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環境問題×教育に挑む! 科学的な視点を武器に学問と社会をつなぐ

🤖 AI Summary

矢野創大さんが早稲田大学進学の際の理由は、自然に興味を持ちつつも、より幅広い学問を自由に学べる環境があることや多くのサークルが活発であることが主な要因でした。また、高校で地球科学の先生から影響を受けたことも大きかったようです。

矢野さんは大学入学後、早稲田大学環境ロドリゲスという公認サークルに加入し、環境イベントの開催など個人での活動にも力を入れています。具体的には小学校への出張授業や企業の社内勉強会での講師、市民向けイベントなどで環境教育を行っています。

矢野さんが環境問題に関心を持ったきっかけは、大学入学後、同じ学科の先輩たちが多く在籍していたこととサークル全体の雰囲気が自分に合っているように感じられたことからです。特に「教育」アプローチに魅力を感じています。なぜなら一人の人間の力では限界があると考える一方で、教育によって解決する人数を増やすことができるという点が強調されています。

矢野さんが大学で行っている研究はLCA(ライフサイクルアセスメント)です。これを利用することで環境負荷を定量的に数値化し、現状把握と目標設定を行うことができます。具体的な例としては、レジ袋1枚の環境負荷とコットン製トートバッグの比較を行っています。

矢野さんは学生という立場の強みとして、異なる社会的立場の方々との連携が容易であると捉えています。しかし一方で、「大学生なのにすごいね」という評価に困惑する部分もあることを明かしています。

矢野さんが今後特に力を入れたい活動はサイエンスコミュニケーションです。科学的な知見や課題を広く社会へ伝える仕事で、行政や市民、企業など様々な立場に対して横断的にその役割を果たすサイエンスコミュニケーターを目指しているということです。

矢野さんはさらに環境問題の研究が領域によっては閉鎖的であり、それぞれの立場の間に隔たりがあることを指摘しています。この中間地域で橋渡し的な存在となりたいと考えています。

「環境問題と人々との橋渡し的な存在になりたい」

創造理工学研究科 修士課程 1年 矢野 創大(やの・そうた)

西早稲田キャンパス55号館にて

早稲田大学環境ロドリゲス(公認サークル)での経験をきっかけに、環境イベントの開催など個人での活動にも力を入れる矢野創大さん。小学校への出張授業や、企業の社内勉強会での講師など、各世代に向けた環境教育活動を行っています。そんな矢野さんに、環境問題に関心を持ったきっかけや大学での研究内容、今後の展望などを聞きました。

――早稲田大学創造理工学部環境資源工学科に進学した理由を教えてください。

中学生の頃から、好きなことを自由に学べ、研究にも強い他、多くのサークルがあり活発なイメージのあった早稲田大学に進学したいと思っていました。その中でも環境資源工学科に進学したのは、高校の地球科学の先生の影響が大きいです。その先生はとても優しくて面白く、生徒とコミュニケーションを取りながら授業を行ってくれたので、小さい頃から好きだった自然により一層興味が湧きました。岩石や地層を見ると地球の歴史を学べるだけでなく、自分たちが何気なく生きている環境の原理が分かって、ワクワクしますよね。そんな地球科学の知見を学べるのが、まさにこの学科だと先生に薦めてもらったんです。

幼少期に、家族で牧場に遊びに行った時の一枚。自然への興味が湧くきっかけになったそう

――環境問題に関心を持ったきっかけは何でしたか?

入学後、環境ロドリゲスというサークルに加入したのがきっかけです。同じ学科の先輩たちが代々多く在籍していたこと、またサークル全体の雰囲気が自分に合っているように感じ、加入を決めました。サークルでは環境問題に対して、「里山」「海」「地域活性」「教育」「商品開発」「プラスチック」の六つの企画に分かれて多様なアプローチを取っているのですが、中でも「教育」に魅力を感じました。環境問題は解決しようと思っても一人の力ではどうしても限界がありますが、教育というアプローチを取れば、解決しようと思う人数そのものを増やすことができるので、一番効果的だと考えたからです。

加入当時はコロナ・パンデミックだったので、教育イベントのオンライン開催が中心でしたが、次第に対面での実施ができるようになり、福井県鯖江市で子ども向けの環境教育イベントを開催することもできました。子どもたちの感想を見るととてもうれしく、活動をして良かったと感じました。

 

写真左:環境ロドリゲスで受賞した「第11回 環境省グッドライフアワード」の授賞式。団体代表としてプレゼンテーションを行った
写真右:鯖江市で行ったイベントの様子

――矢野さん個人ではどんな活動をしていますか?

