国立感染症研究所との協定締結から10年が過ぎたことを記念し、下記の通り、シンポジウムを開催することになりました。
日時:2023年5月20日(土)13:00~17:00
場所:早稲田大学121号館 コマツ100周年記念ホールおよびzoomによる配信
プログラム:ポスターを参照してください。
当日はオンライン配信を行いますので、どなたにでもご参加いただけます。無料ですが、事前登録が必要ですので、下記URLから申し込みをお願いします。(5月19日12:00締切)
国立感染症研究所との協定締結から10年が過ぎたことを記念し、下記の通り、シンポジウムを開催することになりました。
日時:2023年5月20日(土)13:00~17:00
場所:早稲田大学121号館 コマツ100周年記念ホールおよびzoomによる配信
プログラム:ポスターを参照してください。
当日はオンライン配信を行いますので、どなたにでもご参加いただけます。無料ですが、事前登録が必要ですので、下記URLから申し込みをお願いします。(5月19日12:00締切)
株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元)と学校法人早稲田大学(本部:東京都新宿区、理事長:田中 愛治、責任者:宇髙 勝之 教授)は、AIの低消費電力化と高速化の実現を目指し、従来比で約17分の1の面積の光AIアクセラレーター用シリコン光回路を試作し、時系列データの予測を行うことに成功しました。AIの活用は拡大の一途をたどっており、莫大な数のコンピューターが必要とされています。KDDI総合研究所と早稲田大学はさらなる研究開発を進め、低消費電力、高速な光AIアクセラレーターの実用化に向けた基盤技術の確立を目指していきます。
自然な文章を生成するAIを使ったチャットボットが公開され、世界中の注目を集めています。このような最先端を走るAIを動作させるためには莫大な数のコンピューターが必要であり、消費電力の削減や処理の高速化が課題となっています。一般に用いられるAIは電子回路上で動作していますが、一部の演算を光回路に置き換える光AIアクセラレーターは、消費電力の削減に有効で、かつ学習や推論の高速化が可能なことから、研究開発が盛んになっています。
中でもシリコン上に形成した光回路は、電子回路や他の光素子との集積化が容易な上、小型化できると期待されています。一方で光アクセラレーターを実用化するには、大規模に集積しやすくする必要があり、より一層の小型化が求められています。
KDDI総合研究所と早稲田大学は、従来比で約17分の1の面積の光AIアクセラレーター用シリコン光回路を試作し、時系列データの予測を行うことに成功しました。シリコン上に光回路(面積:0.25mm×0.92mm)を試作し、性能比較のため標準的に用いられているタスクであるSanta Fe波形(注1)の予測をさせたところ、正解データと予測データの誤差が非常に小さく、その構造の有効性を示すことができました。
これまで研究されてきたシリコン上に形成した光回路では、AIのモデルの一つであるリザバーコンピューティング(注2)を動作させるために、現在の情報と過去の情報を混ぜ合わせる必要があり、以下のいずれかの構造を採用していました。
現在の情報と過去の情報が効果的に混ざるようなタイミングとするためにネットワークの節間の距離を確保する必要があり、素子面積が広くなる(16mm2)。ニューロン数(神経細胞数)を増やすとさらなる面積が必要。
進む速度が異なる光波が多数存在できるマルチモード光導波路の性質を利用して現在の情報と過去の情報とを混ぜ合わせるために長い(4cm程度)光導波路が必要とされる。渦巻き状に収容しても2mm ×2mm 程度の面積が必要。
今回の試作では、構造2に比べて導波路幅を2倍広くし、さらには蛇行状の導波路構造を採用して長さを調整することにより、短い導波路長でゆっくりと進む光波(高次モード)を多数発生させ、さらには信号の高速化することで現在の情報と過去の情報が十分に混ざり合うように設計しました。
なお、今回の成果は米国サンノゼで開催される光エレクトロニクス関連の総合的な国際学術会議CLEO2023(The Conference on Lasers and Electro-Optics)において採択され、2023年5月8日(現地時間)に発表します。
光AIアクセラレーターがさまざまなシーンで利用されるように、光回路の構造探索や規模拡大を進め、GPUベースのAIアクセラレーターに比べて10分の1の低消費電力、かつ高速な光AIチップの基盤技術の確立を目指します。
KDDI総合研究所は、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」を策定し、その具体化に向け、イノベーションを生むためのエコシステムの醸成に必要と考えられる「将来像」と「テクノロジー」の両面についてBeyond 5G/6Gホワイトペーパーにまとめました。新たなライフスタイルの実現を目指し、7つのテクノロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。今回の成果は7つのテクノロジーの中の「ネットワーク」に該当します。
早稲田大学では、現在全学でカーボンニュートラル社会を目指した研究教育体制の構築に取り組んでいます。その中で、一層進展する高度情報化社会のための低消費電力大容量ネットワーク技術と並んでAIなどの高度情報処理技術の高速化・低消費電力化が不可欠と考えており、シリコンフォトニクス集積回路(SiPIC: Si Photonic Integrated Circuits)を用いた光信号処理デバイス技術の検討と実証を目指しています。
(注1)1992年に米国のSanta Feで開催された時系列予測コンテストにおいて使用された時系列データで、不安定なレーザーから出力されたパワー変動を記録したもので、予測性能を評価するときに標準的に用いられるデータの一つ。
(注2)時系列データの予測に主に適用される機械学習の手法の一つで、入力層、リザバー層(ランダムにニューロンが接続された層)、出力層からなる構造を有する。学習により出力層の結合の重みだけを変える単純さが特徴で、それにより高速な学習が可能となる。
早稲田大学理工学術院の山本 誠一(やまもと せいいち)上級研究員(研究科教授)および片岡 淳(かたおか じゅん)教授らのERATO片岡X線ガンマ線イメージングプロジェクト(研究総括:片岡 淳教授)は、東北大学未来科学技術共同研究センターの吉野 将生(よしの まさお)准教授、鎌田 圭(かまだ けい)准教授、吉川 彰(よしかわ あきら)教授、矢島 隆雅(やじま りゅうが)大学院生、名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻の中西 恒平(なかにし こうへい)助教と共同で、高分解能放射線イメージング検出器を開発し、放射線の一種であるアルファ線が物質中を飛んでいる様子(飛跡)を短時間間隔の連続画像(リアルタイム画像)として可視化することに成功しました。アルファ線は、物質中では数十マイクロメートル程度と極めて短い距離しか飛ばないことから、アルファ線の物質中の飛跡をリアルタイムで観察することは、これまで不可能と考えられていました。今回、研究チームが新しいイメージング検出器を開発し、世界で初めてイメージングを可能にしたことで、今後、アルファ線を用いた放射線治療*2など、様々な科学分野への応用が期待されます。
本研究成果は、2023年4月26日(水)午前10時(英国時間・夏時間)にネイチャー・パブリッシング・グループのオンライン総合科学誌『Scientific Reports』で公開されました。
