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早稲田大学と東京科学大学 、超小型衛星でPale Blueと産学連携を開始

著者: contributor
2024年11月5日 18:39

早稲田大学と東京科学大学 、超小型衛星でPale Blueと産学連携を開始
~エコで優しい水推進機 で、宇宙科学・工学の新しい展開へ~

早稲田大学と東京科学大学は、2027年の打ち上げを目指し、50キログラム級超小型衛星GRAPHIUM (日本語で「アゲハ蝶」)の開発で、Pale Blue と連携を開始しました。同衛星には小型・高感度のガンマ線観測装置 INSPIREが搭載され、全天のモニタ観測をするほか、サブミッションとして空力を用いた「エコな」フォーメーション・フライト技術を実証します。その補助としても、エコで地球にやさしい水推進機の使用を予定しています。

超小型衛星GRAPHIUMの概要

図1:キロノバとレアメタル生成(想像図)

現在、地上には約300種類の元素が知られていますが、経済や産業、医療にとっても重要な金やプラチナ(レアメタル)が宇宙のどこでつくられるのか、いまだに謎に包まれています。最も有力な説は「キロノバ」と呼ばれる現象で、高密度な中性子星が合体するさいに、一気に金やプラチナが生成されるというものです(図1)。キロノバは強い重力波源としても知られますが、宇宙のどこで、いつ起きるか全く予想ができません。もし、全天のキロノバを監視しつつ、金やプラチナに特有なエネルギーをもつX線やガンマ線を捉えることができれば、そこが元素の生成現場と特定することができます。しかしながら、とくにガンマ線の観測は難しく、これまで打ち上げられた数少ない衛星はいずれも米国、欧州の4,000キログラム以上の大型衛星です。これらの衛星は観測視野も狭く、キロノバのような突発天体の観測には不向きでした。

超小型衛星GRAPHIUM(図2)は、「ひばり衛星」「うみつばめ衛星」に続き、東京科学大学と早稲田大学が合同で開発する超小型衛星プロジェクトです。主ミッションとして、キロノバなどの突発ガンマ線観測をかかげ、宇宙におけるレアメタルの生成現場を探査します。一度に全天の1/4をモニタする広視野かつ高感度のX線ガンマ線カメラ INSPIRE を搭載し、50キログラム級の衛星にもかかわらず従来の大型衛星に匹敵するガンマ線観測が可能です。これは、おもに通信や測位、産業で用いられてきた小型衛星に新しい息吹を与え、新しい科学の方向性を示すものです。さらに、GRAPHIUMの副ミッションとして、将来の宇宙工学を見すえた技術実証を予定しています。具体的には、マーカーとなる数キログラムの小物体を打ち出し、汎用的な光学カメラでこれを検知します。空力(大気抗力と揚力)を用いることで推進剤消費量を大幅に削減してフォーメーションを形成する「エコな」相対軌道制御の実証実験です(図3)。その補助としての推進機もエコで地球にやさしい水推進機の使用を予定しています。これまで用いられてきた推進剤は、有毒な化学物質の使用するものや高価で貯蔵が難しいなど、多くの課題がありました。GRAPHIUM ではPale Blue との産学連携により水推進機の実利用を拡大させます。

図2: 東京科学大学を中心とした超小型衛星プロジェクトの歴史と GRAPHIUM衛星

図3:空力を用いたフォーメーション・フライト(概念図)

GRAPHIUMのさらなる挑戦 ― 宇宙と医療の懸け橋へ

GRAPHIUM衛星の開発は、JST戦略的創造研究推進事業ERATO「片岡ラインX線ガンマ線イメージング」プロジェクトの一環として実施しています。本研究プロジェクトでは、「元素固有の色」であるラインX線ガンマ線のイメージング技術と概念を通じ、宇宙から医療を貫く新しい学問の潮流を創成することを目的としています。特に、金やプラチナなどレアメタルの起源(宇宙科学)を探りつつ、医療応用の新しい可能性に着目し、これを根幹としながら関連分野や技術を網羅的に包括しつつ、研究を進めています(図4)。

