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ERATO採択 元素固有の色を可視化

著者: contributor
2021年10月5日 09:31

令和3年度 戦略的創造研究推進事業ERATOに採択

元素固有の色を可視化し、宇宙と医療をつなぐ新しい架け橋 「ラインX線ガンマ線イメージング」を提案

発表のポイント

  • 元素固有の色を可視化する革新手法「放射化イメージング法」を提案
  • 宇宙から人体まで、あらゆる物質の動態を同じ技術で可視化

(1) 宇宙観測では、小型衛星で未踏の先端科学を開拓
(2)医学では薬物動態を迅速に可視化する新しいツールを開拓

2021年10月1日、早稲田大学理工学術院の 片岡 淳(かたおかじゅん)教授を研究総括とし、大阪大学大学院医学系研究科の 加藤 弘樹(かとうひろき)准教授ならびに東京工業大学理学院の 谷津 陽一(やつよういち)准教授をグループリーダーとする提案が、科学技術振興機構(JST)による令和3年度戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(Exploratory Research for Advanced Technology、以下ERATO)(*1)研究領域「ラインX線ガンマ線イメージング」として採択されました。
研究総括は数キログラムから数トンクラスの様々な衛星開発に参加し、高エネルギー宇宙物理学を牽引してきました。人工衛星は重量、大きさ、電力が著しく制約された環境で、最高性能が求められます。同様に、医療では体に負担が少なく高精度な技術が求められ、両者の技術やアイデアを用いることで大きな相乗効果が期待されます。特に、がんの粒子線治療中に人体で起きる反応の多くは宇宙でも同様に起きており、基礎となる現象や物理にも多くの共通点があります。本提案では宇宙観測で培った高度な可視化技術を共通基盤とし、宇宙・医学・薬学分野への新たな展開を目指します。図1に研究領域の概観を示します。

図1: 本ERATOプロジェクトで進める研究の全体像

1.研究の背景

宇宙空間には、宇宙線とよばれる謎多き粒子が満ちています。特に、100MeV(メガ電子ボルト)以下の宇宙線は生命の源であるイオン分子の生成や加熱、星の進化に重要な鍵となると考えられますが、直接観測することができません。一方で、これら宇宙線が星間物質と起こす様々な反応により、元素特有のエネルギーをもつX線やガンマ線のスペクトル輝線(ラインX線ガンマ線 *2)が生じます。これらを可視化することで、宇宙における物質の分布や流れ、さらには星内部の元素合成や超新星爆発など、一見静かな宇宙の「激動の歴史」を探ることができます。しかしながら、とくにガンマ線は数MeVという高いエネルギーをもつため観測が難しく、1990年代に打ち上げられた米国のコンプトン宇宙ガンマ線衛星(CGRO衛星)を最後に、30年来にわたり観測が行われていません。
一方で、これらの宇宙で起きる反応を、身近な医療に応用することは可能です。たとえば宇宙線が星間物質と衝突するように、薬剤や被写体に陽子や中性子線をぶつけると薬剤特有のラインX線ガンマ線が生じます。これを用いて、体内の薬物動態や粒子線治療中に細胞周辺で起こる様々な反応を、同じように可視化できるはずです(図2)。つまり、宇宙で起きる反応と、医療の可視化に必要な反応は共通の物理に根ざしています。ここで鍵となるのが、ラインX線ガンマ線を用いた放射化イメージングですが、微量分析技術の前例はあるものの、直接的に「動態を見る」可視化技術は未だ確立されていませんでした。

図2: 宇宙における放射化(左)と放射化分析(右)

2.今回のプロジェクトで実現しようとすること

本領域では元素固有のラインX線ガンマ線を可視化する独自の技術 ― ハイブリッド・コンプトンカメラ(*3)―を用いて「放射化イメージング法」を確立し、それを共通基盤として宇宙分野、医学・薬学分野に展開します。具体的には「放射化」で元素固有のX線ガンマ線を誘発し、宇宙から人体まで、あらゆる物質(たとえば宇宙空間を漂う物質、人体の薬剤等)の動態を統一的にイメージングし、それを通して宇宙分野、医学・薬学分野に、共通な物理で新しい枠組みを構築します。宇宙分野では、数十kgの小型衛星を基盤としたボトムアップ戦略で未踏の先端科学、たとえば宇宙や大気中での元素の流れや元素合成といった、核ガンマ線宇宙物理学の開拓に挑みます。医学・薬学分野では、放射性特性を有さない通常の薬剤を投与前もしくは投与後にごく微量放射化し、その動態をX線ガンマ線で可視化できる革新手法を実証します。さらに、宇宙分野で培われた「光子計数イメージング法」を高速化し、X線やガンマ線の診断技術に応用し、薬剤ごとの同定が可能なスペクトラル多色CTによる超低被ばくX線動態イメージング技術を開拓します。

3.このプロジェクトで期待される波及効果

近年、世界各国では小型衛星の開発が活発に行われ、数十兆円レベルの巨大ビジネスへと発展しています。一方で、その限られた重量やサイズは科学観測には不向きとされ、多くは通信用途や工学的な技術実証のみに用いられています。しかしながら、小型衛星は安価で打ち上げ機会も多く、コストパフォーマンスが圧倒的に良いのも事実です。搭載センサーの性能を究極まで高めれば、一点突破型の優れた科学観測ができるはずです。実際、海外ではわずか10 kgの衛星が、X線による宇宙観測で素晴らしい成果を上げつつあります。本研究では大学主導で数十kgの小型衛星を実際に開発し、前人未踏のMeVガンマ線宇宙観測へ向けた突破口を拓きます。上記の通り、MeVガンマ線は宇宙における物質動態、爆発現象を探る最適な波長帯ツールです。本プロジェクトを通じて小型衛星の全く新しい利用法、つまり「一点突破型」先端宇宙科学観測を提案します。
最後に、本プロジェクトは準安定状態の元素が出す「色」情報を独自装置で可視化し、元素の全く新しい可能性を切り拓く新しい試みです。本年度の文部科学省・戦略目標「元素戦略を基軸とした未踏の多元素・複合・準安定物質探査空間の開拓」達成に大きく資するものと期待されます。さらに、放射化という新しい概念は上記の戦略目標ですら触れられておらず、この枠組みをも大きく凌駕し、元素戦略の新しい可能性を追求する革新的テーマとなっています。本プロジェクトの推進には、理学・工学・薬学・医学・情報全ての研究者が一堂に集い、統合的に研究を進めることが必須で、分野横断型の新しいフレームワークを構築するものです。本プロジェクトにより、新しい薬物動態可視化システムの構築、さらにはナノ粒子を用いた新しい粒子線治療の開拓など、既存の治療や診断を塗り替える新たな医療価値を見出します。さらに、画像診断システムについては、研究機関の他に材料・計測メーカーの協力を得て、材料やセンサーの開発、システム評価を産学連携で進め、国内産業の活性化に貢献していきます。

4.各機関の役割

(1)早稲田大学(Head Quarter)
本研究提案全体を推進。多色スペクトラルCTグループを統括

(2)大阪大学
放射化イメージングや核医学治療、多核種粒子線治療の提案と実証
核医学治療・粒子線治療グループを統括

(3)東京工業大学
科学観測を目的とした小型衛星開発を推進。宇宙・大気科学グループを統括

(4) 金沢大学
スペクトラル多色CTシステムの開発と実証

(5)帝京大学
機械学習を用いた医療画像の鮮鋭化

(6)岡山大学
核医学・粒子線治療用薬剤および多色CT造影剤の開発

(7)量研機構
重粒子線を基盤とした新規放射線治療の提案と評価、細胞実験

(8)理化学研究所
中性子イメージング、大気(雷)ガンマ線イメージングの推進

5.研究総括(代表者)のコメント

現代物理学の宿命は「高エネルギー・フロンティア」の開拓であり、実践的で患者さんと向き合う医療とは全く関係がない ― 実は、私自身も10年前までは同じ考えを持っていました。しかしながら、日本人の半数が一生のうちに罹患するといわれる、がんの高度な粒子線治療を行うには体内で起こる電離や核反応など、高度な物理の理解が必要です。逆に、医療に必要な装置を作るのには臨床現場のニーズを正しく理解することが必要で、理学や工学の研究者が想像だけで装置を作っても意味がありません。さらに、新しい治療や診断には新規薬剤の開発がつきもので、薬学や生物の専門知識も必要となります。多くの学問では、本来一つの目標に向かっているにもかかわらず分野間の風通しが悪く、学問の進展を遅らせてしまう場面が多々あると危惧しています。そのような中、本ERATOプロジェクトはラインX線ガンマ線イメージングをキーワードに、同じ目標に向かって理・工・医・薬をつなぐ「糊」の役割を果たすことが期待されます。そして、本ERATOプロジェクトの圧倒的な強みは、それぞれの分野で世界トップを走る若手研究者を一堂に集め、情報や技術をよどみなく共有できる点です。そして、実際に研究を進めるうえでは博士課程の学生に限らず、修士・学部の学生も積極的に採用し、フレッシュなアイデアとパワーで新しい学問を拓くことが狙いです。ある分野では「できない」ことが、他の分野では「当たり前にできる」経験は、研究者なら誰でも経験することです。登山に様々なルートがあるように、研究の道筋も一つではありません。本ERATOプロジェクトを契機に、日本の学問全体が活発化し、分野連携の架け橋になることを強く願っています。

