへのLOxの導入効率は共に95%以上を示しました。LOxを導入したMSCと何も処理しなかったMSCを比較すると、ほぼ同じ生存率(100%以上)を示すのに対し、がん細胞ではLOx導入後、生存率が時間と共に下がることを確認しています。さらに、LOxの導入量に応じて、生存率が変化することを確かめており、このことは酵素反応の結果としてがん細胞が死滅したものであると考えています。

図3.ナノ注射器を用いたLOx酵素の細胞内導入およびがん細胞の死滅結果
(生細胞はカルセインAMで蛍光染色を行い、死細胞はPIにて蛍光染色を行った。)

また、②安定同位体標識タンパク質導入によるNMR解析においては、①同様の手法でユビキチンタンパク質をHeLa細胞に導入しNMR解析を行いました(図4)。NMR解析には、高濃度のタンパク質が導入された細胞が107個程度必要となるため、ナノ注射器システムでも十分な数の細胞を用意し、さらには、十分な量のタンパク質が細胞内に導入されたかどうかを確かめました。結果として、1.8×107個の細胞に5-10mMの安定同位体標識ユビキチンが入ったことをNMR解析から明らかにしました。

図4.ナノ注射器を用いた安定同位体標識ユビキチン(UQ)の細胞内導入およびNMR解析結果

(4)今後の展望

今後は、任意のタンパク質や低分子を同時に細胞内に導入することで、細胞機能改変(ダイレクトリプログラミング)あるいは細胞内機能解析(In-cell NMR)などの開発にも取り組みたいと考えています。また、動物性細胞以外の細胞(植物、酵母、乳酸菌など)への展開も見込んでいます。これらを1研究室で実現することは困難ですので、本プロジェクトにご興味のある企業や研究機関からのお問い合わせをお待ちします。

(5)用語解説等

※1 2021年に報告した導電性高分子で被覆された金属製ナノチューブシート:

https://www.waseda.jp/top/news/74747
細胞用電動ナノ注射器「電気浸透流ナノポンプ」を開発― 細胞治療に向けた新たな細胞内物質導入機器

※2 in-cell NMR解析:

核磁気共鳴分光測定法(NMR法)を用いて生きた細胞の中の生体分子を観測および解析する手法

(6)論文情報

雑誌名: Analytical Chemistry
論文名:A Hybrid Nanotube Stamp system in Intracellular Protein Delivery for Cancer Treatment and NMR Analytical Techniques
執筆者名:Bowen Zhang, Bingfu Liu, Zhouji Wu, Kazuhiro Oyama, Masaomi Ikari, Hiromasa Yagi, Naoya Tochio, Takanori Kigawa, Tsutomu Mikawa, and Takeo Miyake.
掲載日(現地時間):2024年5月14日
掲載URL:https://doi.org/10.1021/acs.analchem.3c05331
DOI:10.1021/acs.analchem.3c05331

(8)研究助成

科学研究費補助金
科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子・イオン制御型バイオイオントロニクス」(JPMJPR20B8)
旭硝子財団

「Higher Fano manifolds and higher order minimal families of rational curves」(2024/7/2)

著者: staff
2024年5月16日 14:35

演題:Higher Fano manifolds and higher order minimal families of rational curves

日時:2024年7月2日(火) 17 :00-18: 40

会場:西早稲田キャンパス 51号館18階12室

講師:鈴木 拓(宇都宮大学共同教育学部 助教)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 数学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

関連リンク:https://sites.google.com/view/waseda-ag-seminar

「グリーン・デジタル社会と産業の川上”結晶”の重要性」(2024/6/24)

著者: staff
2024年5月16日 13:46

演題:グリーン・デジタル社会と産業の川上”結晶”の重要性

日時:2024年6月24日(月) 16:30~18:10

会場:西早稲田キャンパス 55号館 S棟 510室

講師:森 勇介(大阪大学大学院工学研究科 電気電子情報通信工学専攻 教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「The rise of organic electrode materials for more sustainable rechargeable batteries」(2024/6/17)

著者: staff
2024年5月16日 11:48

演題:The rise of organic electrode materials for more sustainable rechargeable batteries

日時:2024年6月17日(月) 10:00~11:40

会場:西早稲田キャンパス 55号館N棟 1F 第二会議室

講師:Philippe Poizot(ナント大学教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

「Semistable reduction theorem for complex analytic spaces」(2024/6/14)

著者: staff
2024年5月16日 09:50

演題:Semistable reduction theorem for complex analytic spaces

日時:2024年6月14日(金) 16 :30-18: 10

会場:西早稲田キャンパス 51号館18階12室

講師:榎園 誠(立教大学理学部数学科 助教)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 数学応用数理専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

