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【5月15日(金)12:30~13:10開催】文部科学省PEP卓越大学院プログラム 2026年9月・2027年4月進入/編入 募集説明会開催します!

著者: staff
2026年4月16日 15:54

🤖 AI Summary

【5月15日金曜日の説明会】 wasteda大学のPEP卓越大学院プログラムに関する募集説明会が開催されます。これは、電力・エネルギー産業の創出に貢献する人材を育成することを目的とした修士課程と博士後期課程を5年間一貫して学べるプログラムです。

この度、2026年9月や2027年4月への進入または編入募集説明会を開催します。当日は現役PEP生が参加し、質疑応答を行う予定です。参加登録はウェブフォームから簡単に行え、詳細情報は申込み後1日前までにメールでお知らせします。

日時:2026年5月15日(金)12:30~13:10
形式:Zoomオンラインミーティング

対象者は電力系やエネルギーマテリアル系の専攻を希望する大学院学生です。また、特定の学部正規学生も該当します。

説明会では、プログラム概要(研究指導、カリキュラムなど)、募集日程、現役PEP生からの質疑応答を行います。

参加登録は下記リンクから行うことができ、締切は5月14日(木)10:00までです。
https://forms.office.com/r/8f5QMsVbRh

詳細や問い合わせについては以下のウェブサイトをご覧ください:
https://dpt-pep.w.waseda.jp/

PEP卓越大学院プログラム事務局のメールアドレスまたは電話番号は次のとおりです:
Email: [email protected]
TEL:03-5286-3238

文部科学省卓越大学院プログラム『パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム』は、
電力・エネルギー新産業創出に寄与する人材を輩出することを目的とした修士・博士後期5年一貫の博士人材育成プログラムです。

この度、本プログラムの2026年9月・2027年4月進入/編入 募集説明会を以下のように開催致します。
当日は、プログラム説明後に現役PEP生2名(電力系・エネルギーマテリアル系)も参加して、
皆さんの質問にお答えします。
お気軽にお申込みください!

<日時>
2026年5月15日(金)12:30~13:10

形式:Zoomオンラインミーティング(途中入退室可)
※申請フォームから参加登録いただいた方にURL等詳細を、前日までにメールでお送り致します

<申請フォーム>
PEPプログラムに少しでも関心のある方はお気軽に、以下URLよりお申込みください。
https://forms.office.com/r/8f5QMsVbRh
申込締切:5月14日(木)10:00まで

<ポスター>
ポスター
<参加対象>
①電力系・エネルギーマテリアル系の専攻分野に関心を持ち、以下大学院専攻への進学を検討している学部正規学生の方
②現在、電力系・エネルギーマテリアル系を専攻分野として以下専攻に在籍している大学院正規学生で、次の何れかに該当する方

  • 修士課程・一貫制博士課程1年生、2年生在学中の方
  • 博士後期課程に入学予定または一貫制博士課程3年次に進級予定の方

<対象専攻>

  • 基幹理工学研究科(機械科学・航空宇宙専攻、電子物理システム学専攻)
  • 創造理工学研究科(地球・環境資源理工学専攻)
  • 先進理工学研究科(応用化学専攻、電気・情報生命専攻、ナノ理工学専攻(注)、先進理工学専攻)
  • 環境・エネルギー研究科(環境・エネルギー専攻)
    (注)・2027年4月以降、ナノ理工学専攻では修士課程の募集を停止します。
    これに伴い、本プログラム受入れ対象は博士後期課程(社会人枠含む)および一貫制度博士課程3年入学予定者となります。
    ・2027年4月時点で同専攻修士課程に在学中の学生は、出願資格を引き続き有します。
    ・「2026年9月」進入枠については、本内容は適用されません。

<内容>

  • プログラム概要説明(研究指導、支援体制、カリキュラム、進路、経済的支援 etc.)
  • 進入/編入募集日程
  • 現役PEP生によるプログラム紹介
  • Q&Aタイム

<ご参考>
PEP卓越大学院プログラムHP https://dpt-pep.w.waseda.jp/
パンフレット https://dpt-pep.w.waseda.jp/about/?id=pamphlet
募集要項出願書類 https://www.waseda.jp/fsci/admissions_gs/guidelines/pep/

<お問合せ>
PEP卓越大学院プログラム事務局(51号館1F理工統合事務所内)
Email:[email protected]   TEL:03-5286-3238

組織侵襲性細菌が組織を壊す仕組みを解明!

著者: contributor
2026年4月16日 14:45

組織侵襲性細菌が組織を壊す仕組みを解明!
~移植再生医療に応用の可能性~

発表のポイント

  • 糖尿病患者への膵島移植※1)などの先進医療を支える基盤技術の一つに、ドナー組織から目的の細胞のみを取り出す酵素製剤があります。細胞の足場であるコラーゲンを消化して組織をバラバラにする目的で、病原細菌由来のコラーゲン分解酵素※2)が使われています。
  • 1990年代に岡山大学の松下治名誉教授らが細菌から同定・命名した二種類の酵素遺伝子を基礎に、2016年に二種類の安全な組換え酵素が我が国の製薬企業から発売されました。しかし、これらの酵素が効率よくコラーゲンを消化する仕組みは未だ不明でした。
  • 今回の研究は、原子レベルで酵素の形と動きを調べ、組織侵襲性細菌3)がコラーゲンを連続して細切れにする仕組みを明らかにしたものです。この発見により組換え酵素の改良設計が可能になり、多様な移植医療、再生医療および治療に応用されると期待されます。

岡山大学の松下治名誉教授と岡山大学学術研究院医歯薬学域の武部克希助教(研究当時。現:北海道大学講師)、大阪大学大学院薬学研究科の河原一樹助教(研究当時。現:大阪公立大学講師)ら、愛媛県立医療技術大学の美間健彦教授、早稲田大学の小出隆規教授ら、米国アーカンソー大学のジョシュア・サコン(Joshua Sakon)教授らの国際共同研究グループは、組織侵襲性細菌がコラーゲン分解酵素によりコラーゲンを連続的に切断する仕組みを解明しました。

この研究成果は4月2日、英国の総合科学誌「Nature Communications」にResearch Articleとして掲載されました。

コラーゲンは、細長い三重らせんという特異な形のタンパク質です。細菌が作るコラーゲン分解酵素は、コラーゲンを取り込み、らせんをほぐして切断、その後らせん軸に沿って少しずつ前進し、コラーゲンを細切れにすると考えられます。この仕組みは、ヒトや動物が持つコラーゲン分解酵素が細長いコラーゲンの途中1カ所だけを特異的に切断する仕組みとは根本的に異なっていました。

本研究成果は、生命の進化と病原細菌による巧妙な感染機構の獲得を考える上で興味深い発見であるとともに、組換え酵素の改良設計を通じて多様な移植再生医療に応用されると期待されます。

 

(1)発表内容

<現状>

コラーゲンは、ヒトや動物の組織を形作る重要なタンパク質です。コラーゲンは3本のポリペプチド鎖※4)(α鎖)の三重らせん構造から成り、構造が極めて安定で、一般的なタンパク質分解酵素では分解されません。組織侵襲性細菌はコラーゲン分解酵素(細菌性コラゲナーゼ)を分泌してコラーゲンを分解し、組織を破壊して感染を急速に拡大します。一方で、この酵素は、その高い組織分解活性を利用して、糖尿病患者へ移植するための膵島細胞の分離や拘縮性疾患※5)の治療に応用されています。しかし、この酵素がどのような仕組みでコラーゲンを分解するのかは不明でした。

<研究成果の内容>

細菌性コラゲナーゼ単体、および酵素とコラーゲン様三重らせん型基質※2)の複合体の形と動きを、クライオ電子顕微鏡※6)を用いて観察し、この酵素がどのようにしてコラーゲンを細切れにするのかを明らかにしました。コラゲナーゼにはドーナツ状の部分があり、まずリングの一部を開閉して細長いらせん型コラーゲンをその内部に取り込みます(図2a, b)。次に、コラーゲン周囲の水分子を取り除いてらせん構造をゆるめ、1本ずつに分かれたα鎖をそれぞれリング内の別の場所に誘導します(図2c)。うち1本のα鎖は、らせん構造からループ状に曲げ出され、引き延ばされて活性中心※7)で切断されます(図1, 2c)。切られた部分が酵素から遊離すると、酵素は残る2本のα鎖を“レール”のように使い、三重らせん部分を探して、らせん軸に沿って前進し、1本のα鎖を切断する反応を繰り返すと考えられます(図2d-f)。

いったん前に進んで切断すると後戻りはできないため、細菌性コラゲナーゼは「らせんに沿って一方向に歩きながら三重らせんをほぐしつつ切断する」を繰り返すラチェット・ウォーキング型のコラーゲン分解を行うと考えられます。この仕組みは、ヒトや動物のコラゲナーゼが長細いコラーゲンの1カ所だけを特異的に切断する一撃離脱型の分解とは根本的に異なっていると思われます。

図1.細菌性コラゲナーゼは三重らせん型コラーゲンをほぐしてα鎖(赤)を引き出す。

図2.細菌性コラゲナーゼはコラーゲンの三重らせん部分を求めて前進と切断を繰り返す。

<社会的な意義>

生命の進化と病原細菌の成り立ちを考える上で興味深い発見であるとともに、この発見に基づく酵素の改良設計を行なうことで、幹細胞の分離、細胞シートの作製、再生軟骨の表面処理、人工組織の成形など、移植再生医療の分野で幅広く応用されると期待されます。

(2)論文情報

論 文 名:Bacterial collagenase harnesses collagen geometry for processive cleavage.
掲 載 誌:Nature Communications
著   者:Hiroya Oki, Katsuki Takebe, Adjoa Bonsu, Kazunori Fujii, Ryo Masuda, Nicholas Henderson, Takehiko Mima, Takaki Koide, Mahmoud Moradi, Osamu Matsushita*, Joshua Sakon*, Kazuki Kawahara*
D  O  I:https://doi.org/10.1038/s41467-026-71099-3 受理2026.3.13、掲載2026.4.2

(3)研究資金

本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(若手・JP23K14519研究代表 沖 大也; 基盤C・JP23K06545研究代表 松下 治; 基盤C・JP24K10218研究代表 河原 一樹)、日本医療研究開発機構(AMED)「生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)」(JP22ama121003)、乳酸菌研究会助成金(2023, 2024研究代表 松下 治)、National Science Foundation (grant 2218054, 研究代表 Joshua Sakon)の支援を受けて実施しました。また、論文掲載に当たり、the University of Arkansas Libraries Open Access Publishing Fundの支援をいただきました。

(4)補足・用語説明

1)「膵島移植」ドナーの膵臓からインスリン分泌細胞(膵島)を分離し糖尿病患者に移植する治療法。

2)「酵素と基質」酵素は生体内で反応を促進するタンパク質(触媒)。基質はその作用を受けて分解・合成される物質。本研究では、酵素の細菌性コラゲナーゼが基質のコラーゲン分子を分解する。