6.用語解説

*1  戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO: Exploratory Research for Advanced Technology)
科学技術振興機構による公募プロジェクトの一つで、1981年に発足した創造科学技術推進事業を前身とするプログラムです。規模の大きな研究費をもとに既存の研究分野を超えた分野融合や新しいアプローチによって挑戦的な基礎研究を推進することで、今後の科学技術イノベーションの創出を先導する新しい科学技術の潮流の形成を促進し、戦略目標の達成に資することを目的としています。

*2  ラインX線ガンマ線
元素に固有なエネルギーをもち、鋭いピークを有するX線またはガンマ線の総称です。励起した原子から発生するラインX線は特性X線、原子核から生ずるガンマ線は核ガンマ線と呼ばれます。本領域では、この鋭いピークに着目したイメージング法を開発し、宇宙分野、医学・薬学分野に展開します。一例として、金属ナノ粒子である金(AuNP)を放射化し、そこで生ずるガンマ線(412keV)をイメージングした結果を示します。

図3: AuNP薬剤の放射化イメージングの例

*3  ハイブリッド・コンプトンカメラ
コンプトンカメラは、X線・ガンマ線が粒子として振舞う性質(コンプトン散乱)を利用し、その運動学を解くことで到来方向をイメージングする装置です。詳しくは応用物理学会誌「応用物理」2019年11月号 「ガンマ線イメージングがつなぐ医療と宇宙~超小型コンプトンカメラの挑戦~」(片岡 淳) をご覧ください。ハイブリッド・コンプトンカメラはこれを発展したもので、数十keV(キロ電子ボルト)から数MeVまでのX線、ガンマ線を一台のカメラで同時に可視化することが可能です。詳細は以下のリリースをご覧ください。

X線ガンマ線の同時可視化を可能に

7. 研究助成

研究費名:戦略的創造研究推進事業(ERATO: Exploratory Research for Advanced Technology)
研究課題名:「ラインX線ガンマ線イメージング」 (R3年度~R8年度)
研究総括名(所属機関名):片岡淳(早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 教授)
機構報 第1526号:戦略的創造研究推進事業における令和3年度新規研究総括および研究領域の決定について (jst.go.jp)

8.参画メンバー

・早稲田大学理工学術院 先進理工学研究科
片岡 淳 教授

・大阪大学大学院医学系研究科
加藤 弘樹 准教授、西尾 禎治 教授

・大阪大学放射線科学基盤機構
豊嶋 厚史 特任教授

・東京工業大学 理学院
谷津 陽一 准教授

・東京工業大学 工学院
松永 三郎 教授

・金沢大学理工学域 数物科学類
有元 誠 助教

・金沢大学 医薬保健研究域 保健学系
川嶋 広貴 助教、小林 聡 教授

・岡山大学大学院 医歯薬学総合科研究科 薬学系
上田 真史 教授

・量研機構 量子生命・医学部門 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部
平山 亮一 主任研究員

・量研機構 量子生命・医学部門 量子医科学研究所 物理工学部
稲庭 拓 グループリーダー

・帝京大学大学院 医療技術学研究科
古徳 純一 教授

・理化学研究所 開拓研究本部
榎戸 輝揚 白眉研究リーダー

・理化学研究所 光量子工学研究センター
小林 知洋 専任研究員

観測史上最古の「隠れ銀河」を発見

著者: contributor
2021年9月24日 14:42

観測史上最古の「隠れ銀河」を131億年前の宇宙で発見

概要

札本 佳伸(ふだもと よしのぶ)国立天文台アルマプロジェクト特任研究員・早稲田大学理工学術院総合研究所次席研究員と稲見 華恵(いなみ はなえ)広島大学宇宙科学センター助教らの国際研究チームが、アルマ望遠鏡の大規模探査による観測データの中から、約130億年前の宇宙で塵に深く埋もれた銀河を複数発見しました。そのうちの一つは、塵に埋もれた銀河として見つかったものの中で最古の銀河です。今回発見されたような銀河は、すばる望遠鏡などを用いた観測で発見することは難しく、初期の宇宙にどれほど存在するのかこれまで全くわかっていませんでした。今回の発見は、宇宙の歴史の初期においても数多くの銀河が塵に深く隠され、いまだ発見されないままになっていることを示します。同時に、このような銀河は宇宙の初期における銀河の形成と進化をより統一的に理解する上で重要な発見です。

この観測成果は、Fudamoto et al. “Normal, Dust-Obscured Galaxies in the Epoch of Reionization”として、英国の科学誌「ネイチャー」オンライン先行公開版に2021年9月22日16:00(イギリス時間)に掲載され、9月23日に本誌に掲載されます。

上図:今回の観測結果の模式図。ハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線の観測画像(左)では、中心やや下に銀河が見えています。これは右下の想像図のような、これまで存在がよく知られていた若い銀河です。一方今回のアルマ望遠鏡による観測では、ハッブル宇宙望遠鏡では何も見えていない領域に、塵に深く埋もれた銀河(右上の想像図)を新たに発見しました。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope

(1)これまでの研究で分かっていたこと

過去20年以上にわたり、世界中の研究者がすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡など用いて遠方銀河の探査を行ってきました。光が有限の速さでやってくることから、遠方銀河を探査することで初期の宇宙にあった銀河の姿を直接捉えられます。そして、それらの大規模な探査の結果、ビッグバンから10億年以内の宇宙の初期に存在した銀河が数多く発見され、それらの時代において銀河がどのように形成・進化してきたのかについての研究が大きく進んできました。

このような宇宙の初期にある銀河の大規模な探査では、銀河に含まれる、太陽の数十倍程度の質量をもった大型の星から放射される明るい紫外光が観測されてきました。宇宙の膨張によって遠方天体からやってくる光の波長が伸びるため(赤方偏移)宇宙の初期にある銀河から放たれた紫外光は、地球で観測する際には可視光や近赤外線となります。

しかしながら、この紫外光には銀河に含まれる塵(ちり)によって大きく吸収・散乱されるという性質があります。この塵は銀河内部で星が世代交代することによって作り出されるため、銀河で過去にどのような星形成活動があったのかによってその量が変わってきます。内部で放たれた紫外光のほとんどが大量の塵に吸収・散乱されてしまうような、塵に埋もれた銀河の場合は、可視光や近赤外線を用いた観測では見つけることができません。初期の宇宙でこれまでに見つかっている塵に埋もれた銀河は、天の川銀河の1000倍以上といった激しいペースで星形成を行っている極めて稀な銀河に限られていました。そのため、130億年ほど前の宇宙に存在する若くて星形成活動が比較的低調な銀河の大多数は塵にはあまり隠されておらず、感度の良い可視光や近赤外線の観測を行うことで検出が可能だと考えられてきました。

(2)今回の研究で明らかになったこと

国立天文台アルマプロジェクト特任研究員として早稲田大学で研究活動を行う札本佳伸氏は、アルマ望遠鏡による大規模探査プロジェクト「REBELS」で観測された銀河を研究するうちに、偶然このような塵に埋もれた銀河を初期の宇宙で発見しました。REBELSの本来の目的は、130億年程度前の宇宙に存在したと考えられる近赤外線で非常に明るい40個の銀河を観測し、塵からの放射と炭素イオンの輝線の探査を行うことでした。広島大学宇宙科学センター助教の稲見華恵氏は、REBELSプロジェクトの共同代表研究者として本プロジェクトに参加しています。

札本氏がREBELS-12とREBELS-29という二つの銀河の観測データを調べていたところ、それぞれ本来の観測対象としていた銀河に加えて、そこから少し離れた場所からも塵からの放射と炭素イオンの輝線が非常に強く放たれていることを発見しました。そして驚くべきことに、これらの偶然見つかった新たな放射源の場所には、感度の良いハッブル宇宙望遠鏡を用いても何も見えませんでした。つまり、これらの放射は、ハッブル宇宙望遠鏡などが観測することのできる紫外光をほとんど放っていない、塵に埋もれた銀河からやってきたものであることを示しています。そのうちの一つ、REBELS-12の近傍に見つかった銀河は、塵に埋もれていた銀河の中では観測史上最古となる131億年前のものになります(注)。さらに驚いたことに、今回見つかった銀河は、これまで塵に埋もれた銀河に見られたような爆発的な星形成は行っておらず、130億年程度前の宇宙でこれまで多数見つかっていた銀河と同程度の星形成活動しかありませんでした。つまり、今回見つかった銀河は、塵に埋もれているということ以外はこれまで知られている典型的な銀河と変わりありません。これは、典型的な星形成活動をおこなう「普通」の銀河であっても宇宙のこれほど初期において塵に埋もれて見えなくなってしまう、ということを示し、多数の銀河が塵に埋もれて未だ発見されていないのではないか、と言うことを示唆しています。

