「建築による社会変革ーつくりかたからつくりかえる」2025/4/25
演題:「建築による社会変革ーつくりかたからつくりかえる」
日時:2025年4月25日(金)18:00~21:00
会場:西早稲田キャンパス 63号館2階04・05会議室
講師:秋吉 浩気
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般の全て
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:創造理工学部建築学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
演題:「建築による社会変革ーつくりかたからつくりかえる」
日時:2025年4月25日(金)18:00~21:00
会場:西早稲田キャンパス 63号館2階04・05会議室
講師:秋吉 浩気
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般の全て
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:創造理工学部建築学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000

関係者による集合写真(左から近藤圭一郎 理工学術院長補佐、若尾真治 理事、赤松健 文部科学大臣政務官、所千晴 創造理工学部長、戸川望 理工学術院長)
2025年3月19日(水)、赤松健 文部科学大臣政務官らが、本学理工学術院創造理工学部長の所千晴教授を訪問し、リチウムイオン電池のリサイクルに係る研究開発現場を視察されました。
会の冒頭では理事の若尾真治教授、 理工学術院長の戸川望教授より本学の研究推進に係る紹介があり、その後所教授より、小型リチウムイオン電池の安全・安心な処理を目指した令和5年度東京都「大学研究者による事業提案制度」に提案された内容のほか、これまでの国による委託事業等を通じた資源循環を実現するための分離技術等、リサイクルを含むサーキュラーエコノミーの実現に向けた幅広い取り組みに係る紹介がありました。
その後所教授の実験室において電気パルスによる分離実験の実際のデモの様子を視察され、赤松政務官との間で実験条件や材料に関する詳細な意見交換がなされました。
後半のディスカッションの場では、所教授より自身の研究の将来展望について、利用者に近い内側の資源循環ループの確立に向けたリソーシングの重要性が指摘され、そのためには選択性・局所性の高い分離技術の研究開発が必要不可欠である旨のお話がありました。赤松政務官からは、適宜鋭いご質問をいただき、また所教授の研究について深いご理解・ご関心をいただき、大変有意義な意見交換となりました。


所教授よりリチウムイオン電池の材料サンプルについて説明を受ける赤松政務官


電気パルス分離実験室の様子


意見交換の様子(赤松政務官)

意見交換の様子(所教授)
岐阜大学 大学院自然科学技術研究科の修士課程1年の川名梨央さん、修士課程修了生(令和5年度)大口奈都子さん、工学部 山田啓介准教授、吉田道之助教、杉浦隆教授、嶋睦宏教授、名古屋大学 大学院工学研究科 大島大輝助教、名古屋大学 未来材料・システム研究所 加藤剛志教授、早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 齋藤美紀子招聘研究員、早稲田大学 先進理工学部 本間敬之教授、京都大学 化学研究所の小野輝男教授の研究グループは、層厚を制御した多層構造をもつ人工強磁性細線⁽¹⁾の作製を二浴電析(電気めっき)法⁽²⁾と細孔ナノテンプレートを用いて成功しました。層厚は数100 nmから最小で約3.5 nmの多層構造を有する人工強磁性細線が作製できました。さらに研究グループでは、1本の人工強磁性細線の磁気抵抗を測定し、人工強磁性細線の層厚が薄くなるほど、磁気抵抗比が増大することを確認しました。本研究の成果は、人工強磁性細線を利用する次世代磁気メモリや磁気センサの開発化へ道筋を開くものです。
本研究成果は、2025年3月20日(木)付でApplied Physics Expressに掲載されました。