3)「組織侵襲性細菌」ガス壊疽菌群、ビブリオ属菌などの病原細菌。

4)「ポリペプチド鎖」タンパク質の基本構造。多数のアミノ酸がペプチド結合(-CO-NH-)で直鎖状に連なっている。コラーゲン分子を構成する3本のポリペプチド鎖は、それぞれα鎖と呼ばれる。

5)「拘縮性疾患」ここでは、腱や腱膜などの線維組織にコラーゲンが異常に増えてしこりになり、本来の動きが制限される病気。デュピュイトラン拘縮、ペロニー病など。

6)「クライオ電子顕微鏡」生物試料を急速凍結し、生のまま電子顕微鏡で撮影する技術。タンパク質などの立体構造を、自然に近い状態で原子レベルの分解能で解析できる。

7)「活性中心」酵素の表面で実際に化学反応が起こる場所。

【PEP卓越大学院プログラム】2026年7-8月実施(2026年9月・2027年4月)進入/編入選抜試験(SE)情報を更新しました

著者: staff
2026年4月16日 15:11

🤖 AI Summary

【PEP卓越大学院プログラム】2026年9月と2027年4月に進入/編入の選抜試験(SE)に関する最新情報が更新されました。詳細は、 Waseda大学理工学術院の大学院入試ページ内のPEP SE情報ページをご確認ください。

[リンク:https://www.waseda.jp/fsci/admissions_gs/guidelines/pep/]

この記事には、関連記事もいくつか掲載されていましたが、主な内容は上述のように簡略化されています。

卓越大学院プログラム
「パワー・エネルギー・プロフェッショナル(PEP)育成プログラム」
2026年7-8月実施(2026年9月・2027年4月)進入/編入選抜試験(SE)に関する情報を更新致しました。

詳細は、理工学術院HP大学院入試ページの中のPEP SE情報ページ(募集要項・出願書類)をご参照ください。

https://www.waseda.jp/fsci/admissions_gs/guidelines/pep/

自然界には存在しない構造を持つ2次元酸化鉄の作製に成功

著者: contributor
2026年4月15日 15:08

自然界には存在しない構造を持つ2次元酸化鉄の作製に成功
~グラフェン/SiC界面が生み出す新物質~

発表のポイント

  •  自然界には安定に存在しない構造を持つ2次元酸化鉄の作製に成功しました。
  •  2次元物質のグラフェンと3次元物質のSiCの界面に鉄と酸素を導入する新たな手法により、この2次元酸化鉄作製を実現しました。
  •  スピントロニクスデバイスなどへの応用が期待され、さらに他の2次元遷移金属酸化物に展開することによって新たな量子物性の開拓につながる可能性があります。

早稲田大学の乗松航(のりまつ わたる)教授、物質・材料研究機構(NIMS)の榊原涼太郎(さかきばら りょうたろう)博士(研究当時名古屋大学所属)、日本原子力研究開発機構の寺澤知潮(てらさわ ともお)研究副主幹、東京大学の河内泰三(かわうち たいぞう)技術専門職員、福谷克之(ふくたに かつゆき)教授、名古屋大学の伊藤孝寛(いとう たかひろ)准教授の研究グループは、自然界には存在しない構造を持つ2次元酸化鉄の作製に成功しました。

酸化鉄※1は、様々な組成・構造を持つものが存在し、例えば、スピネル構造を持つマグネタイトFe3O4は紀元前から鉄につく磁石として知られており、コランダム型構造を持つヘマタイトFe2O3は主要な鉄鉱石でありヘモグロビンと同様の由来を持つ名前が示すように赤い顔料として用いられています。

当グループは、2次元物質※2であるグラフェンと、3次元物質である炭化ケイ素(SiC)基板の界面※3に、2次元的な構造を持つ酸化鉄を作製する方法を発見しました。さらに、形成された2次元酸化鉄を原子レベルで構造解析した結果から、この界面物質は自然界には存在しない構造を持つ酸化鉄であることを明らかにしました。本研究成果は、界面を利用することで従来の化学平衡では実現できなかった新しい構造を作り出す手法を示した点で重要です。

本成果は、2026年3月14日付けで、Wiley社が発行する学術誌『Small Methods』誌に掲載されました。

これまでの研究で分かっていたこと

遷移金属酸化物は、絶縁体から金属、超伝導体まで多彩な電子物性を示す材料として知られています。その中で本研究では、地球上に最も豊富に存在する遷移金属元素である鉄(Fe)とその酸化物に注目しました。鉄は、3d軌道の電子によるスピン分極のために強磁性体(磁石)として知られています。同様に酸化鉄でも、スピネル構造を持つマグネタイトFe3O4は古くから磁石として用いられてきました。酸化鉄はマグネタイト以外にも、塩化ナトリウム型構造を持つウスタイトFeOやコランダム型構造を持つヘマタイトFe2O3など様々な構造を持ち、構造によって物性が大きく異なることが知られています。そのため、新しい構造を持った酸化鉄材料の探索は、基礎・応用の両側面で意義深いと言えます。

ここで、グラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイドなどの2次元物質は、構造の2次元性に起因して、3次元物質にはない物性や機能について、非常に活発に研究されています。その中でも、2次元物質グラフェンと3次元物質である基板の界面は、特異な現象の生じる場として注目されています。例えば、グラフェン/SiCヘテロ構造を作製し、水素雰囲気ガス中で加熱すると、水素がグラフェンとSiCの界面に侵入するインターカレーション※4と呼ばれる現象が生じます。このインターカレーション現象を、水素以外の元素やその化合物へと拡張することで、グラフェンとSiCの界面において、例えば2次元の窒化ガリウム(GaN)や2次元の酸化インジウム(InO)といった2次元半導体を作製できることが報告されてきました。このような背景の中で、インターカレーションによる2次元の酸化鉄の作製にも大きな期待が寄せられてきました。しかしながら、鉄は炭素やケイ素との反応性が非常に高く、先行研究と同様のアプローチでは鉄の炭化物やケイ化物が優先的に形成されてしまうため、2次元酸化鉄の形成はこれまで実現されていませんでした。

新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

2次元酸化鉄を作製する手法を確立できれば、これまでにない物性や機能を持った材料の実現が期待されます。そこで本研究では、グラフェン/SiC界面を、新たな2次元物質を形成するための結晶成長場とみなし、インターカレーション現象を利用することで2次元酸化鉄の作製を目指しました。実験と解析の結果、グラフェンの2次元性とSiCの結晶構造を反映して、自然界には存在しない構造を持つ2次元酸化鉄が形成することを見出しました。また、得られた2次元酸化鉄は室温では常磁性を示す一方で、低温(100 K)では反強磁性秩序を持つことが示唆されました。

様々な物質をグラフェン/SiC界面にインターカレーションする際、まずグラフェンとほとんど同じ構造を持つバッファー層と呼ばれる炭素原子層をSiC上に形成します。従来では、このバッファー層上に真空中で元素を堆積させ、そのまま加熱するというアプローチがとられてきました。これは、加熱中に酸素が存在すると、グラフェン/SiC界面に酸素が優先的にインターカレーションしたり、グラフェン中の炭素と反応してCO2として分解されるためグラフェンがなくなってしまうためです。しかしながら、この手法を鉄に適用した場合、鉄が炭素やケイ素と優先的に反応して、グラファイトやケイ化物が不均一に形成されてしまいます(図1)。

そのため、鉄やその化合物に関するインターカレーションの報告はこれまでほとんどありませんでした。それに対して本研究では、バッファー層上に真空中で鉄を蒸着したあと、試料をあえて一旦大気中に曝露したのち、再び真空中に導入して加熱処理を行うことで、酸化鉄のインターカレーションが起こり、グラフェンとSiCの界面に2次元酸化鉄が形成することを見出しました(図1)。

図1 インターカレーションによる2次元酸化鉄の作製方法

 

これらの、従来法と新手法で得られた試料断面の原子分解能電子顕微鏡像を図2に示します。従来法では、鉄がSiCと反応することにより多層グラフェンとケイ化鉄(Fe silicide)が不均一に形成されました。一方、新手法で作製した試料の高角環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)像では、グラフェンとSiCの界面に、矢印で示すような一様な輝点の周期配列が見られました。HAADF-STEM像では、原子番号の大きい元素ほど明るく観察されます。この界面の輝点領域において電子エネルギー損失分光による元素分析を行った結果、そこには鉄と酸素が含まれていることから、グラフェンとSiCの界面に酸化鉄の2次元結晶が形成されたことがわかりました。

図2 従来法と新手法での高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)像と高角環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)像

 

形成された2次元酸化鉄がどのような原子配列を持っているのかを明らかにするために、第一原理計算によって最適化されたいくつかの構造モデルに基づいてHAADF-STEMシミュレーション像を計算し、図3に示すように実験結果と対応させました。その結果、SiCの直上では、FeとOがSiCと同じ四面体構造を持っていること、グラフェンの直下では、塩化ナトリウム型の八面体構造を持っているものとして矛盾なく説明できることがわかりました。このような構造を持つ酸化鉄は、我々の知る限り報告されておらず、グラフェン/SiC界面に形成された2次元酸化鉄は、自然界には存在しない構造を持つことが明らかとなりました。2次元酸化鉄がこのような特異な構造をとる理由は、SiC直上では鉄と酸素がSiCと同じ四面体構造の配列を取る一方で、その上側では塩化ナトリウム型構造のウスタイト構造へと緩和することによると考えられます。

このような構造を持つ2次元酸化鉄についてメスバウアー分光測定※5を行った結果、室温では常磁性を示すのに対して、低温(100 K)では反強磁性秩序を持つことを示唆する結果が得られました。

図3 2次元酸化鉄の構造解析の結果

 

研究の波及効果や社会的影響

本研究により、2次元物質であるグラフェンと3次元物質であるSiCとの界面において、自然界には存在しない構造を持つ2次元酸化鉄を作製できることが明らかになり、また、メスバウアー分光測定により、この2次元酸化鉄は冷却に伴って常磁性から反強磁性への磁気相転移を示すことが示唆されました。これらの結果は、スピントロニクスや低次元磁性などへの応用が期待されます。

酸化鉄を含む遷移金属酸化物には、高温超伝導を示す銅酸化物や、強相関電子系のマンガン酸化物などがあり、機能の宝庫と呼ばれています。本研究の方法論によって、これらの様々な遷移金属酸化物をグラフェン/SiC界面で2次元化できれば、より高温での超伝導や巨大磁気抵抗効果といった興味深い特性の発現が期待されるため、基礎研究と応用技術の両側面で様々な波及効果が期待できます。