注:アルマ望遠鏡の観測によると、REBELS-12の近傍に見つかった銀河の赤方偏移は7.35でした。これをもとに宇宙論パラメータ(H0=67.3km/s/Mpc, Ωm=0.315, Λ=0.685: Planck 2013 Results)で光が飛んできた時間を計算すると、131億年となります。詳しくは「遠い天体の距離について」もご覧ください。

(3)今後の展開・影響

これまでの観測からは全く見つけられなかったような種類の銀河が宇宙の初期に存在した、という発見は、いままで考えられてきた宇宙の初期における銀河の形成の理論に大きな影響を及ぼす発見です。このような銀河がどの程度存在し、どのように銀河全体の進化と形成に影響してきたのかをより統一的に理解するにはさらなる観測を待たなければなりません。アルマ望遠鏡による探査や、2021年内に打ち上げ予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による大規模な銀河の探査と、それらによる銀河の形成に関する統一的な理解の進歩が待たれます。

上図:アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡、欧州南天天文台VISTA望遠鏡で撮影した遠方銀河。アルマ望遠鏡で観測した電離炭素原子からの放射を緑、塵からの放射をオレンジ、VISTA望遠鏡・ハッブル宇宙望遠鏡で観測した近赤外線を青で表現しています。REBELS-12、REBELS-29は近赤外線と電離炭素原子・塵からの放射がいずれも検出されていますが、REBELS-12-2とREBELS-29-2では近赤外線が検出されていません。これらは今回のアルマ望遠鏡による観測で初めて見つかった銀河で、塵に深く埋もれていると考えられます。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.

研究者からのコメント

札本氏は「宇宙の初期において、塵に埋もれて発見されていないような隠れた普通の銀河が存在するという予想外の、そして偶然の発見に驚きました。今回見つかった銀河は、宇宙の非常に狭い領域から見つかったものであるため、氷山のほんの一角に過ぎないと考えています。このような隠れた銀河がどれだけ宇宙の初期に存在するのかの研究はこれからの大きな課題となるでしょう。」とコメントしています。

また、稲見氏は「今回の発見では、ひとつ謎を解決しようとしたところで新たな謎が見つかった、という研究の醍醐味を改めて感じました。塵を大量に生産するにはある程度歳をとった星が必要なのに、ビッグバン直後という宇宙の極初期で、何がきっかけでどのようにして短時間で塵が生み出されたのか、これから解き明かしていきます。私たちが知り得ていないことが、この広大な宇宙にはまだまだあることを教えてくれる成果です。」とコメントしています。

論文情報

雑誌名:Nature
論文名:Normal, Dust-Obscured Galaxies in the Epoch of Reionization
執筆者:Y. Fudamoto1,2,3, P. A. Oesch1,4, S. Schouws5, M. Stefanon5, R. Smit6, R. J. Bouwens5, R. A. A. Bowler7, R. Endsley8, V. Gonzalez9,10, H. Inami11, I. Labbe12, D. Stark8, M. Aravena13, L. Barrufet1, E. da Cunha14,15, P. Dayal16, A. Ferrara17, L. Graziani18,20, 27, J. Hodge5, A. Hutter16, Y. Li21,22, I. De Looze23,24, T. Nanayakkara12, A. Pallottini17, D. Riechers25, R. Schneider18,19,26,27, G. Ucci16, P. van der Werf5, C. White8
所属機関名:1Department of Astronomy, University of Geneva,2Research Institute for Science and Engineering, Waseda University, 3National Astronomical Observatory of Japan, 4Cosmic Dawn Center (DAWN), Niels Bohr Institute, University of Copenhagen, 5Leiden Observatory, Leiden University, 6Astrophysics Research Institute, Liverpool John Moores University, 7Sub-department of Astrophysics, The Denys Wilkinson Building, University of Oxford, 8Steward Observatory, University of Arizona, 9Departmento de Astronomia, Universidad de Chile, 10Centro de Astrofisica y Tecnologias Afines (CATA), 11Hiroshima Astrophysical Science Center, Hiroshima University , 12Centre for Astrophysics & Supercomputing, Swinburne University of Technology, 13Nucleo de Astronomia, Facultad de Ingenieria y Ciencias, Universidad Diego Portales, 14International Centre for Radio Astronomy Research, University of Western Australia, 15ARC Centre of Excellence for All Sky Astrophysics in 3 Dimensions (ASTRO 3D) , 16Kapteyn Astronomical Institute, University of Groningen, 17Scuola Normale Superiore, 18Dipartimento di Fisica, Sapienza, Universita di Roma, 19INAF/Osservatorio Astronomico di Roma, 20INAF/Osservatorio Astrofisico di Arcetri, 21Department of Astronomy & Astrophysics, The Pennsylvania State University, 22Institute for Gravitation and the Cosmos, The Pennsylvania State University, 23Sterrenkundig Observatorium, Ghent University, 24Dept. of Physics & Astronomy, University College London, 25Cornell University, 26Sapienza School for Advanced Studies, 27INFN, Roma, Italy
掲載日:オンライン先行版 2021年9月22日(水)16:00(イギリス時間)
本誌 2021年9月23日(木)(イギリス時間)
DOI:10.1038/s41586-021-03846-z

研究助成

国立天文台 ALMA Scientific Research Grant 2020-16B
日本学術振興会科学研究費補助金 ( JP19K23462 、 JP21H01129)
the Swiss National Science Foundation through the SNSF Professorship grant 190079
TOP grant TOP1.16.057
the Nederlandse Onderzoekschool voor Astronomie
STFC Ernest Rutherford Fellowship (ST/S004831/1 , ST/T003596/1)
European Research Council’s starting grant ERC StG-717001
the NWO’s VIDI grant 016.vidi.189.162
the European Commission’s and University of Groningen’s CO-FUND Rosalind Franklin program
the Amaldi Research Center funded by the MIUR program “Dipartimento di Eccellenza” CUP:B81I18001170001
the National Science Foundation MRI-1626251
FONDECYT grant 1211951
“CONICYT+PCI+INSTITUTO MAX PLANCK DE ASTRONOMIA MPG190030″
“CONICYT+PCI+REDES 190194” 、ARC Centre of Excellence for All Sky Astrophysics in 3 Dimensions (ASTRO 3D) CE170100013 (EdC); Australian Research Council Laureate Fellowship FL180100060
the ERC Advanced Grant INTERSTELLAR H2020/740120
the Carl Friedrich von Siemens-Forschungspreis der Alexander von Humboldt-Stiftung Research Award
the VIDI research program 639.042.611
JWST/NIRCam contract to the University of Arizona, NAS5-02015
ERC starting grant 851622
the National Science Foundation under grant numbers AST-1614213, AST-1910107
the Alexander von Humboldt Foundation through a Humboldt Research Fellowship for Experienced Researchers

【最終講義】梅津光生名誉教授(10/2・大隈講堂およびZoom)

著者: staff
2021年9月9日 13:15

梅津光生名誉教授の最終講義を以下のとおり、開催します。

ご挨拶

2021年3月に退職し、半年後は、COVID-19も落ち着きを見せていることだろうと思い、最終講義のために10月2日(土曜日)、大隈講堂を予約しました。

しかし、先行きが見通せませんので、Zoomによる聴講で行う準備をしており、大学の方針に従い、280名は会場に来ていただくことを可能とするという運営体制で臨みます。

登録に関しては、別Googleフォームを用意いたしましたので、そちらをご覧ください。

開催日時

2021年10月2日(土)
第1部10:30~12:00 (9:30受付開始)
第2部14:00~16:00(13:30受付開始)

題目および対象

第1部「毎日を楽しく暮らすコツ:問題を見つけ解決することの楽しさ」

  • 講義内容紹介:
    私は幸いにも、今までのびのびと楽しく暮らしてまいりました。子供のころから、興味を持ったことに対して自由に接する環境を作ってもらい、私を子ども扱いせずに対等に話し合う訓練ができたことに対し、両親に感謝しています。講演では、趣味や海外生活の経験などから、日々楽しく暮らすコツについて紹介したいと思います。
  • 対象:
    梅津研及び土屋研卒業生とその家族が中心ですが、早大関係者、学会、同窓会関係、それらのご友人の方々も聴講歓迎

第2部「早稲田大学で達成できたことと、できなかったこと」

  • 講義内容紹介:
    「大学教員には免許がないので工夫がいる。」という恩師土屋喜一教授のアドバイスで、いろいろチャレンジしてきました。その中で、先端生命医科学センターTWInsの設立や、日本初の学際専攻(生命理工)と共同大学院(共同先端生命)をなぜ創設することができたのか。また、同様のスキームで早稲田の医療系を充実することができるのか。やり残したことが何かに関して、包括的にお話ししたいと思います。
  • 対象:
    早大教職員、早大卒業生が中心ですが、学会関係、同窓会、それらのご友人の方々も聴講歓迎