小学校への出張授業や、企業の社内勉強会での講師、市民に向けたイベントなど、各世代に向けて環境教育活動を行っています。

サークル活動の中で知り合った方に、活動の場を紹介してもらうことが多いのですが、対象者に合わせて自分で企画を考えています。例えば、小学校への出張授業では、マイクロプラスチックという細かいプラスチック粒子が身の回りに潜んでいて、食物連鎖の結果、それを私たちも摂取してしまう、専門用語で言う『生物濃縮』という現象を伝えました。

子どもには理解が難しい内容で、言葉ではなかなか伝わらないので、遊びながら学んでもらうことを意識しました。子どもたちを小魚役、中魚役、大魚役で振り分けて、小魚役が集めた餌を中魚役がじゃんけんで奪い、さらに大魚役がそれを奪った結果、誰に餌が集中するかを競うゲームを通して、その現象を体感してもらったんです。実はプラスチックでも同じことが起こっている可能性がある、と伝えた時の子どもたちの驚いた顔は、とても印象的でしたね。先生たちからの反響も良く、手ごたえを感じました。

企業の社内勉強会では、環境教育から始まり、情報リテラシー教育も担当しました。「マイクロプラスチックは危険だから、今すぐプラスチック製品の使用をやめるべきだ」というような主張を耳にすることがありますが、実際はもっと多元的でさまざまな意見があると思います。また、科学的な視点を持って捉えると、その実現可能性や必要性、気候変動をはじめとする他の環境影響とのバランスが見えてきます。そこで環境問題を必要以上に怖がるのではなく、科学的に正しい情報を入手した上で判断すべきだということを訴えました。

 

写真左:2025年7月、東京都東村山市役所にて開催されたイベントで、講師兼ファシリテーターを務めた
写真右:『地球を笑顔にする広場2025秋』(TBSテレビ)のイベントに講師として登壇した。矢野さんは右から2番目

――大学ではどのような研究をしていますか?

伊坪徳宏研究室(理工学術院)に所属して、LCA(ライフサイクルアセスメント)に関する研究を行っています。LCAとは、製品やサービスにおける、原材料の調達から製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルに至るまでの一連のプロセスで発生した環境負荷を、定量的に数値で評価する手法のことです。

例えば、レジ袋1枚のライフサイクル全体から発生する環境負荷の大きさと、エコバッグ(コットン製トートバッグを想定)一つのそれとでは、気候変動への影響という観点から考えると、後者は前者の50倍から150倍だといわれています。そして、エコバッグが本当の意味で「エコ」であるためには、最低でも50回から150回使用しないといけないという解釈ができます。このようにLCAを用いると、環境問題を感覚としてではなく数値として捉えられるので、現状をしっかりと把握した上で、解決に向けた目標設定をすることができます。

LCAを学ぶ前の環境教育活動では、環境問題とその対策をセットで知識として伝えることが多かったのですが、学んでからは、エコバッグのような落とし穴があることに気が付き、環境問題と向き合う姿勢自体を考えてもらえるような発信を行っています。

 

写真左:明星学園小学校への出張授業では、レジ袋とエコバックの環境負荷の差について考える授業を行った
写真右:2025年9月に行われた、伊坪研究室のゼミ合宿での研究発表の様子

――学生という立場ならではの強みはありますか?

活動を通して、さまざまな社会的立場の方と柔軟に連携できるところが、学生ならではの強みだと感じています。一企業に属してしまうと、物理的にも社会人としての立場的にも一定の制約が生じることもありますが、あくまでも一人の学生であることで、多くの場で幅広い活動ができています。

一方で、「大学生なのにすごいね」という言葉を掛けられることもあり、複雑な気持ちになります。色眼鏡を外して対等な立場で評価してもらうためには、今後さらに学びを深め、より一層活動の質を向上させる必要があると痛感させられます。

――今後、特に力を入れていきたい活動は何ですか?

