アメリカ近代傑作短編集6 「まともな死に方」をする者は偉大な小説家になれない
ヘミングウェイ、ジャック.ロンドン、アンブローズ.ビアスの3人はジャ-ナリストとしても活躍した小説家だ。
と同時に、普通ではない死に方をした作家でもある。
アメリカの偉大な小説家の中には変死、不審死、消息不明といったまともな死に方をしなかった人物が多い。
3人の中でその死について最も有名なのが、ヘミングウェイだ。
猟銃を手入れ中に暴発して事故死したことになっているが、狩猟が趣味で腕利きのハンタ-でもあった彼が、猟銃の扱いを間違えて暴発したとは考えにくい。
ノ-ベル賞を受賞した後、極度のノーイロ-ゼにかかり自殺したというのが真相らしい。
栄光の頂点を極めた作家が、老齢とともに書けなくなるのは、死ぬことよりもつらいのだろう。
川端康成もノーベル賞受賞後、書けなくなったのを苦にして、ガス管をくわえて自殺した。
ジャック.ロンドンは「野生の叫び声」でその文名を高めたが、波止場の人足、あざらし船の水夫、金鉱の坑夫などをしながら、アメリカやカナダの大自然の中を放浪した経験が見事に結実している。
アメリカ人が理想とする「たくましい男」の典型として、圧倒的な大自然を相手に無謀ともいえる冒険を企てて、過酷な条件の中で必死に生きていこうとする人物を描いている。
彼の作品の中では有名な「焚火」がこの短編集には収められている。
ロンドン自身は「焚火」の主人公のように零下60度という極寒のユーコン川で息絶えたのではない。
40歳でモルヒネ自殺した。
アンブローズ.ビアスはヘミングウェイのように志願兵の経験があるが、兵士としては「飛び切り有能な戦士」であり続けた。
生まれつきの勇敢さと明敏な頭脳のおかげで、南北戦争を戦い抜いて、無傷で帰還した。
南北戦争の従軍体験から、戦争の不条理を冷静に描写する彼の作品は、日本の作家にも影響を与えた。
短編小説の名手芥川龍之介が「短編小説を組み立てれば、彼ほど鋭い技巧の持ち主はない」と称えている。
ビアスは1913年の秋、突如として革命下のメキシコに出かけ、そのまま行方不明となった。
彼の小説を読んだことがない人も「悪魔の辞典」の作者と聞けば聞いたことがあるだろう。
実は大学受験生の間でも「悪魔の辞典(英語版)」はファンがいて、東大英語入試問題の「英単語の意味を英語で説明する問題」対策の種本になっていた。
昔の東大受験生には、そんな教養人が多数いたのである。
傑作短編集には「行方不明者」が収められている。
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