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早稲田大学材料技術研究所 計算材料科学連続セミナー(構造材料第2シリーズ) オンライン開催 5/12~7/4

著者: contributor
2023年4月12日 12:56

早稲田大学材料技術研究所 計算材料科学連続セミナー(構造材料第2シリーズ)2023年5月~2023年7月 オンライン開催

 

主催:早稲田大学 各務記念材料技術研究所/環境整合材料基盤技術共同研究拠点

材料科学研究における計算の重要性は近年ますます高まっています。時間とお金をかけた実験でなくても、計算によってある程度の精度で材料特性の予測が可能になりつつあること、また実験で得られるデータ量が膨大となり、シミュレーションを含めた数値解析が必須となっていること、などが理由です。

早稲田大学材料技術研究所はこれまでに、学外者向けの材料科学のセミナー(オープンセミナー、教育プログラム)を定期的に開催してきた実績があります。こうした経験を生かし、2021年度から、文部科学省の共同利用・共同研究拠点として計算材料科学連続セミナーを実施しております。

本セミナーでは、構造材料をターゲットにしたミクロからマクロにわたる幅広いスケールでの有限要素シミュレーションに関する基礎と応用について、セミナーを実施いたします。具体的には、有限要素法のプログラムの基礎となっている理論的背景から、金属加工のための非線形解析、性能を最大限に発現させるトポロジー最適化、複合材料の均質化法に基づくマルチスケールシミュレーション手法について適用事例を交えながら4名の先生に解説頂きます。

(2023年度後期は「化学材料」の第2シリーズが開催される予定です。)

1.日時

計算材料科学連続セミナーの構造材料第2シリーズは、4回に分けて開催いたします。
各回の開催日時、講演タイトル、および講師(敬称略)は以下の通りです。

第1回
5/12(金)10:00-16:00 ※12:00‐13:00 昼休憩
「有限要素法の基礎と複合材料への応用」
末益 博志(上智大学名誉教授)

第2回
6/1(木)13:00-15:30、6/2(金)13:00‐15:30 ※計300分
「金属材料加工のための非線形有限要素シミュレーション」
浜 孝之(京都大学 エネルギー科学研究科 エネルギー応用科学専攻 資源エネルギー学講座 教授)

第3回
6/13(火)10:00-16:00 ※12:00‐13:00 昼休憩
「トポロジー最適化の基礎と積層造形及び複合材料開発での活用について」
竹澤 晃弘(早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 機械科学・航空宇宙学科 教授)

第4回
7/3(月)13:00-15:30、7/4(火)13:00‐15:30 ※計300分
「均質化法/有限要素法に基づく先進構造材料のマルチスケールシミュレーション」
松田 哲也(筑波大学 理工情報生命学術院 システム情報工学研究群 構造エネルギー工学 准教授)

2.開催方法

オンライン(Zoomミーティング利用)

3.セミナー内容の詳細

講演タイトル
日時
講師(敬称略) 講演内容
第1回
「有限要素法の基礎と複合材料への応用」
5/12(金) 10:00-16:00
※12:00‐13:00 昼休憩
末益 博志  近年構造・材料設計に有限要素法が広く利用されている。有限要素法で正しい解が導かれるには、数学理論に基づいて膨大なプログラムが構築されているからであり、また数学的に保証されているので新規な手法の導入が可能になった。本セミナーではこのプログラムの基礎になっている変分原理とのかかわりを解説する。本セミナーの後半では有限要素法が複合材料の構造問題にどのように使われているのかを概説し、複合材料の問題の理解と有限要素法の効用に関して解説する。
第2回
「金属材料加工のための非線形有限要素シミュレーション」
6/1(木) 13:00-15:30
6/2(金) 13:00‐15:30
※計300分
浜 孝之  自動車をはじめとする輸送機器では、軽量化に資する素材と加工プロセスの適用拡大が喫緊の課題であり、シミュレーションを用いた工程設計支援が不可欠となっている。本講義では、金属材料加工のための有限要素シミュレーションについてその基礎的な考え方を概説する。また、昨今注目されている結晶塑性モデル(結晶粒レベルの微視変形に基づき巨視的変形を予測するマルチスケール解析手法)についても、その基礎と適用事例を紹介する。
第3回
「トポロジー最適化の基礎と積層造形及び複合材料開発での活用について」
6/13(火) 10:00-16:00
※12:00‐13:00 昼休憩
竹澤 晃弘  近年、積層造形技術が著しく発展し、ものづくりでの活用法が活発に検討されている。従来の製造法では難しい複雑な形状でも製造できることから、性能と見栄えの良い構造を創出する手段として、構造最適化、特にトポロジー最適化が関連技術として注目を集めている。本講義では、このトポロジー最適化の基礎について解説するとともに、積層造形品及び複合材料の設計に活用した例を紹介する。
第4回
「均質化法/有限要素法に基づく先進構造材料のマルチスケールシミュレーション」
7/3(月) 13:00-15:30
7/4(火) 13:00‐15:30
※計300分
松田 哲也  複合材料等の先進構造材料は、μmオーダーのミクロ構造から、mmオーダーのメゾ構造、さらにはmオーダーのマクロ構造まで、多階層的なマルチスケール構造を有しており、その特性解析・構造解析にはマルチスケールシミュレーションが有用である。本セミナーでは、均質化法/有限要素法を用いたマルチスケールシミュレーション手法について解説するとともに、複合材料等への適用事例を紹介する。