サイエンスコミュニケーションです。サイエンスコミュニケーションとは、科学の研究成果や面白さ、課題などを人々に分かりやすく伝える活動のことです。そしてそれを行政、市民、企業などのさまざまな立場に対して横断的に行う、サイエンスコミュニケーターを目指しています。

現状、環境問題の研究は領域によってはやや閉鎖的で、それぞれの立場の間で分断があるように感じます。例えば、研究は研究で盛り上がっていても、それがなかなか政策に反映されなかったり、市民にとっては理解が難しかったりといった問題があります。

その中で必要となるのが、環境問題とさまざまな立場との中間に立つ橋渡し的な存在です。例えばさかなクンは、魚の専門性の高さと説明の分かりやすさ、面白さを全て両立していますが、魚について学問と社会とのつながりをうまく作っている存在です。そんなさかなクンの環境問題特化型と捉えると分かりやすいかもしれません。私は環境問題においてそのポジションを確立し、学問と社会が足並みをそろえて進んでいける未来を築きたいですね。

第922回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
文化構想学部 2026年3月卒業 浮谷 雛梨

矢野さんが撮影した風景写真

【プロフィール】
東京都出身。早稲田実業学校高等部卒業。趣味はカメラで、写真を撮りに遠くまで旅に出ることもあるそう。最近は、あまり目を向けられていなかった地元の風景を被写体にしているのだとか。2025年9月からnoteを開始。言語化することで自分の思考を整理したり、より伝わりやすい表現を模索したりしたいと意気込んでいる。
Instagram:ynst_pl5
公式Webサイト:https://lit.link/edulite

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理系女子のリアル 動画を公開しました

早稲田大学×理系女子のリアル

「理系って、忙しいって聞くし難しそうだけど、私にもできる?」 「女子が少ないイメージ…、学生生活は楽しめるのかな?」
その問いのヒントは、きっとここにあります。
理系の扉を開き、自分の可能性を広げた 2人の女子学生のリアルな声をお届けします。

早稲田理工の魅力とは?

この動画では先進理工学部 電気・情報生命工学科、創造理工学研究科 総合機械工学専攻の2名の女子学生にインタビューを行いました。
研究や学業について語ったほか、研究室やキャンパスの雰囲気も動画で体験できます。
2人はなぜ早稲田理工で学んでいるのか?早稲田理工でだからこそ叶う、研究環境について語ります。

学生生活を楽しむための工夫

授業や研究以外ではどんな活動をしているの?友達作りはどうしているの?など気になる学生生活に関することも紹介しています。
早稲田大学には充実した学内の施設や、学生が主体となって取り組める活動がたくさん用意されています。

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【Full Ver. 8分10秒】

【Short Ver. 】
学業と研究について(学部生の場合)(1分09秒)
学業と研究について(大学院生の場合)(1分04秒)
女子視点の理工の魅力は?(1分27秒)
早稲田ならではの課外活動とは?(1分11秒)
卒業後の進路・将来の夢(1分25秒)
入学を悩む方へのメッセージ(0分39秒)

性別に関係なく、好奇心のままに自分のやりたいことを追求する。
様々な学生の挑戦を応援する早稲田理工で、あなたの可能性を広げてみませんか?

理工学術院の公式YouTubeでは、今後も早稲田理工での研究活動や学生の活躍を発信していきます!

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国際エンジニアリングアワードで国内最優秀賞! 全方位移動ロボットを提案

「諦めずに取り組むことで、多角的なスキルを身に付けることができた」

大学院先進理工学研究科 修士課程 2年 天野 創太(あまの・そうた)

西早稲田キャンパス 55号館にて。「Sphebot」と共に

幼少期から機械に関心を持ち、現在は先進理工学研究科の澤田秀之研究室 でロボット開発に取り組む天野創太さん。災害現場や起伏のある地形での探索を想定した、全方位移動可能な球体ロボット「Sphebot(スフィボット)」を発表し、2025年9月に、世界28カ国から2,100件を超える応募が寄せられ、国際的に権威のあるJames Dyson Award(以下JDA)2025で国内最優秀賞を受賞しました。学部生の頃から本格的にロボット開発に携わってきた天野さんに、ロボットに興味を持ったきっかけや製作の裏側、今後の展望などを聞きました。

――ロボットに興味を持ったきっかけは何ですか?