次世代の情報記録デバイス実現を目指すスピントロニクス⁽³⁾では、次世代磁気メモリの候補として三次元磁壁移動型磁気メモリが提案され、研究開発が行われています(図1参照)。三次元磁壁移動型磁気メモリの構想では、細線1本で数ビットの記録容量をもつ人工強磁性細線が配置された構造となっており(図1(左図))、細線は記録層と磁壁層を交互に積層した多層構造になっています。中でも記録層はデータを保持する役割をもち、垂直方向の磁化の向きにより、データの0と1を区別します。一方、磁壁層は、記録層の磁化方向を緩やかに繋ぐ役割をもつ層として働く層で、磁壁層内の磁化は磁壁と呼ばれる磁化が緩やかに変化した領域となっています(図1(中図))。細線に電流を印加することで記録層のデータを動かし(図1(右図))、読み出し用の強磁性トンネル接合素子(Magnetic Tunneling Junction: MTJ)でデータを読み取ります。記録層と磁壁層として適している材料として、コバルト-プラチナ(Co-Pt)合金が計算による設計からわかっていましたが、メモリの開発に向け、メモリ素子となる人工強磁性細線の作製が一つの課題となっていました。

図1:三次元磁壁移動型磁気メモリの概略図 (左)三次元磁壁移動型磁気メモリの構造。(中央)人工強磁性細線の拡大図。(右)記録データ(0または1)の転送方法。細線に電流を印加することでデータを転送させます。
人工強磁性細線の作製として本研究グループでは、電析(電気めっき)法と細孔ナノテンプレートを用いた手法に注目しました。電析法を用いた多層構造細線では、以前にはパルス電析法⁽⁴⁾を用いた手法が多く報告されていました。しかしながら、細線の層厚を制御よく作製できた報告は少なく、多層構造細線の層厚の制御が課題となっていました。本研究グループでは、二浴電析法に注目し、層厚を制御した人工強磁性細線の作製を試みました。
人工強磁性細線の作製は、材質がポリカーボネートの細孔ナノテンプレートを作用電極として加工し、コバルトとプラチナの濃度比が異なる電解質溶液を相互に電析する二浴電析法により作製しました(図2(a)参照)。電解質溶液は、組成比が異なる強磁性体であるコバルト-プラチナ(Co-Pt)合金を合成するために、濃度比が異なる2種類の電解質溶液を用いました。図2(b)に作製した人工強磁性細線の電子線回折による観察結果を示します。複数本の人工強磁性細線が像として写っており、Co₇₁Pt₂₉合金とCo₁₃Pt₈₇合金の層が綺麗に積層されていることがわかります。細線の直径は、約130 nm、Co₇₁Pt₂₉合金とCo₁₃Pt₈₇合金の1層の厚さの平均膜厚が11 nmでした。走査型電子顕微鏡による観察から細線の長さは最長で約19μ mmでした。試料作製の設計より、細線の積層数は最大で約1300層でした。

図2:実験手法と作製した人工強磁性細線 (a)実験で用いた二浴電析法の概念図。(b)作製した複数本の人工強磁性細線の電子線回折による観察結果。細線の直径は約130 nm、Co₇₁Pt₂₉合金とCo₁₃Pt₈₇合金の1層の厚さの平均膜厚が11 nmです。Co₇₁Pt₂₉合金とCo₁₃Pt₈₇合金の層が綺麗に積層されていることがわかります。
図3には、電子線回折による層厚の異なる人工強磁性細線の観察結果を示します。図3(a)~(d)は、Co₇₁Pt₂₉合金とCo₁₃Pt₈₇合金の1層の厚さ平均膜厚が、それぞれ、(a)約 80, (b) 35, (c) 17, (d) 3.5 nmの試料を示しています。図3の観察結果より、層厚を人工的に制御できていることがわかります。さらに図3(d)に示すように、層厚は最小で約3.5 nmの人工強磁性細線が作製できました。

図3:電子線回折による層厚の異なる人工強磁性細線の観察結果 (a)~(d)は、Co₇₁Pt₂₉合金とCo₁₃Pt₈₇合金の1層の厚さの平均膜厚が、それぞれ(a)約 80, (b) 35, (c) 17, (d) 3.5 nmの人工強磁性細線です。人工強磁性細線の層厚を人工的に制御できていることがわかります。
図4には、1本の人工強磁性細線の磁気抵抗を測定した結果を示します。1本の細線に電極を微細加工とリフトオフ法により付けた試料の光学顕微鏡像を図4(a)に示します。電極を付けた1本の細線に電流と磁場を印加し、異方性磁気抵抗(Anisotropic Magnetoresistance: AMR) ⁽⁵⁾を測定しました。その結果、図4(b)に示すように、人工強磁性細線の層厚が薄くなるほど、磁気抵抗比が増大することを確認しました。その他の磁気抵抗測定においても細線内で磁壁移動を示唆できる測定結果が得られたことから、人工強磁性細線が図1に示す磁気メモリとして動作できることを確認できました。これらの結果より、人工強磁性細線を利用する次世代磁気メモリや磁気センサの開発へ繋がる結果を示すことができました。

