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AIで創薬を効率化する技術を開発

著者: contributor
2026年1月20日 14:54

AIでRNAアプタマー創薬を効率化する技術「RaptScore」を開発
~任意のRNAアプタマーの結合活性を評価する技術で創薬を加速~

発表のポイント

  •  RNAアプタマー※1の結合活性(作用ターゲットへのくっつきやすさ)を、コンピューター上で大規模言語モデル(LLM)※2により高精度に評価する技術「RaptScore(ラプトスコア)」を開発しました。
  • 実験データに含まれない未知の配列や、長さの異なる配列の評価が困難であった従来手法の課題をLLMの活用により克服し、配列を短くしたRNAアプタマーの探索・設計も可能になりました。
  • 本手法により、RNAアプタマー医薬品の開発コスト削減や期間短縮、品質向上が期待されます。

次世代の医薬品として期待されるRNAアプタマーは、タンパク質などの標的に結合する能力を持ちますが、膨大な候補の中から有望なアプタマーを探し出し、さらに医薬品として製造コストも考慮した最適なRNAアプタマーの長さに短く加工する作業は、多大な労力とコストを要する実験に依存していました。
早稲田大学大学院先進理工学研究科博士後期課程の木村(山﨑)晃(きむら やまざき あきら)、浜田道昭(はまだ みちあき)教授および株式会社リボミック(所在:東京都港区、代表取締役社長:中村義一)らの研究グループは、文章生成などに使われる大規模言語モデル(LLM)の技術を応用し、少数の実験データから任意のRNAアプタマーの結合活性を評価できる技術RaptScoreを開発しました。
これにより、従来法では困難だった配列の短縮化や未知の候補配列の評価が容易になり、創薬研究の効率化が期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「Nucleic Acids Research」に2026年1月14日に公開されました。
論文名:RaptScore: a large language model-based algorithm for versatile aptamer evaluation

これまでの研究で分かっていたこと

RNAアプタマーは、タンパク質などに結合する核酸分子で、医薬品やバイオセンサーとしての応用が進んでいます。通常、アプタマーは「SELEX法」※3と呼ばれる実験で、配列プールから標的物質に結合するものを選抜して取得します。しかし、SELEX法の実験を行っても、本当に医薬品として有望な配列を見つけ出すことには困難が伴います。
具体的には、実験データ中に何回出現したかの頻度などを指標として評価していましたが、これには「実験データに含まれていない新規配列は評価できない」「配列の長さを変えると評価できなくなる」という課題がありました。特に、医薬品化にあたっては製造コストを下げるために配列を短くする「短鎖化」※4が重要ですが、短くした配列が良いかどうかは、再度実験をして確かめる他なく、開発にあたってのボトルネックとなっていました。

新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、新しく開発した手法

本研究グループは、実験データに含まれていない配列や、長さが異なる配列も評価できる指標であるRaptScoreを開発しました。DNAの塩基配列を学習できる大規模言語モデルDNABERTをベースに、アプタマー選抜実験(SELEX法)のデータで調整したAIモデルを活用し、対象のアプタマー配列が「どれくらい自然か(結合能を示す可能性が高い配列パターン)」をスコア化する技術です。
本研究の主な成果は以下の通りです。

  • 高精度な活性予測を実現
    実験による結合活性測定(SPR法)の結果と、AIが算出したRaptScoreを比較したところ、高い相関が見られました。これにより、少数の実験データを元に任意の配列の結合力を推定できることが示されました。
  • 「短鎖化」への応用実証
    実験的な検証を介さずとも、RaptScoreが高い値を示すように配列を削ることで、結合活性を維持、あるいは向上させながら、配列長を短くできることを実証しました。元の配列から長さを最大3割ほど削りつつも結合力を維持することに成功しました。
  • 生成AIとの連携による効率化
    同研究チームが開発したRNAアプタマー生成AI「RaptGen」と組み合わせることで、AIが生成した候補配列の中から、実際に実験すべき有望な候補を高確率で選抜できることを確認しました。

研究の波及効果や社会的影響

本成果は、RNAアプタマー創薬に複数の側面から寄与しうるAI技術です。 第一に、製造コストの削減です。化学合成で製造される核酸医薬品は、配列が短くなるほど製造コストが下がり、品質管理も容易になります。RaptScoreを用いれば、コンピューター上で効率的な短鎖化が可能になります。 第二に、開発スピードの向上です。実験をする前にAIで有望な候補を絞り込めるため、実験回数を減らし、効率的に強力なアプタマーを発見できます。 これらにより、がんやウイルス感染症などに対する新しい治療薬や診断薬が、より早く、より安価に社会に届くことが期待されます。

課題、今後の展望

現在のRaptScoreの課題の一つは塩基配列の並びのみを学習しており、RNAが形作る3次元の立体構造の情報は直接的には考慮していないことです。今後は、立体構造の情報も統合することで、予測精度をさらに高めることを目指します。

研究者のコメント

本研究は、熟練研究者が培ってきたアプタマーに関する経験や洞察を補完し、アプタマーの目利きやデザインをデータとAIにより効率化・高度化することを目指すものです。これまで開発してきた生成AI・RaptGenなどとあわせて、次世代の新薬として期待されるアプタマー創薬をさらに加速させる技術となることを期待しています。

用語解説

※1 RNAアプタマー
ターゲット分子(タンパク質など)に強く結合する能力を持つ、短いRNA分子。抗体医薬品に代わる次世代の中分子医薬品として注目されています。

※2 大規模言語モデル(LLM)
大量のテキストデータを学習し、文章の生成や評価を行うAIモデル。本研究では、DNA/RNAの塩基配列(A, G, C, T/U)を言語と見立てて学習させたモデル(DNABERT)を応用しました。

※3 SELEX(セレックス)法
Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichmentの略。膨大な種類のRNAライブラリから、標的物質に結合するものだけを選び出し、増幅させる工程を繰り返すことで、結合力の強いアプタマーを取得する実験手法。

※4 短鎖化
アプタマー医薬品の実用化において、活性に不要な部分を削ぎ落とし、配列を短くする工程。製造コスト削減や副作用低減のために重要ですが、多くの実験的な試行錯誤が必要です。

キーワード

RNAアプタマー、創薬、大規模言語モデル、LLM、AI、RaptScore

論文情報

雑誌名:Nucleic Acids Research
論文名:RaptScore: a large language model-based algorithm for versatile aptamer evaluation執筆者名(所属機関名):木村(山﨑)晃 (早稲田大学), 安達健朗, 中村重孝, 中村義一 (株式会社リボミック), 浜田道昭*(早稲田大学)
*:責任著者
掲載日時:2026年1月14日
掲載URL:https://academic.oup.com/nar/article/54/2/gkaf1480/8425320?guestAccessKey=7b0bb9bc-05b7-44a1-bc03-b25c04e9280c&utm_source=authortollfreelink&utm_campaign=nar&utm_medium=email
DOI:https://doi.org/10.1093/nar/gkaf1480

研究助成

研究費名:JST戦略的創造研究推進事業 CREST「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」
研究課題名:人工知能技術を用いた革新的アプタマー創薬システムの開発
研究代表者名(所属機関名):浜田道昭(早稲田大学)

研究費名:JST 戦略的創造研究推進事業CREST「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」(栄藤稔総括)
研究課題名:AIアプタマー創薬プロジェクト
研究代表者名(所属機関名):浜田 道昭(早稲田大学)

研究費名: 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)(25H01310)
研究課題名:生物の免疫反応を手がかりとした撹乱RNAの網羅的探索と特徴付け
研究代表者名(所属機関名):川崎 純菜(千葉大学)

研究費名:科学研究費助成事業 基盤研究(S)(25H00427)
研究課題名:新規翻訳誘導技術を用いた環状RNAの分子設計と応用
研究代表者名(所属機関名):阿部 洋(名古屋大学)

研究費名:科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓)(24K21326)
研究課題名:RNAリインカネーション
研究代表者名(所属機関名):浜田 道昭(早稲田大学)

