アメリカ近代短編小説傑作選5 「華麗なるギャツビ-」のフィッツジェラルドとフォークナ-
2021年6月16日 19:32
ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、フォークナ-の3人はその活動の時代が、ほとんど同じである。
アメリカ文学への貢献度についても、甲乙つけがたい。
さらに3人の共通体験として第1次世界大戦がある。
にもかかわらず3人の内、フィッツジェラルドだけがノーベル文学賞をもらっていない。
そこにはちゃんとした理由がある。
スコット.フィッツジェラルドは村上春樹氏がひいきにする作家で「流れるような文体」を絶賛している。
アメリカ文学の翻訳家として、文句なしに日本で最高の名手村上春樹が、褒めるのだから優れているのだろう。
ヘミングウェイの文体は対照的に、ぶうぶつと切れた簡潔な文章で、感傷や意識の流れとは無縁のこれぞハードボイルドの世界だ。
フォ-クナ-はまたヘミングウェイとも異なり、句読点を省略し、極端に息の長い延々と続く文体である。
その長い文体を駆使して人間心理の中に潜む残虐性、恐怖、愚昧といった負の感情を生き生きと表現している。
その巧みさにおいてアメリカ文学だけでなく、世界文学史上、20世紀最大の作家ともいわれている。
前にブログで書いた「アメリカ人の本質は南部にある」という意味において、アメリカ人の闇の側面を暴き出しているともいえる。
さて、ヘミングウェイとフォークナ-がノーベル賞を取って、フィッツジェラルドが取れなかったのには理由がある。
3人とも第一次大戦の経験者だが、前2人は「戦場で名誉の負傷」をした帰還兵だ。
フィッツジェラルドだけが軍に入隊はしたが、前線に行く前に休戦となってしまい実戦経験がない。
つまり前2人は「アメリカ愛国心の実践者」であったが彼だけが「愛国心を示し損ねている。」
実はノーベル文学賞はノーベル平和賞と並んで、その選考がかなり胡散臭いものあり、ズバリ言って「政治的思惑」が絡んでくる。
川端康成がノーベル文学賞を取ったとき、三島由紀夫も、もう一人の候補者だった。
川端も三島も「保守的文壇人」であり日本政府からの推薦があったのである。
その意味でも、村上春樹はとてもとても日本政府からの推薦がもらえるとは思えないので、無冠の帝王に終わる可能性が高い。