関連リンク:https://sites.google.com/view/waseda-ag-seminar

不規則なガラス構造に隠された規則性

著者: contributor
2024年5月14日 11:14

不規則なガラス構造に隠された規則性

原子の柱が作り出す密度の”むら”の構造抽出に成功

発表のポイント

最先端の電子顕微鏡法の1つであるオングストロームビーム電子回折法※1を用いて、シリカ(SiO2)ガラス※2の非常に細かい構造を直接観察することに成功した。
ガラスに存在する原子のナノスケール柱状構造※3及びその配列に関係した複数の異なる周期性を発見した。
これらの柱状構造がほぼ周期的に配列することで「擬格子面※4」と呼ばれる面状の領域が形成され、これにより古くから議論されてきたガラスの「FSDP※5(First Sharp Diffraction Peak)」と呼ばれる特徴的な回折ピークの起源を解明した。
この柱状構造の配列は、ガラスにおける密度の”むら”(密度ゆらぎ)と密接に関係しており、例えば、ガラスを電池用材料、窓ガラス、光ファイバーとして利用する際のイオン伝導特性、強度、光学特性の改善に繋がる基礎として重要となる。

図1.オングストロームビーム電子回折実験を用いた観察による、シリカガラス中に存在するナノスケール柱状構造の局所的な擬周期配列の発見。

早稲田大学理工学術院教授 平田秋彦(ひらたあきひこ)、東北大学未踏スケールデータアナリティクスセンター教授 志賀元紀(しがもとき)、物質・材料研究機構マテリアル基盤研究センターグループリーダー 小原真司(こはらしんじ)らの研究グループ(以下、本研究グループ)は、オングストロームビーム電子回折法を用いることで、ナノスケール柱状構造がほぼ等間隔に並んで形成される局所秩序構造を、一見不規則な構造を持つとされる、もっとも一般的なガラス材料であるシリカ(SiO2)ガラスの中に見い出しました。この秩序構造は、複数の異なる周期からなる密度ゆらぎを含む複雑な構造であることがわかりました。このような柱状構造配列の発見は、ガラス構造の科学に新たな視点を与え、さらに、柱状構造配列が作る密度ゆらぎの理解は、ガラス材料の特性や性能を制御するために欠かせない知見となると考えられます。

本研究成果は、Springer Nature社発行の科学ジャーナル『NPG Asia Materials』誌に、2024年5月10日(金)(現地時間)にオンラインで掲載されました(論文名:Direct observation of the atomic density fluctuation originating from the first sharp diffraction peak in SiO2 glass)。

(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

我々の生活に欠かせないガラスは、その原子レベルでの構造に関して古くから議論がなされてきました。中でも代表的なガラスであるシリカ(SiO2)ガラスは、Siの周りに4つのOが共有結合しSiO4正四面体が頂点に位置するOが四面体の頂点を共有して連結することにより、リング構造を作り、そのリングサイズの分布に特徴を持つこともわかっています。このようなガラスにX線や中性子線などの波長の短い波を当てると、波が原子配列によって干渉されて特徴的なパターンが出ますが、特に原子間のスケールよりも大きい周期に対応する「FSDP(First Sharp Diffraction Peak)」と呼ばれる回折ピークの出現について、古くから多くの議論がなされてきました。これを理解するために、例えば、擬格子面の概念が提唱されておりましたが、その具体的な起源については不明な点が残されていました。

(2)今回の新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、新しく開発した手法

図2.a オングストロームビーム電子回折実験の模式図、b 電子回折で見られる異なる構造周期に対応する回折スポット、c 中性子およびX線回折で得られたFSDP(矢印はbの電子回折における回折スポットの位置)、d 得られた電子回折パターンの例(一番左は平均化した、いわゆるハローリングと呼ばれるもの)。

本研究では、ガラスにおける擬格子面の正体を明らかにするため、シリカガラスで見られるFSDPに着目し、この回折ピークをシリカガラスの局所領域(1nm以下の領域)から得る目的で、本研究グループが開発してきたオングストロームビーム電子回折法を用いました(図2)。特に今回、エネルギーフィルターを導入することで、局所領域からのFSDPを明瞭に撮影することに成功しました。また、シミュレーションによって構築された構造モデルからも、近年本研究グループが開発したオングストロームビーム電子回折の理論計算結果を用いて、この実験結果を再現する局所構造を抽出することが可能となりました。この構造モデルは、X線および中性子回折の結果を再現するように分子動力学法※6と逆モンテカルロ法※7を組み合わせて作成されたものです。