研究費名: 科学研究費助成事業 基盤研究(A)(23H00509)
研究課題名:RNAを中心とした分子ネットワークに基づく生物学的相分離の俯瞰的・体系的理解
研究代表者名(所属機関名):浜田 道昭(早稲田大学)

研究費名: 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(学術研究支援基盤形成)(22H04925)
研究課題名:先進ゲノム研究解析推進プラットフォーム
研究代表者名(所属機関名):黒川 顕 国立遺伝学研究所)

研究費名: NEDO 量子・古典ハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業
研究課題名: 量子・A I次世代創薬
研究代表者名(所属機関名):浜田 道昭(早稲田大学)

光で操る「ナノ温度スイッチ」を実現

著者: contributor
2026年1月20日 14:17

光で操る「ナノ温度スイッチ」を実現
~光の右回り・左回りで熱分布を書き換える~

研究成果のポイント

  • 一般的に、金属の微細構造に光を照射すると、その表面は均等に熱くなる(等温)
  • 本研究では、「窒化チタン」のナノ構造に、右回りまたは左回りの円偏光を照射すると、ナノ構造表面に「全く異なる温度パターン」が現れることを実証した
  • ナノメートル領域の熱を、「光の色」や「偏光」で操る新しい手法として、化学反応の局所的な制御や、微小な液体の流れ・物質輸送を操る新しい技術へと応用することが期待される

ナノメートルサイズの金属構造が光によって加熱される現象は、化学反応の局所制御や医療応用、エネルギー変換など、幅広い分野で注目されています。これまで、金属のナノ構造は、光を当てると表面全体が等温になると考えられてきました。
しかし今回、兵庫県立大学大学院工学研究科の瀬戸浦健仁准教授、東北大学多元物質科学研究所の押切友也准教授、関西学院大学理学部の田村守専任講師、早稲田大学先進理工学研究科の森田賢さん(博士後期課程)および同大学理工学術院の井村考平教授、北海学園大学工学部の藤原英樹教授、国立研究開発法人物質・材料研究機構の石井智チームリーダー、北海道大学大学院総合化学院の藤井優祐さん(博士前期課程)および同大学電子科学研究所の松尾保孝教授、そして大阪公立大学大学院理学研究科/LAC-SYS研究所の飯田琢也教授/所長のグループが実施した共同研究では、「窒化チタン」という材料でナノ構造を作ることで、光の「右回り・左回り」という偏光回転の違いだけで、ナノ構造表面に全く異なる温度パターンが現れることを明らかにしました。
このような温度パターンの切り替えは、ナノスケールでの加熱位置や加熱強度を光だけで制御できることを意味します。これは、化学反応の局所的な制御や、微小な液体の流れ・物質輸送を操る新しい技術につながると期待されます。
本研究成果は、アメリカ化学会の学術誌「Nano Letters」に2025年12月22日付で掲載されました。

研究の背景

金属をナノメートルサイズの微粒子にして光を照射すると、ナノ粒子が光を強く吸収して発熱する「プラズモン加熱」という現象が起こります。多くの金属の中でも、金のナノ粒子は、光から熱への高いエネルギー変換効率を示すことが知られています。図1に、プラスチックボトルに入った金ナノ粒子のコロイド水溶液を示します。金の色は、本来は文字通り「黄金色」ですが、ナノ粒子になると、電子が集団でいっせいに振動する「局在プラズモン」が強く光を吸収するため、図のように鮮やかな赤色を呈します(この溶液中には、数百億個のナノ粒子が分散しています)。これまで金ナノ粒子のプラズモン加熱は、がん細胞の光温熱治療や熱化学反応の局所パターニング、そして局所的な液体の流れ制御への応用が進められてきました。
プラズモン加熱の研究において、ひとつの常識となっていたのが、「光で加熱されているナノ粒子の表面は、完全に等温になる」というものでした。そもそも金は、多くの金属の中でも特に熱の伝導性が良いので、非常に小さなナノ粒子の表面では「温度差が生じるはずがない」とされてきました。

図1. 金ナノ粒子のコロイド水溶液

 

研究成果の内容

本研究グループでは、「ナノ粒子の表面の狙った箇所だけを、光によって選択的に加熱する」ことができれば、新たなブレイクスルーになると考えてきました。

図2. 著者らが作製した窒化チタンの薄膜

 

これを実現する鍵として見出したのが、「窒化チタン」という材料です。この材料は、図2に示すように、金と良く似た黄金色の金属光沢を示すため、ナノ粒子にすればプラズモン加熱に利用可能です。そして最も重要な点は、この窒化チタンの熱の伝導性が、金の1/10以下であることです。熱の伝導性が低い材料でできたナノ構造に光を照射すると、「局在プラズモン」という電子の波の振動パターンが、ナノ構造の表面温度分布にくっきりと転写されるはずであると予測しました。
このアイデアを実証するために、図3の左側に示すように、窒化チタンを材料とする全長 800 nmのS字ナノ構造を、数値シミュレーションによって設計しました(人間の髪の毛の直径が80 μmなので、S字ナノ構造の全長はその1/100です)。このS字ナノ構造にレーザー照射する際に、光の波長や強度は固定したままで、円偏光の回転方向だけを「右回り・左回り」で変えると、図3中央のカラーマップで示されているように、ナノ構造の表面に、「全く異なる温度パターン」が現れることが、シミュレーションで示唆されました。
このシミュレーションを検証するために、半導体の微細加工に用いられる電子線リソグラフィなどの技術によってS字ナノ構造を実際に作製し、レーザー照射による実証実験を行いました。実験では、熱反応によって生成物が形成する「酸化亜鉛の水熱合成」を、このS字ナノ構造へのレーザー照射によって誘起したところ、図3の右側の電子顕微鏡画像に示す通り、シミュレーションと一致する結果が得られました。つまり、窒化チタンという材料を用いることで、光によって「ナノ構造の狙った場所だけを加熱する」ことが可能であることが実証されました。

図3. 窒化チタンのS字ナノ構造への円偏光照射によるナノ構造表面の 温度パターンのスイッチング

 

今後の期待

これまでのプラズモン加熱の常識を打ち破って、「光の色や偏光を変えるだけ」で、ナノメートルという微小領域の温度パターンを自在に造形できることが示されました。この成果は、化学反応の局所的な制御や、微小な液体の流れ・物質輸送を操る新しい技術につながると期待されます。

論文情報

タイトル:Chiral Plasmonic Surface Temperature Switching by Several Tens of Kelvins in Titanium Nitride Nanostructures
著者:Kenji Setoura, Tomoya Oshikiri, Mamoru Tamura, Ken Morita, Hideki Fujiwara, Satoshi Ishii, Yusuke Fujii, Yasutaka Matsuo, Takuya Iida, and Kohei Imura
掲載誌:Nano Letters
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.nanolett.5c05212 (2025年12月22日公開)

謝辞

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費(JP23K04561, JP25H01633, JP22H05131, JP23H01916, JP25K22238, JP25H00828, JP24K08282, JP25H01627, JP23K26518, JP24K21723, JP25H00421, JP23H01927, JP25H01637)、マテリアル先端リサーチインフラ事業(JPMXP1224HK0169)および国立研究開発法人科学技術振興機構(JST, JPMJFR2139, JPMJMI21G1)の支援を受けて実施しました。

Transition Metal Dichalcogenides Modified Carbon Nanotubes and Hollow Carbon Spheres for Green Energy Conversion(2026/3/2)

著者: staff
2026年1月19日 13:03

演題:Transition Metal Dichalcogenides Modified Carbon Nanotubes and Hollow Carbon Spheres for Green Energy Conversion

日時:2026年3月2日(月) 13:00-14:40

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館N棟1F第二会議室

講師:ZHANG, Xiao  (東北大学 材料科学高等研究所 准教授/ジュニア主任研究者)

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:希望者は直接会場へお越しください

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

リンク先URL: https://noda.w.waseda.jp/seminar-j.html

 

Irrational Angular Momentum in Compact Universes(2026/2/12)