金やプラチナは貴金属として経済や社会、産業にも深く根付き、パソコンやスマートフォンは「都市鉱山」と異名をとるほど、基板にレアメタルが多用されています。とくに、金は生体適合性が高く、もっとも安全な金属として多くの医療機器に用いられています。近年では、粒径が数十ナノメートル以下の粒である 「金ナノ粒子(AuNP)」 が抗がん剤など薬物を患部に運ぶ理想的なキャリアとして、さらには、光温熱治療でも大きな注目を集めています。一方で、常にネックとなるのが「体内の薬物動態を可視化する技術」です。一般的に、薬物がヒト体内の狙った箇所に、狙ったタイミングで届けられているかを確認する術はなく、治療効果の最適化や新しい薬剤の開発を困難にしています。もし、広い宇宙でキロノバを探す要領で、ヒト体内の金やレアプラチナを探すことができれば、これまで見えなかった薬物動態をも可視化できることになります。実際、我々の研究グループはキロノバで起こる金の元素合成にアイデアを得て、マウス体内でのAuNP分布を可視化することに成功しました。また、診断装置であるCT(コンピュータ断層撮影)に色付けをすることで、AuNPの分布のみを描出することに成功しています。これらは全て、小型衛星開発から得られた知見が活かされています。

図4:ERATOラインX線ガンマ線イメージングの概要

研究者のコメント

東京科学大学 総合研究院 量子航法センター 渡邉奎 特任助教 コメント
私たちは軌道上で衛星を変形させる可変形状機能を「ひばり」衛星で実証し、さらに空力を利用した軌道制御へ応用しようとしています。GRAPHIUMでは水推進と空力によりフォーメーション・フライトを低リソース・低コストに実証することを試みますが、これによって超小型衛星にとっての軌道制御のハードルが下がり、今後の超小型衛星ミッションがさらに多様化することを望んでいます。

東京科学大学 工学院 機械系 中条俊大 准教授 コメント
GRAPHIUMは、理学的にも工学的にも、超小型衛星としては非常に充実度が高いミッションを実施する計画です。その中のフォーメーション・フライト実験は、推進システムが必要なため以前は敷居が高いものでしたが、水推進機技術の発展により超小型衛星でもできるようになりました。空力と組み合わせた軌道制御は工学的には面白い実験ですので、実現が楽しみです。

早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 片岡淳 教授 コメント
宇宙科学は衛星とともに大型化し進化してきましたが、同時に科学が本来もつべきフットワークの軽さや柔軟な探求心が、徐々に失われつつあります。ところが現在、世界中では年間300基を超える小型衛星が打ち上げられ、宇宙への敷居が急速に下がりつつあります。GRAPHIUMは、小型衛星を基軸として先端科学や宇宙工学に切り込むユニークなプロジェクトで、今後のモデルパターンとなると期待しています。

Pale Blue 共同創業者 兼 代表取締役 浅川純 コメント
先端科学や宇宙工学の新たな世界を切り開くGRAPHIUMは、「人類の可能性を拡げ続ける」という当社のミッションとの親和性も高く、この度ご一緒できることを大変嬉しく思います。小型衛星技術のさらなる発展と、宇宙ビジネスの活性化に貢献できるよう、大学や研究機関との連携を強化し、イノベーションを加速させていきます。

研究助成

本研究は、 JST ERATO JPMJER2102の支援を受けたものです 。

Presentation title: Beat the Heat: Advancing Our Understanding of Heat Stress and Developing Effective Sustainable Interventions to Reduce Health Risks in a Warming World(2024/11/13)

著者: staff
2024年10月31日 15:34

演題:Presentation title: Beat the Heat: Advancing Our Understanding of Heat Stress and Developing Effective Sustainable Interventions to Reduce Health

日時:11月13日(水) 13:00-14: 40

会場:早稲田大学西早稲田キャンパス 61号館 314室

講師:Federico Tartarini

対象:主に大学院生、教職員

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:創造理工学部 建築学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