論文名:Development of an ultrahigh resolution real time alpha particle imaging system for observing the trajectories of alpha particles in a scintillator
DOI:10.1038/s41598-023-31748-9
アルファ線はX線やガンマ線などの放射線の一種で、最近では放射線治療の分野で注目されています。アルファ線は、物質中で飛んでから止まるまでの距離が数十マイクロメートルと極めて短い上に、放射線のエネルギーが高く、短い距離で大きなエネルギーを与えるので、細胞などが受けるダメージが大きいと考えられています。一方で、この性質を放射線治療に利用して、アルファ線を放出する核種をがん患者に投与して治療するアルファ線内用療法の研究も進んでいます。
アルファ線が放出される場所を短時間で特定し、飛ぶ範囲を確認するためには、アルファ線が物質中を線状に飛んでいる様子(飛跡)を観察する必要がありました。しかし、短時間間隔の連続画像(リアルタイム画像)で観察する技術は、これまで存在しませんでした。
今回の研究では、新しいイメージング検出器の開発により、アルファ線が実際に物質中を飛ぶ様子をリアルタイムで画像化することに成功しました。
開発したアルファ線飛跡イメージング装置では、図1のように、放射線が当たって光を放出する透明な材料(シンチレータ*3)にアルファ線を当てます。これまで、アルファ線がシンチレータに入射しても飛跡が短く発光も微弱なため、この発光から線状の飛跡を明瞭に画像化することは困難と考えられていました。今回、アルファ線の飛跡画像化に適したシンチレータを開発し、これに超高感度カメラと超高倍率の画像拡大装置を組み合わせ、アルファ線がシンチレータ中を飛んだときに発生する短い飛跡の微弱な発光を、細長い鮮明な線状の画像として得ることに成功しました。

図1 開発したイメージング装置の原理図:アルファ線入射によりシンチレータ中に生じる短く微弱な発光を、超高感度カメラと超高倍率画像拡大装置の組み合わせにより、細長い線状の飛跡画像として測定
その結果、図2のようにシンチレータ中のアルファ線の飛跡を、一秒以下の明瞭な連続画像として得ることに成功し、動画として観察できるようになりました。

図2 アルファ線が物質中を飛ぶ画像(0.5秒測定):白色の細長い部分がアルファ線の飛跡
開発した装置を用いると、粒子状のアルファ線放出核種からは、放射状に放出されるアルファ線画像が得られるものと期待されます。またアルファ線内用療法の細胞研究に応用すれば、腫瘍細胞などに取り込まれた核種から放出されるアルファ線の飛跡が画像化できる可能性もあります。
さらには、アルファ線の物質中の飛跡を、短時間の連続画像として画像化できるようになったことにより、高エネルギー物理実験分野などにも応用される可能性があります。今回のアルファ線飛跡の画像や動画は、霧箱*4のように一般の方にもイメージしやすく、放射線に関する科学教育などへの利用も期待できます。
今回得られた画像におけるアルファ線飛跡はいろいろな形状をしていますが、これはシンチレータへのアルファ線の入射角度が異なるためです。形状の違いを利用して、アルファ線がシンチレータに入射した角度が計算できるので、アルファ線飛跡の三次元分布評価も可能と考えています。またアルファ線画像の明るさから入射したアルファ線のエネルギーを求めることもできます。
一方で、本研究グループは、今回実験に用いたシンチレータの表面状態の改良を進めています。表面状態が悪いと光の散乱が起こり、画質が低下します。表面を滑らかにすることで、より鮮明にアルファ線の飛跡が見えるようになり、画像をさらに拡大することによって、今以上に細かいアルファ線飛跡構造を観察できる可能性があると考えています。
私たちはこれまで、長年に渡り、アルファ線が飛ぶところを光学的にリアルタイムで画像化できないかと考えていました。今回、シンチレータ中を飛ぶアルファ線を一秒以下の短時間間隔で画像化できるようになり、ようやく夢が実現しました。今後も次なる夢の実現に向けて、世界初の画期的な放射線検出器を開発し続けたいと考えています。
*1 アルファ線内用療法
アルファ線を放出する放射性物質を患者に投与して、がんを治療する方法
*2 放射線治療
がん患者を、放射線を用いて治療する方法。放射線の種類としては、X線やガンマ線、粒子線などが良く使われるが、最近はアルファ線を放出する放射性物質を患者に投与する治療方法の研究が進んでいる。
*3 シンチレータ
放射線が当たることにより発光する物質。放射線の検出や画像化するときに用いられる。
*4 霧箱
荷電粒子による電離により、気体中に分散している微粒子が集まり大きな粒子をつくる現象(凝結作用)を用いて荷電粒子の飛跡を検出する装置
雑誌名:Scientific Reports
論文名:Development of an ultrahigh-resolution, real-time alpha-particle imaging system for observing the trajectories of alpha particles in a scintillator
執筆者名:Seiichi Yamamoto1、Masao Yoshino2、Kei Kamada2、Ryuga Yajima2、Akira Yoshikawa2、Kohei Nakanishi3、Jun Kataoka1
1.早稲田大学 理工学術院
山本 誠一(論文責任著者)、片岡 淳
2.東北大学 未来科学技術共同研究センター
吉野 将生、鎌田 圭、吉川 彰、矢島 隆雅
3.名古屋大学 大学院医学系研究科総合保健学専攻
中西 恒平
掲載日時(英国時間・夏時間):2023年4月26日(水)午前10時
DOI:10.1038/s41598-023-31748-9
本研究は、戦略的創造推進事業 ERATO「片岡ラインX線ガンマ線イメージング」(R3~8年度;グラント番号 JPMJER2102)、科学研究費補助金基盤研究(B)「チェレンコフ光閾値以下のエネルギーの放射線照射による水の発光現象の医療応用」(R4~8年度;グラント番号22H03019)、および科学研究費補助金基盤研究(A)「マイクロ共晶体構造を応用した量子線弁別型超高解像度イメージング装置の開発」(R1~5年度;グラント番号19H00672)の支援を得て実施したものです。
2023年度 基幹・創造・先進理工学部一般入試(2月16、17日実施)の「数学」「物理」「化学」「生物」「空間表現」の記述解答問題について、出題の意図を公表いたします。
●2023年度理工一般 出題意図(数学)
●2023年度理工一般 出題意図(物理)
●2023年度理工一般 出題意図(化学)
●2023年度理工一般 出題意図(生物)
●2023年度理工一般 出題意図(空間表現)
※一般入試問題およびマーク解答問題の解答については、こちらを参照ください。
社会文化領域コース進入説明会を、2023年6月1日 (木) にオンラインで開催します。関心のある学生は、以下のポスターおよび社会文化領域ウェブサイト上の情報をよく確認し、必要な手続きをとってください。
2023年4月1日より本学に着任した理工学術院 先進理工学部 電気・情報生命工学科の水内良 専任講師らの論文が、2022年にNature Communications誌に掲載された生命・生物科学分野の論文のうち、もっともダウンロードされた25報である「Top 25 Life and Biological Sciences Articles of 2022」に選ばれました。生命・生物科学分野(Life and Biological Sciences)は、Nature Communications誌が設定した7つの分野:Health Sciences、SARS-CoV-2、Life and Biological Sciences、Social Sciences and Human Behaviour、Chemistry and Materials Sciences、Earth, Environmental, and Planetary Sciences、Physicsのうちのひとつになります。