著者: staff
2026年1月19日 12:58

演題:Irrational Angular Momentum in Compact Universes

日時:2026年2月12日(木) 15:00-16:40

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館N棟2階 物理応物会議室

講師:Paolo FACCHI  (University of Bari Italy 教授)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

参加方法:希望者は直接会場へお越しください

主催:先進理工学部 応用物理学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

海底熱水噴出孔における「深海発電現象」を解明

著者: contributor
2026年1月16日 11:48

海底熱水噴出孔における「深海発電現象」を解明
―チムニーの発達が熱から電気への変換を促進―

発表のポイント

  • 深海の熱水噴出孔に形成される硫化物チムニー(注1が、熱を電気に変える自然の発電装置として働くことを発見しました。
  • チムニーは形成初期には電気を通しませんが、成長すると電気を通すようになり、チムニー内外の温度差によって、電子が海水側へ自然に移動します。
  • チムニー発達に伴う構成鉱物の割合や温度構造の変化によって、深海底に電気エネルギーが供給される仕組みが自発的に生まれます。

概要

深海底の熱水噴出孔では300˚Cを超える熱水が冷たい海水に噴き出し、硫化鉱物や硫酸塩鉱物からなる「チムニー」と呼ばれる柱状の構造が作られています(図1)。これまで、熱水と海水の化学的な違いによって電気が生まれる可能性は指摘されてきましたが、熱水の温度の役割はわかっていませんでした。

東北大学大学院環境科学研究科の岡本敦教授、早稲田大学理工学術院の野崎達生教授らの研究グループは、伊豆・小笠原海域の深海底から採取したチムニー試料について、内部の構造や電気的な性質を詳しく調べました(図2)。その結果、チムニー形成初期には電気を通しませんが、チムニーが成長して成熟するにつれて、鉄や銅、鉛などを含む電気を通しやすい硫化鉱物が、熱水の通り道に沿って膜のように作られることがわかりました。さらに、これらの硫化鉱物は熱を電気に変える性質を持ち、チムニー壁内外の温度差によって、電子が熱水側から海水側へ流れることがわかりました。このことは、チムニーが成長していくある段階で、深海底で自然に発電する仕組みが作られることを示しています(図3)。今後、深海底の生物を支えるエネルギー供給の理解や、噴き出す熱水の熱を利用した発電技術の研究につながると期待されます。

本成果は2026年1月8日、米国地質学会が発行する学術誌Geologyに掲載されました。

研究の背景

日本近海を含む世界の深海底には、300℃を超える熱水が噴き出す場所が数多く存在しています。これらの熱水噴出孔では、電子を放しやすい高温で還元的な熱水が、電子を受け取りやすい冷たく酸化的な海水と接することで、硫化鉱物や硫酸塩鉱物の微粒子が沈殿し、チムニーと呼ばれる煙突状の構造が形成されます。近年、熱水と海水の化学的な性質(酸化還元状態)(注2の違いによって、チムニー壁を通じて熱水から海水に電子が移動する、つまり自然に発電が起こる可能性が指摘されています。

一方、チムニーを構成する硫化鉱物は半導体(注3)であり、半導体の特徴として、熱を電気に変える熱電変換(注4)性能を持っています。これまで熱電材料にはビスマスやテルルなどの希少元素が使われてきましたが、近年は銅を含む天然硫化物が、環境に優しい持続可能な材料として注目されています。深海底のチムニーには、主に銅、鉄、鉛、亜鉛などで構成されるさまざまな硫化鉱物が含まれています。しかし、成長段階や生成環境によってその種類や構造・組織が変化するため、この熱電変換が深海の発電現象にどのように関わるのかは、これまで詳しく調べられていませんでした。

今回の取り組み

本研究では、伊豆・小笠原海域の水深約700-1300メートルにある熱水噴出孔(明神礁カルデラ、明神海丘)から、硫化鉱物や硫酸塩鉱物でできたチムニー試料を採取し、鉱物の構造や電気特性を詳しく調べました(図1A)。海底では、チムニーから活発に熱水が噴き出しており、表面にはカニやゴカイなどが生息しています。今回の測定では、熱水の温度は最大で238℃に達していました(図1B)。一方、熱水活動を終えたデッドチムニーは黒っぽい表面で生物は見られず、内部にはオレンジ色を呈する部分が確認できました。断面を観察すると、チムニーはさまざまな硫化鉱物や硫酸塩鉱物でできていることが分かりました。形成初期の若いチムニーは、バリウム硫酸塩鉱物(重晶石、BaSO4)の平板状結晶が主体で、多くの空隙を持ち、微小な亜鉛の硫化鉱物(閃亜鉛鉱、ZnS)が点在していました(図1C)。形成中期のチムニーは、主に閃亜鉛鉱で構成され、空隙が少なく緻密な構造になります(図1D)。より成熟したチムニーでは、基質部分は閃亜鉛鉱が主体ですが、直径数ミリ~センチメートル規模の熱水流路(空隙)の周りには、銅・鉄・鉛からなる硫化鉱物(黄銅鉱CuFeS2や方鉛鉱PbS)の薄くて緻密な層が形成されていました(図1E, F)。この構造から、チムニーは成長の段階に応じて、まず重晶石などの硫酸塩鉱物が析出し、次に亜鉛の硫化鉱物が沈殿し、さらに内部温度が高くなると銅・鉄・鉛の硫化物が生成していることが示唆されます。

チムニーは、細かな鉱物粒子が混ざった複雑な構造を持っているため、まず、チムニーを構成する代表的な硫化鉱物の鉱物標本について、電気伝導度とゼーベック係数(温度差による熱起電力を示す値)(注5を測定しました(図2A)。その結果、閃亜鉛鉱は電気をほとんど通さないのに対し、黄鉄鉱、黄銅鉱、方鉛鉱は電気伝導度が高く、電子をキャリアとするn型半導体であることが分かりました。同様にチムニー試料を測定すると、重晶石や閃亜鉛鉱が主体の若いチムニーは電気を通さず、成熟したチムニーの熱水流路周りに生成した黄銅鉱や方鉛鉱の層では、電気伝導度が高く、n型半導体であることが確認されました(図2B)。ゼーベック係数はおよそ-40 µV/Kから-600 µV/Kの値を示し、この領域では、熱電変換の性能を示すパワーファクター(注6が5桁以上も高いことが分かりました。

これまでのチムニーの構造と電気特性を合わせて考えると、チムニーは、銅・鉄・鉛などからなる硫化鉱物のネットワークが形成される、特定の成長時期に発電する可能性があることが示唆されます(図3A)。チムニー形成の初期段階では、硫酸塩鉱物が析出した後、閃亜鉛鉱を中心とする構造に変化します。この段階では、チムニー壁は電気を通さないため、熱起電力はほとんど発生しません。しかし、チムニーが成長して熱水と海水が隔てられると、内部温度が上昇し、黄銅鉱や方鉛鉱などが熱水流路周囲に形成されます。これらの層は薄くても、3次元的に熱水流路の表面を膜のように覆うため、大きな温度勾配が生じ、電子を熱水側から海水側に運ぶことができます。例えば、200~300℃の温度差がある場合、熱起電力は10~210 mVに達し、熱水と海水の酸化還元による電位差(約500 mV)に匹敵する大きさです。このような電位差は、チムニー内部で熱水が電子を放出する反応(例:硫化水素が硫黄に変化)や、外側で海水が電子を受け取る反応(例:酸素が水になる反応)を通じて、電気を生み出すと考えられます。つまり、熱起電力が加わることで、チムニーの内と外における熱水と海水の中でそれぞれに起こる化学的な反応を妨げていたエネルギーの壁を越え、電子をやり取りする反応を促進する役割を果たしているのです(図3B)。さらに、チムニーを構成する硫化鉱物の種類は地質環境によって変わるため、沖縄トラフや東太平洋中央海嶺のようにより深く高温の熱水が噴き出す場所では、より大きな発電が起こっている可能性があります。

