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テラヘルツ帯に対応した無線通信システムを試作し、95GHz帯を用いた長距離・大容量伝送に成功

テラヘルツ帯に対応した無線通信システムを試作し、
95GHz帯を用いた長距離・大容量伝送に成功

学校法人早稲田大学(理事長:田中 愛治、以下「早稲田大学」)理工学術院の川西 哲也教授の研究グループと、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:山川 宏、以下「JAXA」)研究開発部門センサ研究グループらは、テラヘルツ帯※1に対応した無線通信システムを試作し、4.4kmの距離で、大容量伝送を可能とする伝送速度4Gbpsの通信を実現しました(図1)。95GHz帯を用いた大容量通信において世界有数の通信距離※2を実証しました。

図1通信実験風景 ©早稲田大学/JAXA

次世代移動通信システムBeyond5G/6G※3システムにおいては、非地上系ネットワーク(NTN)※4の大容量通信を行うフィーダーリンク※5の一部を、テラヘルツ帯を用いた高速通信が担うことが期待されています。これまで、上空との通信にはXバンド(8GHz帯)やKaバンド(26GHz~40GHz)が利用されてきましたが[1][2]、利用可能な周波数の帯域幅が限定されているため、伝送速度は数百Mbpsから数Gbpsが限界となっています。我々は、図2に示すような高度20km程度以下の高高度プラットフォームシステム(HAPS:High Altitude Platform Station)や航空機に対するフィーダーリンクにおいて、テラヘルツ波を含む高い周波数帯の利用による伝送速度の向上を検討しています。具体的には、92GHz~94GHz、95GHz~100GHz、および102GHz~104GHzの周波数帯に対して、広帯域の複数チャンネルを活用することで、20Gbps以上の大容量通信を実現できます。

図2 地上系ネットワークとフィーダーリンク ©早稲田大学/JAXA

本研究においては、92GHzから104GHzのテラヘルツ領域までに対応するアンテナ、送信機および受信機を試作しました。長距離通信を担う高利得アンテナサブシステムとしては、図3に示すように、上空の飛行体に搭載可能な小型軽量の0.3m径カセグレンアンテナ※6と、地上局用の1.2m径カセグレンアンテナを開発し、最大出力を1Wとして設計した送信機と組み合わせました。今回は、周波数帯を95.375GHz~96.625GHz(中心周波数96GHz)に限定し、送信機の空中線電力は15mW(特定実験試験局で許可される範囲内の等価等方放射電力(EIRP)※7に対応)に設定して伝送実験を実施しました。実験では、6階建ビルの屋上(東京都小金井市)からスカイタワー西東京(東京都西東京市)までの4.4kmの距離に対して、帯域幅1.25GHzを使用したシンボルレート1Gシンボル/秒の条件で、変調方式QPSK(伝送速度2Gbps) および16QAM(4Gbps)を用いた伝送を確認しました。

(a)送信アンテナ(0.3m径;飛行体搭載用)

(b)受信アンテナ(1.2m径)

図3 アンテナサブシステムの外観 ©早稲田大学/JAXA

今後は、空中線電力1Wの送信機の試作などにより、伝送距離20kmおよび伝送速度20Gbpsの通信機能を実現するとともに、HAPSや航空機向けのフィーダーリンクに必要な飛行体へのアンテナ追尾技術の試作と改良を行います。将来的には、通信の大容量化により、地上で使用されているネットワーク回線(LAN)レベルの高速通信を上空まで延伸させることが可能になり、大規模災害時の広域通信基地局、山間部や離島への高解像度の映像の伝送など、上空の通信網を使った多様なサービスの創出が期待されます。

【研究プロジェクトについて】

本研究成果の一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー) )の革新的情報通信技術研究開発委託研究(JPJ012368C00302およびJPJ012368C04901)、および科学技術振興機構の先端国際共同研究推進事業ASPIRE (JPMJAP2324)により実施したものです。 

【各機関の主な役割】

早稲田大学:テラヘルツ帯に対応した送受信機の開発

JAXA:テラヘルツ帯高利得アンテナサブシステムの開発

【用語解説】

※1 テラヘルツ帯
おおむね周波数100GHzから10THz(波長にして3mm-30μm)の電磁波領域を指す。下限については、2019年に米連邦通信委員会(Federal Communications Commission、FCC)が、新しい技術の開発やサービス展開に向けて、95GHzを超える周波数帯の利用に対する新ルールを発表していることから[3]、95GHz程度の周波数を含むことも多い。

※2 世界有数の通信距離
従来、94GHzを用いた距離2.5kmの通信[4]および120GHz帯を用いた距離5.8kmの通信[5]が報告されていました。今回の実験では、95GHz帯を利用した1Gbps以上の伝送容量の通信において、4kmを超える世界トップレベルの通信距離を実証しました。

※3 Beyond5G/6G
近年、普及が進む移動通信システムは第5世代(5G)とよばれている。これに対して、次世代システムとしてBeyond5Gさらには 第6世代(6G)移動通信システムの開発が進められている。

※4 非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)
地上、海、空にある移動体を多層的につなげる通信ネットワークシステム。

※5 フィーダーリンク
地上局をゲートウェイとして高度プラットフォームシステムなどの飛行体や衛星との間で通信を行う一対一の通信。

※6 カセグレンアンテナ
主、副の反射器を持つパラボラアンテナの一種。

※7 等価等方放射電力(EIRP:Equivalent Isotropic Radiation Power)
送信機が特定の方向に放射する電力を、等方性アンテナが全方向に放射する電力に置き換えた値。

【参考文献】

[1] 国立研究開発法人情報通信研究機構、プレスリリース、”世界初、高度約4km上空から38GHz帯電波での5G通信の実証実験に成功”、2024年5月、https://www.nict.go.jp/press/2024/05/28-1.html
[2] 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、サテナビお知らせ、 “先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)のKaバンド直接伝送系により3.6Gbpsの高速データ伝送に成功”、2024年7月、https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/news/2024/07/23/9544/index.html
[3] FCC, FCC press release, “FCC Takes Steps to Open Spectrum Horizons for New Services and Technologies”, https://docs.fcc.gov/public/attachments/DOC-356588A1.pdf
[4] X. Li et. al., “Delivery of 54-Gb/s 8QAM W-Band Signal and 32-Gb/s 16QAM K -Band Signal Over 20-km SMF-28 and 2500-m Wireless Distance,” in Journal of Lightwave Technology, vol. 36, no. 1, pp. 50-56, 2018.
[5] A. Hirata et al., “5.8-km 10-Gbps data transmission over a 120-GHz-band wireless link,” 2010 IEEE International Conference on Wireless Information Technology and Systems, Honolulu, USA, 2010.