課題、今後の展望

物質の性質や機能は、原則としてその原子配列、すなわち構造によって決まります。これまでに存在しない構造を持つ物質が得られれば、これまでにない物性や機能が現れることが容易に想像されます。よって、本研究で得られた特異な構造を持つ2次元酸化鉄特有の新規物性の実証と、その応用技術の開拓が今後の課題です。

研究者のコメント

世の中に存在する多くの物質の構造や物性は、これまでの人類のたゆまぬ研究によってほとんど理解されてきたと言っても過言ではありません。そんな現代において、異種物質同士の界面で生じる新物質や新機能の開拓は、今後ますます発展していくと考えています。2次元グラフェンと3次元SiCの界面で、これまで人類が見たことのない構造を持つ2次元酸化鉄が形成されたことはその成果の1つです。今後も、界面をキーワードにさらに多くの新物質・新機能の実現へとつなげていきます。

用語解説

※1 酸化鉄
鉄と酸素の化合物であり、組成・構造によって異なる物性を持つ。例えば、スピネル構造のマグネタイトFe3O4は磁石として、コランダム型構造を持つヘマタイトFe2O3は赤色顔料として用いられてきた。これまでに多様な酸化鉄の結晶構造が報告されており、構造によって物性も大きく異なることから、新しい構造を持った酸化鉄材料の探索は基礎・応用の両側面で意義深い。

※2 2次元物質
炭素原子1層のみで構成されるグラフェンや、ホウ素と窒素が同一平面内に配列した六方晶窒化ホウ素、遷移金属の原子層がカルコゲンの原子層に挟まれた構造を持つ遷移金属ダイカルコゲナイドなどに代表される物質群の総称。上下方向に共有結合をもたない2次元的な構造を持つことにより3次元の物質とは異なる物性や機能が見られ、近年大きな注目を集めている。

※3 界面
異なる物質同士が接している境界。一般に界面では、通常の物質とは異なる原子配列が現れることが多い。特に2次元物質と3次元物質の界面は、異種物質の導入や構造制御の可能な2次元空間とみなすことができ、新物質を作製する良質な結晶成長場となる。また界面では、互いに接する物質の対称性が自発的に破れることから、新規物性発現の場としても期待される。

※4 インターカレーション
SiC単結晶基板を加熱すると、表面に大面積の単一方位グラフェンが形成する。このグラフェン/SiC界面には様々な元素を挿入することができ、このような層状物質の界面への原子挿入は一般にインターカレーションと呼ばれる。グラフェンとSiCの界面において、水素、リチウム、銅、ゲルマニウムといった様々な元素のインターカレーションが報告されている。さらに単体だけではなく、窒化ガリウムなどの化合物のインターカレーションも報告されている。酸化物としては酸化インジウムのインターカレーションの報告はあるものの、酸化鉄のような遷移金属酸化物のインターカレーションの報告はこれまでなかった。

※5 メスバウアー分光測定
固体試料中の57Fe原子核が反跳なしにガンマ線を吸収する「メスバウアー効果」を利用し、原子核周辺の電子状態や磁気的状態を精密に測定する手法。

論文情報

雑誌名:Small Methods
論文名:2D Iron Oxide at the Graphene/SiC(0001) Interface
執筆者名(所属機関名):Ryotaro Sakakibara (NIMS), Tomo-o Terasawa (日本原子力研究開発機構)、Taizo Kawauchi (東京大学), Katsuyuki Fukutani (東京大学)、Takahiro Ito (名古屋大学)、Wataru Norimatsu (早稲田大学)
掲載日時:2026年3月14日
掲載URL:https://doi.org/10.1002/smtd.202501889
DOI:doi.org/10.1002/smtd.202501889

キーワード

2次元酸化鉄、界面、グラフェン、SiC

研究助成

研究費名:日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
課題番号: 22KJ1535
研究課題名:インターカレーション法を利用したグラフェン/SiC界面での二次元超伝導体の作製
研究代表者名(所属機関名):榊原涼太郎(名古屋大学:助成当時)

研究費名:日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究
課題番号:25K17917
研究課題名:二次元半導体における原子欠陥の理解と制御
研究代表者名(所属機関名):榊原涼太郎(NIMS)

研究課題名:日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究
課題番号:21K14500
研究課題名:グラフェンにおける水素イオン透過の低速水素イオン照射を用いた機構解明
研究代表者名(所属機関名):寺澤知潮(日本原子力研究開発機構)

研究費名:早稲田大学 各務記念材料技術研究所 環境整合材料基盤技術共同研究拠点共同研究プロジェクト
研究課題名:低環境負荷ナノカーボン材料の作製と評価
研究代表者名(所属機関名):乗松航(名古屋大学:助成当時)

令和8年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を6名の教員が受賞

著者: contributor
2026年4月9日 09:56

🤖 AI Summary

早稲田大学の6名の教員が「令和8年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」を受賞しました。この表彰は、科学技術に貢献した者に対し授与され、日本の科学技術水準向上に寄与することを目指しています。

受賞者の詳細は以下の通りです:

1. 井上 真 教授(人間科学学術院):熱帯林保全と社会的公正の実現を目指した環境ガバナンス研究
2. 小澤 彻 教授(理工学術院):非線型分散型方程式に対する修正エネルギー法の研究
3. 釜野 さおり 教授(社会科学総合学術院)と他の1名:性的指向と性自認のあり方に関する人口学的研究
4. 清水 洋 教授(商学学術院):ジェネラル・パーパス・テクノロジーのイノベーション研究
5. 嶋川 里澄 准教授(高等研究所):宇宙最盛期の原始銀河団で形成される赤色銀河の観測的研究
6. 森本 行人 准教授(リサーチ・イノベーション・センター)と他の2名:日本の人社系研究マネジメントを担う人材育成への貢献

この受賞は、大学が「世界の平和と人類の幸福に貢献する研究」を目指した独創的研究を推進していることを示しています。

このたび、早稲田大学の研究者6名が、科学技術分野で顕著な功績があったとして、「令和8年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」を受賞しました。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に携わる者の意欲向上を図り、日本の科学技術水準の向上に寄与することを目的としており、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者に対し授与されています。

今後も本学では、中長期計画「Waseda Vision150」における研究ビジョンである「世界の平和と人類の幸福に貢献する研究」の実現に向け、未来をイノベートする独創的研究の促進を図ってまいります。

科学技術賞(研究部門)

氏名 所属・役職 業績名
井上 真 人間科学学術院・教授 熱帯林保全と社会的公正の実現を目指した環境ガバナンス研究
小澤 徹 理工学術院・教授 非線型分散型方程式に対する修正エネルギー法の研究
釜野 さおり 社会科学総合学術院・教授 性的指向と性自認のあり方に関する人口学的研究(※他1名との共同受賞)
清水 洋 商学学術院・教授 ジェネラル・パーパス・テクノロジーのイノベーション研究

 

若手科学者賞

嶋川 里澄 高等研究所・准教授 宇宙最盛期の原始銀河団で形成される赤色銀河の観測的研究

 

研究支援賞

森本 行人 リサーチ・イノベーション・センター・准教授 日本の人社系研究マネジメントを担う人材育成への貢献(※他2名との共同受賞)

「水・食・エネルギー・健康」の循環型社会モデルを久米島で実証開始

著者: contributor
2026年4月9日 09:50

🤖 AI Summary

この記事はNTTと早稲田大学が沖縄県久米島町との包括連携協定を締結し、持続可能な未来社会実現のための新たな「BlueSphereモデル」を導入する取り組みについて詳しく説明しています。主な内容は以下の通りです:

1. 背景
- 地球温暖化やエネルギー・食料問題などの地球規模課題が深刻化
- 単なる現状維持ではなく、抜本的な解決策を模索

2. 久米島町の地域特徴と課題
- 沖縄本島から西に約100km離れた離島
- 地域資源「海洋深層水」を活用した取り組みが進む
- 食、エネルギー、健康に関する具体的な課題

3. 取組の概要(BlueSphereモデル)
- 「水・食・エネルギーの循環により文化・健康が維持され、サステナブルな島嶼コミュニティを実現する」を目標
a. 食の自立:久米島古来の食材や再開発、高付加価値化
b. エネルギーの自立:再生可能エネルギー100%の実現
c. スポーツ健康:健康食の開発、自動的な健康管理システム導入

4. 主要な取り組み技術と方法
- IOWN構想におけるデジタルツイン技術の活用
- ディザスタリカバリ対策やサステナブルDCの推進
- OTEC(海洋温度差発電)など可再生エネルギーの導入

5. 今後の計画
- 現状調査とコミュニティ課題抽出
- 実環境下での検証
- 段階的に社会実装へ

この取り組みは、島嶼部における社会課題解決とカーボンニュートラル社会実現を目指しています。島嶼自治体が抱える構造的課題に対し、新たな未来社会のモデルとして「BlueSphereモデル」を導入し、段階的に実装していく予定です。

「水・食・エネルギー・健康」の循環型社会モデルを久米島で実証開始
~NTT、早稲田大学、久米島町が包括連携協定を締結~

発表のポイント

  • NTTと早稲田大学はこれまで「「地球愛」の醸成とサステナブル社会の実現」という共同ビジョンを掲げ食・エネルギー・スポーツ/健康・量子分野で共同研究をすすめてきました。今回このビジョン実現に向け、島嶼地域の社会課題解決のため久米島町と包括連携協定を締結しました。
  • 今回の包括連携協定により、久米島町の協力を得て考案した新社会モデル「BlueSphereモデル」を実証します。
  • 将来的には、この久米島町での成果を、世界中の島嶼地域が抱える共通課題を解決するための先駆的モデルとして発信していくことをめざします。

NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)、沖縄県久米島町(町長:桃原 秀雄)、学校法人早稲田大学(東京都新宿区、総長 田中 愛治、以下「早稲田大学」)は、島嶼部における社会課題解決およびカーボンニュートラル社会の実現をめざし、教育活動、研究活動などに関し、互いに支援・協力することに合意し、令和8年4月6日包括連携協定を締結しました。今回の包括連携協定により、島嶼での「水・食・エネルギー・健康」統合循環モデル「BlueSphereモデル※1」を実証し、食・エネルギーが自立し、健康長寿を実現するサステナブルな未来の島嶼社会を創造する取り組みを始動します。

背景

近年、地球温暖化、エネルギー問題、食料問題といった地球規模の課題が深刻化し、持続可能な社会の実現が必要となっています。
このような喫緊の課題に対し、単なる現状維持や悪化防止に留まらず、抜本的な解決策を模索する動きが世界中で加速しています。その中でNTTと早稲田大学は2024年よりビジョン共有型共同研究を進めてまいりました。この度、沖縄県久米島町を舞台に、持続可能な未来社会を醸成する取り組みを始動します。