12/9-12 情報検索分野の国際会議ACM SIGIR-AP 2024

著者: staff
2024年10月28日 10:24

2024年12月9日(月)~12日(木)に西早稲田キャンパス63号館にて情報検索分野の国際会議ACM SIGIR-AP (アジアパシフィック) 2024を開催します。
基調講演には「ジェンダー格差」の著者牧野百恵先生(アジア経済研究所)と大規模言語モデルLLM-jpプロジェクト主宰の黒橋禎夫先生(国立情報学研究所)をお迎えしています。
参加登録締切は11/16(土)21時(レギュラー料金)、12/2(月)21時(レイト料金)です。ふるってご参加ください。

詳細はこちら
参加登録はこちらから

p-Brownian motion and the p-Laplacian(2024/11/11)

著者: staff
2024年10月25日 17:23

演題:p-Brownian motion and the p-Laplacian

日時: 2024年11月11日(月) 15:30-17: 40

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 62号館 1階大会議室

講師:Michael Röchner

対象:大学院生、教職員、学外者

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:理工学術院基幹理工学研究科 数学応用数理専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

関連リンク先:URL:https://sites.google.com/view/tokyo-probability-seminar23/2024年度

射影空間の直積のブローアップとして得られる対数的ファノ多様体について(2024/11/8)

著者: staff
2024年10月25日 16:59

演題:射影空間の直積のブローアップとして得られる対数的ファノ多様体について

日時: 2024年11月8日(金) 16:30-18: 10

会場:早稲田大学西早稲田キャンパス 51号館 18-08

講師:月岡 透

対象:一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 数学応用数理専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

A Conversation on Affordable Housing in NYC & Tokyo(2024/11/07)

著者: staff
2024年10月25日 16:50

演題:A Conversation on Affordable Housing in NYC & Tokyo

日時: 2024年11月7日(木) 18:30-20: 10

会場:早稲田大学西早稲田キャンパス 55号館 1階イノベーションラボ

講師:Len Garcia-Duran

対象:学部生・大学院生・学外者

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:創造理工学部建築学科建築学専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

Personalized Environmental Control System – PECS (2024/11/06)

著者: staff
2024年10月25日 16:36

演題:Personalized Environmental Control System – PECS

日時: 2024年11月6日(水) 17:00-18: 40

会場:西早稲田キャンパス 54号館 303教室

講師:Ongun Berk Kazanci

対象:主に大学院生、教職員

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:創造理工学部 建築学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

異常な病的タンパク質を作らないために―mRNAの品質を管理する仕組みの発見―

著者: contributor
2024年10月17日 17:02

異常な病的タンパク質を作らないために
―mRNAの品質を管理する仕組みの発見―

発表のポイント

  • 遺伝子DNAからメッセンジャーRNAが作られる転写反応で、転写が途中で誤って停止するために異常メッセンジャーRNAが作られています。このような異常メッセンジャーのうち、最終エキソンが3’側のイントロンまで伸長したタイプを3XTと名付けました。
  • 3XTの発生を監視して除去するために、核内RNA分解を制御するMTR4タンパク質とRNAに結合するhnRNPKタンパク質が協力していることを発見し、3XTを除去できないと3XTから異常な病的タンパク質が生産され、この病的タンパク質が細胞内に病的構造物を作ることを見いだしました。すなわち、病的構造体形成を阻害するRNA品質管理機構が細胞核内に存在していることを明らかにしました。
  • 本成果は、RNA品質管理機構を標的とした薬剤の開発や疾患の治療法の発展に貢献すると期待されます。

RNAプロセシング異常による異常RNA生成と異常構造体形成

概要

東京大学アイソトープ総合センターの秋光信佳教授、谷上賢瑞特任准教授、早稲田大学理工学術院の浜田道昭教授、曽超研究院講師、東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木穣教授、関真秀特任准教授らによる研究グループは、RNAヘリカーゼMTR4(注1)がRNA結合タンパク質hnRNPK(注2)と協調し、転写反応中に起きるRNAプロセシング(注3)の制御異常で生じる異常RNA群(3XT,注4)を分解していることを明らかにしました。また、KCTD13 遺伝子座から発現するKCTD13 3XTの翻訳産物が、相分離(注5)制御を介して異常な構造体KeXT body(注6)を形成していることを見出しました(図1)。