今後の展開

本研究では、海底熱水噴出孔で形成されるチムニーが、構成鉱物の変化と温度上昇に伴って、成長の特定の時期に自発的に発電することを明らかにしました。チムニーの内側と外側では、電子のやり取りによって、さまざまな有機・無機の化学反応が進むと考えられます。今後は、深海での発電現象がどのような化学反応を引き起こし、深海底の生態系にどのようにエネルギーを供給しているのかを明らかにする研究が期待されます。さらに、今回の成果は、深海底の熱エネルギーを電気に変換する技術開発につながる可能性もあり、深海資源の利用や新しいエネルギー技術の研究に役立つことが期待されます。

図1. 伊豆・小笠原海域の熱水噴出孔のチムニーの産状と鉱物組織。(A)水深1332mの海底で観察される活発に熱水を噴出しているチムニー。(B)海底で熱水の温度計測をしている様子。熱水噴出孔の周辺にカニが生息している。(C)若いチムニーの電子顕微鏡写真。重晶石に富み空隙が多い。(D)閃亜鉛鉱が主体の緻密なチムニー。(E, F)成熟したチムニー試料の断面の写真(E)とその電子顕微鏡写真(F)。熱水流路周りに黄銅鉱に富む層ができている。電子顕微鏡写真の黒色部分は熱水流路(空隙)を示す。

図2. 硫化鉱物とチムニーの電気特性。(A)代表的な硫化鉱物のゼーベック係数。黄鉄鉱、黄銅鉱、方鉛鉱は全て、ゼーベック係数が負の値を持つため、電子をキャリアとするn型半導体であることがわかる。(B)ゼーベック係数の絶対値と電気伝導度の対数プロット。カラー等高線は熱電性能を示すパワーファクターを示している。チムニー形成初期の構成物質(重晶石や閃亜鉛鉱)は電気伝導度が低く、パワーファクターが小さい。チムニーが成熟して、熱水流路周辺に黄銅鉱や方鉛鉱の層ができると電気伝導度が増加し、熱電変換性能が発現することがわかる。

図3. 本研究で示された深海底のチムニーの発達過程と熱起電力による発電現象の仕組み。(A)ステージ I : チムニーの初期過程において硫酸塩鉱物からなる析出物ができる。Sステージ II:チムニー壁が形成され、まず、亜鉛の硫化鉱物が富む。ステージ III:さらに温度が上昇すると、導電性の高い黄鉄鉱や方鉛鉱からなる層が熱水流路周りに形成され、熱起電力による電子の流れが発生する。ステージIV:熱水活動が止まると温度勾配がなくなり熱起電力はゼロに戻る。(B)ステージIIIにおける熱水と海水の電位差と、温度勾配に駆動される発電現象の概略図。還元的な熱水から酸化的な熱水へチムニー壁を介して、熱水側から海水側への電子の流れが発生する。海水側では例えば、酸素が電子を受け取って水に変化する反応が起こると考えられるが、温度差によって発生した熱起電力によって、この反応が進むためには高いエネルギーの障壁を越えて反応を促進させると考えられる。

謝辞

本研究は、東京大学大気海洋研究所の共同研究プログラムの支援により実施されました(R/V Shinsei Maru, JURCAOSS22-16, and JURCAOSS23-06)。日本学術振興会科学研究費助成事業、「挑戦的研究(萌芽)(JP22K18723、JP24K21559)」、「学術変革領域研究(A)(JP22H5109)」の支援により実施されました。

本論文は「東北大学2025年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業」の支援を受け、Open Accessとなっています。

用語解説

注1.
チムニー:海底の熱水活動によって供給された金属元素が、海底面上で硫化鉱物、酸化鉱物、珪酸塩鉱物、硫酸塩鉱物などとして沈殿し、熱水噴出孔の周囲に形成される煙突状の鉱体。

注2.
酸化還元:酸化が電子を手放すこと、還元が電子を受け取ることを示し、それが必ず同時に起こるために酸化還元と呼ばれる。

注3.
半導体:電気をよく通す金属とほとんど通さない絶縁体の中間の性質を持つ材料。電子が主に電気を運ぶ半導体をn型半導体と呼ぶ。

注4.
熱電変換:温度差を直接電気エネルギーに変換したり、その逆に電気から温度差を生み出す技術。

注5.
ゼーベック係数:試料の両端に温度差を与えたときにどれだけ熱起電力(電圧)が生じるかを表す値。この値が大きいほど、少しの温度差でも電圧を生みやすい材料と言える。n型半導体はゼーベック係数がマイナスの値を持つ。

注6.
パワーファクター:温度差を与えたときに、どれだけ大きな電圧が生じ、さらに電気が流れやすいかを示す指標。

論文情報

タイトル:Self-organized thermoelectric conversion systems on the deep seafloor
著者:Atsushi Okamoto*, Misaki Takahashi, Yoshinori Sato, Ryoichi Yamada, Kentaro Toda, Tomonori Ihara, Tatsuo Nozaki
*責任著者:東北大学大学院環境科学研究科 教授 岡本 敦
掲載誌:Geology
DOI:10.1130/G53463.1
URL:https://doi.org/10.1130/G53463.1

Multipartite entanglement of random states(2026/2/10)

著者: staff
2026年1月15日 16:58

演題:Multipartite entanglement of random states

日時:2026年2月10日(火) 10:30-12:10

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館N棟2階 物理応物会議室

講師:Pascazio, Saverio(Bari University, Italy 教授)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

参加方法:希望者は直接会場へお越しください

主催:先進理工学部 応用物理学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

2月16日(月)・17日(火)の入試・広報オフィス閉室について

著者: staff
2026年1月15日 11:26

一般選抜試験のため、入試・広報オフィスは以下のとおり閉室となります。

 216日(月):終日閉室
 217日(火):11時まで閉室
        11時から16時まで開室(13時から14時までは昼休みのため閉室) 

※電話受付時間
 216日(月):終日不可
 217日(火):11時から17時まで可

眼圧を高感度に無線計測するスマートコンタクトレンズを開発

著者: contributor
2026年1月14日 10:52

眼圧を高感度に無線計測するスマートコンタクトレンズを開発
~緑内障評価に有効であることを実証~

発表のポイント

  • ソフトなコンタクトレンズに歪センサアンテナを搭載することに成功しました。
  • パリティ・時間(PT)対称性共振結合回路と無線式歪センサを統合した新回路によって、従来方式の約183倍の感度(36.333Ω/mmHg)を達成しました。
  • 市販の眼圧計と高い線形相関を確認するとともに(豚眼:=0.93、ウサギ:=0.97)、高い透明性(可視光透過80%以上)と生体安全性を実証しました。
  • 本成果は、健常者(10~21 mmHg)が装着することで、緑内障患者の早期発見に向けたスマートレンズとしての開発につながります。

早稲田大学大学院情報生産システム研究科三宅 丈雄(みやけ たけお)教授アズハリ・サマン次席研究員らの研究グループと山口大学大学院医学系研究科眼科学講座の木村 和博(きむら かずひろ)教授、芦森 温茂(あしもり あつしげ)助教らの研究グループは、導電性高分子(PEDOT:PSS)と接着性高分子(PVA)からなる多層構造抵抗センサと、PT対称性の原理を利用した無線検出器を組み合わせることで、眼圧※1変化に応じた抵抗変化を高いQ値※2で読み取ることに成功しました。

その成果は、6~36 mmHgの眼圧範囲において36.333 Ω/mmHgの感度(従来方式0.198 Ω/mmHgの約183倍)を達成しました。さらに、豚眼を用いたin vitro※3実験およびウサギを用いたin vivo※4実験により、商用眼圧計との間でR²※5=0.93~0.97の高い線形相関が得られ、本センサレンズが長期かつ非侵襲で眼圧をモニタリングできるプラットフォームとして有望であることを示しました。また、透明性(可視光透過80%以上)および安全性(家兎試験およびヒト角膜上皮細胞の生存率90%以上)を確認しました。

