ノーマルビュー

Long-Range Memory in Stochastic Equations (2025/9/2)

著者: staff
2025年7月17日 14:44

演題:Long-Range Memory in Stochastic Equations

日時:2025年9月2日(火) 13:30-14:30

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 63号館 2 階会議室3-5

講師:Xue Mei Li (EPFL教授およびImperial College London教授)

対象:大学院生、教職員、学外者

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 数学応用数理専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

リンク先URL: https://www.math.sci.waseda.ac.jp/math/activities/

 

Top Lyapunov exponent for advection-diffusion(2025/9/2)

著者: staff
2025年7月17日 14:32

演題:Top Lyapunov exponent for advection-diffusion

日時:2025年9月2日(火) 16:30-17:30

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 63号館 2 階会議室3-5

講師:Martin Hairer (EPFL教授およびImperial College London教授)

対象:大学院生、教職員、学外者

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 数学応用数理専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

リンク先URL: https://www.math.sci.waseda.ac.jp/math/activities/

 

My name is Bond, positron Bond. (2025/8/5)

著者: staff
2025年7月17日 12:58

演題:My name is Bond, positron Bond.

日時:2025年8月5日(火) 16:00-17:40

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館 S棟 9F 904号室

講師:Andres Reyes Velasco (National University of Colombia教授)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 化学・生命化学専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

Composite Figures(2025/7/23)

著者: staff
2025年7月11日 15:46

演題:Composite Figures

日時:2025年7月23日(水) 18:00-20:00

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館イノベーションラボ

講師:Oliver Lütjens (建築家/チューリッヒ工科大学客員講師)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:創造理工学部 建築学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

なぜmicroCHIPでmicroRNAを検出するとValiosoなのか?(2025/7/16)

著者: staff
2025年7月10日 11:36

演題:なぜmicroCHIPでmicroRNAを検出するとValiosoなのか?

日時:2025年7月16日(水) 13:10-14:50

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス53号館201室

講師:石原 量 (順天堂大学医学部 准教授)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

最も有名ながん抑制遺伝子p53はどのようにがんを抑制するのか?(2025/7/17)

著者: staff
2025年7月4日 15:55

演題:最も有名ながん抑制遺伝子p53はどのようにがんを抑制するのか?

日時:2025年7月17日(木) 17:00-18:40

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス52号館204室

講師:大木 理恵子(国立がん研究センター・基礎腫瘍学ユニット独立ユニット長)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

主催:先進理工学部 化学・生命化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

リンク先URL

https://www.ncc.go.jp/jp/ri/division/fundamental_oncology/Introduction/index.html

Structure, Function and Discovery Potential of Microbiomes in the Ocean and Coral Reefs(2025/8/1)

著者: staff
2025年7月3日 15:47

演題:Structure, Function and Discovery Potential of Microbiomes in the Ocean and Coral Reefs

日時:2025年8月1日(金) 16:00-17:40

会場:早稲田大学 120-5号館121会議室

講師:Sunagawa Shinichi (ETH Zurich 教授)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

参加方法:希望者は k.koshigoe2@kurenai.waseda.jpにメールで申し込み

主催:先進理工学部 生命医科学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

Agroecological research and transformation in Europa(2025/7/28)

著者: staff
2025年7月3日 15:45

演題:Agroecological research and transformation in Europa

日時:2025年7月28日(月) 15:00-17:00

会場:早稲田大学 120-5号館121会議室

講師:ベリングラード木村園子ドロテア (ライプニッツ農業景観研究センター教授)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

参加方法:希望者は [email protected]にメールで申し込み

主催:先進理工学部 生命医科学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

Soil Healthと精密農業(2025/7/30)

著者: staff
2025年7月3日 15:43

演題:Soil Healthと精密農業

日時:2025年7月30日(水) 15:00-17:00

会場:早稲田大学 120-5号館121会議室

講師:水田 勝利 (ケンタッキー大学土壌植物学科 准教授)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