久米島町の課題と包括連携協定締結

沖縄本島から西へ約100kmに位置する久米島町は、豊かな自然と独自の文化を持つ離島です。久米島町は、地域資源である「海洋深層水」を核とした「久米島モデル」という地域循環共生圏を確立しています。海洋深層水は、海洋温度差発電(OTEC※2)や水産養殖、農業など多岐にわたる分野で複合的に利用されています。
こうした地域資源を生かした取り組みが進む一方で、久米島町は他の多くの島嶼地域と同様に下記社会課題に直面しています。

  1. 食(農水産)の課題
    ・島外依存が高く、台風等で入荷が滞ると品薄となる
    ・農水産業の担い手の高齢化・労働力不足、小規模分散圃場による生産性の制約、気候変動リスクがある
    ・同一作物育成による土壌の地力低下、多品目化・高付加価値化の遅れ
  2. エネルギーの課題
    ・島嶼系統特有のディーゼル発電依存による燃料価格の変動リスクがある
    ・台風時の設備被害・長期停電のリスクがある
  3. 健康・医療の課題
    ・医療従事者の不足による労働環境の悪化により、充実した医療サービスの実現が課題となっている
    ・高度医療・専門医が不足しているため沖縄本島への受診が必要となる
    ・住民の高齢化に伴い生活習慣病等の予防・早期発見が重要となっている

久米島町の人口は1990年10,303人をピークに2025年10月時点で6,972人と大きく減少しており、観光業も設備の老朽化、担い手不足、観光客の季節変動など課題があります。島嶼自治体は、人口減少・高齢化、気候変動の影響、物流コストの高さなど構造的課題が他地域より顕在化しやすい状態といえます。
私たちはこれらの課題に対して、これまで培われてきた「久米島モデル」を次世代に継承し、さらに発展させる新たな取り組みが求められていると考えます。
久米島町とNTT、早稲田大学は、島嶼部における社会課題解決の実現をめざし、食・エネルギー・健康といった研究分野および教育活動、研究活動などにおいて互いに支援・協力することに合意し、包括連携協定を締結しました。
この取り組みの前段として、まず久米島モデルの現状調査とコミュニティ課題抽出を行いました。そのうえで新たな社会モデルを策定しました。今後は実環境下での検証を進めながら、段階的に社会実装へとつなげていきます。

取組の概要

本共同研究で久米島に導入されるのが、新たな未来社会の「BlueSphereモデル」(図2)です。これは、「水・食・エネルギーの循環により文化・健康が維持され、サステナブルな島嶼コミュニティを実現する」ことを目標としています。

図2  BlueSphereモデル 概念図

a.食の自立

食料自給率の向上をめざし、久米島町古来の食材や食料の再開発を進めます。災害時にも安定した食料供給が可能なシステムを構築し、さらには「食の循環」を観光資源として活用することで、新たな魅力を創出します。これまでNTT、早稲田大学では農業における新しい技術をプランニングするとともに、久米島町の農家の方々の協力を得て土壌調査を行い適応可能な作物の同定を行ってまいりました。プロアクティブに環境に適応する食料生産技術を確立するとともに、地域資源の利用効率を最大化し、生産性向上と高付加価値化に貢献します。

b.エネルギーの自立

再生可能エネルギー100%の実現をめざし、近隣地域との電力融通も視野に入れ災害時でも安定した電力供給を確保し、強靭なエネルギーインフラを構築します。これまでの共同研究ではEICの実現※3を目標に検討を行ってまいりました。今後、久米島町の施設などの実際の消費エネルギーからエネルギーマネジメントによる効果の実証を行い、エネルギー自立に必要な設備・技術を検証します。

c.スポーツ健康

地元食材を活用した健康食の開発。高齢者の自動的な健康管理システムの導入により医療従事者の不足や一次産業者の高齢化の課題、高齢化に伴う健康・医療・介護負担、および健康長寿の実現といった課題解決に寄与します。
具体例として、運動を通じて町の活性化を図り、健康と観光の両面で貢献します。2025年12月の久米島産業まつりでは、事前調査として住民の顔面の血流、水分量などの計測を実施(図3)しました。将来的には、顔のどの部位に、どの指標に紫外線が強く影響するか、といった情報をフィードバックし、顔や皮膚の保護に役立てることをめざします。

図3 久米島産業まつりでの実証実験

また「BlueSphereモデル」の実現を加速させるのが、NTTが実現を推進しているIOWN構想※4におけるデジタルツイン技術です。フィールド実証で取得されたエネルギー・食・環境分野の多様なデータを統合し、久米島町の状況を仮想空間上に再現する「地域環境デジタルツイン」を構築します。
さらに、コンテナ型データセンタ(以下。DC)など小型のDCを活用し、IOWN APN※5で接続した離島連携での分散型DCについて検討し、島嶼部等を活用したDCのディザスタリカバリ(DR)※6対策やサステナブルDCの実現に向けた取り組みを推進します。また、DCのエネルギーおよび冷却システムにOTEC、海洋深層水を活用するほか、食・エネルギーの自立での取り組みと連携し、新たな産業の創出やビジネスモデルの検証を進めます。
早稲田大学は、ナノ・エネルギー、量子/ICT、工学などの理工系分野のみならず、政治・経済、法学、経営学、文学、言語学など人文社会科学系分野においても高い研究力を誇り、文理融合による研究成果の社会実装が期待されています。NTTは、IOWN構想のもと光関連技術および情報処理技術を活用した次世代コミュニケーション基盤の研究開発を進めています。
NTTと早稲田大は、互いの強みを活かして、久米島町と連携し、島全体で食・エネルギーの自立をめざす研究を進めます。さらに、健康/医療を含む社会課題の解決に向け、経済・金融・マーケティングなどの知見を活かした文理融合による社会実装に取り組みます。

本取組で想定される効果

本取り組みで想定される効果は以下の通りです。

課題区分 目指す方向性
農水産業分野 未来予測によって変わりゆく将来の環境に適応し海洋深層水やバイオマスといった地域資源の利用効率を最大化することで、食料の生産性向上と高付加価値化を実現します。
エネルギー・環境分野 エネルギー自立したEICにより再エネ100%、無停電の実現。電力網の安定化と島全体の脱炭素化に貢献します。
医療健康分野 医療従事者の不足や一次産業者の高齢化の課題、高齢化に伴う健康・医療・介護負担の課題解決及び、健康長寿の実現に寄与します。
経済・雇用分野 新規事業の創出や、既存産業の高度化を支援し、若者も魅力を感じる多様な雇用機会を生み出します。

また、本取り組みは、単なる研究にとどまらず、地域の一次、二次、三次産業に加え、観光、教育、IT、ビッグデータを融合させた「七次産業化」を促進します。久米島町古来の大豆・米・茶などの食の地域ブランド化、新たなレストランビジネスの創出、そして地域のイノベーション人材育成などを通して地域社会の持続的な発展と人口減少による人手不足の解消に貢献します。

包括連携における各社の役割

連携機関名 役割
NTT 食、エネルギー、スポーツ、量子分野の研究開発。IOWN技術を基盤としたIT技術の提供。地域環境デジタルツインを用いた自然環境-地域社会の相互影響アセスメント技術、未来の環境適応に向けた農作物の育種技術の提供。
早稲田大学 食(ムーンショット型農林水産研究開発事業で得られた研究成果の適用含む)、エネルギー、スポーツ、量子分野の研究開発。金融、経済、マーケティングの知見提供。研究・教育とそれにかかる人材交流と育成。
久米島 実証フィールドの提供、関係機関の調整、地域住民との連携によるコミュニティ形成と実証事業への参加促進。実験フィールドの提供。電力、農林水産等のデータの提供。

今後の取組について

今後、久米島町での実証研究を通じて「BlueSphereモデル」の有効性を確立するとともに、島民との対話を重ねながら、地域に根差した社会システムを共創します。将来的には、この久米島町での成果を、世界中の島嶼地域が抱える共通課題の解決に向けた先駆的モデルとして発信していくことをめざします。
本研究は、早稲田大学、NTT、そして久米島町をはじめとする各種関係者との連携を深め、国家プロジェクトの活用も視野に入れながら、5年後の自走化をめざします。実証実験に留まらず、事業継続が可能な仕組みを構築し、地域に新たな雇用機会を創出することで、地域活性化に貢献してまいります。

用語解説

※1 本名称はサービス名ではなく社会モデルとしての構想名です

※2 海洋温度差発電:Ocean Thermal Energy Conversion, 通称OTEC。海洋温度差発電は、太陽からの熱エネルギーにより温められた表層海水と海洋を循環する冷たい深層海水との温度差をタービン発電機により電力に変換する、再生可能エネルギーによる発電のひとつです(http://otecokinawa.com/jp/OTEC/index.html

※3 EIC:Energy Informatics Cell, エネルギーを作る(再エネ)・使う(負荷)貯める(蓄電池)を通信で制御しエネルギー自立したセル(村、地区)を実現すること

※4 IOWN:Innovative Optical and Wireless Network。IOWNの技術とユースケースの開発をグローバルに推進する団体であるIOWN Global Forumで推進中の次世代コミュニケーション基盤の構想。(https://iowngf.org/

※5 APN:All-Photonics Networkとは、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、これにより現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現します。詳しくは以下ホームページをご覧ください。
■オールフォトニクス・ネットワークとは
https://group.ntt/jp/group/iown/function/apn.html

※6 ディザスタリカバリ(DR):、地震や津波などの災害によってシステムの継続利用が不可能になった際の復旧および修復、あるいはそのためのシステム

【4/14開催】理工キャンパス留学説明会

著者: contributor
2026年4月6日 11:14

🤖 AI Summary

早稲田大学の理工キャンパスで4月14日(火)に留学説明会を開催します。内容は以下の通りです:

- **時刻と場所:** 12:30~18:00、55N号館1階第二会議室
- **プログラムの紹介:**
- 短期留学プログラムについての説明(12:30~13:00)
- 参加経験者の学生が留学生の体験や魅力を紹介します。
- 気になった点は直接質問できる個別相談会(13:00~17:00):半年から1年間のプログラムも含む。
- 奨学金説明会(17:00~18:00)

参加者は授業の合間に気軽に参加でき、留学についてより詳しく知ることができます。多くの学生が留学機会を得られるよう、各種奨学金も紹介します。

このイベントにぜひご参加ください!