本研究では、ナノポアシークエンサー(注7)を用いたdirect RNA sequencing技術(注8)を用いることで3XTの発見に繋がりました。異常RNAを分解することで、異常RNA翻訳産物の異常構造体形成を阻害するRNA品質管理機構が存在していることが明らかになり、この研究成果は様々な疾患の診断/治療法開発の重要な基盤となることが期待されます。

図1:KCTD13 3XT翻訳産物は、MTR4非存在下においてKeXT bodyを形成する

発表内容

RNAプロセシングは、キャップ構造の付加、スプライシング、ポリA付加など複数のプロセスによって、転写されたRNAを成熟したmRNAに変換する過程です。これらの制御異常は、異常タンパク質の産生に繋がり、がんや神経疾患など、多くの疾患に関与することが知られています。一方、細胞にはRNAが転写されて成熟mRNAに変化するまでを管理する仕組み(Surveillance system)が存在しており、異常RNAを識別して、適切に分解・排除しています。核内RNA分解機構は、RNA分解を担当するRNAエキソソーム複合体(注9)とRNA識別を担うRNAヘリカーゼMTR4によって形成されており、主に転写直後の単独エキソン転写産物を分解することが知られていました。しかし、RNAプロセシングの制御異常によって生じた複数のエキソンを持つ異常RNAの分解機構は明らかになっていませんでした。

本研究グループはまず、RNAプロセシングの破綻によって生じる異常RNAの分解機構に着目し、従来のRNAシークエンスに加え、RNA全長構造を可視化するdirect RNAシークエンスとポリアデニル化部位を検出する3’末端シークエンス(注10)を実施しました。結果、ポリアデニル化の脱制御により転写が途中で終結し、最終エキソンが3’側のイントロンまで伸長した異常RNAである3XTをMTR4が分解していることを見出しました。

続いて本研究グループは、単独エキソンであるmono-exon 3XTと、スプライシング制御を受け複数のエキソンを持つmulti-exon 3XTに3XTを分類(図2)し、分解機構が明らかになっていないmulti-exon 3XTに着目して研究を進めました。multi-exon 3XTの伸長領域(3XR: 3’ eXtended Region, 図2)に対してモチーフ解析を行ったところ、hnRNPKが当該3XRsに結合している可能性を見出しました。そこでhnRNPKの発現を抑制すると、multi-exon 3XTsの発現が増加することを発見しました。本研究グループはさらに研究を進め、hnRNPKはmulti-exon 3XTの3XRに結合し、RNAエキソソーム-MTR4複合体を当該3XTにリクルートすることで、multi-exon 3XTを分解する仕組みを見出しました。

最後に、MTR4によって制御される3XTsから生成される異常な翻訳産物が異常構造体を形成するのかを調べました。まず構造体形成予測を行い、KCTD13遺伝子座から発現するKCTD13 3XT由来タンパク質が、相分離を起こす可能性を有するペプチド配列を有しており、構造体を形成する可能性を見出しました。そこで、KCTD13 3XTタンパク質に対する抗体を作成し、MTR4を発現抑制したヒト子宮頸がん細胞株HeLa細胞における局在を確認したところ、KCTD13 3XTタンパク質が相分離制御を介して異常な病的構造体KeXT bodyを形成することを見出しました。

これらの結果から、RNAプロセシング異常を有する異常RNAを分解することで、異常RNAから翻訳されたタンパク質による病的構造体の形成を阻害するRNA品質管理機構が存在していることが明らかとなりました。これはRNA品質管理機構の破綻による病的構造体形成が様々な疾患を引き起こす可能性を示唆しており、様々な疾患に対するRNA品質管理機構を標的にした治療法の発展に寄与することが期待されます。

図2:3XT及び3XRの定義

発表者・研究者等情報

東京大学
アイソトープ総合センター
秋光 信佳 教授
谷上 賢瑞 特任准教授
Han  Han  研究当時:博士課程

大学院新領域創成科学研究科
鈴木 穣  教授
関  真秀 特任准教授

早稲田大学
理工学術院
浜田 道昭 教授
曽   超  次席研究員 (研究院講師)