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「放射化イメージング」でマウス体内の金ナノ粒子を可視化

「放射化イメージング」でマウス体内の金ナノ粒子を可視化
がん治療薬の長期的な動態イメージングに向けて

発表のポイント

  • がん治療薬を腫瘍へ運ぶ金ナノ粒子のイメージング技術をマウス実験で実証
  • これまで困難だった核医学治療薬(アルファ線放出核種)の長期動態追跡を実現
  • 様々な治療薬の長期的な体内動態をイメージングする手法としての応用に期待

概要

早稲田大学大学院先進理工学研究科博士後期課程1年の越川 七星(こしかわ ななせ)と、同大学理工学術院の片岡 淳(かたおか じゅん)教授らの研究チームは、大阪大学放射線科学基盤機構の豊嶋 厚史(とよしま あつし)教授、角永 悠一郎(かどなが ゆういちろう)特任助教(常勤)、加藤 弘樹(かとう ひろき)特任教授(常勤)、京都大学複合原子力科学研究所の高宮 幸一(たかみや こういち)教授らと共同で、薬剤キャリアである金ナノ粒子を直接可視化する「放射化イメージング※1」を提案し、実際に金ナノ粒子をマウスに投与して体内分布を可視化しました。

また、腫瘍をピンポイントで攻撃するアルファ線※2治療薬アスタチンAt-211を、放射化金ナノ粒子に標識※3することにも成功しました。これにより、これまで困難であったAt-211の長期的な動態追跡を実現しました。今後は様々な治療薬で、動態可視化への応用が期待されます。本成果をまとめた論文は、論文誌『Applied Physics Letters』の”Featured article”に選ばれたほか、AIP(米国物理学協会)発行の論文全体から顕著な成果を特集するScilight (Science highlight) で紹介されます。

本研究成果は、2025年3月12日(水)午前10時(米国東部標準時)に『Applied Physics Letters』のオンライン版で公開されました。

【論文情報】
雑誌名:Applied Physics Letters
論文名:Activation imaging of gold nanoparticles for versatile drug visualization: an in vivo demonstration
DOI:10.1063/5.0251048

図:金ナノ粒子のイメージング

これまでの研究で分かっていたこと

がんは、長きにわたって日本人の死因第一位であり、効果的で負担の少ない治療法が求められています。がんの治療法には様々なものがありますが、放射性の治療薬を投与して腫瘍へダメージを与える核医学治療は、手術が要らず副作用の少ない方法として注目されています。

近年、核医学の分野では、アルファ線を放出する治療薬が盛んに研究されています。アルファ線は狭い範囲に大きなエネルギーを与える放射線で、腫瘍だけを効果的に攻撃することが期待されます。中でも質量数211のアスタチン(At-211)は、国内のサイクロトロンで比較的簡単に製造できることから有望視されています。また、At-211はアルファ線だけでなく、エネルギー79 keV(キロ電子ボルト)のX線※2を放出します。マウスの体を透過してきたX線を検出することで、At-211を体の外からイメージングできます。

効果的かつ副作用の少ない治療を実現するには、At-211をはじめとする治療薬を腫瘍へ届け、集積させる必要があります。治療薬を腫瘍へ運ぶ「薬剤キャリア」として特に注目を集めているのが、ナノサイズ(直径が10-9 m程度)の金の粒子(金ナノ粒子)です。実際に、図1 (a)のように金ナノ粒子にAt-211を標識して腫瘍に投与すると、図1 (b)のように金ナノ粒子が腫瘍に留まり、高い治療効果が得られることがわかっています[1]。次のステップとして、マウス実験により集積から排出まで、数日間にわたる長期の動態を調べることが不可欠です。これまで、At-211からのX線を使ってAt-211標識金ナノ粒子のイメージングが行われてきました。しかし、At-211の半減期は7.2時間と短く、投与から2日後にはX線の強度は約1/100になってしまうため、数日間にわたる動態を追うことはできませんでした。また、この方法では体内でAt-211と金ナノ粒子が分離してしまっているかどうか調べられないことも問題でした。

図1:(a) At-211標識金ナノ粒子。At-211はアルファ線とX線を放出する。(b) At-211標識金ナノ粒子を投与したラットのイメージング結果(投与4時間後。Kato et al. (2021)[1]より転載)。

今回の研究で新たに実現しようとしたこと

本研究では、金ナノ粒子の「放射化イメージング」により、At-211と金ナノ粒子の個別イメージング、そしてAt-211標識金ナノ粒子の長期的な動態追跡を目指しました。放射化とは、安定な原子を放射性同位体に変えることです。自然界に存在する金は質量数が197の安定な元素です。これに熱中性子(エネルギーの低い中性子)をぶつけると、金の原子核の一部が中性子を取り込んで質量数が198の金(Au-198)に変わります。Au-198は半減期が2.7日の放射性同位体で、エネルギー412 keVのガンマ線※2を放出します。金ナノ粒子に含まれる金の一部を放射性のAu-198に変え、ガンマ線を体外から検出することで、金ナノ粒子の体内分布を体外から可視化できます。

金ナノ粒子をイメージングする技術には、他にもトレーサー(放射性物質や造影剤)による標識やCTイメージング(コンピュータ断層撮影)があります。しかし、トレーサーが金ナノ粒子から外れてしまう可能性があること、CTでは金ナノ粒子が高濃度(mg/mL程度)でないとイメージングできないことが課題となっていました。放射化イメージングは金ナノ粒子を直接イメージングする手法であり、3桁も低い濃度(μg/mL程度)であってもイメージングができるという点で、これまでの制限を打破する方法となり得ます。At-211標識した放射化金ナノ粒子を図2 (a)に示します。79 keVのX線、412 keVのガンマ線を使ってAt-211と金ナノ粒子の分布を個別にイメージングし、At-211が金ナノ粒子から外れていないかを確認できると考えました。さらに、At-211は半減期7.2時間で急激に減衰しますが、半減期2.7日のAu-198は数日間ガンマ線を出し続けるので、At-211標識金ナノ粒子の集積と代謝を数日間にわたり追うことができます。