4.受講修了証の発行

以下の要件を満たした方には「受講修了証」を発行いたします。
・第1回から第4回まですべての回を受講すること。
・第4回受講終了後、所定のアンケートに回答すること。

5.申込手続き

参加費:無料

申込フォーム:こちらのページから

4回全部に参加しても、個別の回に参加しても、どちらでも結構です。
受付期間は各回の日程の1週間前の17:00までです。※第1回のみ5/8(月)17:00締切

6.お問い合わせ

早稲田大学 各務記念材料技術研究所  [email protected]

早稲田大学各務記念材料技術研究所
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-8-26
TEL 03-3203-5166 FAX 03-5286-3771

特集Feature Vol.25 水素貯蔵材料で持続可能なエネルギー社会の実現へ

著者: contributor
2023年4月12日 09:17

エネルギー材料科学者
花田 信子(はなだ のぶこ)/理工学術院 専任講師

水素貯蔵材料で持続可能なエネルギー社会の実現へ

質問に丁寧に答える花田信子先生2023年現在、地球温暖化の原因と考えられている温室効果ガス削減に向け、「カーボンニュートラル」が世界的潮流となっています。カーボンニュートラル実現に向けた方策のひとつに挙げられるのが、水素の利用です。再生可能エネルギーを利用して水素を製造し、燃料電池等を用いて電気や熱エネルギーを取り出す。その反応過程において、二酸化炭素は発生しません。第19回(令和四年度)日本学術振興会賞を受賞した先進理工学部の花田信子 専任講師は、水素を利用しやすくするための水素吸蔵・放出材料やその工業化プロセスを研究しています。研究テーマを選んだきっかけや、取り組みについて伺いました。(取材日:2023年2月9日)

専門を決めたのは、大学1年生のときの授業

高校生の頃から、じっくりと考え、解くことで答えを導き出すことができる物理や数学が好きでした。大学受験に至っても、物理も数学も好きなままで、最後までどちらにも決めきれなかったため、入学後に専門を決められる大学を選びました。専門を決める契機は、いざ入学し、さてどうしようか、と思いながら何気なく履修した教養の授業。燃料電池の実用化に向けた水素吸蔵の話を聞き、物理に進んだら学問を社会に活かすためのモノづくりができるのではないかと、興味をもちました。卒業研究配属で、水素吸蔵の講義をしていた先生の研究室に入り、現在に至るまで、水素吸蔵をキーワードに未来のエネルギー問題について考え、試行錯誤する日々を送っています。

室温で動作する高容量の水素吸蔵合金

卒業研究では、水素吸蔵材料であるマグネシウム(Mg)合金について、混合条件の最適化を研究することにしました。学会発表等の経験を積んで研究が楽しくなり進んだ大学院では、材料を水素化マグネシウム(MgH2)に絞り、その特性を向上させる研究を進めました。

MgH2は、重量あたりの水素吸蔵量は大きいものの、表面活性が低く水素吸蔵・放出反応速度が遅いことが欠点で、特性向上のために触媒を添加する必要がありました。当初は、触媒材料として鉄やコバルト、ニッケル等の金属ナノ粒子を用い、短時間のボールミリング法でMgH2と合成する手法を研究していました。良い成果をまとめられたので、さらに良い材料がないかと検討していたところ、金属酸化物でも触媒機能が発現するという報告を読み、Nb2O5を試してみることにしました。従来はボールミリングの時間を短縮できることをメリットと考えていましたが、Nb2O5については、長時間行った場合にのみ十分な触媒特性が得られる、という結果になりました。なぜ長時間必要なのかと、化学状態や分布状態を丁寧に評価してみたところ、Nb2O5がMgH2によって還元されてNbO等になり、それがMgH2表面にナノレベルで均一に分散されて、触媒機能を発現していることが分かりました。さらに、水素放出特性については、これまで400度程度に温度を上げる必要があったところ230度まで上げれば動作し、水素吸蔵特性では、通常300度前後で動作させるところ、室温での動作確認ができたのです。反応速度も十分であり、これだ、という結果が得られた瞬間でした。

触媒添加したMgH2の水素吸蔵放出特性

触媒添加したMgH2の水素吸蔵放出特性

実用化に向けて

博士号取得後は、扱う材料を少しずつ変えたり、より大容量の水素を得るために液体アンモニア(NH3)の電気分解に挑戦したり、さらには水素精製・貯蔵システム設計運用に取り組んでみたりしながら、評価・分析技術を磨いていきました。