参加方法:希望者は [email protected]にメールで申し込み

主催:先進理工学部 生命医科学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

命をつなぐ配偶子エピゲノム:形成機構および世代継承性について (2025/7/29)

著者: staff
2025年7月2日 10:14

演題:命をつなぐ配偶子エピゲノム:形成機構および世代継承性について

日時:2025年7月29日(火) 16:30~18:10

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 55号館S棟6階610号室

講師:前澤 創

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 化学・生命化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

多孔性結晶中のNaイオンの高速拡散機構を新たに提唱

著者: contributor
2025年7月2日 09:21

多孔性結晶中のNaイオンの高速拡散機構を新たに提唱
-次世代ナトリウムイオン電池の新規正極の開発を加速-

ポイント

  • Naイオン電池の有望な電極材料である多孔性結晶プルシアンブルー(PB)中のLi+・Na+・K+の拡散機構を、スーパーコンピュータを利用した高精度計算により解明。
  • Na+が室温以下で十分高速に拡散すること、PB結晶の動的な歪みの小ささがその拡散機構に寄与することを示唆。
  • Naイオン電池の開発や、室温以下で安定動作する電池の設計指針構築に貢献。

概要

東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 化学生命科学研究所の館山佳尚教授、早稲田大学 先進理工学研究科の伊藤暖大学院生(博士後期課程3年)らは、スーパーコンピュータ「富岳」(用語1)を用いた高精度計算により、Naイオン(Na+)電池(用語2)の有望な電極材料であるプルシアンブルー(PB、用語3)結晶におけるNa+の拡散機構とPB結晶の動的な無歪み性が室温以下の高速拡散に重要であることを提唱しました。これは「大きい孔が拡散に有利」という典型的な考え方を書き換え、また開発競争が加速するNaイオン電池の正極材料(用語4)設計指針を飛躍的に前進させる成果です。
近年、資源制約フリー(用語5)なNaイオン電池の研究が著しく加速しており、電池性能を決定づける正極材料の性能向上は重要な課題となっています。その解決法の一つとしてPB正極の利用が注目を集めていますが、PB正極の充放電速度向上の鍵となるNa+拡散の観測・制御は難しく、PB正極の材料設計の課題となっていました。
本研究では、スーパーコンピュータ「富岳」等を利活用することで、温度効果も含めた高精度な原子レベルの計算、第一原理分子動力学計算(FPMD、用語6)を世界に先駆けて実行しました。その結果、Li+、Na+、K+の拡散特性の比較を通して、Na+が室温以下でも高い拡散係数を維持すること、その要因としてPB結晶の動的な無ひずみ性が重要であることを示しました。得られた知見は、一般の多孔性結晶内のイオン拡散の基礎学理に新たな視点を与えるものであると同時に、室温以下で優位に駆動するNaイオン電池の材料開発にも大きく貢献するものと言えます。

本研究の成果は、米国化学会が出版する学術雑誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に6月30日付(米国東部時間)で掲載されました。