高校生の頃ボート部に所属していた際には、使用するマイクシステムの修理もしていたそう

小学生のときに、ドイツの「フィッシャーテクニック」というおもちゃを買ってもらったのがきっかけです。レゴブロックのように組み立てて遊ぶものなのですが、センサーやモーター、マイコンなどが付いていて、機械や構造の仕組みを学べるものになっていました。それで遊んでいる中で、ロボットに興味が湧いていったように感じます。また、中学生になると、勉強の合間の自由時間にパソコンで遊ぶようになり、当時Googleが無償で提供していた「SketchUp」というCAD(※1)ソフトウェアで設計するのが一番の気晴らしでした。

(※1)設計や製図を行うためのソフトウェア。

――今回、JDAに「Sphebot」を応募しようと思ったのはなぜですか?

学内で開催されていたJDAの説明会に参加したことがきっかけです。話を聞いてみると面白そうで、コンペティションで求められる内容が、自分が製作しているロボットと相性が良さそうだとも感じたんです。JDAではデザインが特に重視されるため、プロトタイプの中から募集内容に適したものを選び、デザインをブラッシュアップしました。プレゼン動画では、動作イメージの表現にもこだわりました。

「Sphebot」は、学部4年生の頃から製作していたもので、もともと研究室で開発が進められていたロボットを継承し、一人でプロジェクトを進めてきました。脚によって本体を持ち上げられる変形式の球体にすることで、脚型ロボットのように段差を越える柔軟性に加え、車輪のようなスムーズな移動性も得られ、新たな形状のロボットを世に送り出せるのではないかと考えました。

「Sphebot」の動作イメージ。JDAでのプレゼン動画から

――JDA2025で国内最優秀賞を受賞した感想や、アワードを通して苦労したことについて教えてください。

他の応募作品を見ても世界中から素晴らしいアイデアが集まっていたので、まさか選ばれるとは思っていませんでした。そのため、結果を聞いた時は本当にびっくりしましたし、素晴らしい作品の中から最優秀賞に選んでいただけたのは、非常に光栄です。

実物の「Sphebot」と

苦労をしたのは、時間のやりくりですね。このプロジェクトは一人で進めていたので、何をやるにも全て自分で動かなければなりませんでした。特にプレゼン資料のCG制作は大変で、高性能なPCを使っても動作が重く、うまく表現できないこともしばしば。また、実機はシミュレーションでうまくいっても実際には動かないこともよくあるので、そのエラーを一つ一つ取り除いていく作業も大変でした。ただ、諦めずに取り組むことで、今回のJDA2025に限らずこの3年間の研究を通して、多角的なスキルを身に付けることができたと感じています。

――そもそもロボット開発はどのように進めているのですか?

基本的には、CADで設計し、試作をするという流れを繰り返します。シミュレーションが必要なときには、3DCGのソフトウェアを仲介して、ゲーム開発用のプラットフォームの空間内に読み込み、物理シミュレーションを行います。これらの方法により、「実際に動作するか」「どういう見た目になるのか」を見ながら実機を完成に近付けていきます。研究室や自宅にある3Dプリンターで試作を繰り返しながら、動作を検証し、最終的に現在の「Sphebot」の設計に至るまでには2~3年を費やしました。

ロボットに関するアイデアは、日常の中でよく浮かびます。特に車を運転しているとき、「こう動いたら面白いかも」「この配置ならうまくいきそう」と思い付くことが多いです。今回の「Sphebot」の動作機構も、そんな日常のひらめきから生まれました。

 

写真左:「Sphebot」の部品を製作している時の様子
写真右:部品の試作に使用している自宅の3Dプリンター

――大学ではどのようなことを学んでいますか?

大学でバレーボールをしている時の一枚。南東北総体のTシャツを着ている中央左が天野さん

私は先進理工学部の応用物理学科出身で、基礎物理から量子力学や相対性理論まで幅広く学びました。澤田研究室は計測情報工学という応用的な分野に軸を置いていて、制御理論や形状記憶合金、最近はディープラーニング(※2)の研究にも力を入れています。研究室では各々がプロジェクトを立ててひたすら研究に励んでおり、見つけてきた論文を紹介し合って常に知識をアップデートしたり、新しい技術や発見について助手や博士課程の学生と議論したりしています。研究で忙しい日々ではありますが、学部生の頃から続けているバレーボールは良い気分転換になっています。

(※2)人工知能技術の一種で、データから特徴を自動的に学習する技術。

――最後に、今後の展望について教えてください。

JDA2025では完成したイメージを発表したのですが、球体が転がるときのランダムな動きをうまく制御できるよう、今後も機械学習を含め検討を続けていきたいです。最終的には、周囲の環境を自ら認識し、地図を生成しながらどんな地形でも思い通りの動きができる、アニメやSF映画に出てくるようなロボットキャラクターのような動作の実現をイメージしています。ただ、時間的な制約もあるため、中長期的な目標については新しく入ってくる研究室の後輩にも託しながら、見守っていければと思います。