At-211と金ナノ粒子を独立にイメージングするには、数十 keVからMeV(メガ電子ボルト)付近まで、幅広いX線・ガンマ線を1台かつ同時に識別できる「広帯域のカメラ」が必要です。しかし、従来のSPECT(単一光子放射断層撮影)※4では約300 keV以下、PET(陽電子放出断層撮影)※5では511 keVのみと、イメージングできるX線・ガンマ線のエネルギーが限られていました。そこで、独自に開発した「ハイブリッド・コンプトンカメラ※6」をイメージング装置として用いました。ハイブリッド・コンプトンカメラは、低エネルギー(200 keV以下)用のピンホールモードと高エネルギー(200 keV以上)用のコンプトンモードの2種類の方法でイメージングができます。図2 (b)に示すように、装置は2枚の検出器(散乱体と吸収体)で構成され、散乱体には3×3 mm2の孔が空いています。低エネルギーのX線・ガンマ線は散乱体に当たると吸収され、孔を通ったものだけが吸収体に届くので、ピンホールカメラの原理でイメージングができます(図中①)。高エネルギーのガンマ線は散乱体でコンプトン散乱され、吸収体で吸収されます。散乱体・吸収体での検出エネルギーから散乱角を計算することでイメージングが可能です(図中②)。

図2:(a) At-211標識した放射化金ナノ粒子。(b) ハイブリッド・コンプトンカメラ。 低エネルギーのX線・ガンマ線は①のように、高エネルギーのガンマ線は②のように検出される。

新しく開発した手法と、それによる実証結果

本研究では、まずマウスに投与できる、極小サイズの金ナノ粒子を合成する手法を模索しました。試行を重ね、四塩化金酸(HAuCl4)を材料として粒径5 nm(ナノメートル)ほどの金ナノ粒子を安定的に合成することに成功しました。次に、京都大学研究用原子炉(KUR)[4]を用いて四塩化金酸を放射化し、同じ手順に沿って放射化金ナノ粒子を合成しました。続いて、At-211の標識で不可欠となる、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)で放射化金ナノ粒子を表面修飾し、マウスの腫瘍に投与しました。ハイブリッド・コンプトンカメラで得られたガンマ線のエネルギースペクトルを図3 (a)に示します。412 keVにピークが見られ、放射化によるAu-198の生成が確認できました。投与9分後、4日後に、コンプトンモードでイメージングした結果を図3 (b)に示します。4日後も金ナノ粒子が腫瘍付近に留まっている様子をイメージングでき、これまで不可能であった長時間の動態追跡に有効な方法であることが示されました。

次に、放射化金ナノ粒子にAt-211を標識し、マウスの尾静脈から投与しました。投与9分後、2日後のガンマ線エネルギースペクトルとイメージング結果を図4に示します。投与9分後のエネルギースペクトルには、79 keV(At-211)と412 keV(Au-198)にピークが見られます。また、At-211と金ナノ粒子(Au-198)それぞれのイメージングに成功しました。79 keVのX線はピンホールモード、412 keVのガンマ線はコンプトンモードで解析することで、1回の測定でAt-211と金ナノ粒子の分布を個別に知ることができます。At-211と金ナノ粒子が概ね同じ位置に集積していることを確認できました。投与2日後のエネルギースペクトルでは、At-211の減衰によって79 keVのピークは非常に弱くなっている一方、Au-198由来の412 keVはピークの高さがあまり変わりません。イメージング結果では、At-211は減衰により分布を見ることができないのに対し、金ナノ粒子ははっきりとイメージングできています。このように、金ナノ粒子を放射化することで、At-211標識金ナノ粒子の長期的な動態追跡に成功しました。

図3:(a) 放射化金ナノ粒子のX線・ガンマ線エネルギースペクトル。(b) マウスに投与した放射化金ナノ粒子のイメージング結果(投与9分後、4日後)。

 

図4:(上)At-211標識した放射化金ナノ粒子のX線・ガンマ線エネルギースペクトルと、(下)At-211、放射化金ナノ粒子それぞれのイメージング結果(投与9分後、2日後)。投与2日後には減衰のためAt-211自体はイメージングできないが、キャリアである放射化金ナノ粒子がイメージングできる。

研究の波及効果や社会的影響

本研究では、At-211を放射化金ナノ粒子に標識することで、これまで困難であったAt-211と金ナノ粒子の同時イメージング、そしてAt-211標識金ナノ粒子の長期的な動態追跡に成功しました。同じように、抗がん剤など、これまで体外からイメージングできなかった様々な治療薬を放射化金ナノ粒子に標識することで、体内動態を調べられるようになる可能性があります。

また、金ナノ粒子のイメージングは、治療に最適な金ナノ粒子のサイズや形状を調べるためにも重要です。金ナノ粒子は、血管透過性・滞留性亢進効果(EPR効果)によって腫瘍へ集積するといわれています。EPR効果は2つの側面から成ります。1つ目は、正常な血管と異なり腫瘍付近の血管には隙間が空いているために、血中の金ナノ粒子が腫瘍付近でのみ漏れ出すことです。これによって金ナノ粒子が腫瘍へ運ばれると期待できます。2つ目は、腫瘍付近では異物を排出するリンパ系が未発達であり、金ナノ粒子が滞留しやすいことです。今回、腫瘍に直接投与した金ナノ粒子が4日後も腫瘍に留まっていたのは2つ目の要因によるものと考えています。しかし、これらの効果は金ナノ粒子のサイズ・形状など様々な条件に依存することがわかっています。さらに、金ナノ粒子が肝臓や脾臓(ひぞう)といった臓器に異物とみなされ、捕獲されることが問題視されており、この影響も金ナノ粒子のサイズや形状に依存します。そこで近年、多種多様な金ナノマテリアルが開発され、より腫瘍への集積量が大きく、健康な臓器への集積量が小さい条件を探す研究が活発に行われています。放射化イメージングは金を放射性同位体に変えるというシンプルな手法で、様々なサイズ・形状の金ナノ粒子を同様の方法でイメージングできると考えており、今後幅広い応用が期待できます。

今後の課題

本研究ではAt-211と放射化金ナノ粒子を広帯域X線・ガンマ線撮影装置であるハイブリッド・コンプトンカメラでイメージングしました。ハイブリッド・コンプトンカメラは広帯域であることや、X線やガンマ線の強度が弱くてもイメージングできることが強みですが、分解能には課題があります。マウスとの距離5 cmにおけるハイブリッド・コンプトンカメラの分解能は8 mm程度です。現状でも腫瘍や臓器への集積を大まかに見ることはできるものの、詳細なイメージングには2~3 mmの分解能が必要です。現在、より高分解能の装置を開発中で、より精度のよい放射化金ナノ粒子のイメージングに向けて研究を進めています。

用語解説

※1 放射化イメージング
一般に、原子には安定な同位体と、不安定な同位体があります。これらは原子核内部の陽子数(=原子番号)は同じで中性子数が異なるだけのため、化学的性質は変わりません。不安定な原子核は特定の半減期で崩壊し、安定な核種となります。その際に、余ったエネルギーをX線やガンマ線(以下※2を参照)として原子核の外に放出します。このガンマ線を可視化するのが、本研究の「放射化イメージング」です。