背景

持続可能な社会の実現に向けて、再充電可能な電池は極めて重要な役割を果たしています。リチウム(Li)イオン電池はその中心的な技術として発展してきたものの、地球上のLi資源分布の偏りが課題とされています。一方、資源が均等に分布しているナトリウム(Na)はLiと化学的性質が似ているため、近年では、Liの代替金属としてNaを用いたNaイオン(Na+)電池の開発競争が激化しています。特に、Naイオン電池の性能を左右する正極(図1a)の候補材料の決定が主な競争課題であり、層状酸化物を用いた研究が主流となっています。一方、層状酸化物タイプの材料は界面の劣化・酸素発生等による電池性能の著しい低下を引き起こす課題があります。それを回避する解決法の一つとして、プルシアンブルー(PB)正極の利用が注目を集めています。
立方体構造を有する金属有機構造体(MOF、用語7)の一種であるPB(図1b)は良好な正極性能(高速充放電特性、長寿命)を示すとともに、製造・材料コストが低いことがとりわけ魅力となっています。一方、PB電極性能の向上に向けて世界中で研究開発が進められているものの、明確な材料設計指針は確立されていません。これは、実験研究の詳細な合成・観測条件によって、正極性能の評価にばらつきがあり、直接比較を困難にさせているためです。故に、正極性能評価の汎用的な指針となる、欠陥や不純物のない理想的な結晶中のNa+拡散機構は未解明な点が多いのが現状です。
本研究では、PB結晶中のNa+拡散機構を解明するべく、スーパーコンピュータ「富岳」等を用い、原子レベルの第一原理分子動力学計算(FPMD)を実施することで、Na+拡散メカニズムの全貌を明らかにしました。さらに、Na+と化学的性質が似ておりイオンサイズが異なるLi+、カリウムイオン(K+)(図1c)を用いた計算も実施することで、PB結晶中のNa+拡散機構の比較検討を行いました。本研究では、立方体構造が3方向に二つずつ並ぶ結晶構造(合計八つのケージ)を想定し(図1b)、その内部で各イオン(A+ = Li+、Na+、K+)が四つ含まれる場合のA+拡散機構を解明しました。室温以上(高温から室温)と低温極限(絶対零度)における拡散機構の解明には、それぞれFPMD計算と第一原理遷移状態計算(用語8)を用いました。二つの手法を駆使し、広い温度範囲(高温から低温極限)で、A+イオンサイズの違いに着目したNa+拡散機構の比較検討を行いました。

図1. (a)イオン二次電池の模式図。負極から正極へと、リチウムイオンなどのプラスの電荷を帯びたイオン(濃いピンク色の丸)が移動することで、電流が流れる。 (b)正極材料の一種であるプルシアンブルー(PB)結晶。(c)PB結晶の孔の中で拡散するA+(= Li+、Na+、K+)イオンとそのサイズの比。

研究成果

高精度FPMD計算を行い、Na+は室温付近でも高い自己拡散係数(用語9)を維持し、拡散に必要な活性化障壁(用語10)も低いことが分かりました(図2a)。一方、Li+は高温でよく拡散するものの、高い活性化障壁を乗り越える必要があり(図2a)、K+は高温と室温においても拡散しませんでした。この結果は、室温付近においてPB正極が優れたNa+伝導体であることを示しています。

図2. (a)第一原理分子動力学計算を用いて算出したLi+、Na+の27〜427℃の温度範囲における自己拡散係数(D*)とアレニウス式(用語11)に基づくプロットから得られた活性化障壁(EaMD)。(b)第一原理遷移状態計算を用いて算出した低温極限(絶対零度)におけるA+イオン(Li+、Na+、K+)の活性化障壁の表。

PB結晶の低温領域における優れたNa+拡散機構を解明すべく、第一原理遷移状態計算を行いました。結果、PB結晶中でNa+は面心からずれた偏位面心(off-FC)位置を最安定位置にとり(図3a)、この間の活性化障壁は低い(129 meV、図2b)ため、容易にNa+が拡散することが示されました。さらに、Na+が拡散する際、結晶構造が動的にひずまずに保たれることが、低い活性化障壁と室温以下でも高い自己拡散係数を実現する鍵であることが明らかになりました。
Li+とK+は、低温極限(絶対零度)でも、Na+より高い活性化障壁を有することが分かりました。イオンサイズが小さいLi+は面心位置(図3b)を最安定位置としており、この位置の間の活性化障壁は比較的高い値を示しています(332 meV(図2b))。これは、大きなPB結晶のケージの面がLi+側に引き寄せられるように大きくひずむ(図3d)ことで、高い活性化障壁と室温以下の低い自己拡散係数が実現することを示しています。一方、イオンサイズが大きいK+(図1c)は、非常に大きな活性化障壁(978 meV(図2b))を必要とすることが分かりました。なお、欠陥を有するPB結晶では、高温でのみK+が有限の自己拡散係数を示すことが分かり、K+は欠陥を含むPB結晶中でのみ拡散することを示しています。