論文情報

雑誌名:Nature Communications
題 名:The MTR4/hnRNPK complex surveils aberrant polyadenylated RNAs with multiple exons
著者名:Kenzui Taniue*, Anzu Sugawara, Chao Zeng, Han Han, Xinyue Gao, Yuki Shimoura, Atsuko Nakanishi Ozeki, Rena Onoguchi-Mizutani, Masahide Seki, Yutaka Suzuki, Michiaki Hamada, Nobuyoshi Akimitsu*
DOI: 10.1038/s41467-024-51981-8
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-024-51981-8

用語解説

(注1) MTR4
RNAヘリカーゼMTR4(MTREX)は、核内に局在し、RNAエキソソームのアクセサリータンパク質として機能する。RNA結合タンパク質と結合して様々な複合体を形成し、それぞれ特定の標的RNA群を識別する。また、MTR4はスプライシング機構にも関与することが知られており、多機能タンパク質として様々な局面で機能することが知られている。

(注2) hnRNPK
hnRNPKは、核に局在するDNA/RNA結合タンパク質であり、様々な生物学的プロセスを制御する。hRNPKの発現異常は、癌などの疾患の発症に関与する。hnRNPKは、RNAや一本鎖DNAを認識する3つのKHドメイン、核局在化シグナル、核シャトリングドメインを有しており、転写、mRNAスプライシング、RNAの輸送、翻訳などに関与することが知られているが、hnRNPKが核内RNA分解に関与していることは報告されていない。

(注3) RNAプロセシング
RNAプロセシングとは、細胞内で合成されたRNA分子が機能的な成熟RNAに変換される過程のこと。RNA ポリメラーゼ Ⅱによる転写反応で前駆体 mRNA(pre-mRNA)が合成されると、5’末端キャッピング,スプライシング,3’末端プロセシングなど様々なプロセシング反応により成熟 mRNA となる。また、選択的RNAスプライシングや選択的ポリA付加によって、遺伝子特異的かつ細胞型特異的にRNAアイソフォームを生成される。選択的RNAスプライシングや選択的ポリA付加は、タンパク質多様性の獲得に寄与し、多様な生理的条件下で細胞プロセスを制御する上で重要な役割を果たしている。

(注4) 3XT (3’ eXtended Transcript)
ポリアデニル化の脱制御により転写が途中で終結し、最終エキソンが3’側のイントロンまで伸長した異常RNAのこと。3XTは本研究グループが発見し、第1エキソンが伸長した3XTをmono-exon 3XT、2つ目以降のエキソンが伸長した3XTをmulti-exon 3XTと命名した。従来のエキソンからイントロンまで伸長した領域を3XR (3’ eXtended Region)と命名した。図2参照。

(注5) 相分離
相分離は、生物学において重要なプロセスであり、特定の条件下で細胞内の分子が自発的に分離し、異なる相(phase)を形成する現象を指す。このプロセスによって細胞内の特定の区域に分子が集中し、高次構造体やゲルのような凝集体を形成することで、効率的な生化学反応や転写や翻訳などの調節機構を効果的に実行することが可能となる。近年、相分離が多くの生物学的過程において重要な役割を果たしていることが示されており、相分離の異常によってがんや神経変性疾患の発症に繋がる可能性が示唆されている。

(注6) KeXT body (KCTD13 3eXtended Transcript-derived protein body)
KCTD13遺伝子座から発現するKCTD13 3XTの翻訳産物が形成する異常構造体のこと。KeXT bodyは主に細胞質で構成されるが、その構成因子や機能についてはまだ不明である。

(注7) ナノポアシークエンサー
細胞膜に存在するタンパク質を用いたナノスケールの孔(ナノポア)を使って、DNAやRNAの塩基配列を直接読み取る技術を用いたシークエンサーのこと。ナノポアシークエンサーは、他のシーケンシング技術と比べて非常に長いリード(数万塩基に及ぶことも可能)を読み取ることができ、複雑なゲノム領域や構造変異、RNAの全長構造の解析などの解析が可能になる。また、DNAだけでなく、RNAも直接シークエンスできるため、転写後修飾の研究にも利用されている。