開催方法

対面での聴講は、各回280名を上限として受け付けます(ワクチン2回接種者を優先)。そのほか、Zoomによるオンライン聴講も可能です。

会場

講義会場:早稲田大学大隈講堂 大講堂
サテライト会場:早稲田大学大隈講堂 小講堂(オンライン中継)
リモート:ZOOM によるオンライン配信

聴講申込方法

対面・オンラインいずれも聴講希望の方は、申込フォームよりご登録ください。

ご登録いただいた方には、開催日が近づきましたら、オンライン講義への接続方法をご案内します。

問い合わせ先

事務局(岩﨑研究室 [email protected]

レアアース リサイクル技術を共同開発

著者: contributor
2021年9月3日 16:41

日産と早稲田大学、電動車用のモーター磁石からレアアース化合物を高純度で効率良く回収するリサイクル技術を共同開発

カーボンニュートラル社会の実現に向けて2020年代中頃の実用化を目指した実証実験を開始

早稲田大学(所在:東京都新宿区、総長:田中愛治)と日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:内田 誠)は、電動車用のモーター磁石からレアアース化合物を高純度で効率良く回収するリサイクル技術を共同開発し、2020年代中頃の実用化を目指した実証実験を開始したと発表しました。

⇒プレスリリース(日産自動車株式会社)

現在、自動車業界では、グローバルな気候変動に対応し、カーボンニュートラル社会を実現するため、車両の電動化が積極的に推進されています。これら電動車のモーターの多くに使用されるネオジム磁石には、ネオジム、ジスプロシウムなどのレアアースと呼ばれる希少元素が使用されています。 レアアースは資源の偏在や需給バランスによる価格変動が懸念される上、採掘・製錬時に生態系への負荷も伴うことから、その使用量削減が課題となっています。

日産は限りある貴重な資源を有効に使用するため、2010年以降、設計段階でモーター用磁石のヘビーレアアース(重希土類)の使用量削減に取り組んでいます。また、レアアースの再生利用にも取り組み、出荷基準を満たさず、クルマに搭載しなかったモーターから磁石を取り出して分解し、磁石サプライヤーに還元してきました。

しかし、現在、モーターの磁石からレアアースを取り出す工程では、手作業による磁石の分解、取り出しが必要であるため、今後さらなるリサイクルを推進するには、プロセスの簡便化とリサイクルコストの低減が課題となっていました。

そこで2017年より、日産は非鉄金属のリサイクルと製錬に関する研究で高い実績のある早稲田大学創造理工学部の山口勉功研究室*2と共同で、同校の大型炉設備*3を使用し、電動車用のモーターの磁石からレアアース化合物を回収する研究を開始しました。そして、2019年度には、高温で融体を取り扱う「乾式製錬法」により、モーターを解体することなく、高純度なレアアース化合物を効率よく回収する技術を確立しました。

両者が開発したリサイクル技術のプロセスは、以下の通りです。

作成:日産自動車株式会社

  1. 加熱溶融を促進する銑鉄(せんてつ)、鉄の融点を下げる加炭材を加え、1,400℃以上に加熱した炉でモーターを溶融
  2. 酸化鉄の添加により溶融液中のレアアースを酸化
  3. レアアース酸化物を溶かすため、ホウ酸塩系のフラックス*4を少量添加
  4. 「レアアースを含んだ酸化物層」と、より密度が大きい「レアアースを含まない鉄-炭素合金層」を分離
  5. 上層に分離された酸化物層から、レアアース化合物を回収

本リサイクル技術では、レアアース酸化物を少量、低温で溶融することができ、高い割合で回収できる安価なホウ酸塩系のフラックスを採用しています。実験では、この方法によりモーターに使用されたレアアースの98%を回収できることが確認されています。また、磁力を取り除く作業や、磁石を分解して取り出す作業が不要となるため、プロセスを簡略化することができ、従来の方法と比べ作業時間を約50%削減することができます。

今後は、実用化を目指した実験を続けると同時に、使用済み電動車に搭載されたモーターを回収し、リサイクルするスキームの構築を進めていきます。

日産は、ニッサン・グリーンプログラム2022において、「気候変動」「資源依存」「大気品質」「水資源」の4つの重点課題に取り組んでいます。今後もカーボンニュートラルや新規採掘資源依存ゼロを目指し、電動車両の普及と同時に、レアアースの使用量削減とリサイクルを推進していきます。そして、持続可能な社会の発展を目指す一員として、「よりクリーンな社会」、「より安全な社会」、「よりインクルーシブな社会」の実現を目指していきます。

*1 2020年度に生産されたノートは、2010年度生産されたリーフと比較して85%のヘビーレアアースの削減を実現。

*山口勉功教授 (やまぐちかつのり) (創造理工学部 環境資源工学科)は、高温プロセスを用いた新しい金属製錬、金属スクラップの精製、廃棄物処理など社会と産業に直結した研究を行っている。レアメタルとベースメタルがその対象となる。山口研究室では、今回の実証結果を踏まえ、今後は日産自動車と継続して連携・研究を行い、EVやHEVなどの電動車モーターからのレアアースをリサイクルするプロセスを広く普及できるよう研究・開発を進めていく予定。

*3 早稲田大学各務記念材料技術研究所:https://www.waseda.jp/fsci/zaiken/

*4 フラックス=融解温度を下げる働きをもつ物質。

燃料電池ごみ収集車の普及を目指して

著者: contributor
2021年8月19日 16:08

【大学研究者による事業提案制度採択事業】
燃料電池ごみ収集車の試験運用を港区で開始

東京都、港区及び学校法人早稲田大学(研究代表者:理工学術院教授・紙屋雄史、共同提案者:客員主任研究員(研究院客員准教授)・井原雄人)は、水素社会の実現を目指すとともに、温室効果ガス削減に寄与するため、都市の特性に適した燃料電池ごみ収集車(水素燃料)の開発・試験運用に向けて取り組んできました。

このたび、令和3年8月16日から港区内において燃料電池ごみ収集車の試験運用を開始しますのでお知らせします。

(1)目的

本事業は、CO2削減、静音性の向上、ごみ収集時の作業環境改善等に貢献する燃料電池ごみ収集車の開発・試験運用に向けた取組を行い、将来的な普及を目指すものです。
本試験運用では、燃料電池ごみ収集車が港区内のごみ収集ルートにおいて、実際に走行・ごみ収集を行い、エネルギー消費量の評価や収集職員へのヒアリング等を実施することで、導入効果の検証等を行います。

試験運用車両:車両には、水素のイメージを想起させる曲線をベースに東京都、港区、学校法人早稲田大学のロゴマーク、水素キャラクターのスイソン等のラッピングを施しました。

(2)今回試験運用する車両について【1台】

1.車両サイズ 全長:7,085㎜、全幅:2,190㎜、全高:2,560㎜
2.航続距離 70~80 km
3.ごみ積載量 1,750 kg
4.ごみ積載容積 7.8 ㎥
5.水素搭載重量 4.2 kg
6.水素充填時間 3~5分

※2~6は開発時の想定値

(3)試験運用実施期間等

令和3年8月16日から令和4年2月末まで

港区内の実際のごみ収集ルートで使用します。
月曜日・木曜日: ① 六本木2・5丁目  ② 高輪1・3丁目  ③ 高輪2丁目
火曜日・金曜日: ① 芝浦2丁目、海岸2丁目  ② 芝大門1・2丁目、芝2丁目 ③ 浜松町1丁目、芝1・4丁目 ④ 三田2丁目
水曜日・土曜日: ① 南麻布3・4丁目  ②三田2・3丁目  ③ 三田1丁目 ④ 芝3丁目、三田3・4丁目

(4)今後の予定

  • 本事業のPR動画を作成し、HP・SNS等で発信
  • 本事業を活用した環境学習の実施
燃料電池ごみ収集車運用事業について(令和元年度から令和3年度まで)

本事業は、東京都の「大学研究者による事業提案制度」に基づき、学校法人早稲田大学から燃料電池ごみ収集車の開発・運用に関する事業提案を受け、令和元年度から、東京都及び早稲田大学で事業を開始しました。令和2年度には、東京都・早稲田大学及び港区との間で協定を締結し、三者が連携して事業を行っています。
走行距離が長く、動力としても多くのエネルギーを必要とする業務用車両における水素利用は、運輸部門の脱炭素化や水素利用の拡大のために非常に重要となります。また、燃料電池自動車は、走行時にCO2を一切排出せず、走行及び作業時も静かなことから、ごみ収集時の作業環境や生活環境の向上にも貢献します。低速かつ頻繁な発停車を繰り返すごみ収集ルートにおいては、特に導入効果が期待できます。
本事業では、燃料電池ごみ収集車が将来的に普及することを目指し、都内における運用形態に適した燃料電池ごみ収集車の開発及び試験運用を実施します。

※大学研究者による事業提案制度:都内大学研究者から、研究成果・研究課題等を踏まえた事業提案を募集し、研究者・大学と連携・協働して事業を創出する制度。

物理の難問 量子スピン液体 を解明

著者: contributor
2021年8月17日 13:16

機械学習手法により物理の難問「量子スピン液体」を解明

スーパーコンピュータ「富岳」も用いた最先端の計算により実現

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター計算物質科学研究チームの野村悠祐研究員と豊田理化学研究所/早稲田大学理工学術院総合研究所今田正俊フェロー/上級研究員・研究院教授の共同研究チームは、機械学習を用いた世界で類を見ない高精度手法により、幾何学的フラストレーションのある量子スピン系の解析を行いました。そして、スピンの向きが絶対零度でも整列せずに、量子力学的に揺らぐ「量子スピン液体」相を発見・確証し、存在領域を特定しました。