【表題】Evolutionary transition from a single RNA replicator to a multiple replicator network
【著者】Ryo Mizuuchi, Taro Furubayashi and Norikazu Ichihashi
【誌名・巻号等】Nature communications, 13(1), 1460 (2022)
水内講師は「原始地球において生命がどのように生まれたか」という、生命の起源をひもとく研究、特に、RNAなどの単純な生体分子から複雑な生命システムが生まれる道筋について、その解明に取り組んでいます。理論的には、このような進化の複雑化は、新しい複製因子が次々と登場し、互いに影響しあって複製ネットワークを形成することで起こりえると考えられていますが、その実証は困難でした。
本論文では、単純化したRNA複製システムを試験管内に構築し長期的に進化実験を繰り返すことで、複製→複製エラーによる突然変異と新たな形質の獲得→特定の変異と形質を持つ複製体の増加による進化を観察しました。その結果、突然変異により複製酵素の遺伝子が壊れた「寄生体RNA」が出現すること、またそれらの寄生体RNAが正常な宿主RNAの複製を一部阻害するものの、継代サイクルを240回転しRNAが約600世代の進化を経た後には、宿主と寄生体が共存した5種類のRNAに分岐して安定し、互いに複雑な複製ネットワークを形成することを明らかにしました。
今後さらに、これら複製システムが置かれる場=進化が起こる環境(区画構造)を工夫することで、どのような環境で進化が促進されるか、あるいはより長いRNA構造の獲得につながるか等の検討を進めることができると考えられます。

図 試験管内で自己複製するRNAが複雑なネットワークへと進化する様子を示した模式図(画像提供:水内良)
主催:早稲田大学 各務記念材料技術研究所/環境整合材料基盤技術共同研究拠点
材料科学研究における計算の重要性は近年ますます高まっています。時間とお金をかけた実験でなくても、計算によってある程度の精度で材料特性の予測が可能になりつつあること、また実験で得られるデータ量が膨大となり、シミュレーションを含めた数値解析が必須となっていること、などが理由です。
早稲田大学材料技術研究所はこれまでに、学外者向けの材料科学のセミナー(オープンセミナー、教育プログラム)を定期的に開催してきた実績があります。こうした経験を生かし、2021年度から、文部科学省の共同利用・共同研究拠点として計算材料科学連続セミナーを実施しております。
本セミナーでは、構造材料をターゲットにしたミクロからマクロにわたる幅広いスケールでの有限要素シミュレーションに関する基礎と応用について、セミナーを実施いたします。具体的には、有限要素法のプログラムの基礎となっている理論的背景から、金属加工のための非線形解析、性能を最大限に発現させるトポロジー最適化、複合材料の均質化法に基づくマルチスケールシミュレーション手法について適用事例を交えながら4名の先生に解説頂きます。
(2023年度後期は「化学材料」の第2シリーズが開催される予定です。)
計算材料科学連続セミナーの構造材料第2シリーズは、4回に分けて開催いたします。
各回の開催日時、講演タイトル、および講師(敬称略)は以下の通りです。
第1回
5/12(金)10:00-16:00 ※12:00‐13:00 昼休憩
「有限要素法の基礎と複合材料への応用」
末益 博志(上智大学名誉教授)
第2回
6/1(木)13:00-15:30、6/2(金)13:00‐15:30 ※計300分
「金属材料加工のための非線形有限要素シミュレーション」
浜 孝之(京都大学 エネルギー科学研究科 エネルギー応用科学専攻 資源エネルギー学講座 教授)
第3回
6/13(火)10:00-16:00 ※12:00‐13:00 昼休憩
「トポロジー最適化の基礎と積層造形及び複合材料開発での活用について」
竹澤 晃弘(早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 機械科学・航空宇宙学科 教授)
第4回
7/3(月)13:00-15:30、7/4(火)13:00‐15:30 ※計300分
「均質化法/有限要素法に基づく先進構造材料のマルチスケールシミュレーション」
松田 哲也(筑波大学 理工情報生命学術院 システム情報工学研究群 構造エネルギー工学 准教授)
オンライン(Zoomミーティング利用)
| 講演タイトル 日時 |
講師(敬称略) | 講演内容 |
| 第1回 「有限要素法の基礎と複合材料への応用」 5/12(金) 10:00-16:00 ※12:00‐13:00 昼休憩 |
末益 博志 |
近年構造・材料設計に有限要素法が広く利用されている。有限要素法で正しい解が導かれるには、数学理論に基づいて膨大なプログラムが構築されているからであり、また数学的に保証されているので新規な手法の導入が可能になった。本セミナーではこのプログラムの基礎になっている変分原理とのかかわりを解説する。本セミナーの後半では有限要素法が複合材料の構造問題にどのように使われているのかを概説し、複合材料の問題の理解と有限要素法の効用に関して解説する。 |
| 第2回 「金属材料加工のための非線形有限要素シミュレーション」 6/1(木) 13:00-15:30 6/2(金) 13:00‐15:30 ※計300分 |
浜 孝之 |
自動車をはじめとする輸送機器では、軽量化に資する素材と加工プロセスの適用拡大が喫緊の課題であり、シミュレーションを用いた工程設計支援が不可欠となっている。本講義では、金属材料加工のための有限要素シミュレーションについてその基礎的な考え方を概説する。また、昨今注目されている結晶塑性モデル(結晶粒レベルの微視変形に基づき巨視的変形を予測するマルチスケール解析手法)についても、その基礎と適用事例を紹介する。 |
| 第3回 「トポロジー最適化の基礎と積層造形及び複合材料開発での活用について」 6/13(火) 10:00-16:00 ※12:00‐13:00 昼休憩 |
竹澤 晃弘 |
近年、積層造形技術が著しく発展し、ものづくりでの活用法が活発に検討されている。従来の製造法では難しい複雑な形状でも製造できることから、性能と見栄えの良い構造を創出する手段として、構造最適化、特にトポロジー最適化が関連技術として注目を集めている。本講義では、このトポロジー最適化の基礎について解説するとともに、積層造形品及び複合材料の設計に活用した例を紹介する。 |
| 第4回 「均質化法/有限要素法に基づく先進構造材料のマルチスケールシミュレーション」 7/3(月) 13:00-15:30 7/4(火) 13:00‐15:30 ※計300分 |
松田 哲也 |
複合材料等の先進構造材料は、μmオーダーのミクロ構造から、mmオーダーのメゾ構造、さらにはmオーダーのマクロ構造まで、多階層的なマルチスケール構造を有しており、その特性解析・構造解析にはマルチスケールシミュレーションが有用である。本セミナーでは、均質化法/有限要素法を用いたマルチスケールシミュレーション手法について解説するとともに、複合材料等への適用事例を紹介する。 |
以下の要件を満たした方には「受講修了証」を発行いたします。
・第1回から第4回まですべての回を受講すること。
・第4回受講終了後、所定のアンケートに回答すること。
参加費:無料
申込フォーム:こちらのページから
4回全部に参加しても、個別の回に参加しても、どちらでも結構です。
受付期間は各回の日程の1週間前の17:00までです。※第1回のみ5/8(月)17:00締切