(注8) direct RNA sequencing技術
ナノポアシークエンシング技術によるRNA分子を直接シークエンスする技術のこと。RNA分子がナノポアを通過する際に、各塩基(A、U、C、G)の違いによって生じる電流の変化をリアルタイムで検出し、電流の変化パターンを解析することで、RNAの塩基配列が決定する。cDNA合成やPCR増幅などのステップを経ずに、RNAを直接シークエンスすることで、PCRバイアスや逆転写エラーを回避することが出来る。

(注9) RNAエキソソーム複合体
RNAエキソソーム複合体は、真核細胞の核内でRNAの分解やプロセシングに重要な役割を果たすタンパク質複合体のこと。RNAエキソソームは、9つのタンパク質(EXOSC1 – EXOSC9)から構成されるRNA分解活性を持たないエキソソームバレルとRNA分解活性を有するDIS3やEXOSC10から成る。多くのRNA分子を対象とし、主に不必要なRNAや異常なRNAの分解を行う。RNAエキソソーム複合体の制御異常は、がんや神経変性疾患の様々な疾患と関連することが知られている。

(注10) 3’末端シークエンス
3’末端シークエンスは、RNA分子の3’末端に付随するポリ(A)テールを利用して、遺伝子の転写物の末端部分を標識し、3’末端部分をシークエンスする技術。主に、遺伝子発現解析や3’UTRアイソフォームの存在量を測定するために用いられる。通常の全長RNA-seqと比較して、解析に必要なリード数が少なくて済むため、低コストでの発現解析が可能である。また、RNA量が少なくても高感度かつ高精度に発現解析を行うことができるので、遺伝子発現解析、ポリAテール解析、RNA安定性解析に加え、シングルセル解析などにも応用されている。

研究支援

本研究は、科研費「自然免疫応答を制御する長鎖非コードRNAに関する研究(課題番号:17KK0163)」、「リピート要素のde novo発見に基づく長鎖ノンコーディングRNAの機能の解明(課題番号:20H00624)」、「核内RNAボディによるクロマチン制御と熱ストレス応答(課題番号:21H00243)」、「ヒト細胞における新しい物理化学的ストレス感知・応答機構の解明と癌治療への応用(課題番号:21H04792)」、「lncRNA-RBP複合体によるユビキチン-プロテアソーム制御機構(課題番号:21H02758)」、「RNA品質管理機構によるイントロン-エクソン化RNA生成と癌維持機構への関与(課題番号:21K19402)」、「膵癌オルガノイドを用いた構造異常RNAの探索と機能解析(課題番号:22KK0285)」、「先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム(課題番号:22H04925)」、「Identification of repetitive elements involving genome regulation(課題番号:22K15093)」、「RNAを中心とした分子ネットワークに基づく生物学的相分離の俯瞰的・体系的理解(課題番号:23H00509)」、「生殖ライフスパンにおける RNAキネティクス計測(課題番号:23H04955)」、AMED「機能解析に基づく RNA 標的創薬のための統合 DB と AI システムの構築(課題番号:JP21ae0121049)」、上原記念生命科学財団、武田科学振興財団、小林財団、MSD生命科学財団、内藤記念科学振興財団、小野医学研究財団、ノバルティス科学振興財団の支援により実施されました。

【11月28日(木)12:30~13:10開催】      PEP卓越大学院プログラム2025年4月(8期生) 進入/編入 募集説明会開催します!

著者: staff
2024年10月16日 09:54

卓越大学院プログラム『パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム』は、
電力・エネルギー新産業創出に寄与する人材を輩出することを目的とした修士・博士後期5年一貫の博士人材育成プログラムです。

この度、本プログラムの2025年(8期生)進入/編入募集説明会を以下のように開催致します。
当日は、プログラム説明後に現役PEP生2名(電力系・エネルギーマテリアル系代表)も参加して、
皆さんの質問にお答えします。
お気軽にお申込みください!