※2 アルファ線、X線、ガンマ線
放射線には様々な種類があります。アルファ線はヘリウムの原子核で、プラスの電荷を2つ持ちます。質量がとても重く、体内で飛ぶ距離が数十マイクロメートルと短い(細胞のサイズと同程度)ことが特長です。そのため、うまく腫瘍に集積させると、腫瘍細胞のみを選択的に殺傷することができます。一方で、X線やガンマ線は電磁波の一種で、電荷を持ちません。どちらも不安定な同位体から出ますが、原子核から出るエネルギーの高い電磁波をガンマ線、また電子軌道から出る比較的エネルギーの低い電磁波をX線として区別します。

※3 標識
化合物中で、特定の原子に放射性核種を結合することをいいます。今回の研究では、金ナノ粒子が治療薬を運ぶキャリアであり、ここに治療薬本体であるアスタチン(At-211)を標識しています。

※4 SPECT(単一光子放射断層撮影)
核医学診断法の1つで、放射性医薬品を体内に投与して、その分布を断層画像として描出します。たとえばTc-99m(テクノチウム)を骨の代謝や反応が盛んなところに集まる性質を持つ物質と化合させ、がんが骨のどの部位にどの程度転移しているかを診断することができます。Tc-99mの可視化には 140 keVのガンマ線が用いられます。他の薬剤でも、SPECT で可視化できるガンマ線はおおむね 300 keV 以下に限られます。

※5 PET (陽電子放出断層撮影)
こちらも広く行われている核医学診断法で、陽電子を放出する放射性核種で標識された医薬品を体内に投与し、その放射線を検出することで、腫瘍の位置や活性度を画像化する核医学検査です。対消滅するガンマ線を対向する検出器で捉えるため、原理上 511 keV のガンマ線のみを対象としたイメージング法です。

※6 ハイブリッド・コンプトンカメラ
ハイブリッド・コンプトンカメラは、異なるイメージング技術である「コンプトンカメラ」と「ピンホールカメラ」を1台で実現する新しい技術です。ハイブリッド・コンプトンカメラは散乱体と吸収体の2枚の検出器からなり、それぞれの検出器はシンチレータ(放射線が当たると蛍光を示す物質)と蛍光を読み出すセンサーで構成されます。低いエネルギーのX線は、散乱体を透過することができず、ピンホールを通ってきたものだけが吸収体に届きます。すなわち「散乱体がヒットせず、吸収体のみヒットする」「吸収体のエネルギーが (たとえば)200keV以下」の条件を課せば、ピンホールカメラとして可視化できます。一方で、高いエネルギーのガンマ線は、散乱体を透過して吸収体に届くもの、散乱体でコンプトン散乱して吸収体に届くもの、様々な成分が混ざります。しかしながら、「散乱体と吸収体が同時にヒットする」条件を課せば、通常のコンプトンカメラと同様に可視化することができます。

参考情報

[1] Kato et al. 2021, “Intratumoral administration of astatine-211-labeled gold nanoparticle for alpha therapy”, Journal of Nanobiotechnology, 19, 223,
DOI: 10.1186/s12951-021-00963-9

[2] 放射化イメージングについては以下を参照

  • Koshikawa et al. 2022, “Proof of concept of activation imaging with hybrid Compton camera”, Applied Physics Letters, 121, 193701, DOI: 10.1063/5.0116570
  • Koshikawa et al. 2023, “Activation imaging: New concept of visualizing drug distribution with wide-band X-ray and gamma-ray imager”, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research – section A, 1045, 167599, DOI: 10.1016/j.nima.2022.167599
  • 「様々な元素の分布を可視化する「放射化イメージング」に成功」https://www.waseda.jp/top/news/85249

[3] ハイブリッド・コンプトンカメラについては以下を参照

  • Omata et al. 2020, “Performance demonstration of a hybrid Compton camera with an active pinhole for wide-band X-ray and gamma-ray imaging”, Scientific Reports, 10, 14064
    DOI: 10.1038/s41598-020-71019-5
  • 「X線ガンマ線の同時可視化を可能に」https://www.waseda.jp/top/news/69935

[4] 京都大学複合原子力科学研究所の研究用原子炉KUR については以下を参照
https://www.rri.kyoto-u.ac.jp/facilities/kur

論文情報

雑誌名:Applied Physics Letters
論文名:Activation imaging of gold nanoparticles for versatile drug visualization: an in vivo demonstration
執筆者名:Nanase Koshikawa1、Yuka Kikuchi1、Kazuo S. Tanaka1、Katsuyuki Tokoi2、Akina Mitsukai2, Hiroki Aoto2, Yuichiro Kadonaga3, Atsushi Toyoshima3, Hiroki Kato3, Kazuhiro Ooe3, Koichi Takamiya4, Jun Kataoka1

1. 早稲田大学理工学術院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻
越川 七星(論文筆頭著者)、菊池 優花、田中 香津生、片岡 淳

2. 大阪大学大学院 理学研究科 化学専攻
床井 健運、水飼 秋菜、青戸 宏樹

3. 大阪大学 放射線科学基盤機構
角永 悠一郎、豊嶋 厚史、加藤 弘樹、大江 一弘

4. 京都大学 複合原子力科学研究所
高宮 幸一
掲載予定日時(米国東部標準時):2025年3月12日(水)午前10時
掲載予定日時(日本時間):2025年3月13日(木)午前0時
DOI:10.1063/5.0251048
掲載予定URL:https://doi.org/10.1063/5.0251048

研究助成

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 ERATO「片岡ラインX線ガンマ線イメージングプロジェクト」(2021~2026年度;グラント番号 JPMJER2102)の支援を得て実施したものです。ここに深く感謝申し上げます。

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Redox Flow Batteries: Background and Current Trends(2025/4/2)

演題:Redox Flow Batteries: Background and Current Trends

日時: 2025年4月2日(水) 10:30-12:10

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館S-510

講師:Rebeca Marcilla

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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極めて安定な新規カンナビノイド生物学的等価体の不斉合成に成功

極めて安定な新規カンナビノイド生物学的等価体の不斉合成に成功
カンナビノイドの医薬的応用へ期待

発表のポイント

  • 医療用途でのカンナビノイドの利用が注目を集めており、その生理活性を活かした薬理学的研究や、より効果的な生物学的等価体の開発が進められています。
  • 本研究では、これまでに例のない1,7-エンインを原料としたエナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応を開発し、適切な配位子の選択により、高いエナンチオ選択性とほぼ完全な位置選択性を達成。さらに、極めて安定な新規カンナビジオール生物学的等価体の候補化合物の合成に成功しました。
  • 特に、カンナビノイド受容体に対する新規な生物学的等価体の合成は、医薬品開発において重要な意味を持ち、本研究により、カンナビノイドの医薬的応用が期待されます。