早稲田大学 各務記念材料技術研究所 [email protected]
早稲田大学各務記念材料技術研究所
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-8-26
TEL 03-3203-5166 FAX 03-5286-3771
2023年現在、地球温暖化の原因と考えられている温室効果ガス削減に向け、「カーボンニュートラル」が世界的潮流となっています。カーボンニュートラル実現に向けた方策のひとつに挙げられるのが、水素の利用です。再生可能エネルギーを利用して水素を製造し、燃料電池等を用いて電気や熱エネルギーを取り出す。その反応過程において、二酸化炭素は発生しません。第19回(令和四年度)日本学術振興会賞を受賞した先進理工学部の花田信子 専任講師は、水素を利用しやすくするための水素吸蔵・放出材料やその工業化プロセスを研究しています。研究テーマを選んだきっかけや、取り組みについて伺いました。(取材日:2023年2月9日)
高校生の頃から、じっくりと考え、解くことで答えを導き出すことができる物理や数学が好きでした。大学受験に至っても、物理も数学も好きなままで、最後までどちらにも決めきれなかったため、入学後に専門を決められる大学を選びました。専門を決める契機は、いざ入学し、さてどうしようか、と思いながら何気なく履修した教養の授業。燃料電池の実用化に向けた水素吸蔵の話を聞き、物理に進んだら学問を社会に活かすためのモノづくりができるのではないかと、興味をもちました。卒業研究配属で、水素吸蔵の講義をしていた先生の研究室に入り、現在に至るまで、水素吸蔵をキーワードに未来のエネルギー問題について考え、試行錯誤する日々を送っています。
卒業研究では、水素吸蔵材料であるマグネシウム(Mg)合金について、混合条件の最適化を研究することにしました。学会発表等の経験を積んで研究が楽しくなり進んだ大学院では、材料を水素化マグネシウム(MgH2)に絞り、その特性を向上させる研究を進めました。
MgH2は、重量あたりの水素吸蔵量は大きいものの、表面活性が低く水素吸蔵・放出反応速度が遅いことが欠点で、特性向上のために触媒を添加する必要がありました。当初は、触媒材料として鉄やコバルト、ニッケル等の金属ナノ粒子を用い、短時間のボールミリング法でMgH2と合成する手法を研究していました。良い成果をまとめられたので、さらに良い材料がないかと検討していたところ、金属酸化物でも触媒機能が発現するという報告を読み、Nb2O5を試してみることにしました。従来はボールミリングの時間を短縮できることをメリットと考えていましたが、Nb2O5については、長時間行った場合にのみ十分な触媒特性が得られる、という結果になりました。なぜ長時間必要なのかと、化学状態や分布状態を丁寧に評価してみたところ、Nb2O5がMgH2によって還元されてNbO等になり、それがMgH2表面にナノレベルで均一に分散されて、触媒機能を発現していることが分かりました。さらに、水素放出特性については、これまで400度程度に温度を上げる必要があったところ230度まで上げれば動作し、水素吸蔵特性では、通常300度前後で動作させるところ、室温での動作確認ができたのです。反応速度も十分であり、これだ、という結果が得られた瞬間でした。

触媒添加したMgH2の水素吸蔵放出特性
博士号取得後は、扱う材料を少しずつ変えたり、より大容量の水素を得るために液体アンモニア(NH3)の電気分解に挑戦したり、さらには水素精製・貯蔵システム設計運用に取り組んでみたりしながら、評価・分析技術を磨いていきました。
早稲田大学には2017年に着任し、現在は、アンモニアや水素吸蔵合金を中心に実用化に向けたプロセスの改善を進めています。また、Mgの研究を再開するに至りました。そのひとつとして、ボールミリング法以外で同等の性能が出せる触媒添加Mgを作製する手法を探索しています。最終的に目指す姿・性能は見えていますので、そこに近づけるための要件をひとつずつ探しているところです。
また、もう一つのプロセス改善方針として、スケールアップのための水素貯蔵タンクの研究も進めています。大学の実験室では1g程の分量で試料を作り各種計測・分析を行っていますが、工業的には100kgやトン単位での製造が必要になります。1gのMgH2の粉であれば気になりませんが、100kgとなると、反応の過程での発熱・吸熱反応も無視できず、一定温度にするために、熱を取り除いたり加えたりする必要があります。また、MgH2は水素吸蔵・放出の過程で膨らんだり縮んだりしますが、くり返しにより試料がボロボロに割れて微粉化する現象が起こります。試料を入れたタンクの中で微粉化した粉が隙間を埋めて詰まり、ガチガチに固まってしまう結果、水素吸蔵・放出特性が落ちたり、タンクが割れてしまったりするという問題が起こります。この改善のため、溶液中でカーボンナノチューブとMgH2を混合してろ過し、乾燥させて薄いシート状にした試料を用いる手法を開発しています。
カーボンナノチューブは、直径が数ナノメートル、長さが数マイクロメートルの細長いチューブ状の材料で、MgH2はこのチューブの束の間でうまくからめとられるようにして固定されます。MgH2粒子は数マイクロメートルオーダーと、カーボンナノチューブと比べると大きいため、水素吸蔵・放出により割れて微粉化しても、カーボンナノチューブの束にからめとられたまま、動いたり落ちたりしないことが確認できています。さらに、タンクの中に入れたシート状試料に温度調節した水素ガスを直接送り込むことで、効率よく温めたり冷やしたりすることが可能となります。従来はタンクの外側からヒーター等で温度調節していたのですが、タンク自体を温めたり冷やしたりすることになるため効率が悪かったのです。また、水素ガスを用いることで、ガスとしての不純物も混ざらない、というメリットもあります。

水素を熱媒体としたMgH2水素貯蔵タンクの構造
早稲田大学は私立大学でありながら、研究のレベルが高く、その一端を担っている学生の能力も高いです。学生同士での議論も活発で、その中から生まれる面白いアイデアが研究の幅を広げてくれます。学生自身が主体的に自分で課題を考え、解決する方法を考えられるように導くことができれば、教育者冥利に尽きますね。その方法は、学生ひとりひとり異なっており、個性に寄り添いながら、見つけていきたいと思っています。また、様々な計測機器を有する物性計測センターも研究を進める上での大きな力になっています。センター技術職員の中には、博士号を持っている方もいて、ある程度研究を理解して対応してくださるので、非常に助かっています。学生が機器を使う際にも、たくさんのアドバイスをしてくださいます。
このような良い環境に身を置けていますので、全力で社会の役に立つ研究を進めていきたいと思っています。

学生たちと議論する様子
花田 信子(はなだ のぶこ)
広島大学大学院先端物質科学研究科量子物質科学専攻博士課程修了、博士(学術)取得。広島大学自然科学研究支援開発センター 産学連携研究員、ドイツ・カールスルーエ研究所ナノテクノロジー研究所 客員研究員、上智大学理工学部機能創造理工学科 研究プロジェクトポストドクター、筑波大学大学院システム情報工学研究科構造エネルギー工学専攻 助教を経て、2017年から早稲田大学先進理工学部応用化学科 講師、2021年から現職。専門は機能材料工学、プロセスシステム工学。第19回(令和4(2022)年度)日本学術振興会賞受賞。