自分の展望は、あと半年ほどで研究室を離れてしまうので、これまで培ってきたスキルや経験を生かして、自身の可能性をさらに広げることです。就職後も、面白いアイデアが浮かべば、どんどんロボットを作っていきたいですね。

第912回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
人間科学部 3年 西村 凜花

【プロフィール】

愛車のMAZDA CX-5と一緒に

愛知県出身。愛知県立旭丘高等学校卒業。高校時代はボート部に所属し、インターハイにも出場した。現在は週に1~2回バレーボールで体を動かすのが趣味。車の運転も好きで、日本全国を走り回り、毎年地球一周分くらい運転しているそう。

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早大ものづくりプログラムで大賞受賞! “みまもる”ロボットをゼロから設計

「自走する作り手でありたい」「ものプロへの参加は大きな成功体験」

創造理工学部 4年 玉山 康次郎(たまやま・こうじろう)
創造理工学部 4年 片桐 萌音(かたぎり・もね)

西早稲田キャンパス61号館WASEDAものづくり工房にて。左から片桐さん、玉山さん

新しいことに挑戦し失敗からも学ぶ意欲、計画を立て着実に遂行する能力、困難に立ち向かう力を有する学生の育成を目的として、2012年から2018年まで毎年開催されていた「WASEDAものづくりプログラム 」(以下、ものプロ)。2024年6月に6年ぶりに復活し、ファイナリストに13チームが選ばれ、アイデアをカタチにするための独創的な「ものづくり」に挑みました。その中から最優秀ものづくり大賞に選ばれたのは、玉山康次郎さん、片桐萌音さん、林浩次郎さん(創造理工学部 4年)が製作した、ヒトを“みまもる”フクロウ型アニマトロニクス(※1)「Patr-Owl(パトロール)」。今回は、チームを代表して玉山さんと片桐さんに、大賞受賞までの過程や今後の展望について聞きました。

(※1)動物やキャラクターなどをあたかも生きているかのように表現したロボット。

――どのような経緯でものプロに出場したのでしょうか?

玉山:私たちは大学1年生の頃から早稲田大学ROBOSTEP (公認サークル)に所属し、ロボコンに参加するなど、ものづくりに取り組んできました。3年生になり、他に「作り手」として成長できる機会を探していた時に、ものづくり工房に貼ってあったチラシを見つけ、参加を決めたんです。その際に、片桐さんに声を掛けました。

――Patr-Owlを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

玉山:私は以前から遊園地でよく目にするアニマトロニクスの和やかな感じが大好きでした。やる気が出ず、だらだらしてしまっていたときに、自分の家に和やかに見守ってくれるようなロボットがいたらやる気が出るのになあ、と思ったのがきっかけです。

片桐:誰かに見守られることでやる気が出るという現象には、観察者効果(※2)が関わっています。普段は娯楽・展示用に使われるアニマトロニクスと観察者効果を結び付けることができれば、「監視」ではなく恐怖感を与えない「みまもり」になるのではないかと考えたんです。みまもりということで、目が特徴的な動物であるフクロウ型のロボットPatr-Owlを作ることに決めました。

(※2)他者から監視されていると感じることで、その人の行動や言動が変化する現象。

ものプロ最終成果報告で発表したポスター(※クリックして拡大)

――Patr-Owlの仕組みや制作過程を教えてください。

片桐:Patr-Owlの帽子に内蔵されているカメラが人の顔を認識して、その方向に目や体を向けて「みまもる」という仕組みになっています。フクロウは首の関節が多く、その滑らかな動きをできるだけ再現するために、6関節あるアームの構造を考えました。

Patr-Owlが人のいる方向に体を向ける様子

人の顔がある方向に目を向ける様子

玉山:製作にあたっては、片桐さんが中身の機構を作る機械設計と外装やデザイン回り、私はPatr-Owlの動きを制御するプログラムや基板の設計を担当しました。本番までの準備時間が足りなかったため、3月頃からは同じサークルに所属する林さんにも急きょ助っ人として参加してもらい、主にカメラで人の顔を画像認識する部分を担当してもらいました。

全てゼロから製作した回路、基板、中身のアーム機構、外装。プレゼン資料から(※クリックして拡大)

――ものプロを通して、苦労したことや成長できたことはありますか?