理工キャンパスで留学説明会を開催します。
主に短期留学プログラムについてご紹介予定ですが、個別相談会では半年~1年の中長期留学についてもご質問いただけます。
留学についてまとめて情報収集できる機会です。授業の合間に是非ご参加ください。

日時:4/14(火)12:30~18:00
会場:55N号館 1階 第二会議室

タイムテーブル:
12:30~13:00 短期留学説明会
短期留学プログラムへの参加経験者の理工学生にも登壇してもらい、以下のような内容についてご説明します。

・学生による留学経験紹介
・短期留学プログラムの魅力について
・理工の皆さんへお勧めしたいプログラムのご紹介

13:00~17:00 個別相談会
短期留学に限らず、半年~1年間のプログラムについての質問も受け付けます。
一部時間帯には、短期留学プログラムの経験者学生も参加してくれますので、説明会で気になったポイントを直接質問してみることもできます。

17:00~18:00 奨学金説明会
留学センターではより多くの学生が留学の機会を得られるよう、様々な奨学金をご紹介しています。
短期、中長期プログラムそれぞれで申し込むことができる奨学金がありますので、説明会ではそれらの種類や特徴等をご説明します。

皆さんのご参加をお待ちしています!

 

 

13の研究分野が世界100位以内に

著者: contributor
2026年4月1日 14:42

🤖 AI Summary

早稲田大学の研究分野別QS世界大学ランキング2026版で、13分野が世界100位以内にランクインしました。これは本学の国際的な研究力を示す重要な成果です。

具体的には:

- 5つの研究領域(人文科学と社会科学が世界100位以内)
- 55の研究分野中で、2分野(美術史と現代語学)は世界50位以内
- さらに13分野(政治・国際関係学など)は世界100位以内

評価基準には5項目(学術者評価、雇用者評価、論文被引用数、H-index、国際研究ネットワーク)が含まれます。

QS社は英国の教育機関で、毎年多くの大学ランキングを発表しています。この結果は大学の研究力と国際性を推し量る重要な指標となっています。

世界50位以内に2研究分野、100位以内に13研究分野がランクイン

研究分野別QS世界大学ランキング

2026年3月25日、QS社から研究分野別の世界大学ランキング2026版(QS World University Rankings by Subject 2026)が発表されました。本ランキングは、5つの研究エリア(Subject Area)と55の研究分野(Subject)で順位が発表されます。2026版は、世界の6,273機関(大学)が調査対象となり、1,908機関に順位が付与されました。

5つの研究エリア(Subject Area)のうち、2つが世界100位以内に入りました

  • Arts & Humanities(人文科学) 世界61位(国内3位)
  • Social Sciences & Management(社会科学) 世界78位(国内3位)

55の研究分野(Subject)のうち、2分野が世界50位以内、13分野が世界100位以内に入りました

 

50位以内

  • History of Art(美術史) 世界26-50位(国内2位)
  • Modern Languages(現代語学) 世界36位(国内3位)

51-100位

  • Politics & International Studies(政治・国際関係学) 世界57位(国内2位)
  • Law(法学) 世界72位(国内3位)
  • Economics & Econometrics(経済学) 世界84位(国内2位)
  • Accounting & Finance(会計・金融学) 世界90位(国内2位)
  • Linguistics(言語学) 世界92位(国内4位)
  • Sociology(社会学) 世界92位(国内3位)
  • Archaeology(考古学) 世界51-100位(国内2位)
  • Engineering – Mineral & Mining(鉱物・鉱業学) 世界51-100位(国内1位)
  • Petroleum Engineering(石油工学) 世界51-100位(国内2位)
  • Sports-related Subjects(スポーツ関連学) 世界51-100位(国内1位)
  • Classics & Ancient History(古典・古典学) 世界51-150位(国内7位)

      

本ランキングは、①学術者評価②雇用者評価③論文一本当たりの被引用数④H-index⑤国際研究ネットワークの5つの項目によって評価(研究分野により項目ごとの評価比重は異なる)されています。詳細については、QS Subject Rankings2026に公開されています。

※QS社:英国の教育関連事業者。毎年世界中の大学を評価し、様々な種類の大学ランキングを発表しています。

テキストから正確な建築デザインを自動で生成するAIシステムを開発

著者: contributor
2026年4月1日 14:41

テキストから正確な建築デザインを自動で生成するAIシステムを開発
―多段階拡散モデルによる新しい建築設計手法―

発表のポイント

  • テキスト入力だけで、階数や窓配置などの構造を正確に反映した建築デザイン画像を生成できるように、多段階生成および検索拡張生成(RAG)を組み合わせたAI技術を開発。
  • 建築構造制御・建築要素合成・建築画像生成を順に行う3段階の生成フレームワークにより、既存モデルを大幅に上回る精度を実現。
  • 大規模な3Dモデリング作業を必要とせず、設計初期段階で迅速に建築イメージを可視化でき、建築設計プロセスの効率化に貢献。

北陸先端科学技術大学院大学 創造社会デザイン研究領域の謝浩然准教授(早稲田大学 理工学術院総合研究所 主任研究員)らの研究グループと、天津大学建築学院の張燁准教授らの研究グループは、テキストによる記述から正確な建築の外観(ファサード)画像を自動生成する新しい生成AIシステムを開発しました。

従来の生成AIでは、「5階建て」などの数値情報を正確に反映することが難しく、階数の誤りや窓配置のずれといった構造的な不正確さが大きな課題となっていました。今回提案したシステムは、建築データセットから検索して得られる情報を生成プロセスに組み込む仕組みを採用することで、既存モデルを大幅に上回る精度を実現しました。このシステムにより、設計初期段階において建物イメージを迅速かつ正確に可視化でき、建築設計プロセスの効率化への貢献が期待されます。

なお、本研究成果は、建築デザイン分野の国際学術誌「Frontiers of Architectural Research」(Elsevier発行)に掲載され、2026年3月26日にオンライン版で公開されました。

(1)研究の背景

建築家はプロジェクトを進める中で、ラフなコンセプトをビジュアル表現として素早く具体化し、クライアントや設計チームと共有する必要があります。しかし、高品質な建築ビジュアライゼーションには高度な専門知識と高価なソフトウェアが不可欠であり、特に設計初期段階における迅速な反復作業の妨げとなっていました。近年、テキストから画像を生成する生成AIモデルが建築分野においても注目されており、テキストによる説明を入力するだけで高品質なデザイン画像を生成できる可能性が広がっています。しかし、これらのモデルはテキスト入力の内容を正確に反映した画像を生成できないケースが多く、例えば「5階建ての建物を生成せよ」という直接的な指示に対しても、異なる階数の建物が生成されてしまうことがあります。この原因は、学習データセットにおける建物構造の詳細なアノテーションの不足にあると考えられます。さらに、建築設計が本来、全体構成の決定から要素配置に至るまで複数の段階的プロセスを含むにもかかわらず、従来の手法ではこれらを単一のモデルで一括して扱っている点も重要な要因であると考えられます。そのため、AIが階数や窓・ファサード要素の正確な配置といった数値的・空間的な要件を理解することが難しく、建築設計の実務への適用を大きく制限しています。そこで、本研究はデザイナー(建築家)による設計ワークフローを考慮して多段階生成のフレームワークを提案しました。

(2)研究の内容

本研究では、これらの課題に対し、建築設計プロセスに対応した3段階生成フレームワークを提案しました。提案システムは、各生成段階において外部の建築データベースを動的に参照する仕組み「検索拡張生成(RAG)」を組み込むことで、AIが既存の建築例を手がかりとして画像を生成できる仕組みを実現しています。本フレームワークでは、テキストによる建物の説明を以下の3段階を通じて段階的にリアルな建築画像へと変換します(図1)。

図1.検索拡張生成(RAG)を用いた生成AIによる建築設計システム

まず第1段階では、テキストプロンプトをもとに、建物の全体形状と正確な階数を反映した構造スケッチを生成します。次に第2段階では、実際の建築部品データセットを参照しながら、窓やドアといった詳細な建築要素を追加してスケッチを精緻化します。最後に第3段階では、精緻化されたスケッチと元のテキスト記述を組み合わせることで、設計者の意図を忠実に反映した高品質な建築レンダリング画像を生成します。

提案の多段階生成フレームワークは、建築家が全体的な形状から窓・ドア・ファサード要素へと順に設計を深めていく実際の設計ワークフローを模倣したものであり、AIによる建築設計の自動化に向けた基盤となりうるものであると考えられます。

(3)研究の成果

本研究は、大学キャンパスの建物のデザインを対象に提案フレームワークの有効性を検証しました。キャンパス建築は階数の制御や窓・入口の配置が特に重要であり、提案手法の評価対象として適切です。検証実験のために、3種類の専用データセットを新たに構築しました。具体的には、建物ボックスデータセット(2,200枚)、多様な窓・ドアの配置を示す建築要素データセット(4,000枚)、および詳細スケッチ・テキストプロンプト・最終レンダリング画像を対応付けたペアデータセット(1,600組)です。

客観評価の実験では、提案フレームワークは建築構造の制御精度(階数)において70.5%を達成し、同一評価指標において、PixArt-α(34.1%)、HunyuanDiT(31.8%)、Stable Diffusion 1.5(29.7%)といった最先端生成AIモデルを大幅に上回りました。また、構造的正確さ・視覚的リアリティ・生成画像とテキストプロンプトの整合性を測定する複数の品質指標(PSNR、SSIM、LPIPS、FID、CLIP)においても、比較対象とした前述の生成AIモデルを上回る結果を示しました。さらに、建築・デザイン専攻の大学院生56名を対象とした主観評価においても、画像品質・プロンプト整合性・建築詳細の正確さのいずれの項目においても5段階評価で平均4点以上の高評価を得ました。加えて、提案フレームワークを実際のキャンパス建築設計プロジェクトに適用し、その実用的な有効性を確認しました(図2)。

図2. 提案システムによるよりリアルなキャンパス建築デザインの生成例。左列は天津大学が提供した実際の敷地計画図および竣工建物の写真(許可を得て転載)。中列は検索拡張アプローチを使用しない標準的なAIモデルが生成したファサードデザイン、右列は本フレームワークが生成したデザインを示します。両者を比較すると、本フレームワークが実際のキャンパス環境のスタイルと制約条件をより適切に反映した建物デザインを生成でき、建築家が実際に建てようとするものにより近い結果を出力できることが明らかです。

(4)研究の意義と今後の展望

本研究は、建築設計の初期段階におけるワークフローを効率化する可能性を持ちます。設計者は打ち合わせ中にクライアントのフィードバックをリアルタイムに反映しながらスキームを素早く修正でき、設計の反復サイクルを大幅に短縮することが期待されます。また、計画担当者やデベロッパーは、詳細なモデリング作業を開始する前に、与えられた制約条件のもとで複数の設計代替案を迅速に可視化・比較検討することが可能となります。これにより、早期段階における意思決定の質と効率が向上すると考えられます。

今後の展望としては、現在はキャンパス建物のファサードと窓・ドアの制御に限定されている提案フレームワークを、住宅や商業施設など他の建物タイプへと拡張することが挙げられます。さらに、バルコニーや屋根形状といった追加的な建築要素への対応、およびBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ツールとの連携による下流の設計ワークフローへの統合も重要な課題です。生成AIの継続的な進化とともに、本研究のような取り組みが建築ビジュアライゼーションをより迅速かつ広くアクセス可能で信頼性の高いものへと変革していく上で、重要な基盤となることが期待されます。