本成果は、国内失明原因の第1位である緑内障の早期診断・治療効果モニタリング・在宅管理に貢献する、新しいスマートコンタクトレンズ技術として期待されます。

以上は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、科研費基盤A、キヤノン財団による助成の成果であり、2026年1月13日(火)に国際学術誌「NPJ Flexible Electronics」に公開されました。

図1:“眼圧を無線で測る”スマートコンタクトレンズ

研究の背景

コンタクトレンズは、屈折異常を矯正して視力を補強するウェアラブルな高度医療機器としての利用が一般的ですが、近年、これらのレンズと電子デバイスを組み合わせることで「視る」から「診る」を実現可能なスマートコンタクトレンズの開発が盛んです。とりわけ、国内失明原因の第1位である緑内障を検出する医療機器の開発は、疾患予防や遠隔在宅診療を実現する点で「健康寿命の延伸」や「医療費削減」への期待が高まっています。さらに、緑内障の患者数*1は、400万人以上(40歳以上の5%、70歳以上の10%)に達しており、その開発は急務と言えます。

図2:コンタクトレンズの機能拡張とその市場規模

眼球内圧力(以下、眼圧と呼ぶ)が上昇することで視神経を傷害し、失明を引き起こす緑内障は、日中よりも夜間に進行することが知られており、病気の進行具合を把握する上で24時間眼圧を計測することが求められています。病院では、ゴールドマン眼圧計などの大型装置を利用して測定できますが、夜間の測定には不向きです。そこで、コンタクトレンズに電子素子を搭載することで24時間計測を実現させるスマートコンタクトレンズの開発が進んでいます。

開発が進む眼圧計測レンズは、レンズ素材が硬くドライなハードコンタクトレンズを使用しているため、装用感が悪く、また、高価であるという欠点がありました。一方、ウェットなソフトコンタクトレンズ上に従来型アンテナ素子を搭載すると、レンズの乾燥により電子部品が基板から剥がれてしまうなどの課題がありました。そこで、本研究グループは、電気メッキを利用したアンテナの微細加工技術によって、無線アンテナの伸縮性を実現し、さらに、アンテナ自身が歪を感知できる最適な構造(形状や厚みなど)を明らかにしました。伸縮性を有する歪センサアンテナは、市販のソフトコンタクトレンズ上に搭載することができます。レンズが乾燥してもセンサ素子が基板から剥がれることはありません。また、アンテナとセンサが一体化したことで、センサの価格を抑えることができました。自宅で計測できるセルフケア商品としての普及が期待されます。

図3:ソフトなコンタクトレンズを用いた眼圧計測を実現

研究の成果

研究グループでは、これまでレンズとメガネ間における無線通信技術(PT対称性共振結合回路※6)の開発に取り組み、涙中糖度を計測する超高感度なバイオセンシングレンズの開発に成功してきました。この実現のためアンテナの形状や材料選定(Mg, Zn, Au, Cu, 合金, カーボンナノチューブ, MXene※7など)に加え、レンズに搭載可能な共振器および検出器などの回路設計、データ解析のためのソフトウェア開発に取り組んできました。

本研究では、コンタクトレンズ側の受動共振回路に対し、読み出し側(受信機)の回路にPT対称性の概念を導入した新しい原理の共振結合回路を用いました。まず従来型の検出器では、70 MHz付近でモードスプリット※8に起因する2つのピークが観測され、帯域幅は約3.5 MHzと広いことに加え、6~36 mmHgの眼圧変化に対して70 MHzにおける抵抗変化はわずか5.94 Ωにとどまっていました。これに対して、負性抵抗素子を組み込んだPT共振結合回路では、損失を能動的に補償することにより、共振ピークの帯域幅は約0.206 MHz、Q値は339.15へと大きく向上し、従来アンテナのQ=15.71と比べて格段に高い共振特性が得られました。豚眼に本スマートコンタクトレンズを装着し、PT検出器で読み出した場合、6~36 mmHgの眼圧変化に伴い検出される実数インピーダンスZ′は−4.5 kΩから−5.59 kΩへと大きく変化し、その絶対値の変化量は従来アンテナの数百倍に達しました。感度で比較すると、従来検出器での0.198 Ω/mmHgに対してPT検出器では36.333 Ω/mmHgを達成しており、約183倍の高感度化に成功しています。さらに、このシステムでは共振周波数がほぼ一定に保たれるため、単一周波数でZ値(リアルタイム成分にインピーダンス)のみを監視すればよく、周波数スキャンが不要である特徴を有しています。ここでは、商用眼圧計(トノメータ)で測定した眼圧値と本研究で開発したセンサレンズから得られた抵抗値の相関を調査したところ、決定係数R²=0.93という高い線形相関が得られ、本システムが豚眼において眼圧を定量的に再現できることが示されました。

さらに、生体眼における連続測定の実現可能性を検証するため、ウサギを用いたin vivo実験を行いました。麻酔下のウサギの眼圧をトノメータで測定したのち、人工涙液を滴下してスマートコンタクトレンズを装用し、PT検出器を搭載させたゴーグルを装着して無線測定を開始しました。その後、前房内にヒアルロン酸ナトリウムを注入することで眼圧を意図的に上昇させ、注入前、注入直後、さらに2日後に再度測定を行い、各時点でトノメータ値とコンタクトレンズ由来の抵抗値の両方を取得しました。各測定は1回あたり10分間実施し、その間の抵抗値変化をベクトルネットワークアナライザで5秒ごとに記録しました。得られたデータをMATLABで解析した結果、ウサギにおけるトノメータ眼圧値とコンタクトレンズ抵抗値の間には決定係数R²=0.97という非常に高い線形相関が認められ、生体眼においても本システムが眼圧変動を精度良くトレースできることが明らかになりました。安全性評価としては、レンズ装着後の流血評価に加え、サーモグラフィを用いた温度分布を測定したところ、いずれの実験における有意な差は見られませんでした。また、ヒト角膜上皮細胞を用いた生体適合性試験においては、24時間および48時間後においても、90%以上の細胞生存率を示すことを確認しました。

研究の波及効果や社会的影響

本研究で開発した高感度スマートコンタクトレンズは、眼圧を連続的かつ非侵襲でモニタリングできる世界でも数少ない技術であり、緑内障の早期発見と進行管理に大きな社会的重要性を有します。従来の眼圧計測では困難であった夜間や在宅での連続計測が可能となることで、病気の進行を左右する眼圧変動を正確に把握でき、患者のQOL向上および失明リスクの低減が期待されます。また、本技術はソフトコンタクトレンズを基盤とするため装用性が高く、セルフケア型医療デバイスとして幅広い年齢層に普及する可能性があります。

さらに、PT対称性を用いた無線高感度計測という本研究の新しい原理は、眼科領域に留まらず、心血管・皮膚・呼吸といった他の生体計測デバイスにも応用でき、次世代ウェアラブル医療機器開発の基盤技術となることが見込まれます。高齢化が進む社会において、医療費削減や遠隔医療の推進にも寄与し、医療DXの実現に向けた重要な一歩となります。また、柔らかい電子デバイス、スマートレンズ産業、バイオセンシング用半導体など周辺産業への展開が期待され、医療・工学・材料分野に跨る新しい市場創出と技術革新の加速につながると考えられます。

今後の展望

今後は事業化に向け、本計測レンズを用いて医学部眼科の先生と共同で臨床試験に取り組みます。そのため、レンズデバイスの試作、レンズ製造、無線検出器を開発して頂ける企業との連携を進めていく予定です。

用語解説

*1:多治見スタディの結果を参照。
https://www.ryokunaisho.jp/general/ekigaku/tajimi.php

※1 眼圧(Intraocular Pressure: IOP):
眼球内部の圧力。正常範囲(おおよそ10~21 mmHg)から大きく外れると視神経障害のリスクが高まり、緑内障の発症・進行と関連する。

※2 共振結合系のQ値:
共振回路における共振のピークの鋭さを表す値「Q」(Quality factor)が大きいほど、共振回路の損失が少ない回路を実現できたと言える。