<日時>
2024年11月28日(木)12:30~13:10

形式:Zoomオンラインミーティング(途中入退室可)
※申請フォームから参加登録いただいた方にURL等詳細を、前日までにメールでお送り致します

<申請フォーム>
PEPプログラムに少しでも関心のある方はお気軽に、以下URLよりお申込みください。
https://x.gd/5DO7k8
申込締切:11月27日(水)10:00まで

<ポスター>
https://waseda.box.com/s/u4o7jjpdcq7clh24ssy2zn56s6hpjkx4

<概要>
対象:現在、電力系・エネルギーマテリアル系を専攻分野としている
(あるいは現在それらの分野・専攻に関心がある)以下の学生、社会人
・学部3年生、4年生
・修士課程・一貫制博士課程1年生、2年生
・2025年4月に以下の参画専攻博士後期課程入学予定者

<参画専攻>
・基幹理工学研究科(機械科学・航空宇宙専攻、電子物理システム学専攻)
・創造理工学研究科(地球・環境資源理工学専攻)
・先進理工学研究科(応用化学専攻、電気・情報生命専攻、ナノ理工学専攻、先進理工学専攻)
・環境・エネルギー研究科(環境・エネルギー専攻)

<内容>
・PEP卓越大学院プログラム概要説明(研究指導・支援体制、カリキュラム、進路、経済的支援etc)
・2025年4月(8期生)進入/編入募集日程
・現役PEP生(2名)の体験談
・質疑応答

<ご参考>
PEP卓越大学院プログラムHP https://dpt-pep.w.waseda.jp/
パンフレット https://dpt-pep.w.waseda.jp/pamphlet/
募集要項出願書類 https://www.waseda.jp/fsci/admissions_gs/guidelines/pep/

<お問合せ>
PEP卓越大学院プログラム事務局(51号館1F理工統合事務所内)
Email:[email protected]   TEL:03-5286-3238

Biomedical Polymer Materials: Its Future and Perspectives(2024/10/26)

著者: staff
2024年10月14日 16:37

日時:2024年10月26日(土) 15:00-16: 40

会場:西早稲田キャンパス 55号館N棟第一会議室

講師:陳 学思(中国科学院長春応用化学研究所・院士・教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

Tumor-targeted Drug Delivery Based on Vascular-disrupting Agents(2024/10/26)

著者: staff
2024年10月14日 16:21

日時:2024年10月26日(土) 16:40-17: 50

会場:西早稲田キャンパス 55号館N棟第一会議室

講師:Zhaohui Tang(中国科学院長春応用化学研究所・教授)

対象:学部生・大学院生、教職員、学外者、一般の方

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

Exploration of Polysilsesquioxane Functions: Applications as Heat Insulating and Anti-Fogging Materials(2024/10/18)

著者: staff
2024年10月8日 12:21

演題:Exploration of Polysilsesquioxane Functions: Applications as Heat Insulating and Anti-Fogging Materials

日時:2024年10月18日(金)15:30~17:30

会場:西早稲田キャンパス 62号館 1-07A大会議室A

講師:大下 浄治(教授)

対象:大学院生(応化、化学、生命化学、ナノ理工)

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学研究科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

 

Material chemistry based on soft matters: from emulsions to silicones(2024/10/18)

著者: staff
2024年10月8日 12:16

演題:Material chemistry based on soft matters: from emulsions to silicones

日時:2024年10月18日(金)15:30~17:30

会場:西早稲田キャンパス 62号館 1-07A大会議室A

講師:國武 雅司

対象:大学院生(応化、化学、ナノ理工)

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学研究科

問合せ:早稲田大学 理工センター総務課

TEL:03-5286-3000

 

Applications of Halogen-Atom Transfer (XAT) for the Generation of Carbon Radicals in Synthetic Photochemistry and Photocatalysis(2024/10/18)

著者: staff
2024年10月7日 16:30

演題:Applications of Halogen-Atom Transfer (XAT) for the Generation of Carbon Radicals in Synthetic Photochemistry and Photocatalysis