(5)研究支援

本研究は、以下の研究資金の支援を受けて実施されました。

科学技術振興機構(JST)国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST) 次世代AI人材育成プログラム(若手研究者支援)(課題番号:JPMJBY24D6)

中国国家自然科学基金(課題番号:52508023)

(6)論文情報

掲載誌:Frontiers of Architectural Research
論文題目:Controllable Generation of Building Representations: Aligning Campus Building Design Intent with Multi-Stage Retrieval-Augmented Diffusion Models
著者:Zhengyang Wang, Yuxiao Ren, Hao Jin, Jieli Feng, Xusheng Du, Ye Zhang*, Haoran Xie*
DOI:10.1016/j.foar.2026.01.018
掲載日:2026年3月26日にオンライン版に掲載

生成AIで都市の未来を高精度に予測

著者: contributor
2026年3月24日 15:10

🤖 AI Summary

この記事は早稲田大学とその研究者の共同研究による新しいAI技術についてのプレスリリースです。主なポイントを整理すると以下のようになります:

1. **研究の背景**:
- 世界的な都市化が進んでおり、都市空間の設計はエネルギー消費や温室効果ガス排出などの多くの重要な問題に影響を与えている。
- 現存する生成AIモデルには複数の要因を考慮しながら都市構造を予測することが難しいという課題があった。

2. **研究内容**:
- 新しいAIフレームワーク「MMCN(Memory-aware Multi-Conditional generation Network)」を開発した。
- これは過去の都市レイアウトだけでなく、建物密度マップや道路構造マップなどの複数の要因を統合的に学習することで、将来の都市レイアウトを予測できるものである。
- 特に、隣接する領域間での自然なつながりを確保するための仕組みを導入している。

3. **研究の成果**:
- 提案手法は既存の生成AIモデルと比較して、将来レイアウト予測の精度と空間的連続性の両面で向上した。
- データセットを用いた検証結果では、新しい手法が隣接する領域間での自然な分断を大幅に抑制することも確認された。

4. **研究の意義と今後の展望**:
- 提案手法は再開発計画や土地利用政策などの視覚的な比較検討において有力な技術基盤になる可能性がある。
- 今後は他の国の都市への適用を通じて汎用性を検証し、さらに予測の安定性と一般化性能を向上させるためにデータの拡充が必要。

5. **研究支援**:
- 科学技術振興機構(JST)などの研究資金により実施された。

6. **出版情報**:
- 提案手法は国際学術誌「Sustainable Cities and Society」に掲載され、2026年3月3日にオンライン版で公開された。

この研究成果は都市計画分野において重要な進歩であり、将来的には実務的な意思決定支援にも大きく貢献すると期待されています。

生成AIで都市の未来を高精度に予測
―持続可能な都市計画を支える新たな都市予測技術を開発―

発表のポイント

  • 生成AIを活用し、将来の都市構造を高精度に予測する新手法を開発。
  • 建物密度・高さ・交通ネットワークなど複数の都市データを統合し、未来の都市レイアウトを生成。
  • 都市の成長や変化を長期的に可視化でき、持続可能な都市計画や再開発の検討に活用可能。

北陸先端科学技術大学院大学 創造社会デザイン研究領域の謝浩然准教授(早稲田大学 理工学術院総合研究所 主任研究員)とDu, Xusheng大学院生(博士後期課程、JAIST SPRING研究員)と、天津大学建築学院のZhen Xu教授らの研究グループは、生成AIを活用し、都市の将来構造を高精度に予測する新技術を開発しました。

本研究では、建物密度や高さ分布、交通ネットワーク、過去の都市変化パターンなど複数の都市の特徴データを統合的に分析し、長期的な都市構造の進化を一貫して可視化しました。本研究成果は、持続可能な都市計画や再開発戦略の高度化に貢献する基盤技術として期待されます。

なお、本研究成果は、都市計画分野の国際学術誌「Sustainable Cities and Society」(Elsevier発行)に掲載され、2026年3月3日にオンライン版で公開されました。

(1)研究の背景

世界的な都市化の進展により、都市は急速な成長と環境負荷の増大という二重の課題に直面しています。2050年までに世界人口の約7割が都市部に居住すると予測されており、都市構造の設計は、エネルギー消費や温室効果ガス排出、交通効率、生活の質などに大きな影響を及ぼします。そのため、現在の開発計画が将来の都市空間にどのような変化をもたらすのかを見通し、長期的視点に立った都市計画が求められています。しかし、都市の発展は、建物密度や高さ分布、交通ネットワーク、過去の発展経路など、複数の要因が相互に影響しながら進行する複雑な意思決定プロセスです。既存の生成AIモデルは、画像生成や、条件を一つだけ指定した変換には高い性能を示すものの、都市のように多様な要因が絡み合う空間構造を統合的に扱うことが難しく、また大規模都市を分割して処理する際には、隣接領域との不自然な不連続が生じやすいという課題がありました。さらに、時間の経過に伴う都市進化のパターンを一貫して捉える仕組みも十分ではなく、持続可能な都市計画を支える長期予測ツールとしては十分とは言えませんでした。

(2)研究の内容

本研究では、これらの課題を解決するため、画像生成AIを基盤とした都市進化予測フレームワーク「MMCN(Memory-aware Multi-Conditional generation Network)」を提案しました(図1)。本手法は、過去の都市レイアウトに加え、建物密度マップ、建物高さマップ、道路構造マップといった複数の都市要因を同時に入力し、統合的に学習することで、将来の都市レイアウトを予測するものです。

図1.生成AIによる都市将来予測の仕組み(MMCN)

特に本研究では、都市をパッチ単位で処理する際に問題となる境界の不連続性を解消するため、隣接パッチの情報を参照する仕組みを導入しました。これにより、道路や建物配置が領域をまたいで自然につながるよう制御できます。また、過去の都市レイアウトを明示的な条件として組み込み、都市の歴史的変化パターンを学習することで、単なる静的な生成ではなく、時間的連続性を持つ予測を可能にしました。さらに検証のため、中国・深圳市を対象に2005年から2024年までの複数時点にわたる都市データを整理し、建物レイアウト、密度、高さ、道路構造などを含む、複数種類・複数時点の都市情報をまとめたデータセットを構築しました。提案フレームワークの異なる都市環境における都市間汎化能力をさらに評価するため、中国の他の2つの主要都市である上海と天津のデータを用いた都市間汎化実験も実施し、多様な空間条件下においても一貫性のある安定した都市レイアウト予測に成功しました。

(3)研究の成果

都市データ(深圳市)を用いた検証の結果、提案手法は既存の生成AIモデルと比較して、将来レイアウト予測の精度と空間的一貫性の両面で向上しました。都市レイアウトの画像や構造の類似度を示す指標SSIM(Structural Similarity Index Measure)では0.885を達成し、従来手法を上回る結果を示しました。また、都市を複数の領域に分割して予測する際に課題となる、隣り合う領域同士の境界の自然さを評価する指標Boundary IoU(Boundary Intersection over Union)でも0.642を記録しました。これにより、隣接するエリア間で生じがちな不自然な分断が大幅に抑制されていることが確認されました。

図2に示す予測例では、既存手法では道路が途中で途切れたり、建物配置が不自然にずれる様子が見られるのに対し、提案手法では道路ネットワークや建物構造がより自然に連続していることが分かります。さらに、複数のパッチを接続した都市全体の再構成結果においても、都市構造が一貫した形で保たれていることが確認されました。

図2.将来都市レイアウト予測におけるパッチ再構成結果の比較

また、複数期間にわたる予測結果の比較(図3)から、提案手法は単なる現在構造の再現ではなく、時間経過に伴う都市の拡張や密度変化といった進化傾向を反映したレイアウトを生成できることが示されました。これにより、長期的な都市発展シナリオの検討に活用できる可能性が示唆されました。

図3. 複数期間にわたる都市レイアウト予測結果

(4)研究の意義と今後の展望

本研究は、複数要因の相互作用を踏まえて都市の将来像を予測する生成AIフレームワークを提示し、空間的連続性と時間的一貫性の双方を考慮した都市進化予測を実現しました。将来の都市構造を視覚的に比較検討できることは、再開発計画や土地利用政策の検討、持続可能な都市成長シナリオの評価における有力な技術基盤としての活用が期待されます。

今後は、他の国の都市への適用を通じて汎用性の検証を進めるとともに、より多様な都市形態を含むデータの拡充により、予測の安定性と一般化性能の向上を図ることが課題となります。また、実務における意思決定支援を見据え、都市計画のシナリオ分析に応用可能な形へと発展させていくことが期待されます。

(5)研究支援

本研究は、以下の研究資金の支援を受けて実施されました。

科学技術振興機構(JST)国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST) 次世代AI人材育成プログラム(若手研究者支援)(課題番号:JPMJBY24D6)

科学技術振興機構(JST)次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)(課題番号:JPMJSP2102)

中国国家重点研究開発計画(課題番号:2024YFC3808104-01)

中国国家自然科学基金(課題番号:52508023)

(6)論文情報

掲載誌:Sustainable Cities and Society
論文題目:AI-driven urban evolution forecasting: A unified memory-aware multi-conditional generation framework for sustainable development planning
著者:Xusheng Du, Chengyuan Li, Qingpeng Li, Yuxin Lu, Yimeng Xu, Ye Zhang, Zhen Xu, Haoran Xie* *責任著者
掲載日:2026年3月3日にオンライン版に掲載
DOI:10.1016/j.scs.2026.107272

光電流を従来の340倍に増幅する超小型光回路モニタを開発

著者: contributor
2026年3月19日 12:16

🤖 AI Summary

早速、この研究成果の重要な点を要約します:

1. **背景**:
- 生成AIの普及に伴い、AIデータセンターとLiDARなどの分野で光通信や高精度な光制御技術が求められています。
- 精密制御が必要な場面では、回路内部の光強度や共振状態を監視する必要があります。

2. **成果**:
- シリコンフォトニクス向けの超小型(4.7マイクロメートル)、低損失(0.03デシベル)、高感度(約340倍)、低消費電力のインライン光モニタを開発。
- マルチモード干渉を利用して、光を減衰させずに検出できるようにした。

3. **波及効果**:
- AIデータセンター向けの大規模光通信チップの高度化に貢献。
- LiDARなどのセンシング分野での精度向上と小型化に寄与。
- 既存のシリコンフォトニクス製造プロセスとの高い互換性があるため、量産性和コスト面でも優位性がある。

4. **展望**:
- 大規模光集積回路の制御技術確立を目指す。
- LiDARやTHz波コヒーレント通信などの応用を推進する。

5. **研究者のコメント**:
- 光集積回路の大規模化と多機能化が進む中で、この技術は基盤となるモニタリング技術として重要な役割を果たす。

この研究成果は、光通信やセンシング分野における高精度制御と安定性を向上させる重要な技術革新であり、今後のデータセンター技術やIoT、自動運転などに大きな影響を与える可能性があります。