早稲田大学大学院情報生産システム研究科の高松 泰輝(たかまつ たいき)助手、三宅 丈雄(みやけ たけお)教授の研究グループは、新しい原理の無線回路(パリティ時間(PT)対称性共振結合回路(並列接続))を開発し、センサ感度が2000倍に改善することを確かめました。本システムは、検出器側に負性抵抗を搭載することで効果を得るため、従来型センサ回路をそのまま利用できる特徴を有しています。本技術によって、これまで計測が困難であった涙中糖度(0.1 – 0.6 mM)の無線計測を実現しました。すなわち、健常者(平均値0.16±0.03 mM, 0.1-0.3 mM)と糖尿病患者((平均値0.35±0.04 mM, 0.15-0.6 mM)を数値で評価することが可能であり、世界で失明原因第1位の糖尿病網膜症の治療効果や予防に貢献し得るものとして期待されます。さらに、皮膚を介した血中乳酸の計測も本計測システムで実現したため、2.0mM以上で致死率が増加する敗血症のモニタリングへの応用も期待されます。
本研究成果は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)大学・エコシステム推進型大学推進型、東電記念財団、カシオ科学振興財団、キヤノン財団の助成によって実施されたものであり、「Advanced Materials Technologies」に4月8日(土)にオンライン版で公開されました。

微弱な生体信号を無線で測る新しい原理の共振結合回路システム
コンタクトレンズは、屈折異常を矯正して視力を補強するウェアラブルな高度医療機器としての利用が一般的でしたが、近年、これらレンズと電子デバイスを組み合わせた「スマートコンタクトレンズ」の開発が盛んです。その使途用途は、主に①視覚拡張機器、②生体情報計測機器、③疾病治療機器に大別され、これら新市場に向けた材料・デバイス・システム開発が進んでいます(図1)。これまでに、米国やスイス等の新興企業から幾つかのプロトタイプ(スマートコンタクトレンズ)が開発されてきました。しかし実用化が進まない主な要因は、無線システムの設計にあり、この仕様をどうするかによって性能(センサ機能、検出方式および消費電力)と価格(センサレンズ、無線計測器、レンズ素材)が大きく異なるためです。

図1:スマートコンタクトレンズにおける新産業創出
このような背景の中、三宅研究グループは、量子効果を取り入れたパリティ・時間(PT)対称性共振結合回路(Gain-Loss結合回路、並列接続)を新たに開発することで共振結合系の高Q値化※1を実現し、共振回路型バイオセンサ(化学抵抗器:数百 Ω)における微弱な抵抗変化(数Ω,これまでは計測が困難な信号)を増幅しながら測る無線計測システムを開発しました。例えば、涙に含まれる糖度(グルコース)を計測する場合、計測対象は微弱な信号変化(0.1~0.6 mM)となるため、既存技術(Loss-Loss 結合回路)における読み取りでは、グルコース濃度に伴う共振特性の変化率(感度)を読み取ることが極めて難しいものでした。一方、Gain-Loss 結合回路を用いた場合、結合系のQ値を理想的に高くすることができるため、高感度な無線計測が実現可能です。しかしながら、既存技術の回路系(直接接続)では、センサ側に溶液抵抗を含む高抵抗な糖度センサ(化学抵抗器(R1):数百 Ω)を直接組み込むことはできず、よって微弱な抵抗変化(r:数Ω)を共振回路特性に反映することは困難でした。
今回、三宅研究グループでは、Gain-Loss結合のセンサ側に2極式バイオセンサ(化学抵抗器)を並列に接続することで、共振回路の振幅変調(AM)を成し遂げました。また、並列接続共振回路におけるパリティ・時間(PT)対称性について理論的な成立を証明し、実験的に結合系Q値の増加(高感度化)、および、微弱な生体信号を無線で計測するに成功しました(図2)。

図2:従来回路および新回路による計測システム
涙に含まれる生化学成分は、夾雑物を多く含むため、一般的に、反応選択性を有する酵素電極が用いられます。しかし、涙中糖度は、濃度が極端に低いため(0~0.5 mM)、得られる信号が微弱です(抵抗値変化が小さい)。既存技術(古典的なLoss-Loss共振結合回路)では、これを無線で測ることは非常に困難であるため、センサの特性を示すのみに留まり、無線で測るまでには至っていないのが現状でした(図2左図:従来法)。そこで、三宅研究グループで開発した繊維型酵素センサを新回路に組み込むことで、無線で高感度に計測することに成功しました(感度:2000 Ω/ 0.1mM、図2右図、図3:提案手法)。その結果、0.05 mM単位の糖度を見分けることが可能となるため(健常者の糖度: 0.05-0.2 mM、糖尿病患者の糖度: 0.15-0.5 mM)、糖尿病患者(現在までに1000万人以上いる)の健康管理に利用できることに加え、国内では失明原因第2位、グローバルでは失明原因第1位の糖尿病網膜症の無線計測が実現できることを実証しました。本システムは、センサ側の抵抗値(R1)と極性の異なる負性抵抗(-R2、ただし|R1 |=|R2 |)を検出器に設置するのみで良いため、既存のセンサをそのまま利用できことが特徴です。また、センサ側に電源を設置することが不要となるため、使い捨てレンズなどの消耗品センサの単価を抑えることが可能となります。なお、本無線計測システムは、ヒトのみを対象とするものでなく、犬などのペット産業にも応用することができます。

図3:従来法と新手法による糖度の無線計測
さらに、本無線計測の仕組みは、上述した体表計測に加え、体内への応用にも技術的優位性を示します(図4)。一般的に、体内埋め込みデバイスへの無線給電および無線計測を実現する際、皮膚において交流電場のエネルギー吸収が生じるため(誘電損失)、給電効率および計測感度が著しく低下します。実際に、市販のヒト皮膚を用いてエネルギー損失を確認したところ、皮膚によって計測インピーダンスが1/4低下し、さらに、無線計測(血中乳酸濃度)の感度が低下することを確認しました。

図4:皮膚を介した無線計測への応用
一方、PT対称性の仕組みを利用すると、皮膚抵抗を加味した負性抵抗を調整(チューニング)できるため、高いセンサ感度を維持させたまま無線計測が可能となります。
今回の研究により、高感度で高利得な無線センサおよび計測システムを構築することに成功しました。ここでは、敗血症(乳酸アシドーシス)のバイオマーカーで知られる血中乳酸を測定対象とし、敗血症が疑われる患者の乳酸濃度(0-4.0 mM)を無線で測れることを確かめました。従って、本技術は、従来技術と比較して高感度・高利得などの技術的優位性を持ち、かつ、体表および体内埋め込みなど目的とする無線計測システム(センサ・リーダ・システム)として、幅広く利用することができます。
今後はこの研究成果の事業化に向け、本計測レンズを用いて医学部眼科の先生と共同で臨床試験に取り組んでいきます。また、本プロジェクトにご興味のある企業からのお問い合わせをお待ちしています。
※1 共振結合系の高Q値化
共振回路における共振のピークの鋭さを表す値「Q」(Quality factor)が大きいほど、共振回路の損失が少ない回路を実現できたと言えます。
雑誌名:Advanced Materials Technologies
論文名:Wearable, Implantable, Parity-Time Symmetric Bioresonators for Extremely Small Biological Signal Monitoring
執筆者名(所属機関名):Taiki Takamatsu, Y. Sijie, Takeo Miyake(Waseda University)
掲載日時:2023年4月8日(土)
掲載URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/admt.202201704
DOI:10.1002/admt.202201704
日本医療研究開発機構 官民による若手研究者発掘支援事業(Grant Number JP20he0422009j0001)、研究成果展開事業大学発新産業創出プログラム(START)大学・エコシステム推進型大学推進型、東電記念財団、カシオ科学振興財団、キヤノン財団