図3. 2 × 2 × 2のPBケージ構造において、(a)四つのNa+イオンが偏位面心位置と(b)四つのLi+イオンが面心位置のみを占有する場合の安定配置。(c-d)Na+、Li+の拡散に伴う動的なPB結晶のひずみ。 Na+、Li+が面心位置にいる際の結晶構造ひずみ(矢印はひずみ方向)を示している。

Li+、K+と比較することで、PB結晶は室温以下でより高速充電が可能なNaイオン電池の正極材料であることが示唆されました。この優位性の要因として、結晶構造が動的にひずまずに保たれることが高Na+拡散機構の実現において重要であることが考えられます。一般的に、電池の劣化は正極材料のひずみや膨張によって引き起こされます。したがって、本研究結果は、Naイオン電池の正極材料として、PB結晶が低温〜室温で高速充電が可能であるだけでなく、長寿命化が期待できることを示唆していると言えるでしょう。

社会的インパクト

中国の電気自動車用電池メーカーなどが2025年4月、低温(約–40℃)で高速充電可能なNaイオン電池 “Naxtra”を発表し、Naイオン電池の実用化に向けた世界的な動きが加速しています。正極材料としてのPBは、長寿命・高エネルギー密度かつ低コスト化を実現しており、欧米のスタートアップ企業を中心に研究開発競争が激化しています。一方、合成条件や組成の違いにより、PBの正極材料としての機能にはばらつきがあり、その材料開発指針は未だ確立していません。
本研究では、原子レベルの計算で最も高精度な手法であるFPMD計算を採用し、A+拡散機構について系統的な理論化学研究を世界で初めて行いました。Li+、K+との比較を通じて、PBが室温以下で駆動するNaイオン電池正極材料として有望であることを明らかにしました。本成果はNaイオン電池開発に対して大きく貢献すると同時に、PBと類似した多孔性を持つMOF材料のA+拡散機構に関する基礎化学を大きく前進させ、電池や触媒をはじめ孔内のイオン伝導を活用した、放射性イオン吸着剤や化学センサー等への材料開発への波及効果も期待されます。

今後の展開

本研究により、欠陥や不純物のない理想的なPB結晶構造がNaイオン電池の正極材料として高い可能性を持つことを理論的に示しました。しかし現実には、欠陥のないPB正極の合成は難しく、実用材料では意図していない結晶構造の欠陥や水和水(結晶内に含まれる金属イオンと相互作用している水分子)などの不純物が電池性能を抑制する要因となっています。また、PB結晶は高温で有毒ガスを発生する可能性があるため、これらの抑制するための仕組みを、材料科学の観点から取り組むことが重要です。今後は、欠陥や水和水も含んだ実際の材料条件に近づけた研究に展開することで、蓄電技術の実用研究との接続を図ります。

付記

本研究は、科学技術振興機構(JST)GteX(革新的GX技術創出事業)「資源制約フリーなナトリウムイオン電池の開発」(JPMJGX23S4)、先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)「分散型国際ネットワークが実現する基盤蓄電技術革新とネットゼロ社会」(JPMJAP2313)、および戦略的創造研究推進事業CREST「分子結晶全固体電池の創製」(JPMJCR22O4)、日本学術振興会 科学研究費助成事業(JP24KJ2098、JP24H02203)、文部科学省 スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム「物理-化学連携による持続的成長に向けた高機能・長寿命材料の探索・制御」(JPMXP1020230325)の支援を受けて行われました。本研究のシミュレーションは、東京工業大学(現 東京科学大学)のスーパーコンピュータ TSUBAME 4.0、物質・材料研究機構の材料数値シミュレータ、および理研のスーパーコンピュータ「富岳」を用いて実行しました。また文部科学省HPCIプログラム利用課題(課題番号:hp230153、hp230205、hp240224)の協力を受けました。