抽出した局所構造に高速フーリエ変換を適用することにより、構造中に存在する擬周期が原子の柱状構造の配列から生じることが明らかとなりました。この柱状構造はブリッジの役割を果たす原子によってお互い接続されることで、おおよそ等間隔に並んで擬格子面を構成していることが特徴であり、これによりFSDPが生じるものと推察されます。また、このような柱状構造が取り囲むように柱状の空隙も形成されており、明瞭な密度ゆらぎの存在が示唆されます。さらに、この密度ゆらぎを特徴づける複数の周期が混在し、複雑な階層的構造が形成されていることもわかりました(図3)。

図3.a 特徴的な電子回折パターンに対応する局所構造モデル、b 図aの領域Iと領域IIを側面から見たもの、c, d 同一構造内での異なる周期の存在(cはFSDPのピークトップ位置、dはその裾に対応する周期)、e bの領域Iの構造に柱状の空隙が存在することを示すために仮想的に棒を挿入したもの。

このような柱状構造は、局所構造についてある特別な方向から見た時に、その方向に沿って存在するものであり、構造モデルの中からこのような場所を見つけるためには、今回使用したオングストロームビーム電子回折計算は非常に強力な手法です。また、この局所構造中の柱状構造は、結晶において見られるものと類似していることもわかりました。しかし、ガラス中の柱状構造は、結晶には存在しないリング構造である5員環や7員環を多く含んでおります。これにより構造の乱れが導入され、結晶のように広範囲にわたって周期構造が続かない原因となっているものと考えられます。

(3)研究の波及効果や社会的影響

結晶材料では、その原子配列である結晶構造が決定され、転位などに代表される格子欠陥が明確に定義されていることから、これらを制御することで様々な用途に対応した材料開発が行われてきています。一方で、ガラス材料に関しては、原子配列の決定は周期性が無いことから難しく、欠陥構造の定義も未だ明確なものはありません。

本研究では、ガラス構造中の局所秩序をナノスケール柱状構造の局所的な配列として捉えられることを示しております。ナノスケール柱状構造の配列が様々な長さの密度揺らぎを作ることから、平均的な周期から大きく逸脱した領域はガラス構造のある種の欠陥として理解することができます。このような欠陥は、ガラス材料のイオン伝導性、機械的物性、光学特性、などに大きく影響することが予想されます。これらの特性は、ガラス材料を電池の負極材や固体電解質、窓ガラス、光ファイバーなどとして利用する上で重要なものであり、欠陥の理解は材料特性を向上させる上で役立つことが将来的に期待されます。

(4)課題、今後の展望

今後は、ガラスの種類や作製法によって、どのような密度ゆらぎ、特に欠陥と呼べるような構造が導入されるかを系統的に調べ、それにより、上述した電池用材料、窓ガラス、光ファイバーなどの応用において、それら欠陥構造がイオン伝導特性、強度、光学特性などの物性にどのような影響を及ぼすかを調べる予定です。また、それらを制御することにより、さらに性能の高いガラス材料の開発が進むことが期待されます。

(5)研究者のコメント

  • 今回見出したナノスケール柱状構造の配列は、我々独自の実験および解析手法を用いることで目に見える形として初めて抽出されたものであり、これまで広く議論されてきたリング構造としての見方と実験で観測される回折データを結び付けるという点で、ガラス構造の見方に新たな視点を加えるものだと考えています。(平田)
  • ビーム径の大きさのため平均化され埋もれていた構造秩序を、極限まで絞り込んだ電子ビームを用いて、初めて観測した成果です。新しい観測は理論を刺激し、その逆もあり、多様な研究者の連携がこの分野の推進に不可欠と考えています。(志賀)

(6)用語解説

※1 オングストロームビーム電子回折法

ガラス構造の局所領域から回折パターン(物質に波を当てたときに得られる干渉パターン)を取得するための透過電子顕微鏡を用いた実験方法。通常、マイクロビームあるいはナノビーム電子回折と呼ばれるが、ガラス構造の観察には特にオングストロームスケール(1nm以下)での観測が本質的に重要となるため、このように呼んでいる。ガラス構造の10nm以上の十分に広い領域から回折パターンを取得した場合は、ハローリングと呼ばれる複数の回折リングが見られるが、領域が1nm以下になると回折スポットを呈するようになり、これが局所構造を反映していると考えられる。

※2 シリカガラス

シリコンと酸素から成りSiO2の化学組成を持つガラス物質のこと。ガラスとは通常液体状態が冷却されて過冷却状態になり、さらなる冷却により粘性が極度に高まることで得られる固体状の物質を指す。過冷却液体からガラスへの転移をガラス転移といい、体積の温度に対する変化率(熱膨張係数)等が「ガラス転移が起こる温度(ガラス転移点)」を境に変化する。このガラス状態の原子配列に本研究では特に着目しており、それは結晶のような規則性を持たない不規則なものである。