図4:1本の人工強磁性細線の磁気抵抗測定 (a) 1本の人工強磁性細線に電極を付けた試料の光学顕微鏡による観察結果。(b)外部磁場印加は9.3 kOe、室温条件下で測定した各試料における磁気抵抗比の結果。平均膜厚が11 nmの人工強磁性細線は、単層Co₈₀Pt₂₀細線と比べると2.2倍大きな磁気抵抗比が得られました。
本研究では、層厚を制御した多層構造をもつ人工強磁性細線の作製を二浴電析法と細孔ナノテンプレートを用いて成功しました。層厚は、最小で約3.5 nmの人工強磁性細線が作製できました。加えて、1本の細線に電極を付け、人工強磁性細線の層厚が薄くなるほど、磁気抵抗比が増大することを確認しました。これらの結果は、人工強磁性細線を利用する次世代磁気メモリや磁気センサの開発化へ繋がる結果です。今回の成果は、二浴電析法で層厚を制御して数ナノメートルオーダーの強磁性体の積層が可能である技術を示しただけでなく、省エネルギー・高密度・超小型化の次世代情報記録デバイスであるマルチビットに対応可能な磁気メモリの開発へ前進となる結果を示すことができました。
(1)人工強磁性細線:組成の異なる強磁性金属同士の層厚がnmオーダーで多層構造になった細線のこと。1980年代頃から研究が始まった「人工格子」(各層の厚さを原子層単位で制御して積層した人工的多層膜のこと)になぞらえて「人工強磁性細線」と名付けた。
(2)二浴電析法:2種類の電解質溶液を利用して電析する手法。異なる電解質溶液で電析を行い、異なる物質を積層させることができる技術。一方で、積層させる電極などを異なる電解質溶液間で物理的に移動させる必要がある。
(3)スピントロニクス:電子の持つスピンの自由度を利用することで、従来のエレクトロニクスに無い新機能・高性能素子の実現を目指す研究開発分野。
(4)パルス電析法:時間とともに電流(または電圧)を変化させる電析法で、パルス波形を用いた手法。析出物の表面形態、結晶粒径、構造を制御できる手法である。直流電流(または直流電圧)に比べて拡散層の厚さを薄くでき、高いパルス電流密度で電析することができる。
(5)異方性磁気抵抗(Anisotropic Magnetoresistance: AMR):強磁性体の磁化の向きと電流方向のなす角度に依存して、電気抵抗が変化する現象。電流方向と磁化方向が平行の時が、電流方向と磁化方向が垂直の時と比べて電気抵抗が大きくなる。磁化方向は外部磁場によって方向を制御する。磁場(磁化)方向と電流方向が垂直の場合と平行の場合の磁気抵抗をそれぞれ測定し、その差から磁気抵抗比[%]を求める。磁気抵抗比が大きいほど磁気センサとしての感度が高いことを示している。
雑誌名:Applied Physics Express
論文タイトル: Artificial control of layer thickness in Co-Pt alloy multilayer nanowires fabricated by dual-bath electrodeposition in nanoporous polycarbonate membranes
著者: Rio Kawana, Natsuko Oguchi, Daiki Oshima, Michiyuki Yoshida, Takashi Sugiura, Mikiko Saito, Takayuki Homma, Takeshi Kato, Teruo Ono, Mutsuhiro Shima, and Keisuke Yamada
DOI番号:10.35848/1882-0786/adbcf6
川名 梨央(かわな りお):論文筆頭著者
岐阜大学 大学院自然科学技術研究科 修士課程1年
大口 奈都子(おおぐち なつこ)
岐阜大学 大学院自然科学技術研究科 修士課程修了(令和 5 年度)
大島 大輝(おおしま だいき)
名古屋大学 大学院工学研究科 助教
吉田 道之(よしだ みちゆき)
岐阜大学 工学部 助教
杉浦 隆(すぎうら たかし)
岐阜大学 工学部 教授
齋藤 美紀子(さいとう みきこ)
早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員