概要

早稲田大学理工学術院の柴田 高範(しばたたかのり)教授らの研究グループは、ロジウム触媒を用いて、1,7-エンインと非対称アルキンの[2+2+2]付加環化反応を報告しました。適切な配位子の選択により、極めて高いエナンチオ選択性1とほぼ完全な位置選択性を達成し、さらに生成物の合成変換により新規な※2を有するカンナビノイド生物学的等価体※3の候補化合物の合成を行いました。

本研究成果は、2025年2月5日にアメリカ化学会により発行される「Journal of the American Chemical Society」にオンライン版で公開されました。

図1 原料の1,7-エンインから、不斉触媒を使い分けることで、2つの位置異性体を高不斉収率で合成

図2 中心不斉を有する生成物を軸不斉を有するカンナビジオール(CBD) 生物学的等価体の候補化合物へ合成変換

これまでの研究で分かっていたこと

カンナビノイド4は近年、医療用途における利用が注目を集めており、その生理活性を活かした薬理学的研究や、より効果的な生物学的等価体の開発が進められています。特に、全身に存在するカンナビノイド受容体と結合することで様々な薬理学的作用を及ぼすことが知られているカンナビジオールやΔ⁹-THC4の構造を模倣する分子設計が求められています。このような背景より有機合成の観点において、ベンゾ[c]クロメノール骨格5の合成が重要です。

一方、従来より遷移金属触媒を用いた[2+2+2]付加環化反応6が広く研究されており、ロジウム、イリジウム、ニッケル、ルテニウムなどが活性な遷移金属触媒として報告されました。特に、キラルなロジウム触媒を用いるエナンチオ選択的な反応の報告例は多いですが、そのほとんどは原料として反応性が高い1,6-エンインを用いる反応で、六員環の構築が可能な1,7-エンインを原料とする高エナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応の報告例はこれまでありませんでした。

今回新たに実現したこと

本研究では、これまで未開拓であった1,7-エンインを原料としたエナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応の開発を目指しました。その結果、カチオン性ロジウム触媒と適切な配位子を組み合わせることで、カンナビノイド類に含まれるベンゾ[c]クロメノール骨格の高選択的合成を実現しました。

また、計算化学的解析により、エナンチオ選択性の起源を解明し、使用する配位子の違いが反応の位置選択性に与える影響を明らかにしました。さらに本手法を応用し、中心キラリティを軸性キラリティへ変換することにより、新規な軸不斉を有するカンナビノイド生物学的等価体の候補化合物の合成を達成しました。本化合物は、構造的にカンナビジオールに類似しつつも、高い安定性を持つことが示され、カンナビノイド受容体に対する親和性の向上が期待されます。

そのために新しく開発した手法

本研究では、カチオン性ロジウム触媒を用いた1,7-エンインと非対称アルキンの[2+2+2]付加環化反応の最適化を行いました。特に、エナンチオ選択性および位置選択性を制御するために、配位子の選択が重要でした。計算化学的手法を用いた解析では、最適配位子である(S)-DTBM-BINAPの場合、強いC=O···H-C(sp2)相互作用を形成することが選択性を高める要因であることが示唆されました。もう一方の位置異性体を与える最適配位子である(R,R)-BenzP*では、空間的な嵩高さによる選択性を示し、それぞれ異なる選択性の制御機構が存在することが示唆されました。

研究の波及効果や社会的影響

本研究で開発された合成手法は、ベンゾ[c]クロメノール骨格を提供する簡便、かつ信頼性の高い方法であり、様々な官能基の導入、炭素鎖伸長が可能です。特に、カンナビジオール受容体に対する新規な生物学的等価体の合成は、医薬品開発において重要な意味を持つことが期待されます。本研究で得られた化合物は、カンナビノイド類の医薬的応用を拡大する可能性があります。

今後の課題

得られたカンナビノール類縁体の生理活性評価を進め、実際の医薬品開発への応用可能性を明らかにすることが重要です。さらに、本手法を他の多環式化合物の合成に応用することで、新規な生物活性物質の創出につながる可能性があります。今後は、触媒系のさらなる改良や、反応メカニズムのより詳細な理解を進めることで、さらに効率的な合成手法の開発を目指します。

用語解説

※1 エナンチオ選択性
右手と左手のように互いに鏡像の関係にある分子を鏡像異性体(エナンチオマー)と呼び、エナンチオ選択性とは、2つの鏡像異性体のうち、一方の鏡像異性体を優先的に合成すること。

※2 軸不斉
鏡像の関係にあることを「不斉」と言います。分子に生じる不斉において、ある軸周りの非対称により生じる不斉が軸不斉です。その代表例が、図2に示したような2つのベンゼン環の間の単結合が立体障害により自由回転できないことに起因する不斉であり、医薬品や機能性材料の分野で重要な構造です。

※3 生物学的等価体
医薬関連化合物において生物学的に同じ役割を果たす他の部分構造を生物学的等価体(bioisostere)と呼びます。薬物の主要な生物活性に影響を与えることなく、医薬に含まれる官能基を他のものに置換することで、活性を改善させる目的に有効となるアプローチです。

※4 カンナビノイド、カンナビジオール、Δ⁹-THC
カンナビノイドは、104種類ある薬用作物「大麻草」に含まれる生理活性物質の総称です。近年、先進国を中心として、医療利用が進んでいます。カンナビジオールやΔ⁹-THCはカンナビノイドの一種。

※5 ベンゾ[c]クロメノール骨格
酸素を含んだ六員環であるピラン環に2つのベンゼン環が縮環した三環式骨格をもつ芳香族アルコールであり、カンナビノイド類を含め、多くの天然物に共通する骨格です。

※6 付加環化反応
π電子系を持つ二つの分子が付加反応を起こして、環状化合物を生成する反応であり、原料と生成物で、原子損失がない原子効率100%の理想的な反応です。Diels-Alder反応を代表例として、有機反応の中でも重要な炭素−炭素結合形成法としての基幹反応です。