光電流を従来の340倍に増幅する超小型光回路モニタを開発
~ AIデータセンターやLiDAR向け光回路を高精度化~

発表のポイント

  • シリコンフォトニクス光集積回路向けにマルチモード干渉構造を活用して、高感度化と低損失化を実現し、従来のシリコンPIN型検出器と比べて約340倍の検出感度を実証しました。
  • 光をほとんど減衰させない低損失動作と、数マイクロメートルの超小型化を両立しました。
  • 特殊な材料や複雑な構造を用いない、シリコンのみの非常にシンプルな構造で増幅器を用いずに動作する低消費電力設計を実現しました。
  • AIデータセンターやLiDAR用光集積回路の安定動作や省電力化などの高精度化と大規模化に貢献する研究成果です。

早稲田大学理工学術院北 智洋(きた ともひろ)教授の研究グループは、シリコンフォトニクス※1光集積回路向けの超小型光回路モニタを開発しました。生成AIの普及に伴い、AIデータセンターでは大規模な光通信回路の安定動作と省電力化が求められています。また、LiDAR(ライダー)※2などの光センシング分野でも、光集積回路内部の光強度や共振状態を高精度に監視する技術が重要です。本研究では、マルチモード干渉※3を利用した独自構造により、光をほとんど減衰させない低損失動作と高感度化を両立し、従来のシリコンPIN型検出器※4と比べて、光を電流として取り出す能力を約340倍に高めることを実証しました。特殊材料を用いないシリコンのみのシンプルな構造で、電流増幅器を用いず低消費電力で動作します。本技術は、大規模光集積回路の高精度制御に貢献します。

本研究成果は2026年3月4日(水)に「IEEE Journal of Lightwave Technology」にて公開されました。

図:マルチモード干渉を利用した光回路モニタ

(1)研究の背景

近年、生成AIの急速な普及により、AIデータセンターでは膨大なデータ処理が行われています。大量の情報を高速かつ低消費電力で伝送するため、電気配線に代わり光通信が広く導入されています。また、自動運転や3次元計測に用いられるLiDARにおいても、小型で高精度な光制御技術が重要となっています。こうした通信とセンシングの両分野を支える基盤技術が、シリコンフォトニクスによる光集積回路です。

光集積回路では、リング共振器や干渉回路などの微小な構造によって光を制御します。これらの回路は温度変化や製造によるばらつきの影響を受けやすく、そのままでは通信性能の低下や動作の不安定化が起きる可能性があります。そのため、光の強度や共振状態を精密に監視しながら制御する必要があります。回路の大規模化が進むほど、こうした監視技術の重要性は一層高まります。

従来も回路内の光強度を測定するために光検出器※5が用いられてきました。しかし、大きな光電流が得られる一般的なゲルマニウム-PIN型検出器は光を吸収して電流を得るため、回路内の光を減衰させます。検出器数が増えると、その損失は無視できなくなります。さらに、検出感度を確保するために増幅回路を必要とする場合が多く、消費電力や実装面積の増加も課題でした。

そのため、光をほとんど弱めず、小型で高感度、かつ低消費電力で動作する新しい回路内光モニタ技術が求められていました。

(2)研究の成果

本研究では、シリコンフォトニクス光集積回路の内部に直接組み込める、新しいインライン光モニタを実現しました。目的は、光をほとんど減衰させずに高感度で検出できる小型デバイスの開発です。

研究グループは、シリコン導波路内で生じるマルチモード干渉に着目しました。通信に用いられる赤外光に対して、シリコンはバンド間吸収がほとんどなく、導波路は低損失です。一方で、導波路表面の界面準位ではわずかな光吸収が生じます。吸収を強めれば感度は上がりますが、同時に損失も増えるというトレードオフが存在します。

本研究では、干渉により導波路中央に光電場が集中する位置に電極を配置しました(図1)。これにより、光の伝搬をほとんど乱さずに電極間距離を短縮しました。フォトコンダクティブゲイン※6はキャリア寿命と走行時間の比で決まり、電極間距離が短いほど増加します。本構造ではこの原理を利用し、低損失性を維持したまま光電流を大きく増幅しました。

図1:マルチモード干渉を利用したインライン型光検出器

開発したインライン光モニタの長さは4.7マイクロメートルで、挿入損失は約0.03デシベルに低減しました(図2)。これは通常のシリコン導波路に電極構造を取り付けた構造と比較して1/75の低損失化を達成しています。さらに光通信やセンシングに用いられる広い波長範囲で低損失動作を確認しました。同時に、フォトコンダクティブゲインにより光電流を増幅し、従来のシリコン-PIN型検出器と比べて最大で約340倍の検出感度を達成しました(図3)。光吸収を増やすのではなく、生成された電荷を増幅することで高感度化を実現しました。

図2:マルチモード干渉の利用による低損失化

図3:フォトコンダクティブゲインによる高感度化

さらに、本モニタをリング共振器に組み込み、光電流スペクトルを測定しました(図4)。共振ピークに対応した明確な光電流の変化を観測し、回路内部の光強度や共振状態を高精度に把握できることを示しました。多数配置しても回路性能への影響は極めて小さいことを確認しました。

図4:インライン光検出器を装荷したリング共振器と共振状態の検出

本成果により、超小型(4.7 マイクロメートル)、低損失(0.03 デシベル)、高感度(340倍)、低消費電力を同時に満たす光回路モニタを実証しました。

(3)研究の波及効果や社会的影響

本成果は、AIデータセンターにおける大規模光通信チップの高度化に貢献します。生成AIの拡大により、データセンターでは膨大な情報を高速かつ低消費電力で伝送する必要があります。光集積回路の大規模化が進む中、回路内部を高精度に監視する技術は不可欠です。本モニタは低損失で多数配置が可能なため、次世代のデータセンター間光通信やCo-Packaged Optics(CPO)※7技術の発展に寄与します。

また、本技術はLiDAR用光集積回路にも応用可能です。リング共振器や光フェーズドアレイなどの精密制御が求められるセンシング分野では、回路内部の光強度や共振状態を高精度に把握することが重要です。本モニタは回路性能をほとんど損なうことなく組み込めるため、センシング精度の向上と小型化に貢献します。さらに、特殊材料を用いないシリコンのみの構造であるため、既存のシリコンフォトニクス製造プロセスとの高い互換性を持ちます。量産性とコスト面でも優位性があります。

本成果は、通信とセンシングを横断するシリコンフォトニクス基盤技術の高度化に寄与するものです。

(4)今後の展望

今後は、本モニタを多数集積した大規模シリコンフォトニクス光集積回路の制御技術を確立します。特に、データセンター間光通信(DCI)向けの多波長光トランシーバへの応用を進めます。回路内部の光強度や共振状態をリアルタイムに監視し、自律的に最適化する技術の実現を目指します。

また、LiDAR用光集積回路への展開も進めます。リング共振器や光フェーズドアレイと組み合わせることで、より高精度で安定した光ビーム制御を実現します。

さらに、本モニタをテラヘルツ(THz)波コヒーレント通信に用いる光変調器へ組み込み、超高速光源および変調器の高精度制御に応用します。THz波通信では光源の安定性と変調精度が重要であり、本技術はその基盤となる光回路内モニタリング技術として発展が期待されます。

(5)研究者のコメント

光集積回路の大規模化、多機能化が進む中で、回路内部を高精度に監視できる技術は不可欠です。本研究では、低損失性と高感度という本来トレードオフの関係にある性能を同時に実現しました。シリコンのみのシンプルな構造であることも大きな強みです。通信やLiDAR、さらにはTHz波コヒーレント通信へと展開し、次世代の光・電波融合技術の基盤を築いていきたいと考えています。

(6)用語解説

※1 シリコンフォトニクス:
シリコンを用いて光の通り道や光の制御機能を半導体チップ上に集積する技術。光通信や光集積回路の小型化・高機能化に利用されている。

※2  LiDAR(ライダー):
レーザー光を用いて対象物までの距離や形状を計測する技術。近年は、周波数を連続的に変化させたレーザー光を用いて距離と速度を高精度に測定するFMCW方式のLiDARの研究開発が進んでいる。

※3 マルチモード干渉:
幅の広い導波路内で複数の光の進み方が重なり合うことで、光の強さの分布が変化する現象。この性質を利用して光を分けたり集めたりすることができる。

※4  PIN型検出器:
p型半導体、i層(電荷がほとんど存在しない層)、n型半導体の三層構造からなる光検出器。光を吸収して電流を生成する仕組みで、光通信や光計測などで広く利用されている。

※5 光検出器:
光を電気信号に変換する素子。光の強さを電流として読み取ることができ、光通信や光計測などに広く用いられている。

※6 フォトコンダクティブゲイン:
光によって発生した電荷が回路内で繰り返し電流として流れることで、光による電流信号が大きく増幅される現象。これにより小さな光でも高感度で検出できる。

※7 Co-Packaged Optics(CPO)
光通信モジュールと電子回路(スイッチICなど)を同一パッケージ内に集積する技術。電気配線の長さを短くすることで消費電力を低減し、データセンター向け高速通信の実現に向けて注目されている

(7)論文情報

雑誌名:IEEE Journal of Lightwave Technology
論文名:Compact and Ultra-Low-Loss Inline Optical Power Monitor Based on Multimode Interference for Silicon Photonic Integrated Circuits
執筆者名(所属機関名):Tomohiro Kita*(早稲田大学), Kiyoharu Tsujishita(早稲田大学) *責任著者
掲載日時:2026年3月4日(水)
DOI:10.1109/JLT.2026.3670843
掲載URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/11421590

(8)研究助成

本研究は、科学技術振興機構(JST) 研究成果最適展開支援プログラム A-STEP産学共同(育成型)「シリコンフォトニクスハイブリッドレーザを用いた超高解像度LiDAR基盤技術の開発」(課題番号:JPMJTR23RG)の一環として行われ、一部は日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業「三次元ヘテロジニアス集積技術を用いた1チップLiDARの開発」(課題番号:23K26166)、総務省(MIC)戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE) 「小型・低消費電力・低雑音THzトランシーバを実現する光電子融合ヘテロジニアス集積技術の研究開発」(課題番号:JP235003005)、村田学術振興・研究財団研究助成「1チップ超広帯域コヒーレント光源の研究開発」、テレコム先端技術研究支援センター研究費「自己注入同期現象を用いた超狭線幅集積型波長可変レーザの研究」の支援を受けて行われました。