このたび、早稲田大学の研究者5名が、科学技術分野で顕著な功績があったとして、「令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」を受賞しました。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に携わる者の意欲向上を図り、日本の科学技術水準の向上に寄与することを目的としており、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者に対し授与されています。
今後も本学では、中長期計画「Waseda Vision150」における研究ビジョンである「世界の平和と人類の幸福に貢献する研究」の実現に向け、未来をイノベートする独創的研究の促進を図ってまいります。
| 氏名 | 所属・役職 | 業績名 |
| 尾形 哲也 | 理工学術院・教授 | 深層予測学習によるロボットのマルチタスク学習に関する研究 |
| 柴田 重信 | 理工学術院・名誉教授 | 時間栄養と時間運動の確立と健康科学への応用研究 |
| 竹山 春子 | 理工学術院・教授 | シングルセル技術による環境有用微生物の深層解析研究 |
| GUEST Martin Andrew | 理工学術院・教授 | tt*方程式および量子コホモロジーに関する一連の研究 |
| 氏名 | 所属・役職 | 業績名 |
| 水内 良 | 理工学術院・専任講師 | 自己複製分子システムを用いた原始生命進化に関する研究 |
早稲田大学大学院先進理工学研究科博士1年の三瓶 大志(さんぺい ひろし)氏・七種 紘規(さえぐさ こうき)氏ならびに同大理工学術院の関根 泰(せきね やすし)教授らの研究グループは、慶應義塾大学理工学部の田中 宗(たなか しゅう)准教授、ENEOS株式会社とともに、次世代コンピューティングの一つであるアニーリング方式に属する富士通株式会社の量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」を用いて、固体表面への分子吸着を予測することに成功しました。量子インスパイアード技術を固体表面への分子吸着予測に活用する取り組みは世界初となります。
今回、「デジタルアニーラ」を用いて、組合せ爆発を起こさずに吸着配位を高速に探索する新しい方法を開発しました。本手法では、特に多くの分子が吸着している領域において、従来法よりもはるかに高速に、安定な分子配置を発見できることがわかりました。一例として、従来は38601秒かかっていた16分子の吸着の予測を、準備時間(1回のみ必要)2154秒と、「デジタルアニーラ」による計算132秒だけで完了でき、圧倒的な高速性を示すことができました。

今回の研究の位置づけ
また、得られた結果を株式会社Preferred NetworksとENEOS株式会社が共同で設立した株式会社Preferred Computational Chemistryが提供する汎用原子レベルシミュレータMatlantisで解析した結果、本手法による予測が正しいことがわかりました。この手法により、特に分子配置の組合せが多い複合材料や大規模モデリングにおいて、正確かつ高速に最適な配置を予測することが可能になります。
本研究成果は、2023年3月27日(現地時間)にアメリカ化学会の『JACS Au』のオンライン版で公開されました。
論文名:Quantum Annealing Boosts Prediction of Multimolecular Adsorption on Solid Surfaces Avoiding Combinatorial Explosion
DOI:10.1021/jacsau.3c00018
分子の表面への吸着現象は、触媒反応など多様な分野において必ず発生する重要な過程です。これらは理論計算を行うことで、原子レベルで触媒反応や吸着を捉えることが可能でした。このような理論計算により分子や原子の吸着に注目して触媒性能を評価する研究はこれまでにも多く存在しています。しかしこれら理論計算は、少ない分子の計算による精密な計算が主であり、分子の数が増えると組合せ爆発が起こるため、膨大な時間がかかることが課題でした。
このように網羅的に高被覆率の吸着構造の探索を行うことは、正確な評価ができるが分子数に対して指数関数的な時間がかかります。一方、逐次探索による被覆率の影響評価は、少ないコストで済むが不正確なモデル構築で仮定して進めるため、正確性に欠けることが知られています。そこで研究グループは、富士通株式会社が有する組合せ最適化問題に特化したアニーリング方式に属する量子インスパイアード技術である「デジタルアニーラ」を活かして、表面化学分野における分子の吸着を予測することができないかと考え、取り組んできました。
今回研究グループが開発した手法を図に示します。アニーリング方式では、最適化の対象となる式をQUBOと呼ばれる形式で記述する必要があります。そのためには固体表面への多分子の吸着という多値変数を、複数の2値変数で表現しなければなりません。このような中で、独自に吸着構造をQUBOと呼ばれる形式のモデルへと転換する手法を構築し、さらにそれを「デジタルアニーラ」によって解くことで、最適な構造を短い時間で計算して予測することが可能になりました。
本手法は、特に多くの分子が吸着している領域において、従来法よりもはるかに高速な探索と安定な分子配置を発見できることがわかりました。一例として、従来は38601秒かかっていた16分子の吸着の予測を、準備時間(1回のみ必要)2154秒と、「デジタルアニーラ」による計算132秒だけで完了でき、圧倒的な高速性を示すことができました。

また、得られた結果を株式会社Preferred NetworksとENEOS株式会社が共同で設立した株式会社Preferred Computational Chemistryが提供する汎用原子レベルシミュレータMatlantisで解析した結果、本手法による予測が正しいことがわかりました。これは、元の構造さえわかっていればモデルを組めるため、ニューラルネットワークポテンシャル※3による答え合わせが可能なことによります。この手法により、特に分子配置の組合せが多い複合材料や大規模モデリングにおいて、正確かつ高速に最適な配置を予測することが可能になります。
今回の発見は、触媒反応や材料の合成などの多様な表面が関わる化学において、多くの分子の吸着を高速に正確に行うことができるという革新的な手法を作り上げ、次世代のコンピューティングを活かした化学の予測という新分野を開拓します。
本研究は次世代コンピューティングの一つであるアニーリング方式を化学に用いた最初の報告です。今後、分子の傾きなどを組み入れて、多様な分子の吸着を予測できるように開発を続けていきたいと考えています。
これまでの計算化学は正確ですが時間がかかることが課題でした。「デジタルアニーラ」は次世代コンピューティングの一つとして注目されており、組合せ最適化問題を解く手法として優れていることが知られ、物流分野などでは最近多く用いられてきています。これを化学における吸着に応用しようというのは初めての取り組みであり、困難を伴いましたが、多様なアイデアの組み合わせで実現することができました。今後のカーボンニュートラルに資する新たな化学反応の予測にこれらを応用していきたいと考えています。
※1 量子インスパイアード技術
量子現象に着想を得たコンピューティング技術で、現在の汎用コンピュータでは解くことが難しい「組合せ最適化問題」を高速で解く技術
※2 Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer(デジタルアニーラ)
