自宅の書棚を整理していたら、アメリカ短編小説全集が出てきた。
高校生の英語の授業に使おうと思って、購入しそのままになっていたものだ。
歴史の長いイギリスのほうが近代短編小説が充実していると思いがちだが、実際はその反対だ。
「近代短編小説」に限定すると、アメリカの小説のほうが数も多く質も高い。
アメリカでは長編小説を書く一流作家が、短編でも傑作を多く残している。
これはアメリカが「雑誌文化」の一大中心地であり、多忙な生活を送るアメリカ人には、読むのに時間のかからない短編小説がマッチしてたからだ。
その雑誌も一流の文芸誌から「三流の週刊誌」まであるが、ハードボイルド小説を代表するレイモンドチャンドラ-のような大家が「三流雑誌」に連載するほど充実していた。
さて、「アメリカ短編小説全集」を購入したのは、ヘンリ-ジェイムスの短編が収められていたからだ。
高1最初の英語課題図書として渡されたのが彼の「デイジ-ミラ-」だった。
この本は英語の担当だった巻島泰山先生が註を書いていたもので、高1生には少々難しい内容だったのを覚えている。
ヘンリ-ジェイムスは「心理小説の祖」と呼ばれる巨人で、三大長編と呼ばれる「The Wings of the Dove」「The Ambassodors」 「 The Golden Bowl 」は精緻極まりない心理分析、複雑な文体、込み入ったイメ-ジなど小説史上まれにみる芸術的完成度に達した作品である。
巻島泰山先生は、そのH.ジェイムスの研究家でいらしたために、自分が註を書いた「Daisy Miller」を静高1年の子供たちに読ませたのだ。
今の静高英語科の教師とは、英語の専門知識、文学の教養、物理学、数学、世界史、漢文などの知識などなど多岐にわたって大違いで、どれを取っても雲泥の差があった。
特に圧巻だったのは、クラッシック音楽の音源コレクションだった。
当時はまだUSBはおろかCDもない時代で、オープンリ-ルと呼ばれるプロ用の磁気テ-プに録音して書斎いっぱいにストックしてあった。
その中から仮装のBGMとしてベート-ベンの「田園」やドヴォルザ-クの「新世界」をコピ-して使わせていただいた。