論文情報

雑誌名:Journal of the American Chemical Society
論文名:Ligand-Governed Regio- and Enantioselective [2 + 2 + 2] Cycloaddition of 1,7-Enynes: Assembly of the Benzo[c]chromen-1-ol Backbone and Access to Enantioenriched Cannabinol Bioisostere
執筆者名(所属機関名):いずれも所属は早稲田大学
King Hung Nigel Tang博士(先進理工学研究科博士課程。博士学位取得後、現在は理工学術院総合研究所招聘研究員)、Taichi Kishi(先進理工学研究科修士課程。修士学位取得後、現在は民間企業研究員)、Natsuhiko Sugimura博士(物性計測センターラボ職員)、Yuto Horio(先進理工学研究科修士課程2年)Takanori Shibata(理工学術院教授)
掲載日時(現地時間):2025年2月5日
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.4c18319

研究助成

研究費名:Special Research Projects and the Japan Science and Technology Agency (JST) Support for Pioneering Research Initiated by the Next Generation (W-SPRING), JPMJSP2128
研究課題名:New Environment‐Friendly Strategy for the Synthesis of Valuable Organic Materials via C–H Activation
研究代表者名(所属機関名):King Hung Nigel Tang (早稲田大学 大学院先進理工学研究科 博士課程、現在 理工学術院総合研究所 招聘研究員)

研究費名:大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 Research Center for Computational Science, Project 24-IMS-C390
研究課題名:触媒的[2+2+2]付加環化反応における位置選択性の反応機構解析
研究代表者名(所属機関名):柴田 高範 (早稲田大学理工学術院)

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「私の宋明思想史研究」2025/3/25

演題:「私の宋明思想史研究」

日時:2025年3月25日(火) 15:00-17:00

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス53号館1階101教室

講師:三浦 秀一

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:創造理工学部・社会文化領域

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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傷を自力で治す硬い多層シリコーン系薄膜を開発

傷を自力で治す硬い多層シリコーン系薄膜を開発

発表のポイント

  • 損傷を自己修復可能な材料の開発は長寿命やメンテナンスフリーの観点から高いニーズがあります。
  • シロキサン(Si−O−Si)結合からなるシリコーン系材料は、日用品から医療、航空・宇宙分野に至るまで広く利用されています。従来のシリコーン系自己修復材料は、柔軟なゴム状材料に限定されており、また低分子量のシロキサン分子の生成により徐々に分解するため、長期的な安定性に課題がありました。
  • 本研究では、自己組織化プロセスを利用して架橋構造のシロキサン成分と直鎖構造のシロキサン成分をナノレベルで積層することで、亀裂の修復能力と高い硬度、長期的安定性を兼ね揃えた新材料の開発に成功しました。
  • 本材料は作製が簡便で、透明な薄膜として得られるため、保護コーティングなど様々な応用が期待できます。

概要

早稲田大学理工学術院の宮本佳明(みやもと よしあき)助手松野敬成(まつの たかみち)講師下嶋敦(しもじま あつし)教授らによる研究グループは、微細なひび割れの修復能力を有するシリコーン系薄膜を開発しました。シロキサン(Si–O–Si)結合からなるシリコーン材料は高い耐熱性、耐候性、透明性、絶縁性などの優れた特性から、幅広い分野で利用されています。ブロックコポリマーの自己組織化を利用してナノレベルの多層構造を構築することにより、従来のシリコーン系自己修復性材料の課題であった低分子量成分の生成・揮発による分解が抑制されると同時に、膜の硬度が大幅に向上しました。

本研究成果は英国王立化学会が発行するChemical Communications誌に2025年1月6日(月) (現地時間)に掲載されました。
論文名:Multilayered organosiloxane films with self-healing ability converted from block copolymer nanocomposites

図 本研究で開発した自己修復能を持つシリコーン系薄膜

キーワード:

シロキサン、自己修復、薄膜

これまでの研究で分かっていたこと

主骨格がシロキサン (Si–O–Si) 結合から成るシリコーン系材料は、透明性、絶縁性、高い化学的・熱的安定性を有し、幅広い分野で利用されています。損傷や機能劣化を温和な条件下で修復する能力を付与することは、材料の長寿命化、耐久性、安全性の向上の面で重要です。高分子材料においては、結合の組み換え反応を利用することで、外力により生じた傷を分子レベルで修復することが可能となります。シリコーン系材料の中でも最も一般的なポリジメチルシロキサン((Si(CH3)2O)n, PDMS) 系材料では、シラノレート(Si–O)基の導入によって、Si–O–Si結合の組み換えが促進され、切断しても再接合が可能となることが知られています。しかし、この修復機構では自己修復性と材料の硬さがトレードオフの関係にあり、従来の自己修復性PDMS系材料は、柔らかいゴム状のものに限定されていました。また、結合の組み換えに伴って低分子量環状シロキサンの生成と揮発が徐々に進行するため、材料の長期安定性を損なうだけでなく、揮発成分が周囲の電子部品に付着し、接触不良などの深刻な問題を引き起こす懸念もあります。

今回新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、新しく開発した手法

本研究グループは、3次元網目構造の有機シロキサン層と直鎖構造のPDMS層からなる多層構造体の新たな構築プロセスを提案しました。

まず初めに、ポリエチレンオキシド((C2H4O)n, PEO)とポリジメチルシロキサン(PDMS)からなるブロックコポリマー※1を用い、自己組織化プロセス※2によって有機シロキサン層とブロックコポリマー層からなる多層ナノコンポジット※3薄膜を作製しました。その後、PEOブロックを空気中での加熱により除去し、ブロックコポリマー層をPDMS層に転換しました(図1)。その後、得られた多層シリコーン薄膜中にシラノレート基を導入することで、薄膜上に生じた亀裂が80 °C、相対湿度40%の条件で修復することが確認されました(図2)。

図1. ブロックコポリマーナノコンポジットから多層ブロックコポリマーへの転換

図2. 亀裂の修復挙動の観察

従来の自己修復性PDMSエラストマーでは、60~200 °Cで低分子量の環状シロキサンが揮発することが確認されました。一方で、今回作製した材料ではこれらの揮発が全く確認されませんでした。このことから有機シロキサン層によって環状シロキサンの拡散が制限されたことが示唆されます。さらに、今回作製した材料は従来のPDMSエラストマーと比較して、約30倍の硬度を示すことが確認されました。

研究の波及効果や社会的影響

今回開発した材料は、高い硬度、亀裂の修復能力、透明性などの特徴から、保護コーティングとして有望です。環状シロキサンの揮発性が低いため、長期的安定性が高く、汚染リスクに敏感な電子部品へも適応可能と考えられます。

今後の課題

現状の修復プロセスは加熱や水蒸気を必要とするため、用途が制限される可能性があります。より穏やかな条件下で亀裂の修復を達成するために、さらなる材料設計が必要と考えています。