現在の汎用コンピュータでは解くことが困難な組合せ最適化問題を高速に解く富士通独自の量子インスパイアード技術。https://www.fujitsu.com/jp/digitalannealer/index.html
※3 ニューラルネットワークポテンシャル
従来からある原子シミュレータに対して、深層学習モデルを組み込むことで、原子スケールで分子や材料の挙動を再現して大規模な計算・予測・探索を行うことができること。
雑誌名:JACS Au
論文名:Quantum Annealing Boosts Prediction of Multimolecular Adsorption on Solid Surfaces Avoiding Combinatorial Explosion
執筆者名(所属機関名):Hiroshi Sampei#*1, Koki Saegusa#*1, Kenshin Chishima*1, Takuma Higo*1, Shu Tanaka*2, Yoshihiro Yayama*3, Makoto Nakamura*4, Koichi Kimura*4, and Yasushi Sekine*1
*1 早稲田大学
*2 慶應義塾大学
*3 ENEOS株式会社
*4 富士通株式会社
掲載日(現地時間):2023年3月27日
掲載URL:https://doi.org/10.1021/jacsau.3c00018
DOI:10.1021/jacsau.3c00018
研究費名:環境省
研究課題名:令和4年度地域資源循環を通じた脱炭素化に向けた革新的触媒技術の開発・実証事業
(革新的多元素ナノ合金触媒・反応場活用による省エネ地域資源循環を実現する技術開発)
研究代表者名(所属機関名):関根 泰 教授(早稲田大学理工学術院)
早稲田大学(東京都新宿区、総長:田中愛治)ナノ・ライフ創新研究機構の小島秀子(こしまひでこ)招聘研究員と、同大理工学術院の朝日透(あさひとおる)教授、同大学大学院先進理工学研究科4年(一貫制博士課程4年)・日本学術振興会特別研究員(DC1)の萩原佑紀(はぎわらゆうき)らの研究グループ(以下、本研究グループ)は、東京工業大学(東京都目黒区、学長:益一哉)物質理工学院の森川淳子(もりかわじゅんこ)教授らと、結晶に光を当てることで固有振動が起きて高速屈曲が生じることを発見しました。さらにこの固有振動と同じ周波数の光を与えることで、共振により屈曲が大きく増幅することを世界で初めて発見しました。今回の共振固有振動を用いることで、汎用性の高い高速結晶アクチュエータやソフトロボットの実現が期待されます。
本研究成果は、Springer Nature社発行による『Nature Communications』誌のオンライン版に2023年3月13日(月)(現地時間)に掲載されました。
論文名:Photothermally induced natural vibration for versatile and high-speed actuation of crystals
光や熱などの外部刺激を動きに変換する「メカニカル結晶」は、軽くて柔らかいアクチュエータ※1やソフトロボット※2への応用が期待されています(参考文献1)。私たちは過去15年間、結晶を動かす原理として、光異性化※3(参考文献2)や相転移※4(参考文献3)に注目して、多数のメカニカル結晶を開発しました。しかし、光異性化や相転移する結晶は数が限られています。特に、光異性化については屈曲する動きが遅く(数秒)、厚い結晶は屈曲しないといった問題点がありました(参考文献4)。
本研究グループは2020年、光熱効果※5によって厚い結晶が25 Hzの高速で屈曲することを発見しました(参考文献5)。その後、別の結晶を用いて、光熱効果による屈曲の機構をシミュレーションにより明らかにしました(参考文献6)。しかし、この光熱効果による屈曲は小さく(0.2–0.5度)、大きな動きを創出することが課題でした。
物体に外力を加えると、特有の周波数(固有振動数)で振動し続ける現象を固有振動といいます。この固有振動と同じ周波数の外力を加えると、共振と呼ばれる現象が発生して、振動が増幅されます。例えば、地震の際、建物の固有振動数と地震の周波数が一致すると共振して激しく揺れ、倒壊する恐れがあります。ギターやサックスなどの楽器は、弦やリードの動きで音(振動)を作り、箱や筒の中で共振させることで音を増幅しています。このように固有振動は私たちの日常に広く関わっていますが、動く材料を創るという観点では注目されていませんでした。
本研究の最初の目的は、熱膨張の大きい有機結晶に注目して、光熱効果による大きな屈曲を創出することでした。その研究中に、100ミリ秒で1.2度の光熱効果による大きな屈曲と同時に、390 Hzの高速で0.1度の微小な固有振動が起きていることを初めて発見しました(黒、図1a)。驚くことに、この固有振動と同じ390 Hzのパルス光を照射すると、共振により固有振動が3.4度に増幅されました(黒、図1b)。つまり、共振固有振動によって、結晶の高速で大きな屈曲が創出できることを世界で初めて発見しました。
この仕組みを解明するため、本研究グループは、光熱効果による熱が結晶内を伝導してできた温度勾配により結晶が変形し、同時に生じた熱応力※6が結晶の振動を起こすという機構を仮定し、結晶の屈曲をシミュレーションしました。その結果、共振を伴わない屈曲と共振により増幅された屈曲の両方を再現することができました(赤、図1a, b)。
さらに、結晶の形状を変えると200–700 Hzの様々な共振固有振動が観察され、長く薄い結晶では「大きい屈曲」が、短く厚い結晶では「素早い屈曲」が創出できることがわかりました(図2a)。この共振固有振動について屈曲速度とエネルギー変換効率(光→屈曲運動)を、光異性化、光熱効果、非共振固有振動による屈曲と比較した結果、最も速い屈曲速度(0.2–0.7 m s-1)かつ最も高いエネルギー変換効率(~0.1 %)が得られることがわかりました(図2b)。
正確な周波数のパルス光を照射するため、電子工作に広く用いられているArduino※7による制御システムを構築しました。光熱効果と固有振動の合わさった屈曲をシミュレーションするため、物体のあらゆる物理現象の計算に適している有限要素法※8を用いました。
本研究において共振固有振動によって結晶を高速で大きく屈曲させられることを初めて発見し、シミュレーションによる再現にも成功しました。固有振動の共振に注目することで、あらゆる結晶を高速で大きく屈曲させることが可能です。また屈曲はシミュレーションできるため、結晶の種類やサイズ、光の照射条件などを変えれば望みの動きを設計することができます。
最終的にはこれまでの光異性化や相転移では難しかった、汎用性の高い高速結晶アクチュエータやソフトロボットの実現に期待が高まります。このような実用化へのアプローチにより、ヒトとロボットが融和して日常的に触れ合う、未来社会の創成に貢献できます。
現状、固有振動で結晶が動く例はまだ本研究の1例のみなので、今後は別の結晶についても検討し共振固有振動の汎用性について実証する必要があります。さらに高速な固有振動を起こすことが出来れば、幅広い応用先の考案につながるため、高い固有振動数を持つヤング率※9の高い結晶に注目し検討する必要があると考えます。
光で動く結晶はこの15年間で多数報告されてきました。今回、本研究グループの発見により、共振固有振動を用いてあらゆる結晶を高速で大きく動かせることがわかりました。本研究により、メカニカル結晶は実際にアクチュエータやソフトロボットへ実用化する段階に進んだと考えています。今後はアクチュエータやソフトロボットへの応用にも挑戦し、基礎研究から実用化まで、幅広く研究を展開したいと思います。
光や電気といった入力信号を動きに変換する素子。
金属など固い材料を用いず、柔らかい材料のみからなるロボット。
ある分子が光を吸収して別の分子に変化すること。