本研究成果は、量子スピン液体中でスピンが分裂して生じる「スピノン」の性質を解き明かし、これを量子計算への応用につなげるとともに、現実物質で量子スピン液体を実現するための有用な指針を与えるものと期待できます。

人工ニューラルネットワークの一つである制限ボルツマンマシンの構造の概念図

今回、共同研究チームは、機械学習分野で用いられる人工ニューラルネットワークの一種である制限ボルツマンマシンと物理分野で用いられる強力な関数を組み合わせて、スピン間の高度な量子もつれを学習させる手法を構築しました。スーパーコンピュータ「富岳」などでこの手法を用いた大規模計算を行い、2次元正方格子上のフラストレーションのある量子スピン模型を世界最高レベルの精度で解析した結果、フラストレーションが強くなる領域において、量子スピン液体相の存在の確証を得ました。さらに、実現した量子スピン液体相の励起構造も調べ、通常のスピンの励起が分裂し、分裂した粒子が独立した粒子のように振る舞う分数化という現象を捉えました。

本研究は、オンライン科学雑誌『PhysicalReviewX』(8月12日付)に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

論文情報

<タイトル>Dirac-type nodal spin liquid revealed by refined quantum many-body solver using neural-network wave function, correlation ratio, and level spectroscopy

<著者名>Yusuke Nomura and Masatoshi Imada

<雑誌>Physical Review X

<DOI>10.1103/PhysRevX.11.031034

研究支援

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業基盤研究(S)「強相関物質設計と機能開拓―非平衡系・非周期系への挑戦―(研究代表者:今田正俊)」、同若手研究(B)「強相関物質における格子自由度の役割解明とフォノンがもたらす機能物性の探索(研究代表者:野村悠祐)」、同基盤研究(B)「高次元データの次元圧縮によって実現する磁性と超伝導の第一原理計算(研究代表者:大槻純也)」、文部科学省「富岳」成果創出加速プログラム「量子物質の創発と機能のための基礎科学―「富岳」と最先端実験の密連携による革新的強相関電子科学(研究代表者:今田正俊)(課題番号:hp200132, hp210163)」、ポスト「京」重点課題(7)「次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成」サブ課題C「超伝導・新機能デバイス材料(研究代表者:今田正俊)(課題番号:hp170263, hp180170, hp190145)」による支援を受けて行われました。

また、本研究には東京大学物性研究所のスーパーコンピュータおよび理研のスーパーコンピュータ「京」、「富岳」が使用されました。

新しいレイアウト自動生成技術を提案

著者: contributor
2021年8月6日 12:45

最適化による制約を満たしたレイアウトの生成手法を提案

マルチメディア分野のトップカンファレンス「ACM Multimedia」にて共著論文採択 

株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証一部上場:証券コード4751)は、早稲田大学(東京都新宿区、総長:田中愛治)の菊池康太郎(博士後期課程在籍)氏、コンテンツ作成のためのコンピュータグラフィックス研究で多数の実績を持つエドガー・シモセラ准教授、ならびに人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」に所属する研究員の大谷まゆ・山口光太による共著論文が、マルチメディア分野の国際会議「ACM Multimedia 2021」※1 に採択されたことをお知らせいたします。

「ACM Multimedia」は世界中の研究者により開催されている学術会議で、マルチメディア分野で権威あるトップカンファレンスの一つです。このたび採択された研究は、2021年10月に開催される「ACM Multimedia 2021」で発表されます。

研究背景

「AI Lab」ではマーケティング全般に関わる幅広いAI技術を研究・開発しており、大学・学術機関との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取組んでいます。

近年、深層学習を活用してグラフィックデザインを自動生成する技術が注目を集めており、様々な領域での応用が期待されています。なかでも「レイアウト自動生成技術」は、クリエティブ制作における工数削減の点で重要です。

一般的にレイアウト作成では、要素同士の重なりの禁止や要素配置の左揃えなど、様々なデザイン上の制約が課せられることがあります。これまでの研究では、このような制約に基づいたレイアウト生成を学習するために、制約を事前に決めて生成モデルを学習する手法が用いられていました。しかし、従来の手法では新しい種類の制約が生じた場合に生成モデルを学習し直す必要があるため、制約に柔軟に対応することが難しいという課題がありました。

このような背景のもと、本研究では、ユーザーから生じる様々なデザイン要求に対応するため、モデルが学習した尤もらしいレイアウトの中から、さらに新しい制約を満たすものを効率的に探索する方法を提案しました。

研究論文の概要

このたび採択された論文「Constrained Graphic Layout Generation via Latent Optimization」※2 では、グラフィックデザインを支援するための新たなレイアウト自動生成手法を提案しています。本提案手法では、最初に自動生成したレイアウトを、制約を満たすように更新することで、望んだレイアウトを生成することを実現しました。これにより、デザインに関する新たな制約が発生した際にも、生成モデルを一から学習し直す必要なく、効率的に自動生成を行うことが可能となります。

本研究では、最初に制約を仮定せずにレイアウトを自動生成するモデルを学習します。ここでレイアウトがサンプリングされる空間は「レイアウトの潜在空間」と呼ばれ、この空間中の1点はそれぞれ特定のレイアウトに対応づけられます。そしてある点を起点に、指定された制約を満たす領域に近い潜在空間上を探索していくことで、ユーザの指定した制約に沿うようなレイアウトに自動的に到達します。

レイアウトに対する制約の例としては、「重なりのないレイアウト」「画像やテキストの並び順」「大小関係を指定したレイアウト」などがあり、提案したモデルではそれらの制約に沿ったレイアウトを提示します。このアプローチにより、単一の生成モデルでさまざまな制約付きレイアウト生成に対応することが可能となります。

▼レイアウトの制約を満たす領域に近い潜在空間上を探索していく手法のイメージ

今後について

本研究成果を活用することで、「並びのきれいなデザイン」などを意図したレイアウトの自動生成が可能になるだけでなく、デザインの制約に広告効果の指標を取り入れることで、より「効果の高いデザイン」の自動生成への応用が期待できます。「AI Lab」ではこの技術を活用し、より効率的で高品質な広告作成を目指し、研究・開発に努めてまいります。

※1  ACM Multimedia

※2  Constrained Graphic Layout Generation via Latent Optimization

論文詳細

早稲田大学 PoC Fund Program 2021年度 研究課題 5件の採択を決定

著者: contributor
2021年8月2日 12:24

早稲田大学アントレプレナーシップセンターでは本学の研究成果・技術シーズをもとにしたベンチャー企業の設立・事業化による社会実装をめざして、2020年よりPoC(概念実証)プログラム「早稲田大学 PoC Fund Program」を開始し、研究者の技術シーズをもとにした大学発ベンチャーの創出を支援しています。

本プログラムは早稲田大学提携ベンチャーキャピタルであるウエルインベストメント株式会社Beyond Next Ventures株式会社などの支援を得ながら、大学発ベンチャーの創出を目的とする支援プログラムと(タイプA 最大200万円の助成、タイプB 最大1000万円の助成)、2020年9月に本学が採択された科学技術振興機構(以下、JST)研究成果展開事業 社会還元加速プログラム(以下、SCORE)大学推進型を財源としたプログラム(タイプS 500万円(増額可)の二本立てのプログラムとなっています。

2021年度 研究課題5件の採択がついに決定

2年めとなる2021年度の学内公募は5月に締切られ、厳正な審査(1次:書面審査、2次:面接審査)を経て、研究課題5件(いずれもタイプS)の採択を決定いたしました。

採択された5件の研究課題は、ビジネスモデルの仮説立案検証や市場調査等のための研究開発費が支給されるほか、本プログラムが指定するアクセラレーターによる定期的な助言・支援(ハンズオン的支援)、各種トレーニングプログラム等の受講やピッチコンテストなどを通じて、ビジネスモデルのさらなる実現化・高度化を目指してまいります。

2020年度採択の研究課題からは既に起業が実現

2020年度タイプS研究課題の研究代表者(Demo Day終了後)

2020年度採択の研究課題5件は2021年3月の成果発表会Demo Dayをもって本プログラムによる研究活動を終えました。その成果として、三宅丈雄教授(情報生産システム研究科)による起業※が実現しています。 (※「ハインツテック株式会社」2021年7月起業)

アントレプレナーシップセンターは、早稲田大学 PoC Fund Program を通じて、研究成果をもとにしたベンチャー起業創出を加速させ、早稲田オープンイノベーション・エコシステムの実現をさらに推進していきます。

関連リンク

JST  研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム<社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型