本間 敬之(ほんま たかゆき)
早稲田大学 先進理工学部 教授
加藤 剛志(かとう たけし)
名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授
小野 輝男(おの てるお)
京都大学 化学研究所 教授
嶋 睦宏(しま むつひろ)
岐阜大学 工学部 教授
山田 啓介(やまだ けいすけ):論文責任著者
岐阜大学 工学部 准教授
本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)「3次元磁気メモリの開発」(代表:小野輝男, 課題番号:JPMJCR21C1)の支援を受け実施された。本研究の一部は、日本学術振興会 科学研究費 基盤研究C(課題番号:24K08198)の支援を受け、また名古屋大学未来材料・システム研究所における共同利用・共同研究(課題番号:JPMXP1224NU0211)として実施された。
独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)が公募する環境研究総合推進費の令和7年度新規課題に、本学から3件が採択されました。申請総数は477件で、このうち103件が採択された中の3件となります。
環境研究総合推進費は、環境政策への貢献・反映を目的とした競争的研究資金制度です。「環境研究・環境技術開発の推進戦略」(令和元年5月環境大臣決定)に基づき、重点課題やその解決に資するテーマを提示した上で、広く産学民官の研究機関の研究者から提案を募り、応募された課題のうち、外部有識者等による事前評価を経て採択された課題について、研究開発を実施します。(ERCAプレスリリースより)
演題:Potential-Dependent Structural Dynamics and Spin Transition of Electrocatalysts
日時: 2025年4月7日(月) 15:00-16:00
会場:早稲田大学 55号館S-607室
講師:Ching-Wei Tung (童敬維)
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:先進理工学部 応用化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
リンク先URL https://noda.w.waseda.jp/index-j.html
リンク先URL https://nhanada.w.waseda.jp/
演題:”Some new aspects and old questions on the role of primary processes in photopolymerization and 3D printing”
日時: 2025年4月4日(金) 15:30-17:10
会場:早稲田大学 55号館S-510室
講師:Xavier Allonas
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:先進理工学部 応用化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
演題:Fatigue of composites for wind turbine blades
日時: 2025年4月7日(月) 13:10-14:50
会場:早稲田大学 55号館N 1階 第一会議室
講師:Kristine Munk Jespersen
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:基幹理工学部 機械科学・航空宇宙学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
The application guidelines for English-based Graduate Program (Including Research Student Program) for entering in September 2025 and April 2026 are now available.
Please refer to the Application Guidelines and prepare your application documents.