光や熱などにより、材料がある状態から別の状態に変化すること。
物質が光を吸収して熱を発生すること。
材料が熱的に膨張することで生じる力。
電気機器を制御するコンピュータの一種。
物理現象を近似的に解くための数値解析手法。
材料の変形しにくさを表す物性値。
【参考文献】
雑誌名:Nature Communications
論文名:Photothermally induced natural vibration for versatile and high-speed actuation of crystals
執筆者名(所属機関名):Yuki Hagiwara*a, Shodai Hasebe*a, Hiroki Fujisawa*b, Junko Morikawa*b, Toru Asahi*a, Hideko Koshima*a
*a: 早稲田大学、*b: 東京工業大学
掲載日(現地時間):2023年3月13日(月)
掲載日(日本時間):2023年3月13日(月)
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41467-023-37086-8
DOI:10.1038/s41467-023-37086-8
研究費名:文部科学省 科研費 基盤研究(B)
研究課題名:熱と光で自在に動くロボット結晶の開発
研究代表者名(所属機関名):小島 秀子(早稲田大学)
研究費名:文部科学省 科研費 特別研究員奨励費
研究課題名:光熱効果によるメカニカル結晶材料の多様化と可能性の拡大
研究代表者名(所属機関名):萩原 佑紀(早稲田大学)
研究費名:早稲田大学 アーリーバードプログラム
研究課題名:光熱駆動高速結晶メカニカルリレーの開発
研究代表者名(所属機関名):萩原 佑紀(早稲田大学)
早稲田大学の最新の注目研究者をピックアップした動画:Research Recap at Waseda University 2023を公開しました。是非ご覧ください。
研究分野:Environmental materials and recycling technology
Recent research: A Novel, Single Electrical Pulse Method for the Recycling of Lithium-Ion Battery Cathodes
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100000777_en.html
2021年度早稲田大学リサーチアワード(大型研究プロジェクト推進)受賞者
研究分野:Soft electronics and biomedical engineering
Recent research: Controlling Biological Cells Electrochemically with Bioiontronics
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100001422_en.html
2022年度早稲田大学PI飛躍プログラム支援対象者
研究分野:Business Economics and Entrepreneurship
Recent research: Growth Patterns and Exit Routes of Firms in Japan
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100002156_en.html
2021年度早稲田大学リサーチアワード(国際研究発信力)受賞者
研究分野:Batteries for a carbon neutral society
Recent research: Novel Materials and Optimal Electrochemical Conditions for Enhancing Ecofriendly Aqueous Batteries
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100002881_en.html
2021年度早稲田大学リサーチアワード(国際研究発信力)受賞者
研究分野:Carbon Pricing: Emissions Trading and Carbon Tax
Recent research: Impact of Regional Emission Trading Systems on a Firm’s Overall Carbon Footprint
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100000111_en.html
次代の中学研究者2021
研究分野:Autophagy and food sciences
Recent research: Dietary Regulation of Autophagy for a Long and Healthy Life
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100001493_en.html
研究分野:Cognitive science and Experimental psychology
Recent research: How do our own voices affect our emotional states?
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100001331_en.html
次代の中学研究者2021
研究分野:Quantum optics
Recent research: Towards Distributed Quantum Computing with Photon-based Coupling between Distant Atoms
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100001117_en.html
次代の中学研究者2021
研究分野:Neuroscience
Recent research: Dopamine Drives Cultural Transmission of Song Learning in Zebra Finches
Researcher details: https://w-rdb.waseda.jp/html/100001998_en.html
2022年度早稲田大学PI飛躍プログラム支援対象者
早稲田大学各務記念材料技術研究所(以下、材研)は文部科学省より共同利用・共同研究拠点の認定を受け、「環境整合材料基盤技術共同研究拠点」の名のもと、多様な研究を展開しています。
共同利用・共同研究により、日本各地の多くの研究者が材研を利用していますが、新型コロナウイルス感染症の拡大により移動が制限され、研究の遂行が困難になった時期がありました。このことを受け、材研では各種実験装置のリモート化、すなわち電子顕微鏡など分析装置の観察像を遠隔地からリアルタイムで共有できる仕組みの構築に着手しました。
現在では社会全体がポストコロナの流れになり、コロナ前のような移動も可能になりつつありますが、「リモートで対応できることは今後もリモートで」という新しい考え方・行動様式により、材研が提案する実験装置のリモート化は引き続き重要なコンセプトであると考えています。
しかし、実験装置のリモート化と言っても実際どのように利用するのか、なかなかイメージが難しいのではないでしょうか?そこで実験装置のリモート化について紹介するための動画を制作しました。この動画をご覧いただき、ぜひ材研の利用をご検討ください。
研究設備とその利用方法はこちらをご覧ください。
2023年3月
早稲田大学各務記念材料技術研究所