時間に伴う細菌相互作用の変化を推定

著者: contributor
2021年7月15日 17:50

時間経過に伴う細菌相互作用の変化を推定する手法を開発

発表のポイント

  • これまでの手法は時間の経過に伴う細菌相互作用の変化を推定できなかった。
  • 時間の経過に伴う細菌相互作用の変化を推定する手法Umibatoを開発した。
  • 自然環境の生態系の解明や、近年急速に解明が進んでいるヒト常在菌叢の長期的な変化の追跡において活用が期待される。

早稲田大学大学院先進理工学研究科後期博士課程3年の細田 至温(ほそだ しおん)氏と、同大理工学術院の浜田 道昭(はまだ みちあき)教授らの研究グループは、時間の経過に伴う細菌相互作用の変化を推定することができる手法Umibato (unsupervised learning-based microbial interaction inference method using Bayesian estimation)を開発しました。

これまで細菌相互作用を推定するために用いられていた手法は、細菌相互作用が時間に伴い変化しないことを前提としていたため、時間の経過に伴い細菌相互作用が変化していることを推定することができませんでした。今回開発した手法により、細菌叢の時系列データ解析においてこれまで見過ごされてきた細菌の関係性の変化を捉えることが可能になります。将来的には、自然環境の生態系の解明や、近年急速に解明が進んでいるヒト常在菌叢の長期的な変化の追跡において活用されることが期待されます。

本研究成果は、2021年7月末に開催される計算生物学のトップの国際会議であるISMB/ECCB2021の口頭発表に受理されました。論文はISMB/ECCB2021の予稿として2021年7月12日(月)(現地時間)に『Bioinformatics』に掲載されました。

論文名:Umibato: estimation of time-varying microbial interaction using continuous-time regression hidden Markov model

(1)これまでの研究で分かっていたこと

細菌相互作用は、栄養のやりとりなどにより細菌同士が影響し合う現象です。細菌相互作用は代謝ネットワーク※1を構成する要因として宿主の健康に影響することが示されており、重要な研究対象となっています。これまでの研究では、細菌相互作用を推定するために、一般化ロトカ・ヴォルテラ方程式※2という微分方程式をベースとしたモデルが広く使われてきました。しかしこの方程式は細菌相互作用が時間に伴い変化しないことを前提としていました。そのため、何らかの環境条件が変化しそれに伴い細菌相互作用が変化するような場合に適用ができませんでした(図1)。現に、異なる栄養条件下では細菌相互作用が異なるということがすでに報告されており、この欠点は致命的でした。

図1:時間変化する相互作用と従来手法による推定結果の概念図。赤い矢印は細菌が増加するような寄与、青い矢印は細菌が減少するような寄与を示す。真の細菌相互作用が時間に伴い変化しているにもかかわらず、従来手法では時間変化を考慮していないためにそれらを推定できない。

(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

一般化ロトカ・ヴォルテラ方程式に細菌相互作用の時間変化を導入し、それらを統計モデルにより推定することを考えました。この手法により時間変化する細菌相互作用を推定できるようになりました。この手法の妥当性を人工データによる実験により検証しました。結果として、細菌相互作用が時間変化しない場合では既存手法の性能と提案手法の性能は近いものであったのに対し、時間変化する場合では提案手法の性能が既存手法より高いことが確認できました(図2)。

図2:人工データにおける性能評価。横軸はデータセットを示し、縦軸は真のパラメタと推定されたパラメタの相関係数を示す。バーが高いほど性能が良いことを示す。左の結果は時間変化を考慮していないデータセットのもので、中央と右の結果は時間変化を考慮したデータセットのものである。それぞれの6つの棒グラフのうち左端2つは提案手法であるUmibatoの結果で、時間変化を考慮したデータセットで既存手法より性能が良いことが分かる。

また、マウスの腸内細菌叢データに適用したところ、マウスが低繊維食を摂っている間に主に現れる相互作用が観測され、食事と細菌相互作用の関連性が示唆されました(図3)。

図3:推定された相互作用の変遷。7つのグラフはそれぞれ異なるマウスの腸内細菌叢データに対応する結果で、Subject4とSubject7はコントロール、すなわち低繊維食を摂っていないマウスのデータである。横軸は時間を示し、縦軸は相互作用の種類と低繊維食を示す。低繊維食と5種目の相互作用(State5)の関連が見られる。

(3)そのために新しく開発した手法

隠れマルコフモデル※3を拡張した連続時間回帰隠れマルコフモデルを提案しました。また、このモデルのパラメタ推定アルゴリズムを導出しました。また、このモデルとガウス過程回帰※4による細菌成長率推定を用いて、時間変化する相互作用を考慮した一般化ロトカ・ヴォルテラ方程式に基づく細菌相互作用推定手法Umibatoを開発しました。

(4)研究の波及効果や社会的影響

複雑な挙動を見せることの多い時系列細菌叢データの解析においてこれまで見過ごされてきた細菌の関係性の変化を捉えることが可能になります。自然環境の生態系の解明や、近年急速に解明が進んでいるヒト常在菌叢の長期的な変化の追跡において大いに活用されることが期待されます。

(5)今後の課題

主な課題として、二つ挙げられます。一つは、更なる実データへの適用です。公開されているデータの制限から、今回はマウス腸内細菌叢データに対する適用に留まりましたが、Umibatoはあらゆる環境の時系列定量細菌叢データで適用可能な手法です。もう一つは、実験による推定された相互作用の検証です。本研究で推定された関係性を実験的に検証することで、推定された相互作用の解明に繋がると考えられます。

(6)研究者のコメント

本研究では、長い歴史を持ちこれまで広く使われてきた方程式を、現代的なデータに対しより合理的に扱えるよう昇華させることができたと感じています。バイオインフォマティクスにおいて、興味深いアルゴリズムは生物学的意義での実用性に欠けることも多いですが、本手法ではそれらを両立できたと思います。本手法が細菌叢研究の一助となり、自然環境やヒト常在菌叢の解明を促進できれば幸いです。

(7)用語解説

※1 代謝ネットワーク
ここでは微生物同士の代謝物のやりとりで構成されるネットワーク。たとえば、ヒト腸内細菌叢ではネットワークにより最終的に産生された代謝物がヒトに影響を与える。

※2 一般化ロトカ・ヴォルテラ方程式
捕食者と被捕食者の個体数を表現する微分方程式であるロトカ・ヴォルテラ方程式を一般化した微分方程式。捕食と被捕食のような関係性だけでなく、相利共生関係(AとBが互いに増加に寄与する関係)や寄生関係(AがBの増加に寄与、BはAの減少に寄与する関係)も表現できるため細菌叢解析でよく用いられる。

※3 隠れマルコフモデル
音声信号処理や配列解析でよく用いられる統計モデル。離散的な時系列のデータから隠れた情報の変遷を推定することができる。本研究で提案した連続時間回帰隠れマルコフモデルは隠れマルコフモデルの一種で、実時間のような連続的な時系列を扱えるよう拡張されたモデルである。

※4 ガウス過程回帰
ガウス過程という確率過程をベースとした回帰手法。柔軟な回帰を行うことができる。

(8)論文情報

雑誌名:Bioinformatics
論文名:Umibato: estimation of time-varying microbial interaction using continuous-time regression hidden Markov model
執筆者名(所属機関名):Shion Hosoda(早稲田大学、産総研・早大 生体システムビッグデータ解析 オープンイノベーションラボラトリ)、 Tsukasa Fukunaga(早稲田大学、研究当時:東京大学)、Michiaki Hamada(早稲田大学、産総研・早大 生体システムビッグデータ解析 オープンイノベーションラボラトリ)
掲載日(現地時間):2021年7月12日(月)
掲載URL:https://doi.org/10.1093/bioinformatics/btab287
DOI:10.1093/bioinformatics/btab287

(9)研究助成

研究費名:科研費 特別研究員奨励費
研究課題名:確率モデルを用いたヒト腸内細菌叢構造の解明と応用
研究代表者名(所属機関名):細田 至温(早稲田大学)

研究費名:科研費 新学術領域研究(研究領域提案型)
研究課題名:逆イジングモデル法に基づく機能未知な微生物遺伝子の機能推定
研究代表者名(所属機関名):福永 津嵩(東京大学 当時)

研究費名:科研費 基盤研究(A)
研究課題名:リピート要素のde novo発見に基づく長鎖ノンコーディングRNAの機能の解明
研究代表者名(所属機関名):浜田 道昭(早稲田大学)

【学部受験生の皆様へ】【特設サイト】早稲田の理工を体験しよう!(7/21公開)

著者: staff
2021年7月21日 08:47

当サイトでは、各学部/学科の特色や概要、模擬講義、研究室紹介等を映像コンテンツなどでご紹介します。各学部/学科の公式ウェブサイトと併せてご覧ください。また、「VRキャンパスツアー」では、理工学術院のある西早稲田キャンパスを、バーチャル・リアリティ映像でご紹介します。

オンライン(リアルタイム)型企画参加希望者の皆様へ

参加には事前予約が必要です。予約管理システム「早稲田大学オープンキャンパス2021」よりお申込みください。(8/2 16:00~ 予約受付開始)

タイムテーブル(3理工学部 企画一覧) ※参照用
・機械科学・航空宇宙学科および電気・情報生命工学科は、オンデマンド・コンテンツの配信のみとなります。
・各企画の内容や定員等の詳細につきましては、予約管理システム上でご確認ください。