※3 ナノスケール柱状構造

本研究において、シリカガラスの中に見いだされた原子が結合してできた2nm程度の長さを持つ直線状の構造。これは独立して存在するわけではなく、ブリッジ原子と呼ぶ原子によってお互いに接続されている。また、同じ領域に対して他の方向から見た場合に、その入射方向に沿って別の柱状構造が存在する可能性もあり、この特徴は結晶構造の場合と同様である。

※4 擬格子面

結晶学や固体物理学では、原子が規則正しく並んだ結晶構造において、周期性を反映する格子という概念を考え、それを基に原子を置いていくことで結晶が作られるとする。この格子中に作られる周期的に配列される面が格子面であり、結晶構造にX線、電子線、中性子線のような波長の短い波をあてた場合、格子面の間隔がある条件を満たすと波が強めあう性質があるため、この概念が重要となる。一方、ガラスなどの不規則な構造では、このような明瞭な格子面は存在しないが、局所的にある程度の規則性を示す部分があり、これを擬格子面とここでは呼んでいる。擬格子面の存在は、結晶のおける格子面と同様に波が強め合う原因となると考えられている。

※5 FSDP

First Sharp Diffraction Peakの略。シリカガラスのような化学結合によるネットワークから構成されるガラス構造に対し、X線、電子線、中性子線のような波長の短い波をあてることにより現れる回折ピーク(Diffraction Peak)のうち、もっとも小さい回折角で観測されるもの。低角側から数えて最初に出現するピークであり、ガラスのような非晶質物質にしてはシャープであるため、この名前がついている。このピークに対応する距離スケールは4Å前後であり、原子間距離のスケールより2倍程度大きいことが特徴である。つまり、原子の結合よりも大きいスケールの構造を反映したものであると考えられる。

※6 分子動力学法

物質中の原子や分子の時々刻々の動きをシミュレートする方法。原子あるいは分子の間に働く力を仮定し、運動方程式を差分法と呼ばれる数値計算により解く。

※7 逆モンテカルロ法

回折実験から得られた構造因子や2体分布関数にフィットするような原子配列モデルを求める方法。基本的には実験値と計算値の差が少なくなるよう、乱数を用いて原子を変位させる。 

(7)論文情報

雑誌名:NPG Asia Materials
論文名:Direct observation of the atomic density fluctuation originating from the first sharp diffraction peak in SiO2 glass
執筆者名(所属機関名):平田 秋彦(早稲田大学)、佐藤 柊哉(東京理科大学)、志賀 元紀(東北大学)、小野寺 陽平(物質・材料研究機構)、木本 浩司(物質・材料研究機構)、小原 真司(物質・材料研究機構)
掲載日(現地時間):2024年5月10日(金)
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41427-024-00544-w
DOI:https://doi.org/10.1038/s41427-024-00544-w

(8)研究助成

研究費名:科学研究費 挑戦的研究(萌芽) 課題番号:23K17837
研究課題名:ガラス構造における擬格子面と位相幾何的秩序
研究代表者名(所属機関名):平田 秋彦(早稲田大学)

研究費名:科学研究費 学術変革領域研究(A) 課題番号:20H05884
研究課題名:数理情報科学に基づく超秩序構造の網羅的解析
研究代表者名(所属機関名):志賀 元紀(東北大学)

研究費名:科学研究費 学術変革領域研究(A) 課題番号:20H05881
研究課題名:先端量子ビーム手法群によるナノ・メゾスケール元素選択構造計測
研究代表者名(所属機関名):小原 真司(物質・材料研究機構)

【キーワード】

ガラス、オングストロームビーム電子回折、ナノスケール柱状構造、FSDP(First Sharp Diffraction Peak)、擬格子面、密度ゆらぎ

(5/18[土]11:00~12:30)経営デザイン専攻個別相談会の追加開催について

著者: staff
2024年5月14日 09:16

以下の通り、創造理工研究科経営デザイン専攻の個別相談会を開催いたします。

 

[開催日]  2024年5月18日(土)

[開催時間] 11:00~12:30

[参加方法] Zoomにて実施いたします。以下のURLより上記開催時間中にご参加ください。

https://list-waseda-jp.zoom.us/j/98358548762?pwd=UXFSQWtzcVRUVXVucE05NDlISWdBZz09

ミーティング ID: 983 5854 8762

パスコード: 630989

 

[問合せ先] 理工センター入試・広報オフィス大学院入試担当 fsegraduate*list.waseda.jp

(送信の際は*を@にご変更ください)にお問い合わせください。

 

【5/11の経営デザイン専攻個別相談会へ参加予定だった方へ】

通信トラブルにより、5/11(土)の経営デザイン専攻の個別相談会が時間通りに開始できませんでした。

参加予定の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びいたします。

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