用語説明

(1) スーパーコンピュータ「富岳」:理化学研究所と富士通が共同開発した日本のスーパーコンピュータで、世界トップレベルの計算性能を誇る。材料開発や創薬、気候予測など、幅広い先端研究に活用されている。
(2) Naイオン(Na+)電池:リチウムの代わりにナトリウムイオンを使う電池で、リチウムよりも資源が豊富で安価なため、次世代の蓄電技術として期待されている。
(3) プルシアンブルー(PB):200年以上前から顔料などに使用されている鉄を含む青色の錯体化合物で、安価かつ合成が容易であり、近年はNaイオン電池の正極材料などの新たな用途が注目されている。高いエネルギー密度と優れた安定性を併せ持つことが特徴。
(4) 正極材料:電池の放電・充電時にイオンの出入りが起こる「正極側」の主要な構成物質であり、電池の性能(エネルギー密度、寿命、安全性など)を大きく左右する中核材料。
(5) 資源制約フリー:限られた希少資源に依存せず、地球上に広く存在する元素を活用することで、持続可能性と安定供給を実現するという考え方。
(6) 第一原理分子動力学計算(FPMD):経験パラメータを利用しない量子力学方程式に基づいて計算された力を用いて原子の時間発展を追跡する動力学シミュレーションで温度や動的挙動を考慮できる。実験に依らない高精度計算手法として近年広く利用されている。
(7) 金属有機構造体(MOF):金属イオンと有機配位子が結合して形成される多孔性材料。高い表面積と構造多様性を持ち、ガス吸着や触媒などに応用される。
(8) 第一原理遷移状態計算:経験パラメータを利用しない量子力学方程式に基づいて計算された力で、始状態と終状態の間で最もエネルギーを使わずに変化できる構造変化(反応経路)を求める計算手法。
(9) 自己拡散係数:粒子が外部の力を受けずに自身の熱運動によって移動する速さを示す係数。分子動力学計算などで評価され、リチウムイオン伝導性などの指標になる。
(10) 活性化障壁:化学反応や物質中のイオン移動が起こるために必要な最小限のエネルギー。値が低いほど反応や拡散が起こりやすく、電池性能にも大きく影響する。
(11) アレニウス式:拡散係数(D)の温度依存性(T)を表す近似式(D =D0exp(-Ea/RT))。Eaは活性化障壁、Rは気体定数。

論文情報

雑誌名:Journal of the American Chemical Society
論文名:Dissimilar Diffusion Mechanisms of Li+, Na+, and K+ Ions in Anhydrous Fe-Based Prussian Blue Cathode
執筆者名:Dan Ito, Seong-Hoon Jang, Hideo Ando, Toshiyuki Momma, Yoshitaka Tateyama
掲載予定日時(日本時間):2025年6月4日
DOI:10.1021/jacs.5c05274

研究者プロフィール

館山 佳尚(タテヤマ ヨシタカ) Yoshitaka TATEYAMA
東京科学大学 総合研究院 化学生命科学研究所 教授
研究分野:計算材料科学、物性理論、電気化学

伊藤 暖(イトウ ダン) Dan ITO
早稲田大学 先進理工学研究科 ナノ理工学専攻 博士後期課程3年
東京科学大学 物質理工学院 応用化学コース 特別研究学生
研究分野:計算材料科学、理論化学、固体イオニクス