研究者のコメント

自己修復材料は市場規模の拡大が目覚ましい分野です。今回開発した自己修復性シリコーン系薄膜は従来の課題であった低分子量の環状シロキサンの揮発を抑制するとともに、比較的高い硬度を示します。無機のシロキサン骨格に由来する優れた耐熱性や耐候性と相まって、本材料は様々な分野における利用が期待できます。

用語解説

※1 ブロックコポリマー
2種類以上のポリマーを連結したポリマーのこと。特に親水的なポリマーと疎水的なポリマーを連結することにより界面活性剤として用いることが可能で、洗剤などに広く利用されている。

※2 自己組織化プロセス
外部からの誘導なしに、構成要素が自発的に秩序ある構造に配列するプロセスのこと。界面活性剤の自己組織化を利用することにより、層状やシリンダー状などの規則構造を数~数十ナノメートルスケールで有する構造体の作製が可能となる。

※3 ナノコンポジット
少なくとも1つの相がナノメートルのサイズである2つ以上の相によって形成される固体材料。ナノシートやナノ粒子、ナノファイバーなどを材料に導入することは工業的に良く行われている。

論文情報

雑誌名:Chemical Communications
論文名:Multilayered organosiloxane films with self-healing ability converted from block copolymer nanocomposites
執筆者名(所属機関名):Yoshiaki Miyamoto,a Takamichi Matsuno,a,b,c Atsushi Shimojima a,b,c*
a 早稲田大学先進理工学部応用化学科
b 早稲田大学理工学術院総合研究所
c 早稲田大学各務記念材料技術研究所
掲載日時(現地時間):2025年1月6日
掲載URL:https://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2025/CC/D4CC05804F
DOI:https://doi.org/10.1039/d4cc05804f

研究助成

本研究は文部科学省先端研究基盤共用促進事業(コアファシリティ構築支援プログラム)JPMXS0440500024で共用された機器(C1025, C1028, C1049, C1051, G1026, G1028, G1033, G1036, G1064)を利用した成果です。

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From Sun to Heat Energy Harvesting with Fluorescent Proteins(2025/3/17)

日時: 2025年3月17日(月) 10:00-11:40

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館S-510室

講師:Rubén D. Costa

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部・応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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【受験生の皆さまへ】2025年度基幹・創造・先進理工学部一般入試の解答公表について

2025年度 基幹・創造・先進理工学部一般入試(2月16、17日実施)の「英語」および「物理」「化学」のマーク解答問題について、解答を公表いたします。なお、上記科目に加え「数学」「生物」「空間表現」の「試験問題」および「記述解答問題の出題意図」については、6月ごろをめどに公表予定です。

2025年度理工一般 解答(英語)
2025年度理工一般 解答(物理・化学) (3月4日更新)

※ お問い合わせいただいた内容は本学で確認し、必要がある場合は、学術院Webページもしくは入学センターWebページに掲載いたします。個別に回答することはいたしません。

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不透明な物質を透明に超高速切り替えに成功、未来の光信号処理デバイスへ

不透明な物質を透明に超高速切り替えに成功、未来の光信号処理デバイスへ

発表のポイント

  • 本来は不透明なゲルマニウム(Ge)薄膜にパルスレーザーを集光照射することで、超高速で光のスイッチと波長の選択ができることを実証。
  • フェムト秒時間スケールでの現象を解析できる計測装置を開発し、Geに高密度な光励起をすると、励起された電子は瞬時にGeの複数のバンドの谷(多谷間)に配分されて緩和することを明らかにしました。
  • 多谷間構造中で励起電子の緩和・配分を制御することで、多彩な波長に対応した超高速・多色光スイッチングデバイスの実現ができ、光通信や光コンピュータへの応用が期待されます。

概要

不透明な物質であっても、高強度レーザー光の励起※1により、まるで物質が存在しないかのように光を透過させることができます。レーザーのON/OFFを超高速で切り替えれば、その物質の透明・不透明も超高速に切り替えられるでしょうか?さらに、単色光だけではなく、多色光も同時に超高速で透明・不透明に切り替え可能でしょうか?

早稲田大学理工学術院の賈軍軍(じゃ じゅんじゅん)教授、中部大学の山田直臣(やまだ なおおみ)教授、産業技術総合研究所の八木貴志(やぎ たかし)研究グループ長らは、多谷間物質※2Geにパルスレーザーを照射することで、幅広い波長の光に対して透明・不透明を同時かつ超高速に切り替られることを実証しました。この成果は、光信号を物理的に切り替える技術の一つとして、将来のマルチバンド通信や量子コンピュータなど用の超高速光スイッチの開発への応用が期待できます。

本研究成果は、『Physical Review Applied』(論文名:Multivalley Optical Switching in Germanium)にて、2025年2月24日(現地時間)にオンラインで掲載されました。

図1 光スイッチングデバイスの動作概略図およびその原理

キーワード:

多谷間構造、谷間散乱、光スイッチングデバイス、過渡透過※3、Pauli Blocking Effect

これまでの研究で分かっていたこと

光学材料の屈折率や消衰係数など光学定数は、光の強度が低い場合には一定とみなせます。しかし、光の強度が強くなると、光学定数が光の強度に依存して変化する非線形性が現れます。この非線形光学現象を利用すると、レーザー波長の変換など、通常の光学系では実現できない多彩な光の操作が可能になります。しかし、従来の非線形光学材料は、高強度レーザーなどの照射によりある決められた波長において光学非線形性が発現するのが一般的でした。

一方、半導体材料では、バンドギャプ※4以上の高強度レーザーを用いると、多数の電子が価電子帯から伝導帯※5に高密度に励起され、これらは電子-フォノン散乱によって伝導帯の下部を一時的に占有することができます。この伝導帯の下部における電子の占有(Pauli Blocking効果※6)によって、一時的に光を透過できる状態が生じます。この現象は、直接半導体材料であるInN(窒化インジウム)ですでに観測されており、光の高速スイッチング技術として注目されています。しかし、InNの透明化が起こるのは、近赤外領域のバンドギャプ付近に限られていました。

新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと、そのために新しく開発した手法

本研究では、近赤外から可視光領域にわたる幅広い波長帯域で高速に透明化する新たなアプローチを提案し、その実証に成功しました。固体物質の多谷間構造を利用し、パルスレーザーの高密度光励起を用いることで、近赤外から可視光にわたる多色光の透過・不透過が超高速で切り替わることを初めて観測しました。これは、これまで明らかにされていなかった新たな研究成果となります。

