文庫本「経済で読み解く日本史」(上念司著)は、やはり高校生、特に難関国立大学で日本史を入試科目として選択する受験生には必読の書だ。
文系受験生に「世界史日本史の2科目選択」は負担が大きいからやめろと指導する静高のバカ教師は無視しよう。
本当に浅はかだ。
さて、この文庫本シリ-ズは室町時代から始まって平成時代で終わる6冊だ。
とりあえず平成時代は外してもよい。
著者は「マネタリズム」という近代経済学の主流をなす一派、シカゴ学派=新貨幣数量主義の見地から、日本史をずばずば解説している。
マネタリズムとは「通貨の供給量」が景気の良し悪し、デフレかインフレかを決定する、という主張を持つ学説だ。
シカゴ大学のミルトン.フリ-ドマン教授のグル-プで、その影響を受ける中央銀行総裁は世界で多い。
日本の黒田日銀総裁もその一人だ。
日本で貨幣制度が本格的に普及したのは、足利義満が始めた「日明貿易」で日本に大量に明銭が導入されて以降のことなので、当然このシリ-ズは「室町時代」から始まっている。
貨幣経済が普及すると、新しく生まれるビジネスが金融業、つまり金貸しである。
当時は寺社が有力な「金貸し」の主体で、依然として大きな力を持っていた旧仏教勢力の興福寺や比叡山延暦寺のパワ-の源の1つが、この資金力だった。
しかも日明貿易の主体として、船団をしたてて大量の明銭を輸入するなど、日本のマネ-サプライの重要な供給者ともなっていた。つまり中央銀行である日銀のような役割も持っていた。
この大きな経済力を持つ寺社に、三好長慶や織田信長が武力を持って戦いを仕掛け、その経済力簒奪の戦を始める。長慶も信長も比叡山延暦寺の焼き討ちを行っているが、狙いの一つはそこにあった。
このような話は、まだまだ続くがそれは本書を読んでのお楽しみだ。
第3巻の江戸時代では「コメ本位制」がどのようにして行き詰まっていくのか、その仕組みと過程について分かりやすく解説している。入試論述問題のタネ本としてうってつけだ。