ナノ多孔体の結晶性を制御する新たな合成方法を開発

著者: contributor
2025年7月2日 09:20

ナノ多孔体の結晶性を制御する新たな合成方法を開発
カーボンニュートラルの実現に資する触媒材料、エネルギー変換材料開発へ期待

ポイント

  • ナノスケールの細孔をもつ金属酸化物材料は、触媒や吸着・分離材、エネルギー材料など幅広い分野で応用・研究されており、なかでも、単一の大きな結晶に無数のナノ細孔が空いている”単結晶性ナノ多孔体”は単結晶とナノ多孔体の性質を兼ね備えるユニークな材料として注目されています。
  • 本研究では、合成の難しかった金属酸化物の”単結晶性ナノ多孔体”合成のブレークスルーとなりうる技術を開発しました。細孔を形成する鋳型としてナノ多孔体を用いて、金属塩化物を染みこませて蒸気としてナノ細孔中を拡散、気相輸送させて酸化することで鋳型内での結晶成長を実現しました。
  • 作製した酸化鉄ナノ多孔体は、一般的な微結晶からなるナノ多孔体に比べて触媒活性や熱安定性が向上していることを確認しました。

概要

早稲田大学理工学術院の松野 敬成(まつの たかみち)講師らは、酸化鉄ナノ多孔体※1 の結晶子サイズ※2を制御する新しい合成方法を開発しました。鋳型となる多孔体の内部で前駆体の塩化鉄を気相拡散※3させ、鋳型中で酸素と反応させることで結晶が成長し、”単結晶性ナノ多孔体※4”が得られることを見出しました。酸化鉄の一種であるα-Fe2O3について細孔構造・結晶子サイズを制御し、従来の微結晶からなるナノ多孔体よりもて触媒活性や熱安定性が高いことを確認しました。

本研究成果は、アメリカ化学会発行の学術誌「Chemistry of Materials」に2025年6月30日8:00 (EST)にオンライン公開されました。
論文名: Quasi-Single-Crystalline Inverse Opal α-Fe2O3 Prepared via Diffusion and Oxidation of FeCl3 Precursor in Nanospaces

キーワード
金属酸化物、ナノ多孔体、単結晶性ナノ多孔体、ナノ空間、鋳型、金属塩化物、気相輸送、酸化鉄

図 開発手法による単結晶性ナノ多孔体生成の様子

これまでの研究で分かっていたこと

金属酸化物ナノ多孔体は金属酸化物由来の機能と、ナノ細孔に由来する高比表面積・大細孔容積などの特徴を併せもっており、触媒や分離・吸着材、電極、エネルギー材料など多岐にわたって応用・研究されています。組成や細孔構造などの各種パラメーターの制御は物性・特性に相関するため、その制御は重要です。これまでに界面活性剤ミセル※5やシリカ、炭素などを鋳型として細孔構造を転写することで種々の金属酸化物ナノ多孔体が合成されてきました。その細孔壁は通常、数ナノメートル(nm)~十数nm程度の微結晶で構成されますが、数百nm~数マイクロメートル(μm、100万分の1メートル)の結晶にナノ細孔が空いた”単結晶性ナノ多孔体”では粒界の少ない単結晶の特徴を併せもち、太陽電池や触媒材料として優れた性能を示すことが知られています。しかし、このような”単結晶性ナノ多孔体”の合成は一般的に困難で、水熱反応※6や低融点の金属塩の熱分解などの方法によって限られた組成のみが報告されている状況でした。

新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、そのための手法

従来材料における制約は合成方法に起因するため、本研究では課題解決に向けて金属酸化物の組成・細孔構造・結晶子サイズの同時制御を実現する新しい方法を開発しました。今回は酸化鉄の一種であるα-Fe2O3に注目し、その細孔構造と結晶子サイズの同時制御を達成しました。地殻中に豊富に存在する鉄の酸化物は酸化還元触媒や電極材料などに広く用いられています。

α-Fe2O3ナノ多孔体の精密制御を実現するためには鋳型法※7が有効でした(図1)。球状シリカナノ粒子が集積した多孔体に前駆体水溶液を含浸・乾燥し、空気中で加熱することで酸化物を形成しました。その後、シリカを塩基性水溶液で溶解することで細孔構造の制御されたα-Fe2O3ナノ多孔体を得ました。