一般的に、光が固体物質中の電子を伝導帯に励起すると、電子は超高速で緩和し、その後電子-正孔の再結合などを経て元の状態に戻ります。Geや酸化物のような化学結合の強い物質では、励起後の緩和過程がピコ秒※7以下で起きるため、観測・制御・利用は非常に困難です。本研究では、フェムト秒※7時間スケールでの現象を解析できる計測装置を開発し、透過・不透過の超高速切り替え現象を実験的に解明しました。そのメカニズムは、励起された電子が谷間散乱を経て多谷間に配分され、各谷間に瞬時に滞在することでPauli Blockingが発生します(図1)。これは、電子が伝導帯の空状態を占有することで、光が吸収されず透過する現象です。Geにおいて、この現象により、530 nmと600 nmの可視光と~900 nmの近赤外光が、数百フェムト秒の時間スケールで同時に透過することが確認されました。これは、多波長に対応したスイッチング材料としての実現可能性を示しています。

研究の波及効果や社会的影響

本研究では、多谷間物質へのフェムト秒パルスレーザー照射により、励起電子の多谷間配分を高精度に制御することで、広帯域の波長に対応した超高速多色光スイッチングデバイスの実現可能性を示しました。

今回の成果は、単に超高速な物理現象の観測・解明にとどまらず、持続可能な高度情報化社会を実現するための基盤技術としても重要な役割を果たすと考えられます。例えば、光通信においてマルチバンド通信や光コンピュータのロジック素子への応用のように情報通信分野において波及効果をもたらすことが期待されています。特に、 多波長でスイッチングできることのメリットは、複数の光信号を時間差で重ねることで、より多くの光信号を伝送可能にする点です。今回の実証物質Geはシリコンフォトニクスとの高い整合性を有しているため、本原理に基づく多色光スイッチングは、シリコンフォトニクスの構成素子の一つとして、より高速なデータ通信やセキュリティの向上に貢献し、増加し続けるインターネットトラフィックの課題解決に寄与することが期待されます。

課題と今後の課題

今回の研究では、多谷間物質を最先端のパルスレーザー技術と融合させ、広帯域の波長に対応した光スイッチング材料の創出を目指して研究を進めました。この成果により、単一波長での光を伝搬する従来の通信方式よりも、広帯域・多波長での受送信が可能となり、光ファイバの伝送容量が大幅に拡大し、大容量・高速データ通信への貢献が期待されます。しかしながら実用化に向けては、既存の光通信波長帯にマッチングする材料の創出などの課題が残されています。今後は、これまでの研究成果を基盤とし、新しい材料設計技術を活用して広帯域対応の多谷間物質を創出し、超高速光スイッチングデバイスの実用を検討していきます。これにより、将来的には光通信や量子コンピュータのへの応用につながることが期待されます。

研究者のコメント

この研究では、多谷間構造を持つゲルマニウム薄膜において、励起された電子がバンド構造内の複数の谷に超高速で分布することを観測しました。この超高速な物理現象を活用することで、多色光の超高速光スイッチングデバイスの実現に向けた重要な成果が得られました。今後は、多谷間物質を用いて、伝導帯内で電子を超高速に注入する技術をさらに発展し、新たな物理現象の発見とともに、より多くの革新的なデバイス応用の実現が期待されています。

用語解説

※1 励起
原子や分子が外部からエネルギーを与えられ、エネルギーの低い安定した状態から、より高いエネルギー状態に移ることを指します。

※2 多谷間物質
固体物質の伝導帯の底を谷間と呼び、谷間を一つ以上持つ半導体を多谷間物質といいます。

※3 過渡透過
光が物質を通過する際に、時間とともに変化する透過特性を指します。

※4 バンドギャプ
固体物理において、光(または外部エネルギー源)が電子を価電子帯から伝導帯へ励起するために必要なエネルギー差を指します。

※5 伝導帯
固体物理学における半導体や絶縁体のバンド構造の一部で、電子が自由に移動できるエネルギー範囲のことを指します。光照射や熱などの外部エネルギーにより、電子が価電子帯から伝導帯に励起されることができます。

※6 Pauli Blocking効果
高密度な電子が伝導帯に占有された半導体において、新たな電子はそこに遷移できず、光の吸収がブロックされる現象を指します。

※7 ピコ秒、フェムト秒
 1ピコ秒は1秒の1兆分の1、すなわち 10−12 秒、1フェムト秒は1秒の1000兆分の1、すなわち 10−15 秒に相当します。

論文情報

雑誌名:Physical Review Applied
論文名:Multivalley optical switching in germanium
執筆者名(所属機関名):Junjun Jia* (Waseda University)、Hossam A. Almossalami (Zhejiang University)、Hui Ye* (Zhejiang University)、Naoomi Yamada (Chubu University)、Takashi Yagi  (National Chubu University)
掲載予定日時(現地時間):2025年2月24日
掲載URL:https://journals.aps.org/prapplied/abstract/10.1103/PhysRevApplied.23.024060
DOI:https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.23.024060

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空間的オミクス解析で解き明かす婦人科癌の新たな世界(2025/3/13)

演題:空間的オミクス解析で解き明かす婦人科癌の新たな世界

日時: 2025年3月13日(木) 16:00-17:40

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス52号館201室

講師:田口 歩

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 電気・情報生命工学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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規則性ナノ空間材料の魅力と展開(2025/3/6)

演題:規則性ナノ空間材料の魅力と展開

日時: 2025年3月6日(木) 15:30-17:10

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス63号館204,205室

講師:小倉 賢

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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“Octahedral metal clusters with graphenic nanomaterials as catalysts for sustainable development”(2025/3/4)

日時: 2025年3月4日(火) 16:00-17:40

会場:早稲田大学 各務記念材料技術研究所 42-1-101 (講演室)

講師:Marta Feliz Rodriguez

対象:応化学部生、応化院生、化学院生、ナノ理工院生

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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“Nano-decoration” of field-effect capacitors – challenges, changes(2025/2/26)

日時: 2025年2月26日(水) 15:30-17:10

会場:早稲田大学 121号館4階407

講師:Schöning, Michael Josef

対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学専攻

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

 

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Graphene Substrates in Lithium-Sulfur and Lithium-Oxygen batteries(2025/2/4)

日時: 2025年2月4日(火) 16:00-17:00

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス54号館101室

講師:Jusef Hassoun

対象:応用化学科大学院生および学部生

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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Graphene Substrates in Lithium-Sulfur and Lithium-Oxygen batteries(2025/2/4)

日時: 2025年2月4日(火) 16:00-17:00

会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス54号館101室

講師:Jusef Hassoun

対象:応用化学科大学院生および学部生

参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。

主催:先進理工学部 応用化学科

問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課

TEL:03-5286-3000

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