ナノチューブ膜スタンプで細胞内液・ミトコンドリアを直接移送

著者: contributor
2026年3月18日 14:37

ナノチューブ膜スタンプで細胞内液・ミトコンドリアを直接移送
~細胞機能を最大25%向上させる新しい「細胞手術」技術を開発~

発表のポイント

  • 細胞内液やミトコンドリアを別の細胞へ直接移送できるスタンプシステムを開発しました。
  • 細胞生存率約95%、物質移送効率約90%という高い性能を実現しました。
  • ミトコンドリア移送により、細胞内ATP産生量が最大25%向上することを実証しました。

早稲田大学大学院情報生産システム研究科三宅 丈雄(みやけ たけお)教授らの研究グループは、ナノチューブ膜を用いたナノ注射器(ナノチューブ膜スタンプ)に圧力制御機構を搭載させることで、細胞内液やミトコンドリアなどの細胞内成分を別の細胞へ高効率かつ高生存率を保ったまま直接移送することに成功しました。

本技術により、従来は困難であった細胞内部成分の抽出・保存・再導入を一体的に制御できるようになり、移送されたミトコンドリアが受容細胞内で機能し、アデノシン三リン酸(ATP)産生を有意に向上させることを世界で初めて定量的に示しました。本成果は、細胞治療、再生医療、細胞機能解析などの分野において、新たな「細胞手術」技術としての応用が期待されます。

以上は、科学研究費補助金、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子・イオン制御型バイオイオントロニクス」(JPMJPR20B8)による成果であり、2026年3月17日(火)に科学誌「Small Science」にオンライン版で公開されました。

図:圧力制御可能なナノ注射器による細胞内液・ミトコンドリア移送技術

(1)研究の背景

細胞間でタンパク質やRNA、さらにはミトコンドリアなどの細胞内成分が移動する現象は、細胞機能の制御や疾患進展に深く関与していることが知られています。実際、自然界においてはトンネリングナノチューブ(TNT)と呼ばれる細胞間チャネルを介して、ミトコンドリアを含む細胞内成分が細胞間で輸送される現象が報告されており、エネルギー代謝の補償や細胞生存、疾患進行との関連が注目されています。しかしながら、このようなTNTを介した細胞間輸送は、発生頻度が低く、特定の細胞種や病理条件に強く依存することが知られています。また、輸送される分子種やオルガネラ※1、輸送量、方向性を人為的に制御することは未だ実現されておらず、自然界の機能を直接的に医療応用する段階には至っていません。

一方、人工的な細胞操作技術としては、ウイルスベクター、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、脂質ナノキャリア(リポフェクション)など、主として「細胞内への導入」に特化した手法が広く用いられてきましたが、これらはいずれも生細胞から細胞内成分を抽出し、別の生細胞へ移送するという双方向操作には対応できません。マイクロインジェクションや原理間力顕微鏡(AFM)などのナノピペットを用いた単一細胞レベルでの吸引・注入操作も報告されているものの、極めて低スループット※2であり、細胞損傷や操作再現性の点から、多数の細胞を対象とした細胞間移送技術としての汎用化には大きな課題が残されています。特に、ミトコンドリアのような機能性オルガネラを細胞機能を維持したまま、意図した細胞間で、かつ多数の細胞へ移送する技術は現在まで確立されておらず、細胞治療や細胞機能再設計を実現する上での技術的ボトルネックとなっています(表1)。

表1:従来技術と本研究技術の比較

(2)研究の成果

本研究では、自然界における偶発的な細胞間輸送(TNT)や、導入のみに特化した既存技術の限界を踏まえ、生細胞から細胞内成分を穏やかに抽出し、別の生細胞へ高効率に導入することを同一プラットフォームで実現するナノ注射器システムを開発しました。本技術は、ナノチューブ内部の圧力を精密に制御することで、抽出・保持・導入という一連の操作を連続的かつ再現性高く行える点に特徴があります。

【要素技術:圧力制御による抽出・保持・導入の一体化】
本研究で用いたナノチューブ注射器は、金ナノチューブ膜とガラス管から構成され、ナノチューブを細胞膜に挿入した状態でガラス管内部の圧力を制御することで、細胞内成分の出入りを制御します。ガラス管内の圧力(Pstamp)が細胞内圧(Pcell)より低い場合には、細胞内液が受動的にナノチューブ内へ流入し、細胞内成分の抽出が行われます。一方で、ガラス管内に緩衝液を加えることで内部圧力を調整すると、過剰な抽出を抑制し、細胞機能を維持したまま穏やかな物質交換が可能となります。本研究では、ナノチューブ内径が大きく、かつ、ナノチューブ密度が多いほど、抽出量は大きくなり、一方、ガラス管に加える緩衝液の量を増やすほど、抽出量は少なくなることがわかりました。特に約200μLの緩衝液をガラス管に入れると、抽出はほぼ抑制されることがわかりました。

一方、抽出された細胞内成分は、ガラス管内を密閉することでナノチューブ内部に一時的に保持されます。その後、導入工程ではガラス管内に緩衝液を追加して正の圧力を与えることで、保持された細胞内成分を標的細胞内へと能動的に押し出すことができます。図1下図に示したのは、チューブ内部に異なる体積のカルセイン液※3を注入した際、どれだけのカルセインが膜を通過したかを示しています。そこでは、ガラス管を細胞が接着している高さまで水に沈めており、その際、200μLと300μLの間でカルセイン通過量に変化があることがわかります。これは、200μL以下では、カルセイン溶液の量が十分でないため、水圧の影響でカルセインの膜通過が減少するのに対し、300μL以上では、水の流れを発生させることができるため、カルセインが十分に通過したと考えています。この圧力制御に基づく操作により、従来は別個の操作として扱われてきた「抽出」と「導入」を一体化し、生細胞を維持したまま双方向の細胞間移送を実現しました(図1下図)。

図1:細胞内液抽出および導入結果

【HeLa および NIH-3T3 細胞を用いた同種・異種間移送】
本技術の汎用性を検証するため、HeLa 細胞※4および NIH-3T3 ※5を用い、同種間(HeLa→HeLa、NIH-3T3→NIH-3T3)および異種間(HeLa→NIH-3T3、NIH-3T3→HeLa)での細胞内成分移送を行いました。その結果、いずれの組み合わせにおいても高い移送効率(約90%以上)と高い細胞生存率(約95%以上)が維持されることを確認しました。

特に異種間移送では、外来由来の細胞内成分に起因すると考えられる一時的な増殖抑制が観察されたものの、培養を継続することで細胞は回復し、最終的には正常な増殖挙動を示しました。これは、本技術が細胞機能を致命的に損なうことなく、細胞間で細胞内成分を移送できることを示しています。

【ミトコンドリア移送による細胞機能の向上(図2)】
さらに本研究では、ナノチューブ径の違いがミトコンドリア移送および細胞機能に与える影響を検証しました。ナノチューブ径が0.6μm(内径は約310nm)の場合、ミトコンドリアのサイズに対してチューブ径が小さいため、ミトコンドリアの抽出および移送はほとんど起こらず、標的細胞におけるATP産生量の有意な変化は認められませんでした。

一方、ナノチューブ径を1.5μm(内径は約1260nm)とした場合には、ミトコンドリアを効率的に抽出・移送することが可能となり、標的細胞内にミトコンドリアが実際に取り込まれていることが確認されました。その結果、ミトコンドリアを移送した細胞では、移送後24時間以内にATP産生量が有意に増加し、細胞機能が明確に向上しました。

この結果は、単なる細胞内液の移送では細胞機能の改善は起こらず、機能性オルガネラであるミトコンドリアそのものを移送できた場合にのみ、細胞機能の向上が実現されることを示しています。

図2:ミトコンドリア移送による機能活性

(3)研究の波及効果や社会的影響

本研究成果は、細胞内成分移送を偶発的現象や特殊操作としてではなく、再現性・定量性を備えた操作技術として確立した点に社会的意義があります。抽出・保持・導入を同一プラットフォームで制御できる本技術は、さらなる自動化・制御機構を搭載することで、細胞操作の信頼性や評価基準の共有を可能とし、細胞を扱う研究・開発分野における操作技術の標準化と品質向上に資する基盤的成果ではないかと考えています。

(4)今後の展望

本研究で開発したナノ注射器は、生細胞から細胞内成分を抽出し、別の生細胞へ高効率に移送できることを実証した基盤技術です。今後は本技術の適用範囲を拡張し、さまざまな細胞種に対する再現性や安定性の検証を進めていく予定です。特に移植可能な細胞を用いた再生医療研究に取り組みたいと考えています。

一方、基礎研究として動物性細胞以外の細胞(植物、酵母、乳酸菌など)にも展開していきたいと考えています。これらを一研究室で実現することは困難ですので、本プロジェクトにご興味のある企業や研究機関との連携を模索していきたいと考えています。

(5)用語解説

※1 オルガネラ:
細胞内部に存在し、特定の機能を担う構造体の総称である。代表的なオルガネラには、エネルギー産生を担うミトコンドリア、タンパク質合成に関与する小胞体、物質の修飾・輸送を行うゴルジ体などがあり、細胞の機能や状態を支える重要な役割を果たしている。

※2 低スループット:
一定時間内に処理・解析できる試料数や対象数が少ないことを指す。細胞操作技術においては、1回の操作で扱える細胞数が限られている、あるいは操作に時間や熟練を要するため、多数の細胞を効率的に処理できない状態を意味する。

※3 カルセイン液:
蛍光色素であるカルセインを溶解した水溶液であり、物質の移動や透過性を可視化・定量評価するための試薬として広く用いられている。カルセインは水溶性が高く、細胞毒性が低いため、膜透過や流体移動の評価に適しており、本研究ではナノチューブ膜を介した物質通過量や圧力制御による移送挙動を評価する指標として用いられた。

※4 HeLa細胞:
世界で最も広く利用されているヒト由来の培養細胞株である。高い増殖能と安定した性質を有し、細胞生物学、がん研究、薬剤評価、細胞操作技術の検証など、基礎から応用まで幅広い研究分野で標準的なモデル細胞として用いられている。

※5 NIH-3T3細胞:
マウス胚由来の線維芽細胞から樹立された培養細胞株で、増殖性が安定しており、細胞増殖、分化、シグナル伝達、細胞操作技術の評価などに広く用いられている標準的なモデル細胞である。

(6)論文情報

雑誌名:Small Science
論文名:A Nanotube Injector for Cytoplasmic Transfer and Enhanced Mitochondrial Function
執筆者名:Bingfu Liu, Zhuhang Dai, Bowen Zhang, Kazuhiro Oyama, Chenxi Li, Yukun Chen,
Mingyin Cui, Takeo Miyake *責任著者
掲載日:2026年3月17日(火)
DOI:10.1002/smsc.202500598
掲載URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/smsc.202500598

(7)研究助成

科学技術振興機構(JST)
戦略的創造研究推進事業 さきがけ「電子・イオン制御型バイオイオントロニクス」(JPMJPR20B8)

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