オンライン企画参加を申し込む方は、以下についてご注意ください。

・企画内容の無断録画・録音を禁止します。SNS等へのアップロードも固くお断りします。
・相談時間には限りがあります。円滑な運営にご協力ください。1対1の個別面談では、約束の時間から5分経過してもZoomの入室がない場合は、相談を終了します。
・相談前にできる限り学部・学科のHPをご覧ください。本サイトからもご確認いただけます。

 

学部・学科の特色や概要

※学部名・学科名をクリック/タップすると、公式ウェブサイトをご覧いただけます。

基幹理工学部

数学科 応用数理学科 機械科学・航空宇宙学科 電子物理システム学科 情報理工学科 情報通信学科 表現工学科

↓↓動画はこちらから↓↓

 

創造理工学部

建築学科 総合機械工学科 経営システム工学科 社会環境工学科 環境資源工学科 社会文化領域

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先進理工学部

物理学科 応用物理学科 化学・生命化学科 応用化学科 生命医科学科 電気・情報生命工学科

↓↓動画はこちらから↓↓

 生命医科学科 オンラインオープンキャンパスはこちらから

 

大学体験WEBサイトはこちらから
理工学術院英語教育センターWEBサイトはこちらから

 

VRキャンパスツアーで「早稲田理工」を体感しよう!

西早稲田キャンパスをVR映像でご紹介します。実験室や工房、図書館、カフェテリアなど、様々な施設の内部を360度で観ることができます。またキャンパスツアーガイド学生によるナレーションと、各施設のフォトギャラリー、動画もご覧いただけます。早稲田理工の雰囲気を、Web上で体感してみてください!

日本語版 英語版  VR Campus Tour (English version)

 

パンフレット・動画

理工学術院パンフレット(2021年5月発行) Brochure – Faculty of Science and Engineering

日本語パートと英語パートが両側からご覧になれます。 You can see the Japanese pages and English pages from both sides.

理工学術院紹介動画(日本語版)

 

理工学術院紹介動画(英語版) Movie – Faculty of Science and Engineering (English version)

 

受験生Q&A

基幹理工・創造理工・先進理工の各学部によくお寄せいただくご質問について、回答をQ&Aの形で公開します。

Q.基幹理工学部の学系制度はどのようなものですか。

A.1年次は全員が共通カリキュラムを勉強することで、十分な基礎学力や学科を越えた人脈なども得ることができます。また、入学の前と実際に大学の学びに触れた後で、志望する学科が変わる学生も少なくありませんが、本制度により2年次の学科選択時に本当に学びたい学科に進級することが可能となります。更に詳しい説明は以下のページをご参照ください。

https://www.fse.sci.waseda.ac.jp/exam/

 

Q.空間表現の試験内容はどのようなものですか。

A.「空間表現」試験に関するご案内を建築学科のWebサイトにて公開しております。以下のページをご参照ください。

http://www.arch.waseda.ac.jp/wp/dear/#sec05

 

Q.総合型選抜入試はどのようなものがありますか。

A.理工学術院において実施している総合型選抜入試は、以下の3入試が該当いたします。

◇早稲田建築AO入試(創成入試)

創造理工学部建築学科のみ実施。9月の出願となり、書類選考、筆記試験、面接試験で合否が決まります。

◇特別選抜入学試験

先進理工学部(一部学科)のみ実施。出願にあたり、数学オリンピックや化学グランプリ等での実績が必要となります。書類選考と面接試験を実施いたします。

※上記2つの入試については、以下のページで出願時期や試験に関する詳細をご確認ください。

https://www.waseda.jp/fsci/admissions_us/

 

◇英語学位プログラム特別入試(4月入学)

英語で学び学位を取得したい方向けのコース。書類選考と筆記試験、面接試験があります。詳細は以下URLを参照してください。

https://www.waseda.jp/fsci/about/education/english-based/#anc_21

※英語学位プログラム特別入試について、2022年度入試(2022年4月入学者募集)を最後とし、2023年度入試(2023年4月入学者募集)以降は募集を停止します。詳細はこちらをご確認ください。

Q.サークルはどのようなものがありますか。学業との両立はむずかしいですか。

A.早稲田大学には約500の公認サークルがあり、あらゆる分野での活動をしています。理工の多くの学生のみなさんも学業とサークルを両立し、学生生活を楽しんでいますので、ご安心ください。サークルの中には、理工の学生が中心のサークルも多数あります。

https://www.waseda.jp/inst/weekly/circleguide/

 

Q.キャンパスを見学したい場合、どうしたらいいですか。

A.キャンパス見学については、現在受付しておりませんが「VRキャンパスツアー」のコンテンツを、本特設ページに掲載しております。学生ガイドによる解説もありますので是非ご覧ください。

 

パンフレットご希望の方へ

理工学術院パンフレットを無料で送付いたします。ご希望の方は申請フォームからお申込みください。

 

新たな高精度ノイズ除去法の開発

著者: contributor
2021年7月12日 12:41

スパースモデリングを用いた高精度ノイズ除去法の開発に成功

発表のポイント

  • 数理最適化手法を用い、感圧塗料法の後処理法として高精度のノイズ除去法を開発した。
  • 微小な圧力変化の計測において、従来の感圧塗料計測法に比べ、半導体圧力センサーでの計測値とのずれを2%以内に抑える精度の高い手法を構築することができた。
  • 新たな手法は、圧力変化が小さく計測が困難であった鉄道車両や家電製品などに対し適用可能な手法となり得る。

科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業および東北大学流体科学研究所一般公募共同研究において、早稲田大学理工学術院松田佑(まつだゆう)准教授、井上智輝(いのうえともき)(同大学院創造理工学研究科修士課程1年)、東北大学大学院工学研究科の野々村拓(ののむらたく)准教授、東北大学流体科学研究所永井大樹(ながいひろき)教授、愛知工業大学の江上泰広(えがみやすひろ)教授らの研究グループは、周囲の圧力に応じて発光強度が変化する感圧塗料(Pressure-Sensitive Paint; PSP)*1による機器表面の圧力分布計測(PSP計測法*2)の後処理法として、圧力分布の再構成にスパースモデリング*3を用いたノイズ除去法を開発しました。航空機や鉄道車両の安全性や燃料消費率の改善を行う上で、機器表面での気体の流れ構造(圧力分布)を詳細に把握することは非常に重要です。高速で圧力変化が大きなものにしか適用できなかった測定法が、少ない変数で効率的にデータをモデリングする新たな手法により、低速で圧力変化の小さなものにも適用可能となり得ます。これにより、機器の低騒音化やエネルギー効率の向上等、人間をとりまく環境における重要な課題への取り組みに、今後大きく貢献することが期待されます。

新たな手法の概要

本研究成果は、2021年7月9日(金)AM 9:00(東部時間)に米国物理学会(AIP)によって設立されたAIP Publishing社『Physics of Fluids』で公開されました。

論文名:Data-Driven Approach for Noise Reduction in Pressure-Sensitive Paint Data Based on Modal Expansion and Time-Series Data at Optimally Placed Points

(1) これまでの研究で分かっていたこと

近年、機器表面での圧力分布を計測可能な手法としてPSP計測法が注目されています。PSP計測法は、その発光強度の変化から圧力分布を計測でき、従来の半導体圧力センサーなどの点計測法*4に対して高い優位性があります。一方で、PSP計測法における大気圧近傍での微小な圧力の変化の計測には大きな課題がありました。これは、微小な圧力変化の検出には、微小な発光強度変化を検出する必要があり、カメラのショットノイズなどに信号が埋もれてしまうためです。そのために、これまでにノイズを低減して微小な圧力変化を検出するための様々な方法が提案されてきましたが、これらの方法は経験に基づいたパラメータ設定や、PSP以外の他センサーでの計測が必要であったため、汎用性の高い手法とは言えませんでした。

(2) 今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

本研究では、PSP計測の後処理法としてスパースモデリングを用いたノイズ除去法を開発しました。手順として、まずはノイズを多く含む原画像を、固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition; POD)*5によるモード分解*6を行いました。得られたモード分解データから、流体現象を効率的に表現できる空間位置、すなわち最適センサー位置を特定します。この空間位置において、得られている時系列データをフィルタリングし、フィルタリングされた時系列データを説明できるように各モードの係数を決定します。このときなるべく簡単なモデルで表現できるように、スパースモデリングを用います(図1)。

図1 提案手法のフローチャート

本研究では、東北大学流体科学研究所の小型低乱風洞*7において提案手法の妥当性を評価する実証実験を実施しました。角柱後方に生じるカルマン渦列*8によって生じる圧力分布を、PSPによって計測を行いました(図2)。

その結果、今回新たに提案した手法(以下、本手法)によって、PSP計測データのみから、ノイズの影響を大幅に低減した計測データの再構成を行うことに成功しました。また、本手法により再構成された圧力データは、半導体圧力センサーを設置した箇所で、従来データとの計測値のずれが2%以内と、極めて高い一致を示すことから、精度も十分に高いことが実証されました。従来は、PODモードのうち、エネルギーの大きい上位の6、7のモードから、流れ場の構造を議論されることが多くありました。このたびの成果により、本研究のスパースモデリングの観点に基づくと、細かい流れ構造を表現するためには、より下位のモードも必要であることを明らかにしました。