日時:2024年10月18日(金)16:20~18:00

会場:早稲田キャンパス 121号館 コマツ100周年記念ホール

講師:Daniele Leonori

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学研究科

問合せ:早稲田大学 理工センター総務課

TEL:03-5286-3000

 

【PEP卓越大学院プログラム】2025年1月実施8期生(2025年4月進入・編入)選抜試験(SE)情報を更新しました

著者: staff
2024年10月4日 17:13

卓越大学院プログラム
「パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム」
2025年1月実施の8期生(2025年4月進入・編入)選抜試験(SE)に関する情報を更新致しました。

詳細は、理工学術院HP大学院入試ページの中のPEP SE情報ページ(募集要項・出願書類)をご参照ください。

https://www.waseda.jp/fsci/admissions_gs/guidelines/pep/

見えてきた医理工連携の成果と展開(第4回日本医科大学・早稲田大学合同シンポジウム開催報告)

著者: contributor
2024年10月3日 14:38

2024年9月28日(土)、第4回「日本医科大学・早稲田大学合同シンポジウム~両校の実質的連携を目指した研究交流~」を早稲田大学121号館コマツホールにおいて開催しました。

日本医科大学と本学との連携は、2009年に締結した包括協定から始まり、実質的な研究連携への合意(2020年)を経て、本学附属校・系属校との高大接続連携に関する協定(2020年)へと発展してきました。2021年度からは、日本医科大学で選抜された3年生を、本学の理工系研究室に3週間迎え入れて交流を図る「研究配属」も実施しています。

シンポジウム冒頭の開会挨拶で、日本医科大学学長の弦間昭彦氏は、実質的な共同研究がかなり進んできているところであり、今後は「Well-being」をキーワードとして、より一層の連携を進めていきたいと述べられました。続く早稲田大学総長の田中愛治からは、改めて2020年度以降の実質的研究連携や高大接続連携への謝辞が述べられるとともに、医療とロボット工学との連携を例に、両大学の強みを様々に組み合わせることで、社会の要請に応える成果を多く生み出すことができるとの期待が述べられました。

左:日本医科大学学長の弦間昭彦氏、右:本学総長の田中愛治

開会挨拶に続く第一部では、日本医科大学2名、本学2名の研究者が両校の共同研究実績も含めた研究紹介を行いました。

  • 村上 善則(日本医科大学 先端医学研究所 分子生物学部門 特命教授)
    「多層的生体情報の統合による新規疾患予防法の開発」
  • 酒井 哲也(早稲田大学理工学術院 教授)
    「頭部MRI画像を用いた研究の進捗少々および関連しそうな画像処理分野の話題」
  • 山本 林(日本医科大学 先端医学研究所 遺伝子制御学部門 教授)
    「液滴オートファジーとエクソソーム分泌」
  • 澤田 秀之(早稲田大学 理工学術院 先進理工学部 応用物理学科 教授)
    「末梢神経障害診断法の開発ならびにヒトの手の解剖学的構造を再現したBionic Fingerの開発」

研究紹介の様子(左から、村上特命教授、酒井教授、山本教授、澤田教授)

第二部では、日本医科大学生が早稲田大学における研究配属の成果発表を行い、優秀研究賞1件が選ばれました。

    
成果発表・質疑応答の様子

左から、日本医科大学学長の弦間昭彦氏、優秀研究賞を受賞した日本医科大学生、本学副総長の須賀晃一

閉会挨拶では、まず本学副総長の須賀晃一から、両大学の共同研究が様々に進んでいくことへの期待が語られました。さらに日本医科大学学生の研究配属についても触れ、早大創設者である大隈重信の言葉を交えながら、失敗から学ぶことが重要であるとの、学生への激励の言葉も送られました。次に、日本医科大学大学院医学研究科長の桑名正隆氏からは、すでに実質的連携が進んできているとの実感と、研究交流に限らず研究配属での学生指導や講義など、様々な機会を通して相乗的に連携を進め成果を生み出していくことへの意欲が述べられました。

当日参加した両大学の教員・研究者の集合写真

今後も、日本医科大学と本学は、研究と教育との両輪で連携を推進し、社会に貢献してまいります。

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