[Application Deadlines]
For September 2025 Enrollment: Apply by March 26, 2025
For April 2026 Enrollment: Apply by October 23, 2025
演題:Redox Flow Batteries: Background and Current Trends
日時: 2025年4月2日(水) 10:30-12:10
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館S-510
講師:Rebeca Marcilla
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:先進理工学部 応用化学専攻
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
早稲田大学理工学術院の柴田 高範(しばたたかのり)教授らの研究グループは、ロジウム触媒を用いて、1,7-エンインと非対称アルキンの[2+2+2]付加環化反応を報告しました。適切な配位子の選択により、極めて高いエナンチオ選択性※1とほぼ完全な位置選択性を達成し、さらに生成物の合成変換により新規な※2を有するカンナビノイド生物学的等価体※3の候補化合物の合成を行いました。
本研究成果は、2025年2月5日にアメリカ化学会により発行される「Journal of the American Chemical Society」にオンライン版で公開されました。

図1 原料の1,7-エンインから、不斉触媒を使い分けることで、2つの位置異性体を高不斉収率で合成

図2 中心不斉を有する生成物を軸不斉を有するカンナビジオール(CBD) 生物学的等価体の候補化合物へ合成変換
カンナビノイド※4は近年、医療用途における利用が注目を集めており、その生理活性を活かした薬理学的研究や、より効果的な生物学的等価体の開発が進められています。特に、全身に存在するカンナビノイド受容体と結合することで様々な薬理学的作用を及ぼすことが知られているカンナビジオールやΔ⁹-THC※4の構造を模倣する分子設計が求められています。このような背景より有機合成の観点において、ベンゾ[c]クロメノール骨格※5の合成が重要です。
一方、従来より遷移金属触媒を用いた[2+2+2]付加環化反応※6が広く研究されており、ロジウム、イリジウム、ニッケル、ルテニウムなどが活性な遷移金属触媒として報告されました。特に、キラルなロジウム触媒を用いるエナンチオ選択的な反応の報告例は多いですが、そのほとんどは原料として反応性が高い1,6-エンインを用いる反応で、六員環の構築が可能な1,7-エンインを原料とする高エナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応の報告例はこれまでありませんでした。
本研究では、これまで未開拓であった1,7-エンインを原料としたエナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応の開発を目指しました。その結果、カチオン性ロジウム触媒と適切な配位子を組み合わせることで、カンナビノイド類に含まれるベンゾ[c]クロメノール骨格の高選択的合成を実現しました。
また、計算化学的解析により、エナンチオ選択性の起源を解明し、使用する配位子の違いが反応の位置選択性に与える影響を明らかにしました。さらに本手法を応用し、中心キラリティを軸性キラリティへ変換することにより、新規な軸不斉を有するカンナビノイド生物学的等価体の候補化合物の合成を達成しました。本化合物は、構造的にカンナビジオールに類似しつつも、高い安定性を持つことが示され、カンナビノイド受容体に対する親和性の向上が期待されます。
本研究では、カチオン性ロジウム触媒を用いた1,7-エンインと非対称アルキンの[2+2+2]付加環化反応の最適化を行いました。特に、エナンチオ選択性および位置選択性を制御するために、配位子の選択が重要でした。計算化学的手法を用いた解析では、最適配位子である(S)-DTBM-BINAPの場合、強いC=O···H-C(sp2)相互作用を形成することが選択性を高める要因であることが示唆されました。もう一方の位置異性体を与える最適配位子である(R,R)-BenzP*では、空間的な嵩高さによる選択性を示し、それぞれ異なる選択性の制御機構が存在することが示唆されました。
本研究で開発された合成手法は、ベンゾ[c]クロメノール骨格を提供する簡便、かつ信頼性の高い方法であり、様々な官能基の導入、炭素鎖伸長が可能です。特に、カンナビジオール受容体に対する新規な生物学的等価体の合成は、医薬品開発において重要な意味を持つことが期待されます。本研究で得られた化合物は、カンナビノイド類の医薬的応用を拡大する可能性があります。
得られたカンナビノール類縁体の生理活性評価を進め、実際の医薬品開発への応用可能性を明らかにすることが重要です。さらに、本手法を他の多環式化合物の合成に応用することで、新規な生物活性物質の創出につながる可能性があります。今後は、触媒系のさらなる改良や、反応メカニズムのより詳細な理解を進めることで、さらに効率的な合成手法の開発を目指します。
※1 エナンチオ選択性
右手と左手のように互いに鏡像の関係にある分子を鏡像異性体(エナンチオマー)と呼び、エナンチオ選択性とは、2つの鏡像異性体のうち、一方の鏡像異性体を優先的に合成すること。