※3 in vitro:
生体から取り出した細胞や組織などを用いた人工的な環境で実験・測定することを意味する。

※4 in vivo:
生きた生体で実験・測定を行うことを意味する。

※5 線形相関R²:
データのばらつきを回帰直線がどれだけ説明できているかを示す指標で、値が1に近いほど、データの点がほとんど一直線上に並んでおり、強い相関があると判断できる。

※6 PT対称性共振結合回路(Gain-Loss結合回路):
増幅器による“ゲイン”と抵抗などによる“ロス”を対称的に配置して結合させることで、エネルギーの流れが釣り合う特殊な共振状態(PT対称状態)を実現し、高感度な周波数応答や異常な結合特性を得る回路のことである。

※7 MXene(マキシン, M=遷移金属、X=C, N):
二次元構造の遷移金属炭化物・窒化物・炭窒化物の総称。高い導電性や電磁波遮蔽性能を有するため、エネルギー貯蔵、センサ、電子デバイスなど多方面で期待されている。

※8 モードスプリット:
もともと1つの共振周波数をもつ縮退モードが、共振器間の結合や外乱によって複数の固有モードへ分離し、それぞれ異なる共振周波数を示す現象のことである。

論文情報

雑誌名:NPJ Flexible Electronics
論文名:Ultra-Sensitive Real-Time Monitoring of Intraocular Pressure with an Integrated Smart Contact Lens Using Parity-Time Symmetry Wireless Technology
執筆者名:Te Xiao, Hanzhe Zhang, Taiki Takamatsu, Saman Azhari, Atsushige Ashimori,Kazuhiro Kimura, and Takeo Miyake *責任著者
掲載日時:2026年1月13日(火)
DOI: https://doi.org/10.1038/s41528-025-00507-3
掲載URL: https://www.nature.com/articles/s41528-025-00507-3

研究助成

・国立研究開発法人日本医療研究開発機構医療機器等研究成果展開事業(開発実践タイプ)、JP23hma322020
・科学研究費補助金基盤研究A
・キヤノン財団研究助成

Energy level schemes or rare earth ions in a free state and in crystals (2026/1/29)

著者: staff
2026年1月13日 16:11

演題:Energy level schemes or rare earth ions in a free state and in crystals

日時:2026年1月29日(木) 15:00-16:40

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 63号館1階 電子物理システム学科会議室

講師:Mikhail Brik(Professor,University of Belgrade,Serbia)

対象:学部生、大学院生、教職員、一般

参加方法:希望者は直接会場へお越しください

主催:基幹理工学部 電子物理システム学専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

腸内細菌利用糖を起点としたマイクロバイオーム創薬の新展開(2026/1/20)

著者: staff
2026年1月7日 11:43

演題:腸内細菌利用糖を起点としたマイクロバイオーム創薬の新展開

日時:2026年1月20日(火) 16:00-17:40

会場:早稲田大学 120-5号館121会議室

講師:金 倫基 (北里大学薬学部教授)

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:希望者は [email protected]にメールで申し込み

主催:先進理工学部 生命医科学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

マテリアルリザバー性能が向上する電子-イオン混合伝導

著者: contributor
2025年12月19日 09:23

マテリアルリザバー性能が向上する電子-イオン混合伝導
~イオンを積極的に活用したニューロモルフィック分子ネットワークの実証~

発表のポイント

  • 自己ドープ型ポリチオフェン(S-PEDOT)の化学的な脱ドープにより、電子(ホール)とイオン(プロトン)が同時に伝導キャリアとして働く“本質的な混合伝導状態”を誘起することに成功しました。
  • 電子とイオンが協奏した混合伝導状態を利用することで、マテリアルリザバー素子の性能が向上することを明らかにし、本コンセプトが高性能なマテリアルリザバー素子開発において重要な因子であることを実証しました。
  • 本研究は、イオン(プロトン)伝導を積極的に活用したニューロモルフィック分子ネットワークの設計指針を提示するとともに、次世代の省エネルギーAIデバイスの実現に大きく貢献することが期待されます。

立教大学理学部の永野修作教授、石﨑裕也助教、山形大学理学部の松井淳教授、大阪大学大学院理学研究科の松本卓也教授、三坂朝基助教、九州工業大学大学院生命体工学研究科の田中啓文教授、早稲田大学理工学術院の長谷川剛教授らと東ソー株式会社、山梨大学、香川大学の研究グループは、導電性高分子「自己ドープ型ポリチオフェン(S-PEDOT、東ソー株式会社よりサンプル提供)(図1a)」※1に着目し、その電気伝導状態を多価アミン(図1b)による化学的な脱ドープ※2によって精密に制御することで、ホール※3とプロトン(水素イオンH+)が同時に伝導キャリアとして働く“本質的なホール–プロトン混合伝導状態”を創出することに成功しました(図1c)。


図1.(a)自己ドープ型ポリチオフェン(S-PEDOT)と(b)脱ドープ分子である多価アミンの化学構造、(c)本系におけるホール-プロトン混合伝導状態を示すイメージ図。(d)混合伝導状態を示す条件にてマテリアルリザバー素子の性能(波形生成タスクの精度)が向上することを示す図。

本研究で見いだされた本質的な混合伝導状態を示すニューロモルフィック分子ネットワーク※4は、近年、神経模倣型のデバイスとして注目されるマテリアルリザバー素子※5に必要な、非線形応答・短期記憶・高次元性といった特性を兼ね備えており、このような混合伝導状態を活用することで、マテリアルリザバーの素子性能を評価するベンチマークタスクの一つである波形生成タスク※6の精度が向上することを初めて実証しました(図1d)。ホールとプロトンが協奏的に働く本伝導メカニズムは、生体に近い省エネルギー動作を可能にする新たなAIデバイス設計指針として期待されます。
なお、本研究成果はWiley社刊行の国際学術誌Advanced Scienceに掲載されます。

研究の背景と発表内容

近年、人工知能(AI)技術の発展に伴い、ChatGPTに代表される生成AIや気象予測など、さまざまなサービスが急速に発展しています。一方、現在のAI技術はソフトウェアベースの演算処理に依存しており、莫大な計算コストや消費エネルギーの増加が深刻な課題となっています。このような背景の中、脳の神経回路で行われる情報処理システムを模倣し、低消費電力かつ高速な学習・演算が期待されるリザバーコンピューティング7が近年注目を集めています。特に、リザバー部位を物理的ハードウェアで実装し、材料そのものに演算を行わせるマテリアルリザバーは、素子構造が比較的単純であることや、低消費エネルギーでの高速な学習・演算が期待されることから近年高い関心を集めています。
これまでに、金属ナノ粒子や有機半導体材料など、主にエレクトロニクスベースの様々な材料系においてマテリアルリザバー素子が報告されており、脳内の神経ネットワーク構造を模倣したネットワーク状の情報伝達経路や非線形の電気特性、短期記憶特性、高次元性といった特性がマテリアルリザバー素子において重要であることが示唆されてきました。プロトンなどのイオン種は生体内ではあらゆる情報担体として重要な役割を担っていますが、電子に比べ質量が大きく、移動度(イオンや電子の動きやすさ)が桁違いに小さいため、情報担体として人工的に利用されることはほとんどなく、イオン–電子混合伝導性の高分子材料であっても主要な伝導キャリアは電子が担っているのが現状です(図2a)。そのため、イオンあるいは電子とイオン両方を協奏的に活用するデバイスの例は極めて限られていました。
S-PEDOTは、その優れた電気伝導特性が報告されています。この高分子材料はリオトロピック液晶性8を示し、ホール伝導部位である高分子主鎖とプロトン伝導部位である高分子側鎖が相分離してラメラ構造9を形成するといった特徴を示します(図1c)。本研究では、S-PEDOT薄膜が形成するホール伝導チャネルに対して多価アミンを用いた化学的脱ドープ処理を行い、ホール伝導度を制御することでプロトン伝導度とのバランスを取り、本質的な混合伝導状態の発現を試みました。
その結果、脱ドープしたS-PEDOT膜は、調温・調湿下における電流-電圧測定と交流インピーダンス測定(微少な交流電圧をかけた際の応答で、内部の状態を解析する手法)から、相対湿度(RH)に応じてホール伝導とプロトン伝導の電気伝導への寄与が可逆的に切り替わることが明らかとなりました。また、RH= 60~80%の条件下において、ホールとプロトンの両キャリアの伝導度が同程度となり、本質的な混合伝導状態となっていることが実証されました(図2b)。加湿に伴うプロトン伝導度の増大は、従来の混合伝導性高分子材料にはないS-PEDOT特有の秩序化したナノ構造(ラメラ構造)に由来するものと考えられます。さらに、調製したS-PEDOT薄膜はリザバー演算に求められる特性(非線形性・短期記憶特性・高次元性)を示すとともに、波形生成タスクやNARMAタスクと呼ばれるリザバー演算におけるベンチマークタスクの検討を行った結果、混合伝導状態が確認されたRH = 60–80%の湿度条件下において、リザバー演算性能が最大となることが明らかとなりました(図1d)。以上より、これらの特性が、ホールとプロトンが協奏的に伝導する混合伝導状態に由来するものであると結論づけました。
本研究は、複数キャリアを活用することで分子ネットワーク型ニューロモルフィックデバイスの性能を向上させる新たなコンセプトを示すものです。将来的には、リチウムイオンなど他のイオン種を導入することで、より複雑で多様な非線形動作を実現する可能性があります。これらのイオン種の活用は、生体に近い情報伝達システムと類似しており、次世代の省エネルギーAI素子の開発につながることが期待されます。