図1 α-Fe2O3ナノ多孔体の合成

前駆体に塩化鉄を用いたナノ多孔体は数百nm~数μm程度のサイズで、結晶方位が粒子全体で揃っていることが分かりました(図2)。一方で、これまで結晶子サイズの大きいナノ多孔体の合成に用いられてきた、融点の低い硝酸塩を用いた場合は数十nm程度の微結晶で細孔壁が構成されていました(図2)。硝酸塩は熱分解によって核形成・結晶成長が起きますが、塩化物は直接的な熱分解を起こさず酸素との反応により酸化物を形成するため、結晶性に大きな違いがみられたと考えられます。また、鋳型中で気相から塩化物が連続的に供給されることで結晶が成長したと考えられます。

図2 α-Fe2O3ナノ多孔体の透過型電子顕微鏡像とその制限視野電子回折(SAED)パターン※8
高速フーリエ変換(FFT)パターン※9。(左)塩化物前駆体から合成、(右)硝酸塩前駆体から合成。

単結晶性のナノ多孔体は微結晶からなる多孔体に比べて高い耐熱性を示しました。また光フェントン反応※10によるメチレンブルーの分解をモデル反応として触媒活性を比較したところ、比表面積が小さいにもかかわらず、単結晶性ナノ多孔体の方が2倍程度速く色素を分解することが分かりました。

これらの結果は単結晶性の細孔壁をもつナノ多孔体の有用性を示しています。

研究の波及効果や社会的影響

従来の方法では合成可能な”単結晶性ナノ多孔体”の組成に制限がありました。本研究では、前駆体となる塩化物を外部から供給するのではなく、元々鋳型の中に含浸しておき空気中で加熱・酸化するだけで鋳型内部での原料の拡散と連続供給による結晶成長が可能であることを見出しました。このような新しいナノ多孔体の精密合成は優れた特性をもつ金属酸化物ナノ多孔体の発掘に貢献し、ナノ多孔体が用いられる幅広い分野への波及効果が期待できます。

課題、今後の展望

今回の検討では鋳型中での塩化物の酸化によりα-Fe2O3の結晶子サイズの制御に成功し、一般的な微結晶からなるナノ多孔体との違いを明らかにしましたが、本手法が他の組成にどこまで適用できるかはまだ分かっていません。FeCl3以外の金属塩化物でも同様の反応過程を経て単結晶性の金属酸化物ナノ多孔体の合成が期待できるため、今後本手法で合成可能な組成を明らかにしていきます。同時に、鋳型内部における結晶成長メカニズムを明らかにし、無機合成化学の学理を深耕することも重要です。以上に加えて、応用評価を進め、カーボンニュートラルの実現に資する触媒材料、エネルギー変換材料への展開を目指します。

研究者からのコメント

ナノ多孔体を構成する組成・細孔構造・結晶性などのファクターと機能には密接な相関があり、設計の自由度が向上することで新しい応用展開や適用できる範囲の拡大が期待できます。所望のナノ多孔体を得るための合成化学は機能性材料を設計するうえで重要な基盤技術の1つであり、本手法によって新しい材料群の創出が期待されます。

用語解説

※1 ナノ多孔体
ナノメートル(10億分の1メートル)スケールの細孔をもつ物質。通常の緻密な物質とは異なり、高比表面積・大細孔容積を有するため、その特徴を活かして触媒や吸着・分離材、エネルギー材料など幅広い用途で利用される。

※2 結晶子サイズ
結晶性材料を構成するうちの、単一とみなせる結晶の大きさ。一般的なナノ多孔体の細孔壁はナノサイズの結晶の集合体であり、大きな結晶で構成されるナノ多孔体の合成は重要な課題の1つ。

※3 気相拡散
金属塩化物は比較的高い蒸気圧をもち、単独では熱分解による酸化物の形成が起こらないため、加熱することで気体として安定な状態で拡散する。本研究では鋳型に染みこませた金属塩化物が鋳型中を気体として拡散することで連続的に前駆体が供給され、金属酸化物の結晶が成長した。