※2 軸不斉
鏡像の関係にあることを「不斉」と言います。分子に生じる不斉において、ある軸周りの非対称により生じる不斉が軸不斉です。その代表例が、図2に示したような2つのベンゼン環の間の単結合が立体障害により自由回転できないことに起因する不斉であり、医薬品や機能性材料の分野で重要な構造です。
※3 生物学的等価体
医薬関連化合物において生物学的に同じ役割を果たす他の部分構造を生物学的等価体(bioisostere)と呼びます。薬物の主要な生物活性に影響を与えることなく、医薬に含まれる官能基を他のものに置換することで、活性を改善させる目的に有効となるアプローチです。
※4 カンナビノイド、カンナビジオール、Δ⁹-THC
カンナビノイドは、104種類ある薬用作物「大麻草」に含まれる生理活性物質の総称です。近年、先進国を中心として、医療利用が進んでいます。カンナビジオールやΔ⁹-THCはカンナビノイドの一種。
※5 ベンゾ[c]クロメノール骨格
酸素を含んだ六員環であるピラン環に2つのベンゼン環が縮環した三環式骨格をもつ芳香族アルコールであり、カンナビノイド類を含め、多くの天然物に共通する骨格です。
※6 付加環化反応
π電子系を持つ二つの分子が付加反応を起こして、環状化合物を生成する反応であり、原料と生成物で、原子損失がない原子効率100%の理想的な反応です。Diels-Alder反応を代表例として、有機反応の中でも重要な炭素−炭素結合形成法としての基幹反応です。
雑誌名:Journal of the American Chemical Society
論文名:Ligand-Governed Regio- and Enantioselective [2 + 2 + 2] Cycloaddition of 1,7-Enynes: Assembly of the Benzo[c]chromen-1-ol Backbone and Access to Enantioenriched Cannabinol Bioisostere
執筆者名(所属機関名):いずれも所属は早稲田大学
King Hung Nigel Tang博士(先進理工学研究科博士課程。博士学位取得後、現在は理工学術院総合研究所招聘研究員)、Taichi Kishi(先進理工学研究科修士課程。修士学位取得後、現在は民間企業研究員)、Natsuhiko Sugimura博士(物性計測センターラボ職員)、Yuto Horio(先進理工学研究科修士課程2年)Takanori Shibata(理工学術院教授)
掲載日時(現地時間):2025年2月5日
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.4c18319
研究費名:Special Research Projects and the Japan Science and Technology Agency (JST) Support for Pioneering Research Initiated by the Next Generation (W-SPRING), JPMJSP2128
研究課題名:New Environment‐Friendly Strategy for the Synthesis of Valuable Organic Materials via C–H Activation
研究代表者名(所属機関名):King Hung Nigel Tang (早稲田大学 大学院先進理工学研究科 博士課程、現在 理工学術院総合研究所 招聘研究員)
研究費名:大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 Research Center for Computational Science, Project 24-IMS-C390
研究課題名:触媒的[2+2+2]付加環化反応における位置選択性の反応機構解析
研究代表者名(所属機関名):柴田 高範 (早稲田大学理工学術院)
演題:「私の宋明思想史研究」
日時:2025年3月25日(火) 15:00-17:00
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス53号館1階101教室
講師:三浦 秀一
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:創造理工学部・社会文化領域
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
日時: 2025年3月17日(月) 10:00-11:40
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス55号館S-510室
講師:Rubén D. Costa
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:先進理工学部・応用化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
不透明な物質であっても、高強度レーザー光の励起※1により、まるで物質が存在しないかのように光を透過させることができます。レーザーのON/OFFを超高速で切り替えれば、その物質の透明・不透明も超高速に切り替えられるでしょうか?さらに、単色光だけではなく、多色光も同時に超高速で透明・不透明に切り替え可能でしょうか?