(3) 研究の波及効果や社会的影響

現在PSP計測法の大きな欠点のひとつとされている微小な圧力の変化の計測が可能となることで、家電製品をはじめとする、広範な機器の流動の実験解析にPSP計測法の適用が可能になると期待されます。また、半導体圧力センサーを使用する従来法では、配線をする必要があったため、回転体表面の圧力分布などには適用できませんでしたが、本手法は半導体圧力センサーなどのデータが不要であるため、それらへの適用が期待されます。

(4) 今後の課題

今後はより一層、微小な圧力変化の検出が可能なPSP計測システムの構築を目指し、「PSPセンサー」、「データ取得法」、「データ後処理法」の各段階において、継続的に研究を推進していきます。

(5) 研究者のコメント

各種機器表面での圧力分布の計測は、機器の低騒音化やエネルギー効率の向上など、人間をとりまく環境において依然として極めて重要な課題への取り組みに大きく貢献することができます。また気体の流れは肉眼では見ることができませんが、これを可視化計測することは、現象の直観的理解を容易にするだけでなく、科学的な興味を喚起する上でも重要な技術と考えています。

(6) 用語解説

※1 感圧塗料(Pressure-sensitive paint; PSP)
感圧塗料(PSP)は、一般に酸素消光作用を有するりん光分子と、これを模型表面に保持固定するためのバインダーから構成される塗料。

※2 PSP計測法
PSPに含まれるりん光分子の放つ発光の強度が圧力に応じて変化することから、PSPの発光強度分布を計測することで圧力分布を計測する手法。

※3 スパースモデリング
データを説明(モデリング)する際に、なるべく少数の変数により効率的にデータを説明する手法。

※4 点計測法
半導体圧力センサーなどのようにセンサーを設置した箇所でのみデータ取得が可能な方法。

※5 固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition; POD)
主成分分析(Principal Component Analysis; PCA)や特異値分解(singular value decomposition; SVD)とも呼ばれる。流体工学の分野ではPODとして知られる。多次元データからデータを効率的に展開できるような基底を求める手法。

※6 モード分解
現象を互いに独立な成分(モード)に分離すること。ある現象は、いくつかのモードの重ね合わせで表現できるという考え方。

※7 小型低乱風洞
東北大学流体科学研究所に設置されている風洞設備。

※8 カルマン渦列
円柱や角柱の後方に生じる互い違いに並んだ渦の列。

(7) 研究助成

研究費名:JST さきがけ:JPMJPR187A
研究課題名:圧縮センシングを活用した高精度空力診断システムの構築
研究者名(所属機関名):松田佑(早稲田大学)

研究費名:東北大学流体科学研究所一般公募共同研究:J20L106
研究課題名:構造化照明を用いた高精度PSP計測手法の開発
研究代表者名(所属機関名):松田佑(早稲田大学)、永井大樹(東北大学)

研究費名:スズキ財団一般科学技術研究助成金
研究課題名:感圧センサーシートの開発による空力画像計測の実用化
研究代表者名(所属機関名):松田佑(早稲田大学)

研究費名:JST CREST:JPMJCR1763
研究課題名:次世代地震計測と最先端ベイズ統計学との融合によるインテリジェント地震波動解析
研究代表者名(所属機関名):平田直(東京大学地震研究所)
研究者名(所属機関名):野々村拓(東北大学)

(8) 論文情報

雑誌名:Physics of Fluids
論文名:Data-Driven Approach for Noise Reduction in Pressure-Sensitive Paint Data Based on Modal Expansion and Time-Series Data at Optimally Placed Points

執筆者名(所属機関名):井上智輝(早稲田大学)、松田佑(早稲田大学)、伊神翼(東北大学)、野々村拓(東北大学)、江上泰広(愛知工業大学)、永井大樹(東北大学)

掲載日時(現地時間):2021年7月9日(金)AM 9時(東部時間)
掲載日時(日本時間):2021年7月9日(金)PM 11時
DOI:10.1063/5.0049071

日本医科大学・早稲田大学合同シンポジウム開催報告

著者: staff
2021年7月9日 15:23

2021年6月19日(土)、「日本医科大学・早稲田大学合同シンポジウム~両校の実質的連携を目指した研究交流~」をWeb開催いたしました。日本医科大学と本学とは2009年に大学間協定を締結し、共同研究等に取り組んでまいりました。さらに2019年以降、両校の連携をより実効性あるものとするための対話を続け、2020年1月に研究面における実質的な研究連携に合意しました。本シンポジウムは、医学に関する両校における最新の研究成果を紹介し、さらなる連携推進を図ることを目的として開催しました。

本学総長の田中愛治は冒頭挨拶で、「日本医科大学・弦間学長との対話の中で、本学理工系研究の強みは、AIを含む情報工学、ロボット工学、ナノテクノロジーであると申し上げ、日本医科大学の坂本理事長や弦間学長らの執行部の先生方に頷いていただいた。超高齢社会を迎え新展開が期待される医学分野において、日本医科大学の高い研究レベルに、医理工連携という形で早稲田がお手伝いすれば、共同研究を通して、日本医科大学が日本の医学のあり方を変革されることに早稲田もある程度は貢献できるのではないかと思う」と話しました。
日本医科大学との連携では研究面のみならず、教育面でも進んでいます。まず、日本医科大学と本学附属校・系属校との高大接続連携に関する協定締結を2020年7月に結びました。この協定に基づき、2022年4月の入学者から日本医科大学の医学部に、早稲田大学高等学院・同本庄高等学院・早稲田実業学校高等部から各2名ずつ、合計6名の卒業生を推薦入学させていただけることになりました。その背景としては、「高校時代に受験勉強に偏らずにオールラウンドに勉強して来た優秀な高校生の方が、医学部に入ってから伸びている」という日本医科大学の先生方の教育理念があったことにも、総長の田中は触れました。
次に、日本医科大学で選抜された3年生を、本学の理工系研究室に3週間迎え入れて交流を図る「研究配属」の新しい取組など、教育面からの貢献についても示し、「本シンポジウムがさらなる連携促進の契機となり、日本医科大学との協力の中で、医学教育の改革に対し本学が貢献していけることを期待している」旨を述べました。
続いて登壇された日本医科大学理事長の坂本篤裕氏は、近年、連携が真の意味で実践されてきたとの認識を話され、医学に関する様々な課題解決に資する本学との連携への意欲を語られました。

左:早稲田大学総長・田中愛治、右:日本医科大学理事長・坂本篤裕氏

セッション1およびセッション2では、連携研究の成果報告を含めて、6名の講演があり、いずれの講演に対しても活発な議論が行われました。講演は以下の通りです。

【セッション1】
座長:日本医科大学大学院医学研究科長/脳神経外科学教授・森田 明夫、早稲田大学研究推進部長/理工学術院教授・合田亘人
  • 清家 正博(日本医科大学 内科学(呼吸器内科学) 教授)
    「肺がんにおける医工連携研究」
  • 浜田 道昭(早稲田大学 理工学術院 教授)
    「AIアプタマー創薬プロジェクト」
  • 横堀 將司(日本医科大学 救急医学 教授)
    「ウイズコロナ・ポストコロナに求められる医⼯学連携」
【セッション2】
座長:早稲田大学教務部長/理工学術院教授・本間 敬之、日本医科大学研究部長/泌尿器科学教授・近藤 幸尋
  • 棟近 雅彦(早稲田大学 理工学術院 教授)
    「医療におけるマネジメントシステム:通常医療および災害医療」
  • 小川 令(日本医科大学 形成外科学 教授)
    「創傷治癒のメカノバイオロジーとメカノセラピー」
  • 岩田 浩康(早稲田大学 理工学術院 教授)
    「AI/ロボット技術を駆使した先制医療への挑戦」

セッションの後の閉会挨拶では、まず日本医科大学学長の弦間昭彦氏から、「最先端の研究成果や、医療現場の現状等を共有でき、両校の連携を発展させる一歩になるシンポジウムとなったのではないか。本日伺っただけでも、医療側のニーズを解決できそうに思える研究が多くあり、こんなことまで可能なのか、と非常に勉強になった。具体的な内容を持ち合い、お互いの研究を見ることが重要であると再認識し、今後、連携を大きく進歩させられる実感を持った」とお話しになりました。つづいて本学副総長の須賀晃一からは、本シンポジウム関係者への感謝の言葉とともに、「自身は経済学が専門であるが、それでも非常に胸がおどるような講演内容だった。先進国を中心に社会の高齢化が進む中で、健康や医療に対する考え方を再検討する時代になっている。ぜひ次回以降は本学の人文社会科学系で医療や高齢化社会に関する研究を進めている研究者とも対話してみていただきたい」と、今後への期待も述べられ、閉会となりました。

左:日本医科大学学長・弦間昭彦氏、右:早稲田大学副学長・須賀晃一

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