※4 単結晶性ナノ多孔体
結晶性ナノ多孔体の中でも、単一の結晶中に多数のナノ細孔をもつナノ多孔体。通常の結晶性ナノ多孔体の細孔壁は微結晶から構成されるが、細孔壁が大きな結晶からなる場合は粒界が少ないため特徴的な物性を発現する。

※5 界面活性剤ミセル
両親媒性である界面活性剤分子が自発的に集合(自己組織化)することで形成されるナノ構造体。典型的には水中でミセル形成の臨界濃度以上になったとき、親水基を外側、疎水基を内側に向けて自己組織化し、球状・ロッド状・ラメラ・3次元構造など多様な集合構造をとる。

※6 水熱反応
水と前駆体を反応容器に密閉して加熱することで高温・高圧条件下で物質を合成する方法。

※7 鋳型法
有機分子や無機粒子などの鋳型と金属酸化物との複合体を作製し、鋳型のみを除去することで鋳型の形状を反映した金属酸化物ナノ多孔体を得る方法。無機粒子としてはシリカや炭素のナノ粒子、ナノ多孔体などが用いられる。

※8 制限視野電子回折(SAED)パターン
電子線の回折により原子スケールの周期性(結晶性)を確認することができる。今回のケースではスポットが観測されており、一つの多孔体粒子の中で結晶方位が揃っており単結晶的であると分かる。

※9 高速フーリエ変換(FFT)パターン
撮影画像をFFT変換した画像。今回のケースではナノスケールの周期性を反映しており、スポットが観測されたことから球状細孔の規則的な配列が確認された。

※10 光フェントン反応
過酸化水素と鉄イオンを含む水溶液にUV光を照射することでヒドロキシラジカルを発生させ、有機物を分解する反応。本研究では鉄イオンの代わりに酸化鉄ナノ多孔体を溶液中に分散させて、メチレンブルーの分解反応を行った。

論文情報

雑誌名:Chemistry of Materials
論文名:Quasi-Single-Crystalline Inverse Opal α-Fe2O3 Prepared via Diffusion and Oxidation of FeCl3 Precursor in Nanospaces
執筆者名(所属機関名):Daichi Oka, Kohei Takaoka, Atsushi Shimojima, Takamichi Matsuno* (Waseda University)
掲載日時(現地時間):2025年6月30日(月)8:00 (EST)
掲載日時(日本時間):2025年6月30日(月)21:00 (JST)
掲載URL:https://doi.org/10.1021/acs.chemmater.5c00155
DOI:10.1021/acs.chemmater.5c00155

研究助成

研究費名:JST創発的研究支援事業
研究課題名:微小な圧力を駆動力としたナノ多孔質圧電触媒の開拓(JPMJFR2224)
研究代表者名(所属機関名):松野敬成(早稲田大学)

Solid-state transport in conjugated and nonconjugated polymers: similarities, differences, and unknowns(2025/7/11)←諸事情により中止となりました。

著者: staff
2025年6月30日 11:34

演題:Solid-state transport in conjugated and nonconjugated polymers:

similarities, differences, and unknowns

日時:2025年7月11日(金) 10:00~11:40諸事情により中止となりました。

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 55S-510室

講師:Bryan Boudouris

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

Polymer cathodes for aqueous zinc batteries(2025/7/10)

著者: staff
2025年6月27日 11:40

演題:Polymer cathodes for aqueous zinc batteries

日時:2025年7月10日(木) 18:30~20:10

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 55N-1F 第一会議室

講師:Zhongfan Jia

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

Fatigue of composite materials: characterization and modelling(2025/7/9)

著者: staff
2025年6月25日 11:57

演題:Fatigue of composite materials: characterization and modelling

日時:2025年7月9日(水) 16:00~17:00

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 55N号館 1階 第一会議室

講師:Lucio Maragoni

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:基幹理工学部 機械科学・航空宇宙学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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