早稲田大学理工学術院の賈軍軍(じゃ じゅんじゅん)教授、中部大学の山田直臣(やまだ なおおみ)教授、産業技術総合研究所の八木貴志(やぎ たかし)研究グループ長らは、多谷間物質※2Geにパルスレーザーを照射することで、幅広い波長の光に対して透明・不透明を同時かつ超高速に切り替られることを実証しました。この成果は、光信号を物理的に切り替える技術の一つとして、将来のマルチバンド通信や量子コンピュータなど用の超高速光スイッチの開発への応用が期待できます。
本研究成果は、『Physical Review Applied』(論文名:Multivalley Optical Switching in Germanium)にて、2025年2月24日(現地時間)にオンラインで掲載されました。

図1 光スイッチングデバイスの動作概略図およびその原理
キーワード:
多谷間構造、谷間散乱、光スイッチングデバイス、過渡透過※3、Pauli Blocking Effect
光学材料の屈折率や消衰係数など光学定数は、光の強度が低い場合には一定とみなせます。しかし、光の強度が強くなると、光学定数が光の強度に依存して変化する非線形性が現れます。この非線形光学現象を利用すると、レーザー波長の変換など、通常の光学系では実現できない多彩な光の操作が可能になります。しかし、従来の非線形光学材料は、高強度レーザーなどの照射によりある決められた波長において光学非線形性が発現するのが一般的でした。
一方、半導体材料では、バンドギャプ※4以上の高強度レーザーを用いると、多数の電子が価電子帯から伝導帯※5に高密度に励起され、これらは電子-フォノン散乱によって伝導帯の下部を一時的に占有することができます。この伝導帯の下部における電子の占有(Pauli Blocking効果※6)によって、一時的に光を透過できる状態が生じます。この現象は、直接半導体材料であるInN(窒化インジウム)ですでに観測されており、光の高速スイッチング技術として注目されています。しかし、InNの透明化が起こるのは、近赤外領域のバンドギャプ付近に限られていました。
本研究では、近赤外から可視光領域にわたる幅広い波長帯域で高速に透明化する新たなアプローチを提案し、その実証に成功しました。固体物質の多谷間構造を利用し、パルスレーザーの高密度光励起を用いることで、近赤外から可視光にわたる多色光の透過・不透過が超高速で切り替わることを初めて観測しました。これは、これまで明らかにされていなかった新たな研究成果となります。
一般的に、光が固体物質中の電子を伝導帯に励起すると、電子は超高速で緩和し、その後電子-正孔の再結合などを経て元の状態に戻ります。Geや酸化物のような化学結合の強い物質では、励起後の緩和過程がピコ秒※7以下で起きるため、観測・制御・利用は非常に困難です。本研究では、フェムト秒※7時間スケールでの現象を解析できる計測装置を開発し、透過・不透過の超高速切り替え現象を実験的に解明しました。そのメカニズムは、励起された電子が谷間散乱を経て多谷間に配分され、各谷間に瞬時に滞在することでPauli Blockingが発生します(図1)。これは、電子が伝導帯の空状態を占有することで、光が吸収されず透過する現象です。Geにおいて、この現象により、530 nmと600 nmの可視光と~900 nmの近赤外光が、数百フェムト秒の時間スケールで同時に透過することが確認されました。これは、多波長に対応したスイッチング材料としての実現可能性を示しています。
本研究では、多谷間物質へのフェムト秒パルスレーザー照射により、励起電子の多谷間配分を高精度に制御することで、広帯域の波長に対応した超高速多色光スイッチングデバイスの実現可能性を示しました。
今回の成果は、単に超高速な物理現象の観測・解明にとどまらず、持続可能な高度情報化社会を実現するための基盤技術としても重要な役割を果たすと考えられます。例えば、光通信においてマルチバンド通信や光コンピュータのロジック素子への応用のように情報通信分野において波及効果をもたらすことが期待されています。特に、 多波長でスイッチングできることのメリットは、複数の光信号を時間差で重ねることで、より多くの光信号を伝送可能にする点です。今回の実証物質Geはシリコンフォトニクスとの高い整合性を有しているため、本原理に基づく多色光スイッチングは、シリコンフォトニクスの構成素子の一つとして、より高速なデータ通信やセキュリティの向上に貢献し、増加し続けるインターネットトラフィックの課題解決に寄与することが期待されます。