今後の展望

本研究で明らかとなったホールとプロトンが協奏的に働く混合伝導状態は、多様で複雑な非線形応答を、極めて薄い有機薄膜で実装できることを示しています。混合伝導を活用することで、生体神経系に類似した電気化学的応答を材料レベルで再現できる可能性が高まり、より省エネルギーかつ柔軟性の高いニューロモルフィックデバイスの開発が進むと期待されます。

図2.(a)従来の混合伝導性高分子における電子(ホール)とイオン(プロトン)の電気伝導度を比較した図。イオン伝導度は電子伝導度と比較して圧倒的に低いため、主要な伝導キャリアは電子となっている。(b)本研究のアプローチで実証したホール-プロトン混合伝導状態。脱ドープによりホール伝導度を低下させ、加湿によってプロトン伝導度を増大させることで、両キャリア伝導のバランスを取り、本質的な混合伝導状態を達成した。

謝辞

本研究を進めるにあたり、北陸先端科学技術大学院大学 長尾 祐樹 教授には電気計測やイオンの伝導機構において有益なディスカッションを頂きました。また、X線散乱測定においては、信州大学 是津 信行 教授、八名 拓実 博士にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題番号:JPMJCR21B5)の支援を受けたものです。また、JSPS 研究拠点形成事業(課題番号:JPJSCCA20220006)、JSPS 科研費(若手研究)(課題番号:JP22K14731、JP25K18082)、天野工業技術研究所2025年度研究助成金の支援を受けて行われました。

用語解説

※1 自己ドープ型ポリチオフェン
一般的な導電性高分子では、電気伝導性を発現させるためにキャリアを供給する添加剤(ドーパント)が必要となる。一方、自己ドープ型ポリチオフェンは、ポリチオフェン骨格にスルホン酸基などのドーパント基をあらかじめ有しているため、外部ドーパントを用いることなく高い電気導電性を示す。

※2 脱ドープ
ここでは、酸化された電気伝導性共役主鎖をもつ高分子に対して、アルキルアミンなどの塩基を添加することで、高分子主鎖を化学的に還元し電気伝導性を低下させるプロセス。

※3 ホール
酸化によって共役主鎖から電子が抜き取られた結果生じる正電荷。この正電荷が高分子主鎖上を移動することで、見かけ上、この正電荷(ホール)が伝導キャリアとして振る舞う。

※4 ニューロモルフィック分子ネットワーク
脳内で見られるニューロンのネットワーク構造やその情報処理システムを人工的なネットワーク構造の分子素子で模倣したもの 。

※5 マテリアルリザバー
リザバーコンピューティング7において、リザバー部を様々な材料系に置き換えたもので、材料そのものに演算を行わせるデバイス。

※6 波形生成タスク
マテリアルリザバー5に入力した信号に対して、材料内部で非線形変換された複数の出力信号を利用し、任意の目標波形(三角波・矩形波・ノコギリ波など)を再構成できるかを評価するタスク。

※7 リザバーコンピューティング
入力層、リザバー層、出力層から構成されており、リザバー部と出力部の間の結合重みだけを学習させるため、計算コストが小さく高速な学習・演算が可能であり、特に、画像パターン認識や音声認識など時系列データを取り扱うのに適している。

※8 リオトロピック液晶性
物質が媒体の濃度変化によって液晶性を示す性質。石鹸などの界面活性剤でよくみられる。

※9 ラメラ構造
界面活性分子などが形成する周期的な積層構造。ここでは、S-PEDOTの電子伝導性主鎖とプロトン伝導性側鎖が相分離することで、規則的に積層した構造をさす(図1c)。

論文情報

掲載誌:Advanced Science
論文タイトル:Utilizing cooperative proton–electron mixed conduction induced via chemical dedoping of self-doped poly(3,4-ethylenedioxythiophene) nanofilms for in-material physical reservoirs
著者:Yuya Ishizaki-Betchaku,* Motoaki Onishi, Tomoki Misaka, Mitsuo Hara, Hirokazu Yano, Hidenori Okuzaki, Jun Matsui, Tsuyoshi Hasegawa, Takuya Matsumoto, Hirofumi Tanaka, and Shusaku Nagano*
掲載日:2025年12月16日
DOI:10.1002/advs.202520270

宇宙滞在の快適性をデザインする宇宙専門人材育成プログラムが始動

著者: dev
2025年12月17日 11:00

早稲田大学理工学術院は、文部科学省・令和7年度宇宙航空科学技術推進委託費の「宇宙人材育成プログラム/宇宙専門人材育成」プログラムに採択されました。
本プログラムでは、一般の民間人宇宙滞在における快適性と生活の質(QOL)向上を実現する「人間中心アプローチによる一般民間人宇宙滞在のための製品・サービス」をデザインし、運用できる人材育成を行います。

採択事業

事業責任者:早稲田大学 理工学術院 教授 野中朋美
課題名:ECLSS環境における人間の快適性を支える製品・サービスデザイン人材育成プログラム
実施年度:令和7年度~令和9年度
実施機関:
主管実施機関 早稲田大学
共同参画機関 慶應義塾大学、山口大学
協力機関   JAXA、マサチューセッツ工科大学、アジア工科大学

一般民間人の宇宙滞在需要の対応には、人間が宇宙空間で過ごす際の快適性・QOL向上が課題

これまで宇宙における有人活動は、高度な訓練を受けた宇宙飛行士が担っており、長期訓練を受けた宇宙飛行士が生命維持を可能とすることを前提に、宇宙滞在の環境設計がなされてきました。その一方、2030年以降の一般民間人の渡航・滞在が大幅に増加すると予想される地球低軌道の宇宙旅行等の実現には、一般民間人の健康維持、快適な環境確保が不可欠です。

微小重力、閉鎖環境、宇宙放射線といった宇宙空間における特殊条件において、快適性・QOL向上や健康維持を支える製品・サービスは民間宇宙ビジネスの発展を支える産業基盤になると予想されています。

⼀般⺠間⼈の健康・快適宇宙⽣活を実現する宇宙QOL研究開発拠点を構築し、宇宙生活の快適性を支える製品・サービスをデザインし運用できる人材育成を目指す

本事業では、非宇宙分野(宇宙工学や既存宇宙産業以外)を含む大学生、社会人、高専生等を対象に、宇宙のECLSS(Environmental Control and Life Support System:環境制御・生命維持システム)環境において、人間の快適性を支える製品・サービスをデザインし、運用できる人材を、事業期間中に合計300名以上育成することを目標とします。