早稲田大学には2017年に着任し、現在は、アンモニアや水素吸蔵合金を中心に実用化に向けたプロセスの改善を進めています。また、Mgの研究を再開するに至りました。そのひとつとして、ボールミリング法以外で同等の性能が出せる触媒添加Mgを作製する手法を探索しています。最終的に目指す姿・性能は見えていますので、そこに近づけるための要件をひとつずつ探しているところです。

また、もう一つのプロセス改善方針として、スケールアップのための水素貯蔵タンクの研究も進めています。大学の実験室では1g程の分量で試料を作り各種計測・分析を行っていますが、工業的には100kgやトン単位での製造が必要になります。1gのMgH2の粉であれば気になりませんが、100kgとなると、反応の過程での発熱・吸熱反応も無視できず、一定温度にするために、熱を取り除いたり加えたりする必要があります。また、MgH2は水素吸蔵・放出の過程で膨らんだり縮んだりしますが、くり返しにより試料がボロボロに割れて微粉化する現象が起こります。試料を入れたタンクの中で微粉化した粉が隙間を埋めて詰まり、ガチガチに固まってしまう結果、水素吸蔵・放出特性が落ちたり、タンクが割れてしまったりするという問題が起こります。この改善のため、溶液中でカーボンナノチューブとMgH2を混合してろ過し、乾燥させて薄いシート状にした試料を用いる手法を開発しています。

カーボンナノチューブは、直径が数ナノメートル、長さが数マイクロメートルの細長いチューブ状の材料で、MgH2はこのチューブの束の間でうまくからめとられるようにして固定されます。MgH2粒子は数マイクロメートルオーダーと、カーボンナノチューブと比べると大きいため、水素吸蔵・放出により割れて微粉化しても、カーボンナノチューブの束にからめとられたまま、動いたり落ちたりしないことが確認できています。さらに、タンクの中に入れたシート状試料に温度調節した水素ガスを直接送り込むことで、効率よく温めたり冷やしたりすることが可能となります。従来はタンクの外側からヒーター等で温度調節していたのですが、タンク自体を温めたり冷やしたりすることになるため効率が悪かったのです。また、水素ガスを用いることで、ガスとしての不純物も混ざらない、というメリットもあります。

水素を熱媒体としたMgH2水素貯蔵タンクの構造

水素を熱媒体としたMgH2水素貯蔵タンクの構造

学生ひとりひとりの個性に寄り添いながら

早稲田大学は私立大学でありながら、研究のレベルが高く、その一端を担っている学生の能力も高いです。学生同士での議論も活発で、その中から生まれる面白いアイデアが研究の幅を広げてくれます。学生自身が主体的に自分で課題を考え、解決する方法を考えられるように導くことができれば、教育者冥利に尽きますね。その方法は、学生ひとりひとり異なっており、個性に寄り添いながら、見つけていきたいと思っています。また、様々な計測機器を有する物性計測センターも研究を進める上での大きな力になっています。センター技術職員の中には、博士号を持っている方もいて、ある程度研究を理解して対応してくださるので、非常に助かっています。学生が機器を使う際にも、たくさんのアドバイスをしてくださいます。
このような良い環境に身を置けていますので、全力で社会の役に立つ研究を進めていきたいと思っています。

学生とのディスカッション風景

学生たちと議論する様子

プロフィール

花田信子先生花田 信子(はなだ のぶこ)
広島大学大学院先端物質科学研究科量子物質科学専攻博士課程修了、博士(学術)取得。広島大学自然科学研究支援開発センター 産学連携研究員、ドイツ・カールスルーエ研究所ナノテクノロジー研究所 客員研究員、上智大学理工学部機能創造理工学科 研究プロジェクトポストドクター、筑波大学大学院システム情報工学研究科構造エネルギー工学専攻 助教を経て、2017年から早稲田大学先進理工学部応用化学科 講師、2021年から現職。専門は機能材料工学、プロセスシステム工学。第19回(令和4(2022)年度)日本学術振興会賞受賞。

 

 

代表論文
  • Natsuho Akagi, Keisuke Hori, Hisashi Sugime, Suguru Noda, Nobuko Hanada, “Systematic investigation of anode catalysts for liquid ammonia electrolysis”, Journal of Catalysis, 406 (2022) 222-230.
  • Kosuke Kajiwara, Hisashi Sugime, Suguru Noda, Nobuko Hanada, “Fast and stable hydrogen storage in the porous composite of MgH2with Nb2O5 catalyst and carbon nanotube”, Journal of Alloys and Compounds, 893 (2022) 162206.
  • Keisuke Yoshida, Kosuke Kajiwara, Hisashi Sugime, Suguru Noda, Nobuko Hanada, “Numerical simulation of heat supply and hydrogen desorption by hydrogen flow to porous MgH2sheet”, Chemical Engineering Journal, 421 (2021) 129648.
  • Nobuko Hanada, Yusuke Kohase, Keisuke Hori, Hisashi Sugime, Suguru Noda , “Electrolysis of ammonia in aqueous solution by platinum nanoparticles supported on carbon nanotube film electrode”, Electrochimica Acta, 341 (2020) 135027.
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