片桐さんが外装を作っている様子。西早稲田キャンパス63号館にて

玉山:2024年9月から2025年3月までの期間で、機械設計から回路設計、制御、外装製作まで全てゼロから行うという作業量に加え、初めて挑戦する技術も多かったため、もともと2人でやりきるにはハードルが高かったと思います。加えて、2024年はお互いのスケジュールがなかなか合わないことも多く、授業期間が終わった1月末からは追い込み期間として毎日西早稲田キャンパス内のラウンジや研究室にこもって作業し、基板へのはんだ付けはWASEDAものづくり工房で行いました。

片桐:帰宅後も外装を作っていたので、最終発表の2日前くらいからは全く寝ていませんでした。Patr-Owlが満足に動いたのも発表の前日で…。本当に間に合って良かったですし、やり切った結果が大賞受賞だったので、かなりうれしかったです!

ロボット制作をギリギリまでこだわった上でやりきり、大賞をいただくという体験ができたのは、自分の成長につながったと感じています。これまで出場したロボコンではやりきれなかったと思うことや結果に悔しい思いをしたこともあったので、今回のものプロへの参加は大きな成功体験になりました。

玉山私は突き詰めるタイプで、何事も「根本を理解する」ことにこだわりがあります。この考えは、早く作れることの方が評価されがちなロボット競技において、「いらないこだわり」と周りから言われてしまうこともあり、ロボット製作への向き合い方について迷うこともありました。そんな中、短い期間で自分の方法をやり通し、チームとして納得のいくロボットで大賞をもらうことができ、とても満足しています。

取材中の様子。西早稲田キャンパス61号館302教室にて

――大学ではどのようなことを学んでいますか?

玉山所属している石井裕之教授の研究室ではロボットと生物について学んでいて、生物の仕組みをロボットに応用する研究を行っています。私は総合機械工学科に所属していますが、実際にモノを製作する授業が多い学科です。他の大学だと、1・2年生では大学数学や物理化学など理系の一般教養のみを学ぶことが大半だと思いますが、早稲田では1年生から機械工学の講義や多くの実習に取り組める専門科目があり、本当に強みだと感じます。

片桐:私は岩﨑清隆教授の研究室に所属しています。医療分野に機械工学を応用する、という異分野融合系の研究室で、東京女子医大との共同施設「早稲田大学先端生命医科学センター(TWIns)」で研究を行っています。現在は人間の循環器(主に心臓や血管)をチューブやポンプなどで模擬した流体シミュレーターを作製し、動物実験での再現が難しい心不全などの病態を模擬してさまざまな現象を評価する研究に取り組んでいます。

――最後に、今後の展望について教えてください。

玉山:学外の人にもPatr-Owlを知ってもらいたいので、秋に東京ビッグサイトで開催されるMaker Faire Tokyo 2025 に参加したいと考えています。それまでに、首をかしげる、羽を広げるといった実現しきれなかったフクロウの動きを実装したいです。

個人の展望としては、ひたすら自分のやりたいことに貪欲に取り組み、新しいものを生み出す「自走する作り手」でありたいと思っています。

片桐:学部の3年間はロボコンやものプロに参加するなどロボット製作に集中していましたが、これからは研究分野である医工学の分野を全力で学び、研究に取り組んでいこうと思います。しばらくはロボットの設計とは違ったことをすることになりますが、必ずつながってくると思うので、将来的にはそれまでの知識や経験を融合させて、新しい価値を創生していけたらいいなと思っています。

大賞受賞後、表彰状を手にチームで記念撮影。左から玉山さん、片桐さん、林さん

第900回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
人間科学部 3年 西村 凜花

【プロフィール】
玉山康次郎:埼玉県出身。埼玉県立浦和高等学校卒業。漫画のせりふを覚えるのが好きで、漫画からロボット作りの着想を得ることも多い。お勧めの漫画は『進撃の巨人』諫山創(講談社)、『バガボンド』井上雄彦(講談社)、『Dr.STONE』稲垣理一郎(集英社)。

片桐萌音:東京都出身。東京都立日比谷高等学校卒業。創作全般が好きで、ミニ推理小説を書くことも。最近はミュージック・プログラミング(GEC設置科目)を受講したのがきっかけで、作曲にもチャレンジ中。

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