今回の研究では、多谷間物質を最先端のパルスレーザー技術と融合させ、広帯域の波長に対応した光スイッチング材料の創出を目指して研究を進めました。この成果により、単一波長での光を伝搬する従来の通信方式よりも、広帯域・多波長での受送信が可能となり、光ファイバの伝送容量が大幅に拡大し、大容量・高速データ通信への貢献が期待されます。しかしながら実用化に向けては、既存の光通信波長帯にマッチングする材料の創出などの課題が残されています。今後は、これまでの研究成果を基盤とし、新しい材料設計技術を活用して広帯域対応の多谷間物質を創出し、超高速光スイッチングデバイスの実用を検討していきます。これにより、将来的には光通信や量子コンピュータのへの応用につながることが期待されます。
この研究では、多谷間構造を持つゲルマニウム薄膜において、励起された電子がバンド構造内の複数の谷に超高速で分布することを観測しました。この超高速な物理現象を活用することで、多色光の超高速光スイッチングデバイスの実現に向けた重要な成果が得られました。今後は、多谷間物質を用いて、伝導帯内で電子を超高速に注入する技術をさらに発展し、新たな物理現象の発見とともに、より多くの革新的なデバイス応用の実現が期待されています。
※1 励起
原子や分子が外部からエネルギーを与えられ、エネルギーの低い安定した状態から、より高いエネルギー状態に移ることを指します。
※2 多谷間物質
固体物質の伝導帯の底を谷間と呼び、谷間を一つ以上持つ半導体を多谷間物質といいます。
※3 過渡透過
光が物質を通過する際に、時間とともに変化する透過特性を指します。
※4 バンドギャプ
固体物理において、光(または外部エネルギー源)が電子を価電子帯から伝導帯へ励起するために必要なエネルギー差を指します。
※5 伝導帯
固体物理学における半導体や絶縁体のバンド構造の一部で、電子が自由に移動できるエネルギー範囲のことを指します。光照射や熱などの外部エネルギーにより、電子が価電子帯から伝導帯に励起されることができます。
※6 Pauli Blocking効果
高密度な電子が伝導帯に占有された半導体において、新たな電子はそこに遷移できず、光の吸収がブロックされる現象を指します。
※7 ピコ秒、フェムト秒
1ピコ秒は1秒の1兆分の1、すなわち 10−12 秒、1フェムト秒は1秒の1000兆分の1、すなわち 10−15 秒に相当します。
雑誌名:Physical Review Applied
論文名:Multivalley optical switching in germanium
執筆者名(所属機関名):Junjun Jia* (Waseda University)、Hossam A. Almossalami (Zhejiang University)、Hui Ye* (Zhejiang University)、Naoomi Yamada (Chubu University)、Takashi Yagi (National Chubu University)
掲載予定日時(現地時間):2025年2月24日
掲載URL:https://journals.aps.org/prapplied/abstract/10.1103/PhysRevApplied.23.024060
DOI:https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.23.024060
演題:空間的オミクス解析で解き明かす婦人科癌の新たな世界
日時: 2025年3月13日(木) 16:00-17:40
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス52号館201室
講師:田口 歩
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:先進理工学部 電気・情報生命工学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
演題:規則性ナノ空間材料の魅力と展開
日時: 2025年3月6日(木) 15:30-17:10
会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス63号館204,205室
講師:小倉 賢
対象:学部生、大学院生、教職員、学外者、一般
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:先進理工学部 応用化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000
日時: 2025年3月4日(火) 16:00-17:40
会場:早稲田大学 各務記念材料技術研究所 42-1-101 (講演室)
講師:Marta Feliz Rodriguez
対象:応化学部生、応化院生、化学院生、ナノ理工院生
参加方法:入場無料、直接会場へお越しください。
主催:先進理工学部 応用化学科
問合せ:早稲田大学 理工センター 総務課
TEL:03-5286-3000