図1 本事業で目指す宇宙QOL

そのため、慶應義塾大学、山口大学の共同参画機関およびJAXAをはじめとした産学官と連携し、スポーツ科学、⼈間⼯学・クロスモーダル・アート、健康・医学、工学、サービス工学、システムズエンジニアリング、デザイン等の各領域の専門分野を結集し、以下のアプローチから専門人材育成を行います。

1.ECLSS関連講座
・環境基盤としてのECLSSに関する体系的理解
・人の感覚・認知に着目した快適ECLSSの基礎
・環境制御技術、健康管理、衛生管理等の要素技術を活用した、人側の認知・知覚・生理反応に対応する人間中心システム設計
・受講生が既に有する専門性を宇宙環境へ応用するための基礎知識の習得

2.ECLSSを活用した製品・サービスデザイン実践WS
・受講者が保有する専門技術に快適ECLSSを掛け合わせ、宇宙生活における人間の快適性を支える製品・サービスのサービスデザイン力およびシステムデザイン力の取得

3.有人宇宙滞在ビジネス実践講座
・産官学のゲスト講師の講座や国際シンポジウムを通じた学びの幅を広げる講座を展開

ECLSS関連講座を担当する講師

早稲田大学 野中朋美教授 慶應義塾大学 白坂成功教授 山口大学 坂口和敏准教授 JAXA 桜井誠人博士 元JAXA宇宙飛行士 山崎直子氏

事業責任者(早稲田大学 野中教授)コメント

早稲田大学は、一般民間人の宇宙滞在における快適性と生活の質(QOL)の向上を目指し、「宇宙QOL研究開発拠点」を立ち上げました。本拠点は、スポーツ科学、人間工学・クロスモーダル・アート、医学、経営工学、サービス工学、行動経済学、デザイン、システムデザインといった多様な専門分野を結集し、人間中心のアプローチで宇宙生活を支える研究開発を推進しています。

低軌道における民間ビジネスは今後さらに拡大し、有人宇宙活動の発展は不可欠なテーマとなっています。その実現には、従来の宇宙工学分野に加えて、非宇宙分野の知識と技術が欠かせません。日本が強みをもつ環境制御技術や健康管理技術、さらには高度なサービス産業などは、これからの宇宙ビジネスで大きな価値を発揮すると考えています。こうした多様な分野の参画によって、宇宙産業の裾野が大きく広がることが期待されます。

本人材育成プログラムでは、受講生が「自分の専門を宇宙で活かす」ために必要な基礎知識を体系的に学び、ECLSS環境に応用しうる製品・サービスを創出する力を育成します。さらに、身につけた知識をワークショップ形式で実践し、実際の宇宙生活の快適性やQOL向上につながる製品・サービス設計を経験できる構成としています。

また、産学官が連携し、使われる宇宙技術・宇宙サービスへとつながるユースケースの創出を重視した人材育成を進めていきます。多様な専門性が宇宙に参入することで、宇宙産業と地上産業の双方に新たな価値を生み出す人材を育てていきたいと考えています。本プログラムは大学生・大学院生、社会人、高専生の方に広くご参加いただけます。是非多くの方に受講いただきたいです。

JST「次世代エッジ AI半導体研究開発事業」に新規採択

著者: contributor
2025年12月16日 14:38

環境循環型3D半導体製造革新と拠点形成を通じた、エッジAI社会を支える超高性能チップ実現へ

学校法人早稲田大学情報生産システム研究科は、国立大学法人横浜国立大学を研究代表者とする研究チームに参画し、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が公募する「次世代エッジ AI半導体研究開発事業」における「テーマ② 3D 集積技術の研究開発課題に採択されました。
※本事業の早稲田大学代表研究者は理工学術院・情報生産システム研究科の馬渡和真教授です。

採択課題情報

・事業名称:環境循環型3D 半導体製造革新と拠点形成を通じた、エッジAI 社会を支える超高性能チップ実現へ
・研究代表機関:横浜国立大学総合学術高等研究院
・研究分担機関:株)レゾナック、東京科学大学、早稲田大学、慶應義塾大学

事業概要

本事業は、クラウド側の消費電力増大という世界的な課題を解決し、エッジ側で高度な情報処理を可能とする革新的なAI 半導体の実現を目指す国家プロジェクトです。本採択課題は、将来のエッジAI 社会に不可欠な小型・高集積化と、地球環境に配慮したサーキュラーエコノミー型製造革新の両立を目標とし、特に以
下の4 つの技術課題に注力し、急速に拡大するエッジAI 市場における日本の競争優位を確立することを目指します。

  1. 環境循環型製造技術の確立:資源効率を高め、廃棄物を最小限に抑える「サーキュラーエコノミー型製造プロセス」の導入を加速し、半導体製造におけるグリーントランスフォーメーション(GX)を牽引します。
  2. チップレットに必須となる高度テスト技術の確立:複雑な3 次元積層(3D 集積)構造の品質と信頼性を確立するため、多層にわたる欠陥を高精度かつ効率的に検出・評価する「高度テスト技術」に取組み、次世代3D 半導体の量産プロセス技術を創造します。
  3. 革新的な冷却技術の開発:高集積化による発熱増大に対応するため、エネルギー効率が高く、極めて効率的な「水冷・マイクロ流路型冷却技術」の研究に取組み、AI 半導体性能向上の可能性に挑戦します。
  4. オープンイノベーション拠点整備:研究成果の社会実装を加速するため、株式会社レゾナック、東京科学大学、早稲田大学、慶應義塾大学をはじめとした関係機関と緊密に連携し、産学官連携の「オープンイノベーション拠点」を整備します。これにより、半導体産業の国際競争力の更なる強化と、実践的な教育を通じた次世代のグローバル人材育成を推進します。

Construction of smooth varieties with small contractions(2026/1/9)

著者: staff
2025年12月16日 14:08

演題:Construction of smooth varieties with small contractions

日時:2026年1月9日(金) 16:30-18:10

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 51号館 18-08

講師:政村 悠登(東京大学大学院 博士課程2年)

対象:一般

参加方法:入場無料 直接会場へお越しください

主催:基幹理工学研究科 数学応用数理専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

URL:https://sites.google.com/view/waseda-ag-seminar

2025年度 JST ASPIREに採択

著者: contributor
2025年12月16日 11:30

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が募集した先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)で実施する「TOPのためのASPIRE」において、このたび、本学理工学術院の青木隆朗教授の提案が採択されました。

本件は、協力相手国・地域の研究資金配分機関や研究機関などのプログラムで支援を受けている、または支援を受ける予定の研究者と、AI・情報、バイオ、エネルギー、マテリアル、量子、半導体、通信の7分野で国際共同研究を実施する日本側研究者からの提案を募集したものです。「TOPのためのASPIRE」では、7分野で計54件の応募から、青木教授の提案を含む17課題が採択されました。

採択課題

量子分野

  • 応募タイプ
    TOPのためのASPIRE
  • 課題名
    ナノフォトニクスと原子物理学の融合による統合的光量子技術の創成
  • 日本側研究代表者
    理工学術院 教授 青木 隆朗 ※研究紹介映像はこちら
  • 海外参画研究者所属機関
    フランス:トゥールーズ大学(CNRS)、ソルボンヌ大学
    ドイツ:ベルリン・フンボルト大学、ボン大学
    スペイン:カタルーニャ光科学研究所(ICFO)
    米国:パデュー大学、マサチューセッツ工科大学

 

先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)とは

我が国の科学技術力の維持・向上を図るため、政策上重要な科学技術分野において、国際共同研究を通じて我が国と科学技術先進国・地域のトップ研究者同士を結び付け、我が国の研究コミュニティにおいて国際頭脳循環を加速することを目指します。

本事業により、我が国と科学技術先進国・地域との間で、最先端の研究開発につながるネットワークを構築しつつ、次世代のトップ研究者を育成し、その流れを能動的に作り出すための仕組みを構築します。

(ASPIREウェブサイトより)

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